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私が読んだ本や映画を紹介するね。厳選してるから読んでみて。ここから買いにいけるからね。

書籍コーナー        映画コーナー

AKIの厳選書籍
欲望と幻想の市場 バブルの歴史 ルービン回顧録 灰谷健次郎氏書籍
夢をかなえるゾウ 失敗の本質 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか 小さいおうち
ヘッジホッグ ワシントンハイツ。GHQが東京に刻んだ戦後 トレイシー:日本兵捕虜秘密尋問所 写真で読む 僕の見た「大日本帝国」
誰も国境を知らない 阿久悠(ラヂオが秀作) 滄海よ眠れ 1―ミッドウェー海戦の生と死 大本営参謀の情報戦記
真珠湾攻撃総隊長の回想 ワーキングプア 菊とバット あ・うん
向田邦子ふたたび 父の詫び状 向田邦子の恋文 寺内貫太郎一家
アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか プリンセスマサコ 本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること レイテ戦記
一絃の琴 永遠の0 リアルシンデレラ 天使の相棒ー杉浦忠と長嶋茂雄
ベラチャスラフスカ 柳橋物語 一刀斉夢録浅田次郎著 朗読者
命もいらず、名もいらず 楡家の人びと 旅する力ー深夜特急ノート 新宿鮫、絆回廊
「父山本五十六」家族で囲んだ最後の夕餉 昭和質屋の客 たけし 達人に訊け
全思考 三陸海岸大津波 小暮写真館 憚りながら
沈まぬ太陽 脱藩大名の戊辰戦争 奇跡のラーメン店はどのように誕生したか 捕虜
なぜ、君は絶望と闘えたのか 駅路 渥美清の肘突き 父子鷹
三国志 決断力 おそろし 将軍家御典医の娘が語る江戸の面影
市場の神々 伝説のディーラー 日本の選択 敵兵を救助せよ
重臣たちの昭和史 歴史街道 みんな、野球が好きだった 私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか
滅びゆく国家日本はどこへ向かうのか シドニーシェルダン 黒澤明vs.ハリウッド 竜馬が行く 1-8
よく見る夢 ベスト&ブライテスト 遺したい日本の風景ー駅舎 美しき日本の残像
セブン・イヤーズ・イン・チベット 淀川長治自伝 風が強く吹いている 横道世之介
平家物語 海賊とよばれた男 64 ジェノサイド
ノルゲ 日日平安 人間臨終図鑑1 リクルート事件・江副浩正の真実
人間臨終図鑑2 あかね空 人間臨終図鑑3 人間臨終図鑑4
春告げ坂 聖の青春 清貧の思想 ぺコロスの母に会いに行く
一路 タイム誌が見た日本の50年 斬られ役ハリウッドへ行く タイム誌が見た日本の50年
大往生したけりゃ医療とかかわるな あなたが知らない太平洋戦争の裏話 冬の伽藍 わかっちゃいるけど、やめられない
戦争の世界史 殺戮の世界史 ペン字練習帳 道、果てるまで
散り椿 わが母の記 小野田寛郎の終わらない戦い 銀漢の賦
空白の5マイル 団塊の秋 人生がときめく片付けの魔法 11/22/63
父の帽子 テロルの決算 春秋山伏記 新幹線をつくった男
邂逅の森 プルーフ・オブ・ヘブン 浮雲 お別れの作法
かすていら 死の淵を見た男 食品の裏側2 殺人犯はそこにいる
「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい 詐欺の帝王 村上海賊の娘 下町ロケット
太平洋の試練 坂本龍馬を斬った男 国王ルイ16世の首を刎ねた男 マーケットの魔術師
サイゴンから来た妻と娘 絶望の裁判所 ウォール街欺瞞の血筋 夢をかなえるゾウ3
あっちの豚こっちの豚 日本軍と日本兵 吉村昭著の戦艦武蔵 ソロモンの偽証ー決意
原発事故で、生きものたちに何がおこったか ポーツマスの旗 心のふる里を描く 足元の小宇宙
東京新聞の筆洗 恋文 逃亡 蛍草
黒鉄の志士たち 馬券偽造師 群青 咸臨丸、サンフランシスコにて
優しさごっこ 桜田門外の変 敗戦 脳の強化書
軍艦長門の生涯 父の肖像 銭天堂 ふしぎ駄菓子屋・銭天堂
どぜう屋助七 翼はいつまでも 艦爆隊長の戦訓 僕の死に方
立花隆の書棚 トランクの中の日本 終わりに見た街 小さな会社の社長の戦い方
ぼんぼん 卑弥呼のサラダ・水戸黄門のラーメン 深川恋物語 新橋烏森口青春篇
明日のことは知らず 雨の狩人 さらば新宿赤マント 特攻
真実の一球 江戸捕物帳の世界 富嶽 義輝
哀しすぎるぞ、ロッパ 時代の風音 ほっぺん先生と帰らずの沼 羊と鋼の森
世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ ただ栄光のために 監督 高熱隧道
漂流 荷風と東京 お迎えされて人は逝く 大晦日のローストビーフ
りんごかもしれない ぼく東綺譚 人間の目利き F1地上の夢
欧米に寝たきり老人はいない 天狗争乱 ナショナルジオグラフィックが見た日本の100年 不当逮捕
大君の通貨 沈黙 君死に給ふことなかれ 心を整える
1Q84 バブル クアトロ・ラガッツィ 破獄
南鳥島特別航路 一汁一菜でよいという提案 勘定奉行・荻原重秀の生涯 駅格差
食堂かたつむりの料理 つかこうへい正伝 草原の風
ヒトラーのオリンピックに挑め 歌枕 日航123便 人間の証明
戦争と平和 魂でもいいから、そばにいて ぼくの東京全集 日の名残り
蒲団 半七捕り物帳 ヒルビリー・エレジー バッタを倒しにアフリカへ
銀河鉄道の父 半七捕物帳−2 津波と人間 カメラはじめます
百貨の魔法 盆まねき 寂しい生活 サピエンス全史
砂のクロニクル サピエンス全史下巻 熊撃ち 写真の裏の真実
母・野際陽子 未来の年表 未来の年表2 水神
夢の燈影 桑港特急 ナチスの楽園 かみさまは小学5年生
アメリカひじき・火垂るの墓 死んでたまるか サカナとヤクザ 暖簾
スッキリ中国論 人間晩年図鑑1995−99年 1941 決意なき開戦 プロ・トレーダー
深海の使者 大本営が震えた日 向田邦子との二十年 バスを待って
町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう 工藤写真館の昭和 幕末まらそん侍 さるすべりの花のように
背中の勲章 東京の下町 第一阿房列車 手鎖心中
先任将校 海霧 海霧・下巻 東京の戦争
本屋、はじめました 春に散る 春に散る 下 昭和の店に惹かれる理由
江分利満氏の優雅で華麗な生活 インドクリスタル 第二阿房列車 私の財産告白
豊臣秀長 海の史劇 第三阿房列車 星を継ぐもの
令和を生きるための昭和史入門 朱の丸御用船 夢酔独言 生きるって、なに?
日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 ご臨終の不思議な世界 うつ病九段 長い時間をかけた人間の経験
宇宙から帰ってきた日本人 夜明けの雷鳴 甲州子守唄 陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙
AI vs. 教科書が読めない子どもたち 雪の花 淳子のてっぺん 60年前の東京・日本
零式戦闘機 寒雷ノ坂 居眠り磐音 花芒ノ海 居眠り磐音(三) わけあって絶滅しました
雪華ノ里 居眠り磐音(四) ふたりの老女 居眠り磐音(六) キジムナーkids
知の旅は終わらない サラダ記念日 狐火ノ杜 居眠り磐音 朔風ノ岸 居眠り磐音(八)
もう一度 花咲かせよう 遠霞ノ峠 居眠り磐音(九) 朝虹ノ島 居眠り磐音(十) ぼく、ドラえもんでした。
新宿鮫XI 無月ノ橋 居眠り磐音(十一) 探梅ノ家 居眠り磐音(十二) アメリカ 暴力の世紀
残花ノ庭 居眠り磐音(十三) 帰郷 人と会うと明日が変わる 夏燕ノ道 居眠り磐音(十四)
驟雨ノ町 居眠り磐音(十五) 勤番武士の心と暮らし オオカミの護符 キラキラ共和国
螢火ノ宿 居眠り磐音(十六) なにがあっても、ありがとう 紅椿ノ谷 居眠り磐音(十七) 内田さんに聞いてみた 「正しいオヤジ」になる方法
天稟 孤狼の血 捨雛ノ川 居眠り磐音(十八)
梅雨ノ蝶 居眠り磐音(十九) 野分ノ灘 居眠り磐音(二十) 鯖雲ノ城 居眠り磐音(二十一) 荒海ノ津 居眠り磐音(二十二)
検事の本懐 しゃぼん玉 藻屑蟹 漂巽紀畧(ひょうそんきりゃく)
凍える牙 忘れられた日本人 万両ノ雪 居眠り磐音(二十三) 朧夜ノ桜 居眠り磐音(二十四)
夏目漱石先生の追憶 凶犬の眼 白桐ノ夢 居眠り磐音(二十五) 津波の霊たち
最後の証人 慈雨 検証 戦争責任〈上〉 検証 戦争責任〈下〉
軍旗はためく下に 検事の死命 紅花ノ邨 居眠り磐音(二十六) 石榴ノ蠅 居眠り磐音(二十七)
照葉ノ露 居眠り磐音(二十八) 冬桜ノ雀 居眠り磐音(二十九) ある男 侘助ノ白 居眠り磐音(三十)
アメリカが見た山本五十六・上 アメリカが見た山本五十六・下 更衣ノ鷹 上 居眠り磐音(三十一) 孤独ぎらいのひとり好き
食堂かたつむり 国家の罠 幻夏 更衣ノ鷹 下 居眠り磐音(三十ニ)
わくらば日記 孤愁ノ春 居眠り磐音(三十三) 尾張ノ夏 居眠り磐音(三十四) 姥捨ノ郷 居眠り磐音(三十五)
花まんま いっぺんさん 砂漠 臨床真理
宝島 流人道中記(上) 流人道中記(下) ニコライ遭難
一矢ノ秋 居眠り磐音(三十七) 東雲ノ空 居眠り磐音(三十八) 幕末雄藩列伝 武者始め
JR上野駅公園口 夢見る帝国図書館 鴨川ホルモー おもかげ
慟哭 白夜行 兜町の風雲児 秋思ノ人 居眠り磐音(三十九)
駅物語 春霞ノ乱 居眠り磐音(四十) 散華ノ刻 居眠り磐音(四十一) 洲崎球場のポール際
作家との遭遇 幸せのプチ 西部戦線異状なし 木槿ノ賦 居眠り磐音(四十二)
徒然ノ冬 居眠り磐音(四十三) 湯島ノ罠 居眠り磐音(四十四) ふぉん・しいほるとの娘(上) ふぉん・しいほるとの娘(下)
空蝉ノ念 居眠り磐音(四十五) 弓張ノ月 居眠り磐音(四十六) 海苔と卵と朝めし 失意ノ方 居眠り磐音(四十七)
白鶴ノ紅 居眠り磐音(四十八) 意次ノ妄 居眠り磐音(四十九) 吉村昭の平家物語 日本の絶景鉄道
吉永小百合 私の生き方 ゴミ清掃員の日常 落日の宴 竹屋ノ渡 居眠り磐音(五十)
鉄道無常 転迷 隠蔽捜査4 宰領 隠蔽捜査5 増補版 時刻表昭和史
自覚 隠蔽捜査5.5 去就: 隠蔽捜査6 新選組 幕末の青嵐 蕎麦ときしめん
旅立ノ朝 居眠り磐音(五十一) 人生の1冊の絵本 棲月―隠蔽捜査7 木下サーカス四代記
清明: 隠蔽捜査8 めんのずかん ちいさいおうち 暁の旅人
ふるさと60年 赤い人 恨み残さじ 人は死なない
剣と十字架 盤上の向日葵(上) 異郷のぞみし 未だ行ならず(上)
死ぬ気まんまん 未だ行ならず(下) 硝子戸のうちそと 闇を裂く道
先生のお庭番 もうあかんわ日記 太平洋 その深層で起こっていること 東京骨灰紀行
かなしきデブ猫ちゃん 遊廓と日本人 信長と弥助 嫌われた監督
東天の獅子〈第1巻〉 東天の獅子〈第2巻〉 東天の獅子〈第3巻〉 ライオンのおやつ
東天の獅子 第4巻 あしたの君へ いとみち ミチクサ先生 上
ミチクサ先生 下 海も暮れきる 悪人 機関車先生
国宝 (上) 青春篇 国宝 (下) 花道篇 「乗り鉄」教授のとことん鉄道旅 昭和天皇の声
孤絶 異変ありや 空也十番勝負(六) いとみち 二の糸 恐竜まみれ
同志少女よ、敵を撃て 食堂のおばちゃん 恋するハンバーグ 食堂のおばちゃん(2) 愛は味噌汁 食堂のおばちゃん(3)
白鯨 MOBY-DICK いとみち 三の糸 ヒトごろし ひさしぶりの海苔弁
道路を渡れない老人たち ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん(4) 男どき女どき あじフライを有楽町で
ゼロ戦特攻隊から刑事へ 真夏の焼きそば 食堂のおばちゃん(5) あの日の親子丼 食堂のおばちゃん(6) わくらば追慕抄
まるまるの毬 蒲田行進曲 霞町物語 無恥の恥
ウクライナ戦争日記 実家じまい終わらせました! 塩狩峠 TUGUMI(つぐみ)
銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯 暴虎の牙 一下級将校の見た帝国陸軍 暗約領域 新宿鮫XI
貧困旅行記 南の島に雪が降る ロレンスになれなかった男 雲を紡ぐ
聖職の碑 兎の眼 なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか 文明が衰亡するとき
あたりまえを疑う勇気 探花―隠蔽捜査9 裏が、幸せ。 風に訊け 空也十番勝負(七)
名乗らじ 空也十番勝負(八) イヨッ たっぷり!: 高田文夫の大衆芸能図鑑2 逝きし世の面影 荒ぶるや 空也十番勝負(九)
Jimmy 歴史のダイヤグラム ふがいない僕は空を見た 坊っちゃん
櫛挽道守 冒険者たち―ガンバと十五ひき 何が記者を殺すのか 紀行
ジェイソン流お金の増やし方 名人 等伯 上 きたきた捕物帖
私のぼく東綺譚 赤星鉄馬 消えた富豪 等伯 下 人間晩年図巻 1990-94年
奔れ、空也 空也十番勝負(十) 学問と野球に魅せられた人生 どんがら ガリバー旅行記
百間、まだ死なざるや 文豪、社長になる 廃線紀行 つげ義春
不死身の特攻兵 センセイの鞄 江戸の幽明 日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条
御宿かわせみ (2) 江戸の子守唄 御宿かわせみ (3) 水郷から来た女 夕べの雲 平岩弓枝「御宿かわせみ」の世界
ワセダ三畳青春記 神田鶴八鮨ばなし 謎の独立国家ソマリランド 何でも見てやろう
子孫が語る土方歳三 これはしない、あれはする 御宿かわせみ (8) 白萩屋敷の月 一夜:隠蔽捜査10
風に立つ 死ぬ瞬間の5つの後悔 向田邦子ベスト・エッセイ 続 窓ぎわのトットちゃん
わが投資術 触れもせで: 向田邦子との二十年 終わった人 世界から恐れられた7人の日本人 上巻
Distance 僕の樹には誰もいない チャップリン 作品とその生涯 夢をかなえるゾウ4
ふだん着の寺田寅彦 容疑者Xの献身 ぼくはあと何回、満月を見るだろう ナチスが恐れた義足の女スパイ
鶴川日記 軍艦「矢矧」海戦記 書いてはいけない 総会屋とバブル
玄鳥 文にあたる 真珠とダイヤモンド 下 味なメニュー
面食い 明治商売往来 言い残しておくこと 野望の屍
リーマンの牢獄 星のこども あのひと 逃亡(上)
逃亡(下) おいち不思議がたり 桜舞う おいち不思議がたり 五郎治殿御始末
ベスト・オブ・ドッキリチャンネル DIE WITH ZERO - -
祭りの日 ゆれるあなたに贈る言葉 はっきょいどーん 方丈記、徒然草、に学ぶ人間学
むかしのはなし 身を捨ててこそ 文芸春秋とアジア太平洋戦争 AYAKO
舟を編む まほろ駅前番外地 ひとり夜風 時雨ごこち
北天蒼星 ビタミンF 弧鷹の天 日本中枢の崩壊
決断できない日本 夜と霧の隅で 江戸職人綺譚 木挽町月光夜咄
大人の流儀 北の海明け 黄落 夢紡ぐ人びと
池波正太郎が書いたもうひとつの「鬼平」「剣客」「梅安」 通貨を知れば世界が読める 超思考 落としの金七事件簿
初陣ー隠蔽操作3.5 漂砂のうたう 海辺のカフカ ギャンブルトレーダー
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幸田文しつけ帖 動かぬが勝ち ドル亡き後の世界 親鸞
必中の急降下 チャイナアズナンバーワン きよのさんと歩く江戸六百里 日本のこころの教育
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翼に日の丸 奪われる日本 マイブック 東京タワーオカンとボクと、時々、オトン
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紫電改のタカ 戦争経済に突入する日本 山元五十六 検証戦争責任
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おしかくさま ソロモンの偽証 空の拳 駅前旅館
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夢の船旅 婉という女 国鉄スワローズ1950−1964 採薬使佐平次
花晒し よりぬきサザエさんNO.1 手ぶくろを買いに ぼくは本屋のおやじさん
拉致と決断 隣の女 暢気眼鏡・虫のいろいろ。他13編 金融大地震とインフレの大津波
ふくろうくん 1934年冬ー乱歩 豹変 峠道
蔦屋 野望の憑依者 飛龍伝 ユタと不思議な仲間たち
骸骨ビルの庭 学問 凍れる瞳 欧亜純白ユーラシアホワイト
風の盆恋歌 仲代達矢が語る日本映画黄金時代 花のれん 父・藤沢周平との暮し
90歳の遺言安藤昇 昭和残影 靖国への帰還 代償
90歳。何がめでたい コンビニ人間 告白 ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー
ツバキ文具店鎌倉代書屋物語 女魔術師 サムライスピリット
容疑者Xの献身 千曲川のスケッチ 夢遊病者たち 東京シック・ブル―ス
大阪の宿 新しい道徳 没落の東京マーケット 孤愁の岸
妄想銀行 ナツコ・沖縄密貿易の女王 卜伝飄々 トーキョー・プリズン
時代屋の女房・泪橋 雲ながれゆく 徳川おてんば姫 戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗
時の石 家族のあしあと 肥沼信次の精神と国際交流 歴史の遺訓に学ぶ
コスモス オリンポスの果実 私の生活流儀 漂流
悲しみの秘義 破船 一切なりゆき 奸婦にあらず
かみさまは中学1年生 会津執権の栄誉 性風俗シングルマザー 交通誘導員ヨレヨレ日記
秘太刀馬の骨 A/Identify―アイデンティファイ― 君たちはどう生きるか・漫画 おらおらでひとりいぐも
投機バブル 根拠なき熱狂 花競べ ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 愚か者死すべし
いやいやえん ゾウの時間 ネズミの時間 検事の信義 愛の領分
ふしぎなえ あさになったのでまどをあけますよ 真乗- 心に仏を刻む 覘き小平次
タヌキ 冥界からの電話 百鬼園随筆 声なき蝉-空也十番勝負 青春篇(上)
ねこは るすばん 声なき蝉-空也十番勝負 青春篇(下) 盤上の向日葵(下) てらこや青義堂 師匠、走る
黄昏 深川澪通り木戸番小屋 野川 遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと
いねむり先生 たぬき 毎日読みたい365日の広告コピー 介錯人
高瀬庄左衛門御留書 心淋し川 閻魔の世直し: 善人長屋 経済学者たちの日米開戦
キッチン なぜ日本は変われないのか いろいろ 何者
お菓子放浪記 ミカエルの鼓動 老年の読書 長い長い殺人
大名倒産 上 大名倒産 下 お鳥見女房 昔話の扉をひらこう
いつか王子駅で 住友銀行秘史 八日目の蝉 テムズとともに
蛍の行方―お鳥見女房 世界は五反田から始まった 本屋で待つ 息が詰まるようなこの場所で
嫌いなら呼ぶなよ おばさんの金棒 身分帳 御宿かわせみ (4) 山茶花は見た
御宿かわせみ (5) 幽霊殺し 御宿かわせみ (6) 狐の嫁入り 焦眉 御宿かわせみ (7) 酸漿は殺しの口笛
ニッポンが壊れる サラバ! (上) サラバ! (中) サラバ! (下)
旅のつばくろ 師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常 社会とことば キネマの玉手箱
冬の狩人 和菓子のアン 山の上のパン屋に人が集まるわけ 汝、星のごとく
最後に「ありがとう」と言えたなら 真珠とダイヤモンド 上 たまらん坂 証言天安門事件を目撃した日本人たち
ぼっち死の館 お寺のハナちゃん 最後の読書 スクイズ・プレー
りえさん手帖 ホントにやせた編 椿宿の辺りに 東京都三多摩原人 逃亡者は北へ向かう
亀に無視され続けています 生きるとか死ぬとか父親とか 流れゆくままに 全悪 警視庁追跡捜査係
京王沿線怪談 - - -

 

AKIの厳選映画
アーティスト アルゴ 硫黄島の手紙 意志の勝利
麗しのサブリナ 永遠のゼロ 英国王のスピーチ 駅馬車
隠し剣ー鬼の爪 グレンミラー物語 県庁の星 決戦の大空へ
サウンドオブミュージック 七人の侍 シルミド 少年H
スポットライト 西部開拓史 セブン・イヤーズ・イン・チベット ゼログラビティ
それでも僕はやってない 小さなおうち 独裁者 バルトの楽園
ハワイ・ミッドウェー大海空戦ー太平洋の嵐 フレンチコネクション ポチの告白 ポールニューマン主演映画
硫黄島 - - -
 

 

AKIの書籍

 欲望と幻想の市場

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私がずーーーと昔取り上げてから業界で広がった書物である。私は8年前に読んだ。ボロボロである。アマゾンだと3.5点程度の評価と低い。私は5点満点☆☆☆☆☆である。

<この本の読み方>
1.通読
2.赤ペンとともに読む
3、もう一度読む

半年ごとで良いと思う。良いものは何度か読まなければ本の訴えてくるものを感じ取る事はできない。そこまで読んでから考える最後の結論は、【彼は彼。私は私。決して真似はできない。私はリバモアにはなれない。私は私の道を究めないとならない。】 ということだった。

   

 バブルの歴史:エドワードーチャンセラー

 AKI評価:☆☆☆☆☆

7年前の名著だ。チューリップ恐慌からインターネット投機へという副題。英語版が出版されたのは1999年。執筆は1998年だ。インターネットバブルが崩壊したのが2000年春。金融、証券に携わる者には必須の著と思われる。多数の人に読まれている。日本で出版されるまでに日がたっているね。まさにインターネットバブル崩壊の2000年4月に発行されている。日本のバブルについても詳しく分析されている。今、世界は過剰流動性に囲まれ、あちこちでバブル現象が目立つようになっていると言われている。その盛りにこの本を読むことは大事な事だと思われる。私は2回読んで、線ばかり引いてあるが、もう一度読もうと思っている。少なくとも現在のバブルがどの程度まで進んでいて、どの辺に位置しているのか知るには有用である。おぼろけながらわかるだろう。この本は個人投資家も読むべきと思う。翻訳がわかりやすいから難儀だと思わない。
   

 ルービン回顧録

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なんと私にしては珍しく読破するのに日数を費やした。3ヶ月かかってしまった。ルービン氏を尊敬する金融関係の人々は多い。私もその中の一人である。だからこそ、彼の書いたものを読まなければならないと思ったのである。ただし、私は政治的な事に全く無関心なので、ホワイトハウスの内部の事とか、政治的立案というような箇所で1週間に3ページほどしか進まなかったのである。だが、さすがに金融関連の分野になると示唆に富むコメントが多く、大変に有用だった。本は3360円もして、530ページにわたる分厚い本である。うちの若い者が読んでみたいというので、政治的な、そしてアメリカの議会関係の箇所は飛ばして読むなら良いだろうと答えた。あの部分は、日本人にはわかりにくいところである。翻訳にも問題があると思うが、意訳はできなかったのであろう。私は後半の半分は一気に読み終えた。大変に示唆に富む箇所が多く、さすが世界の金融マンが尊敬するだけの人物だと思ったのである。
   

 灰谷健次郎氏 (兎の眼

 AKI評価:☆☆☆☆☆

灰谷健次郎氏が亡くなったね。大変に苦労して大学を出て教師になった人であるが、1974年発表の「兎の眼」はいたく感動して、銀行時代に部下たちに回し読み的に貸した。「太陽の子」「天の瞳」も良いが、「兎の眼」はダントツである。今の子供たちは読むべきだし、今のすっかり激変してしまった日本社会と日本人は皆読むべき必読の本だと思う。32年たった今でもあの本は金字塔である。
   

  「夢をかなえるゾウ」水野敬也著。飛島新社。2007年。1680円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前ここで推薦したことがある。アジアでガネーシャの木彫りまで買ってしまった私は再度読もうと思って書棚を探したのだが、行方不明。仕方なしに、新たに買った。 まあ、つまり、2度目の読みとなるのだが、読めば読むほど奥が深い。私はもう残り人生そんなに長くないから、特別に極めたいとは思わないのだが、自分の人生を現状から変えたいと思っている若い連中、若いといっても50歳以下は皆若いのであるが、この人たちがこの本を読まないとか、読んでも実行しないとなると、これは現状維持で満足、自分を変えたいとは思っていない、としか思えない。 つまり、50歳以下の全員必読の書である。日本の大学生など勉強しないと聞いているから、大学もこの本を教科書にするのが宜しい。新卒が就職できないとかビービー言ってるが、そういう連中もこの本を最初に読むのが当然だろう。読む読まないで大違い。読んでそのままと読んで実行するでは、さらに大違い。読んでない人は騙されたと思って、しっかり読みなさい、ときつく叱るのであった

   

 失敗の本質

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日本海軍の研究が好きだった私は、その当時から、たくさんの太平洋戦争の本を読んでいた。学生時代の日米関係を意識した日々の経験がそうさせたのだろう。ほとんどのその類の本は読んでしまったので、もう読む本はほとんどない。戦国時代の信長の頃の本もほとんど読んでしまっているが、これも相場の仕事が戦いの仕事ということが本質的にあり、戦略や、機略を練るのに、戦国時代の武将の考え方がきわめて役に立った。と言うか、役に立てようと思っていた。

スイス銀行の副支店長の浜田さんまで私を説教するのにビルマ戦線の戦いの経過などを例えにするものだから戦記物は私とはきってもきれないものなのだ。若いデイラーの人は戦略思考ができるようになるから、読書だけはした方が良い。勧める本として一番の名著は、「失敗の本質」だろう。この本の内容についていろいろ書いても良いのであるが、やはり自分で読んでもらったほうが良い。私は赤線まで引いて4度読み直したくらいである

   

 「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」増田俊也著。新潮社。2730円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本屋で見かけてからずっと気になっていた。えらく分厚いからね。47人中、2名だけ☆2個。この二人は何を考えているのか理解不能。それでもって、本屋で買ってしまったのだ。参ったね。単なる柔道史かと思ったらとんでもない。事実は小説より奇なり、そのまんま。

15年不敗、13年連続日本一、日本柔道史上最強の男が背負った哀しき人生という副題がついているが、そのとおりであった。3年間にわたる格闘 技の雑誌に掲載されたものだが、この著者のエネルギーと膨大な取材量に頭が下がる。なぜ、日本柔道が勝てなくなってしまったのかもよく理解できる。昭和は 男の時代、平成は女の時代と書いてあったが同感だ。

私のガキの頃の記憶には力道山しかないし、彼が殺された新聞の一面記事とか覚えている。木村の名前はかすかに覚えている程度だった。どうして、 木村政彦の名前が私の脳から消えていたのかよく理解できた。武道をやっている人たち、柔道をやっている人たち、いや、日本男子全員が読むべき本だろう。 2730円は決して高くない。私は高くこの作品を評価する。

   

 「小さいおうち」中島京子著。文芸春秋。1660円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前本屋で立ち読みして買っておいた本だ。読んだ。読後、ダブルファンタジーが賞三つなら、これは賞10個と思った。それで本のカバーを外したら、なんと直木賞受賞作であった。なるほど、これが直木賞かと納得した。

素晴らしい。文句なし。感性のある人なら皆何らかの感動を受けるだろう。ホロ酸っぱい、妙になつかしい、暖かい、読後感がドシンと来る。アマゾンの☆をみたら、ひとつとかふたつの人がいるね。信じられん。あの時代の別の側面を見た。これはもしかして反戦小説ではないのか?私は、美人の時子奥様、女中のタキさん、ぼっちゃん、板倉君に会ってみたい。感動をありがとうと著者にお礼を言いたい。

   

 「ヘッジホッグ」バートンビッグス著日経。2500円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

望月衛という人が翻訳しているが、訳もうまいので読みやすい。私はこの本が1万円でも買うね。私は読んでいて自分の事のように感じたよ。読むべき人は、人の金を運用している人、運用させている投資家である。個人投資家や銀行のディーラーは読む必要はないと思う。読んでもいいが、読む利点が大きく違う。人のお金を運用していること、自分のお金で運用している個人、銀行のディーリングルーム、皆、同じ相場を見つめているのだけど、それぞれ全く違う角度で見ている。つまり、世界が全然違うのだ。個人投資家は誰に報告する義務もないし、四半期も年度末も何も気にしなくて良い、孫の代まで持ち越しても自由だ。銀行のディーラーは銀行がバックにいるから内規のポジションと損益リミットさえ守れば殺される事はない。良い悪いでなく、似て異なるものと思えばいい。私の書評は☆☆☆☆☆である。
   

 「ワシントンハイツ」GHQが東京に刻んだ戦後。秋尾沙戸子著。2009年初版。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本は、日本エッセイストクラブ賞を受賞している。確か、この著者がラジオに出演していて、相場みながら聴いていたんだよね。それで興味深々となって購入した。受賞するだけの著書である。座布団5枚。非常に丁寧に取材を重ねて、調べたことがよくわかる力作である。老若男女を問わず、是非とも読んでもらいたい。久しぶりに読後感がいい。

   

 トレイシー:日本兵捕虜秘密尋問所:中田整一著。講談社。1890円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

衝撃の事実。事実は小説より奇なり。この二つの国民性を冷静に眺めてみれば、また戦っても負けることは必定。この1年で読んだ本のトップ3に入れたい。丁寧な取材と調査をして執筆された著者に敬意を表したい。

   

 写真で読む 僕の見た「大日本帝国」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初からランキングをつけよう。☆☆☆☆☆である。おじんの私より、特に若い人に是非とも読んでもらいたい書物である。写真が満載されているので、多分読みやすいと思われる。丁寧な取材と正直な感想に好感が持てる。1680円と高いように思えるかも知れないが、3000円の価値はあるだろう。著者はまだ36歳と若い。最初の大日本帝国地図を見れば、わが国がどのくらい大きなものだったかわかるだろう。そして、その広大さゆえに防御もままならず、米軍にドテッパラをやられたのもわかりやすい。中国、朝鮮などといろいろな確執がいまでも残る。だが、我々の先祖がやってきたこととは言え、我々は過去の事実から目を離してはならない。読後、正当化したり、慙愧の思いなどする必要はない。そんな気分にならずに、素直に歴史を直視できるようになると思う。久しぶりに読み応えがあった。
   

 「誰も国境を知らない」西牟田靖著。情報センター出版局。1785円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の本は2冊目だが、期待して読んだ。期待通りの作である。5年の歳月をかけた丁寧な取材にもとづいている。日本人に国境を考えさせる力作である。

この本に出てくる国境とは、北方領土、沖ノ鳥島、竹島、対馬、硫黄島、小笠原諸島、与那国島、尖閣諸島である。私の知らない事実も多く、目を開かせてくれた。是非とも多くの人に読んでもらって、日本国のことを再考してもらいたい。読み応えがあり、厚い割にはスイスイと読める。

   

 阿久悠(ラヂオが秀作)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

阿久悠。まさに巨星落つという感じ。ショックだなあ。すげええ尊敬していたんだよね。いろいろ報道されているから詳しく書くこともないだろう。最初に彼をテレビで見たのは、20代の頃で、日本テレビのスター誕生だった。ももえたちがデビューした番組だ。言いたい放題の厳しいコメントを出す人だった。きついおっさんと思っていたが、そのうち、彼が一番まともなことをまともに語っているんだよね。一本筋がきちんと通っていた。さすがにこの人、只者じゃないなあって思ったもの。彼の作った歌はほとんど大好きなんだけど、彼の書いたエッセイなどが大好きでね、ほとんど読んだ。本では瀬戸内少年野球団も良いのだが、ラヂオが秀作だったと思う。あの本は本当に良かった。彼が書いたというだけで買ってしまったのだけど。彼の夢が直木賞をとることだったと書いてあったけど、あげれば良かったのに、資格十分だよ。そういうわけで、惜しい人を亡くして、また時代の変化を感じる。
   

 「滄海よ眠れ 1―ミッドウェー海戦の生と死「記録ミッドウェー海戦 沢地久枝著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

うーーん、押し入れにしまってあるはずだなあ。びっくり。中古で7000円もする。後者は13000円だ。彼女の本は多数読んでいる。全て残してあるはずなんだ。文庫本はそれほど高価になっていないから、探して買うといい。彼女が深夜便に出ていたので話を聞いていた。すごいよなあ、日米の参加者ほぼ全員とコンタクトして10年以上かけて書いたのかな。確か。驚いたのが厚生省の話。日本軍人の戦死者数を聞いてもそういう記録はないからわからないと返事をもらったそうだが、それで彼女が正確な日米の戦死者数まで調べ上げるんだけど、思ったよ、この国って本当に人の命を粗末に扱うよね。いったいなんだってんだ、と感じる。生き残った日本軍人の多くが敗戦を隠すために一か所に集められて一番危ない戦地に送り込まれるんだよ。すごく感銘を受けた本なので是非読んでもらいたい。
   

 「大本営参謀の情報戦記」情報なき国家の悲劇。堀栄三著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

名著である。できたら文庫本でなくハードカバーで読みたい。初版は1996年だが、何かの書評でえらくほめていたので買い置きしておいたと思う。

現在の日本にもまさにあてはまる話で、これはもう国民性ではないかと思わせる。大本営作戦課の会合に情報参謀は参加してないんだよね。海軍も同じ。戦後のアメリカの分析でも日本の情報に対する甘ちゃんぶりが敗因の一因としてあげられている。007はやはり英米なんだなあ、と思わせる。後半に行けば行くほど深みのある本として光ってくる。それにしてもアメリカは大正10年にすでに太平洋の飛び石作戦を立案していたとは、もうまさに驚き。名著なので、日本男児全員読むべし。情報戦略を日本男子ができないなら、大和なでしこに任せた方がいいのではないか?衝撃の本であった。

   

 真珠湾攻撃総隊長の回想ー淵田美津雄自叙伝(講談社)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2000円近い本だが、その価値はある。ハワイ奇襲の360機の大編隊を率いた隊長である。映画トラトラトラでは、田村高広が演じていたので覚えておられる人も多いだろう。帯に書かれているのは、あの戦争はなんだったのか。真珠湾攻撃の総指揮官として太平洋戦争の期間、武勲を誇った海軍軍人。その心中では日本海軍の欠陥に早くから気づいていた。戦後はクリスチャンに回心、伝道者としてアメリカを回る。歴史の真実と個人の煩悩とを正直に明かした異色の回想記。史実の書き換えを迫る貴重な書であるとなっている。

私の印象は、数奇な人生という一語だ。結構な数の戦記物を読んできているが、今までの本とはまったく違う。前線にいた人ならでは話が多く、知らないことも多かった。山本元帥を凡将ではないかと疑っているところなど興味深かった。真珠湾攻撃が終わった後、機動部隊はインド洋まで遠征し、英艦隊を撃滅させたりしているのだが、それからウロウロとソロモンのほうに行ったりして、ミッドウエー海戦までの半年が私にとっては不可思議な時期だった。ラバウル空襲など、爆弾を落とす相手もいなかったのだそうだ。こんな道草を食っていていいのだろうか?と彼は疑問を投げている。私が思ったとおりのことを彼も当時思っていたのである。彼は、真珠湾の後、米空母群を見つけて、撃滅すべしと考えていたし、南雲長官に対する不満が書かれている。真珠湾の後、すぐに米西海岸を攻撃すべきだったと述べている。米軍が萎えているときに一気に米国民の戦意を喪失させるべく攻撃続行をすべしと疑問を投げかけている。

アメリカの東京初空襲の日本の軍部に与えた衝撃の大きさも書かれていて、それがその後の作戦の失敗につながっていくことなども書かれている。彼は日本海軍の提督たちは凡将が多いとしている。勝負度胸に乏しい、しつこさがない、歳をとりすぎて経験が邪魔をして石橋を叩いて渡る、勝てる戦を前にさっさと引き上げた南雲提督やソロモン海戦の三川提督などを批判している。若返りが必要として海軍大臣に談判にまでいっている。

まあ、そんな調子で読み飽きない。彼は戦後クリスチャンの牧師になるわけだが、あれだけの数奇な運命を歩めば誰でも宗教に入っていくだろうと思う。私は今までどうあがいても絶対にどっちみちアメリカにはかなわなかったという考えだったが、勝てたかも知れないと、この本を読んで初めて思った。もちろん、山本元帥の想定したアメリカ人の戦意喪失ー和平交渉が成功したと仮定しての話ではある。
   

 「ワーキングプア」ポプラ社。1200円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いろいろ賞をとった作品だ。テレビドキュメンタリーで2006年7月と2006年12月に放送されたものを本にしてある。働いても働いても豊かになれない、努力すれば抜け出せますか、というような副題となっている。私はテレビのほうを見た時、衝撃だった。これは格差社会とかいうものでなく、日本に初めて出現している社会現象だと思う。

人は言う。ちゃんと仕事探していないんでしょ、努力していないからだ、自己責任だ。その人たちに問いたい。ここに扱われている人たちに処方箋を作ってやってくれ。1日8時間働いて月に8万円しかもらえない社会が現実として存在している。批判する人たちは現実を直視したがらないから、ドキュメンタリーも本もみない。だが、中には大企業のサラリーマンだった人までいるのだ。いつ、自分たちに降りかかる災難なのかも知れないのだから、ひとごととは考えないほうが良いだろう。これは日本人全員が読んで、将来の事を考えるべきである。
   

 「菊とバット」ロバートホワイティング著

 AKI評価:☆☆☆☆☆

77年の同著の完全版とはなっているが、実際にはそのままプラス多少追加という感じだ。77年はディーラー2年生だったからわからなかったが、今回読んでみて、日本からディーラーが輩出しない理由がよくわかった。日本の金融機関に勤める者は必ず読むべきものだと思う。いろいろな答えが日本の昔の野球に現れている。この著者が「東京アンダーワールド」の著者とは気がつかなかった。この本が面白いはずである。
   

 あ・うん:神社の狛犬二頭なんだけどね。向田邦子の作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

映画もいろんな役者が演じてきている。私はテレビドラマのフランキー堺と杉浦直樹のものを鑑賞した。映画をみてもいいけど、やはり本を読むのが先だろうね。本の方がいいに決まっているし。男同士の友情を描いているんだけど、なんともほのぼのした作品で、日本人なら皆理解すると思うよ。若い人は読んでないと思うけど、DVDでも本でもいいから、絶対にお勧め。
   

  「向田邦子ふたたび」文芸春秋。720円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

死後30年も経過するのに、いまだに人気が全く衰えない。これはすごい。この本は去年の7月に発行されている。皆、彼女が好きである。皆、彼女の執筆したエッセイが好きである。皆が彼女のドラマシナリオが好きである、皆が彼女の小説が好きである。私も大好きである。文章全体から流れてくる匂いがすごく良い。向田邦子ファンには、たまらない思い出集だ。若い人も読むといい。どうして彼女の人気が衰えないのか、わかるだろう。写真も豊富。山本夏彦の選んだベスト5エッセイも掲載されている。

   

 「父の詫び状」向田邦子著。文春文庫。530円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女のエッセイは好きなのだが、読んでいるうちに、私は、テレビドラマの多くを思い出していた。そして、久世光彦氏(富山出身)の存在感の大きさを思い知ったのである。この二人の共同作業みたいなものが、あの優れたドラマを多く輩出したのだと思う。そういうことを頭に描きながらこの本を読むのが良いだろう。
   

 「向田邦子の恋文」向田和子著、新潮文庫、362円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、私は向田邦子の大ファンなのである。彼女の作品のドラマは全部観てきている。そして、あの何とも言えない味が大好きである。彼女が飛行機事故で亡くなった時のこともよく覚えている。

ある女優がこの本の事を書いていたので、すぐに買った。温かさの中に残るせつなさと書いている。彼女の秘められた恋のことが書かれている。「誰かさんみたいに、こなくても平気だよ、なんて、ひどいことはいわないもん」彼の方は、「邦子はコタツで横になって満足そう。ふっと可哀想にもなったりする」

彼女の恋は悲しい結末を迎えるのだが。いやー、こんなかわいい女いないなあ、と思うのだ。この本には彼女の生前の写真が何枚か出ている。なるほど、辛い恋や家庭環境からあのようなエッセイや書が書かれたのだな、とすごく納得する。これを読んで、さらに向田邦子ファンになってしまった。ちなみにこの女優は、胸が苦しくなると結んでいる。よく、わかる。あまり繊細でないひとは読んでもわからないかも知れない。彼女のファンには必読書だろう。

   

 「寺内貫太郎一家」 向田邦子著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本屋に立ち寄った時に買ってしまった。なんでも今は向田邦子ブームの再来のようで、ファンの私としては嬉しい限りではある。それで、コーナーもあったのだ。テレビドラマは昔たまに見ていた。今でも時々なつかしい映像が流れたりする。彼女のデビュー作であるが、未完だったということで、後半半分は鳥兎沼佳代という人が書いている。途中から文体が違っているので気がついたら、そうなっていた。これを付け加えて完本としたことが良いのかどうかわからない。私はそのままのほうが良かったような気もするが、それは読者自身の考える事だろう。昭和ノスタルジーとして楽しく読める。座布団5枚。
   

 「アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか」佐藤唯行著。新潮文庫。438円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

438円でこんなに知識ゲットしていいの?って感じ。友人に強く勧められて読んだ。ユダヤ恐るべし。アメリカの政界は完全に牛耳られている。マネーで首根っこ抑えられている。なんでユダヤ人が強欲なのかよくわかったよ。金が必要なんだよ。大金が。全ての寄付と動員は、対イスラエル政策を縛りつけるため。

しかし、ユダヤ人の人脈というのはすごいなあ。いるわいるわ。全米トップ100人の大富豪の内、ユダヤ人は30人だよ。オラクル、ブルンバーグ、デル、グーグル、マイクロソフト(パルマー)、ソロス、レブロン、ドリームワークス、ラスベガスサンズ、KKR,ラルフローレン等々。

中東和平はありえないね。中東和平をやる議員や大統領は必ず刺客を送られて落選させられる。小泉さんの30年前からやっている。私がアメリカにいた頃、ユダヤ人はそれほど力を持っていなかったのだが、いまや彼らの活動を知らずしてアメリカの外交政策は判読できないね。私がここでいろいろ書いても仕方ないので一読を勧める。なるほど、ヒットラーの政策はユダヤ人を恐れてのことだったのかも知れんと思うのである。 目からウロコ。

   

 プリンセスマサコ:ベンヒルズ著ー藤田真利子訳。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

まず翻訳がすごくいいね。わかりやすい。外人でないとこの本は書けないと思ったよ。皇室報道はほとんど海外が主体で本物で、日本のマスコミは宮内庁を恐れて無視したりするのを初めて知ったよ。出版社も第三書館というあまり聞かないところだ。それでも三省堂では山積みにされていたけど。大手の出版社は尻込みして出せないとわかる。帯に書かれているのは、これはひとりのきわめて有能な女性が被害者となった人権喪失の記録である。加害者は私たち日本人すべてである。宮内庁猛反発の日本の皇太子妃の悲劇的な真実、遂に邦訳出版なる。裏表紙では、プリンセスマサコの真実:検閲された雅子妃情報の謎。幻の日本語版で葬り去られた百数十箇所の闇。読まれたくない雅子妃情報をコントロールしたものは?などとなっている。

私には衝撃的な本だったね。あまり知らなかったし、というか、知らされていなかったし、何ともすごい世界が現実にあるのだとわかって驚きだよ。日本人皆が読むべきだね。鬱病という病気の怖さも初めて知った。あれは世界ではきちんとした病気と認定されているのに、日本ではこの10年でやっと病気と認められたらしいね。世界で売れている薬が日本では売られてないんだってさ。リリー社が一番有効な薬を作っているらしいが、日本には申請もしなかったらしい。売れないと考えたみたいだ。日本の自殺者の数が異常に多いのも実際には生活苦ばかりでなく、鬱病が原因というのが多いみたいだよ。日本では精神的な疾患を恥と見るようで認知度が異常に低い。だから、精神科のレベルは世界的に相当に低いレベルらしいよ。精神病院での入院日数も欧米では10日前後が平均らしいのだが、日本では360日だってさ。まあ、いろいろ考えさせられるよ。読むといい。それにしても、私は皇太子が好きになったね。彼はナイスガイだと思うね。
   

 「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」須田、矢部、前泊の三氏の共著と写真集。書籍情報社刊。1365円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

お客さんのI氏が読んでくれとプレゼントしてくれた本である。感謝している。写真家や著者たちも行くまでは詳しく知らなかったそうである。

私にはどうして沖縄はデモだ、集会だ、何でも反対だ、ばかりやっているのか不思議であった。私は沖縄に行ったことがない。沖縄に行った人は皆きれいなところだと言う。この本で知ったのであるが、ハワイの年間観光客が700万人で、沖縄は600万人なのだそうだ。米軍基地は風光明媚なところにばかりあるから、基地がなくなれば、ハワイをしのぐ観光地になる可能性を秘めているらしい。

それはそれとして、私はこの本を読みながら、あまりにも自分がこの歳になるまで、事実を知らなかったことを恥ずかしいと思ったのである。そして、日本本土で読まされたり、聞かされたりしているマスコミの報道していることが、いかに真実を捻じ曲げて伝えているのかということを知ったのである。だからこそ、事実を知りえなかったのである。衝撃の事実がボロボロ出てくるので実に驚いた。ほとんど証拠のある話なのである。

鳩山元首相が、沖縄の事で大事な話があるとして、外務省と防衛省の上級幹部を二人ずつ呼んで、会合を開いた。そして、そこでの話はまだ、極秘としておくように伝えたのである。ところが、翌日、会合の内容は新聞に暴露された。そう、外務省や防衛省の中にはアメリカのスパイみたいな官僚たちがいるのである。そして、鳩山元首相も細川元首相も、アメリカに外堀を埋められて、退陣に追い込まれたのだそうだ。そんな報道あったっけ?そんな感じはしていたが、まさかのことで、事実なのであった。放映中のNHKドラマの「吉田茂」の頃とさして変わっていない。

沖縄の米軍基地の規模、すごいね。あれじゃ、沖縄人たちが怒るのももっともだし、本土の人たちが、沖縄の人には我慢してもらわないとなんて語るのはやはり許されないね。完全に治外法権だ。最後の結末と言うか、結論と言うのはここでは書かない方がやはり良いだろう。沖縄の実態を知ったことにより、私は日本がまだ本当の意味での独立国でないことを思い知らされた。本土の日本人は全員が読むべき本であると考える。そして、沖縄の事を考えてあげるべきである。遠くに離れてみていて、沖縄の基地問題を語ってはいけない。

しかし、昨日も書いたけど、アメリカも尖閣で中立なんてよく言うよ。中立なんてありえないくらいの基地の規模の大きさだよ。日本の国会議員たち、民主党だね、大人数で小沢氏に引率されて中国詣でを以前やっていたけど、順番が違うよ。国会議員たちは全員で沖縄の米軍基地を観察に行くべきだ。何?議員の数をリストラしていないから、旅費が賄えないって?

   

 「レイテ戦記」 (

 AKI評価:☆☆☆☆☆

大岡昇平氏による有名な反戦文学の頂点にたつ作品である。長編ドキュメンタリーである。8万5千人の日本兵が死んだのであるが、大岡氏はレイテ戦に召集され、捕虜になっている。つまり、実体験にもとづいた書かれた一般兵士のものである。

本はずいぶん昔に読んだ。今回は、テレビドキュメンタリー1987年作品を再度鑑賞した。日本兵は全員玉砕とか自殺を強要されたわけだが、問題は大多数の兵たちは一般の国民だったということである。映像の中で記憶に残っている場面がある。千葉で農業をしている捕虜になった元兵士の言葉である。兵士に全員死を強制した軍の上級幹部たちは皆生きながらえたという彼のつぶやきであった。敗戦後、これら軍のトップたちは隠蔽、自己防衛に終始した執筆や発言をしてきている。最後は人肉まで食らうようになった兵士たちの地獄絵図には、胸をうつ箇所が多い。フィリピン人たちを脅して、敵に回した。彼は最後に、「日本人は、いったい、誰を相手に戦ったのだろう」、という言葉で結んでいる。

これは、日本人のみならず、全世界の人々が読むべき作品である。

   

 「一絃の琴」宮尾登美子著。1985円。講談社。1978年刊の直木賞作品。1999年新刊本。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

知る人ぞ知る作品。最初は何気なく読みだして、女性中心のお話だし、5ページくらいで眠ってしまっていたのだが、2割くらい読んだ辺りから、俄然話の展開に引き込まれていき、主人公が切り替わっていくさまにも驚き、読後は、この小説自体が琴ではないかと思わせる素晴らしい作品であった。

著者の作品はほとんど読んできているが、お馴染みの文体で静かに流れていき、話の流れがテレビのドラマのナレーターを聞きながらすすんでいく感じ。著者は、ご存知、鬼龍院華子の生涯とか天璋院篤姫とか、櫂、序の舞、岩伍覚書など、あらゆる賞を総なめしている土佐の女流作家。この著書を完成させた期間は、なんと17年間。終わってから実話だと知った。心に残り、余韻が漂う素晴らしい小説で是非とも一読をお勧めしたい。なお、NHKドラマや帝劇でいろんな俳優たちが演じてきているようだ。

   

 「永遠の0」百田尚樹著。太田出版。1680円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2006年作品。ブックレビューで418も投稿されているほどの人気作品。五つ星、四つ星は、339、二つ星一つ星37となっていた。一つ星は19も出ているのだが、一つ星をつけるというのは、よほど作者が嫌いか、何らかの偏見があるか、何か悪意があると私は思っている。

論評が極端に分かれているので興味があった。最後に児玉清氏があとがきを書いてあって、えらくほめている。だが、一つ星には、児玉さんも本屋さんもいくらなんでもこんな本を、なんて自分の目がおかしいとも思わない人が書いている。私は、児玉清氏と同意見である。

0というのは零戦の事。特攻も含めて、初戦の頃の事からの零戦のパイロットを中心にした物語展開。もうほとんどのこの手の作品は読んでしまっているので、あまり最近は食指が動かなかったのだが、久しぶりに読み応えのある作品に出合った。若い人たちも、この本ならば、太平洋戦争の全貌が絵に描いたように理解ができるのではないかと思う。是非とも読んでいただきたい。

これが来年、映画になるらしいのだが、私は反対だ。戦記物の映画で優秀なものは少ない。大和も山本五十六も予想通りにたいしたことはなかった。本の方が良すぎるのである。私が、戦争映画で高く評価する作品は3本だけ。西部戦線異状なしUボートトラトラトラである。この作品も映画が小説を凌駕することはできないだろう。

   

 「リアルシンデレラ」姫野カオルコ著。光文社。1785円。2010年の発刊。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

非常に珍しい話の展開を進める小説である。基本的に過去を振り返りつつ、最後はこうなったという話なのであるが、読み終わると何とも言えない余韻が残る。一読を勧めたい。

   

 「天使の相棒ー杉浦忠と長嶋茂雄」ねじめ正一著。集英社。1680円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日本で野球が輝いていた日々。希望と娯楽を与えた野球が輝いていた頃の話。団塊世代以上は皆覚えている少年時代や青年時代の思い出。9番、ピッチャー、すぎうら〜〜〜。4番、サード、ながしま〜〜。というウグイス嬢の声が皆の耳に残っている。街を歩けば、ラジオからはいつも野球中継、飯を食べに入れば、どこでもテレビは野球中継。そんな時代。

   

 「ベラ チャスラフスカ」後藤正治著。文芸春秋。2100円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私から上の世代で、チャスラフスカを知らない人は皆無だと思う。そう、女子体操の世界チャンピョン。東京オリンピック、メキシコオリンピックの金メダリスト。日本で圧倒的人気を得て、日本人とメキシコ人の崇拝の的になった人。

当時、日本男子体操は圧倒的世界一で人々の目は男子にばかりいったのだが、女子については、圧倒的にソ連と東欧がダントツだった。男子金メダリストの山下跳びの松田氏など、私の高校の恩師でもある。

それはそれとして、彼女もメチャクチャに日本びいきであった。何度も訪日している。その彼女の話が半分なのだが、彼女の歩んだ人生の苦難を知り、私は愕然としたのである。そして、今も暗闇にいる。1968年のプラハの春などがあるが、ソ連などがチェコに侵入し、改革派をつぶした。この本を読んでいて、共産主義の怖さ、独裁体制の怖さがよくわかる。そして、今多くの国々で自由が得られたことがどのくらいすごいことなのかを皆知らないといけない。

当時のソ連を中心とした選手たちに後藤氏はインタビューを重ねる。そう、あのコマネチも出てくる。私は読み進んでいくうちに後藤氏の取材能力、洞察力のすごさに圧倒されるのである。彼の著書、「遠いリング」などを読んでいるので、彼のスポーツ界のドキュメンタリーが優秀なものであることは知っていたが、今回改めて著者に敬意を払いたい。皆様には、是非とも読んでもらいたいと思うのである。

   

 「柳橋物語」山本周五郎。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

昔読んだ本の再読だ。テレビでおせんちゃん役をやったのが私が好きな女優、若村麻由美。恋愛物の小説で、女性も納得する小説と言うのは珍しいのだ。女性からの評価が非常に高い。最後の10行が全て。最後の10行で涙が出そうになるというすごい作品。付録に佳作2本もついているがそれも面白い。山本周五郎は私が非常に尊敬する作家であるが、どれを読んでも、いつも感動してしまうので困ったものだ。ってわけだが、素晴らしい作品なので読んでいない人はもったいないと言えよう。心に感情の襞がない人には向いていないけど。

   

 一刀斉夢録 浅田次郎著 文芸春秋 上下 1680円各 2011年刊

 AKI評価:☆☆☆☆☆

友達から贈られたので読んだ。私が新選組に昔から 凝っているからである。一刀斉とはよく題名をつけたもので、 斉藤一をひっくり返したのである。新選組三番隊長斉藤一の 話である。浅田説によると、彼が竜馬暗殺の下手人となっている。 左利きの居合の達人。左利きのため竜馬は簡単にやられたという 話である。ただ、その顛末は彼の別の本で読んでいる。 斉藤一が軍の若手将校に語っていく物語である。実にいい。 新選組が好きな人にはたまらない小説だろう。 明治維新以降、大正まで生き残った斉藤の話は、あの時代のわかりにくさを 説明してくれたようなものである。永倉新八も生き残って 彼は何か書を残している。たしか読んだことがある。 斉藤が語る近藤や土方や沖田の話は、多くの人が抱いている イメージを変えるものだが、この話のイメージのほうが私には しっくりくる。私は土方歳三が好きなのだが、この本の中での 描写でやっぱり好きでよかったと思ったのである。新撰組は 長い間悪者扱いで映画でもろくに扱われなかったが、司馬遼太郎の 燃えよ剣あたりから扱いが良くなり、浅田次郎で決定的な 新選組のイメージが定着したと言えよう。 実に面白い本であった。読むことをぜひ勧めたい。

   

 「朗読者」ベルンハルトシュリンク著。松永美穂訳。1890円。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

映画で先に見ていた。「愛を読む人」というタイトルで高評価だった作品だ。あの映画の評価は私も高くつけている。本の方は、書評でも高い評価でアメリカでは200万部も売れたというベストセラーにもなっている。1995年の作品。

翻訳者は2度読むように勧めている。ナチ、ユダヤ抹殺とかそういうのが背景にあるのだが、読み終わった印象は、重い、であった。アマゾンの評価が全てを表している。☆5個から☆1個まで分かれている。あまりに深く、重い話なので、本をあまり読まない人は理解が難しいかもしれない。読書家はこの小説に流れている繊細な何かを感じ取れると思う。翻訳小説はむずかしいけどね、評価が。まあ、私は映画を先に見ているからね。本を読みながら映画に出てこない場面が出てくると、そうかあ、そうだったのかあ、と思うことが多かった。何だか知らないけど心に残ってしまった作品である。

   

 「命もいらず、名もいらず」山本兼一著。NHK出版。1995円。上下。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山岡鉄舟の話。しかし、私は知らなかったなあ。教科書か読み物程度の知識しか鉄舟の事を知らなかった。参ったね。最初はチャンバラの小説程度に思って読んでいったのだが、幕臣でありながら、明治天皇から一番の忠臣とされたようで、下巻の明治編になると俄然凄みを帯びてくる。だが、上巻の話があるから、下巻が光るんだよね。お勧め。肩は凝らずに読めるからね。最後の武士とはよく言ったものである。

   

  「楡家の人びと」北杜夫著。第一部第二部第三部。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

50年前の本。毎日出版文化賞。彼の著作の多くを読んでいるのだが、この長編小説はまだ読んでいなかった。もう単行本はない。文庫本は、北杜夫死後、追悼記念として出されたもの。

私はすごく彼を尊敬している。精神病院の一族の物語で、自分の斎藤家をある程度モデルとしている。第一部から第三部まであるのだが、読後1週間 になるが、不思議と心に残っている本である。第一部、第二部は、当然と言えば当然なのだが、第三部の最終章に全てがつながっている。そう、第三部が全て で、一部二部はその前座という感じ。主人公が結局全員主人公だったんだな、という印象。不思議と心に残ってしまう作品。もの悲しさが何とも言えない。小説 の好きな人には是非ともお勧めしたい。

   

 「旅する力ー深夜特急ノート」沢木耕太郎著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

新潮社。1680円。もうすぐ1760円になりますです。2008年の作品。沢木ファン待望の本だったと思う。彼の「一瞬の夏」を読んでから私はファンになり、親友がカシアス内藤の友達だったので紹介してもらって食事したことを思い出す。深夜特急1,2,3は、優れた本で若者たちに旅行ブームを引き起こした。彼は26歳で旅に出なさいと書いているが、その通りで、20代の人必見の本だね。旅をした人としてない人の差は歴然。まだ読んだことない人は、この本を読んでから深夜特急を読んでもいい。非常に良い本で、☆☆☆☆☆である。

   

 「新宿鮫、絆回廊」大沢在昌著。光文社。1680 円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

新宿鮫は昔よく読んだのだが、西村京太郎と同じで、あまりにも数が出るので、読んだのかどうか、同じものなのかどうか、などと迷って買わなくなって久 しい。本屋でパラパラと読んで買った。私は昔から本屋でのパラパラで面白い本を当てる確率が高いのである。暴対法で衰えつつある暴力団とは一線を画した別 な暴力グループがこの本に出てきているように実在しているようだ。法律なんて傷のつぎはぎみたいなものだから、はみだしていろいろ出現するよ。まあ、やく ざを死に目に合わせるすごいグループ出現ということで、この本の面白さは倍増した。あまりここに書くこともない。面白いもの。気楽にお勧め。
   

 「父 山本五十六」家族で囲んだ最後の夕餉。山本義正著。恒文社。1365円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山本元帥の本はもう何冊も読んできている。この本は、元帥の息子の書いたものだ。今までの読んできたものの中で最高に良い本であった。是非とも読んでいただきたい。私は、山本五十六元帥を尊敬してやまないのであるが、それが正しかったことがよく実感できた。息子だから、プライベートな部分に相当に入るのだが、私が想像していたような人物であった。本全体に流れているほのぼのとしたものを感じる。この義正氏の執筆が良いのだと思う。後半の最後の思い出の話など、胸が熱くなったのである。

私が20歳のころ、カッパブックスでベストセラーだったそうで、それの改訂版だ。留学中だったから道理で私が知らなかったはずだ。後年、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦の話など、いろいろ批判が出るのだが、批判はいともたやすいということを深く感じた。後からなら何でも言えるよというところだ。彼は欧米に合計7年半も駐在していた。ハーバードでも学んでいる。そして、アメリカの国力を高く評価し、この国と戦っても日本は滅びると本当に考えていたようだ。そのため、英米のスパイなどと疑われて、海軍次官の頃は、テロ暗殺に狙われているし、マスコミも独伊に傾いていたため、マスコミだけでなく、世間からも批判されていた。遺書も何通も書いていて覚悟はしていたようだ。だが、正しいことを述べているのだから、殺されるはずはないという信念も持っていたようである。

その彼が、連合艦隊司令長官として対米戦の先頭にたたなければならなかったことを天命と考えていたようである。彼の子煩悩と、家族一族思いの話は、ほのぼのとさせる。私は、日本が生んだ最高の軍人に大いなる敬意を払う。皆様にも是非とも読んでいただき、感動をともにしたい。12月半ばに映画山本五十六が上映されるが、見に行こうか行くまいか迷っている。戦場の山本五十六の話は、ほとんどわかっているからだ。この本はそういったものとは一線を画している。

   

 「昭和質屋の客」佐江衆一著。新潮社。1575円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

何かの書評に書かれていて買っておいたもの。普通に読んでいた。読み終わって、これは秀逸の反戦物語だと思った。著者は、この小説は、戦争を少しは体験した昭和戦前生まれの私が、死ぬまでに書かねばと考えていた作品ですと書いている。最後の章は、戦前の生活の一こまなのであるが、普通、平凡な人々の生活が、明日も明るいと考えていたのに、たったの数年後の悲劇が待っている、という事が心に響く。一読の要あり。

   

 北野武による「たけし」早川書房。1680円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

フランス人がインタビューを繰り返しながら書いたもので、今までのタケシの本よりも面白い。表紙はあまり良くない。映画などの話は非常に興味深く、出ている作品は全て見てみたいと思った。彼の絵が出ているけど、素人目ながらなかなかいいね。気にいる人がたくさんいるのがよくわかる。後半の1割程度は不要だったと思う。どちらにせよ、タケシファンには必読だろう。彼は自分を批判する連中がいるのはわかっているが、さして気にしていないようだ。私は彼がツービートでデビューした時からのファンだけど、あれよあれよの人生で、あんな生き方もあるのだと驚いたね。

   

 「達人に訊け」ビートたけし。新潮社。1260円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の初期のころから彼の本は読んできている。彼が頭脳明晰でよく勉強しているのは本を読んできていればよくわかる。だから彼が世界の北野になっても別に驚かなかったよ。いろんな達人が登場するのだが、虫、宇宙、麻雀、字幕、数学、日本語、寄生虫、香り、競馬、金型プレスという達人たちが登場し、インタビュー形式になっている。すごく面白く、読み応えがある。是非とも一読し、達人たちの思考を知ると良いだろう。お勧めの著である。

   

 「全思考」 北野武

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりのタケシの本。面白かった。毒舌全開で変わらず。彼のテレビ番組はあまり見ないのでもっぱら彼の著作の方に最近は目が行く。彼の本音が出ていていい感じだ。彼は本音の男だからね。欧州では彼の人気は高い。ファン倶楽部まであるみたいだ。彼がコメディアンだというと誰も信じないんだそうだ。それで日本に来るファンに自分の番組につれていくんだって。それであのアホ的な格好を見せるんだそうだ。欧州のファンたちは幻滅だあと言って嘆くんだそうだ。タケシはわざとやっているらしい。賞を取るような映画監督だからといって文化人みたいに扱われるのが嫌なんだそうだ。

以前ロンドンに行った時に迎えにきたイギリス映画協会会長が高級車故障でバンにしたらしいのだが、えらく怯えていたんだそうだ。数年後わかったのは、このイギリス人はタケシが日本のマフィアだと思っていたらしいんだよ。前科一犯で出版社襲撃が出ているし、BROTHERなんか見ればそう思われても仕方なかったかもなんて書いてある。ホリエモンの事書いてあったな。金で買えないものはないと言ったことを批判する人たちがいるけど、それは違うって。ホリエモンにとっては金で買えないものはないというのは真理なんだそうだ。問題は本当の友情も全て含めて、金で買えないものを見たことないんだから、しょうがない。金で買えないものはないという奴に、それが間違いだと言っても始まらない。こいつは頭が悪いんだなあと思うしかないってさ。どこか他の人のコメントでは、東大を初めとして大学で教養を教えないからそんなこという奴が出て来るんだとか書いてあったね。まあ、いろいろ書きたいけど、本読んだらいいよ。面白い。そこの若いの!君こそ読みたまえ。おじさんたちは健在である。
   

 「三陸海岸 大津波」吉村昭著。文春文庫。2004年。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

静かにたくさん売れている本ということで紹介されていたので読んでみた。全部寄付になるらしいね。著者は5年前に亡くなっている。明治29年、昭和8年、昭和35年の大津波を扱っている。記録文学だね。今回再び襲われたわけだが、過去の教訓がいかされたのか?あってもそれをさらに上まわるものだったのか私にはわからないが、自然と人間の営み、そういったものを考えさせられる。今回の大津波を思い浮かべながら読むと良いだろう。あまり時間がかからずに読めるから、一読を勧める。

   

 「小暮写真館」宮部みゆき著。1995円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の作品は大外れがないので安心して読める。えらく分厚い本で辞書みたいである。電車に持ち込むのは面倒だね。あまりも厚すぎるので持ちやすかったけど。なんとも不思議な感じの流れる本であった。最後の方が感動的な結末ってとこかな。途中から次第にひきこまれていくね。

   

 「サムライスピリット」神田ロム(漢字が出ない)著。幻冬舎。1365円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

あまり期待しないで読み始めた。おーまいごっど的に良い本であった。若い連中や人生や仕事に悩んでいる人は是非とも読むべきだろう。私は非常に心打たれたよ。この男はたいしたもんだ。こういうやつがいるなら、日本もまだ大丈夫だろう。

   

 「憚りながら」元後藤組組長。後藤忠政。宝島。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

すげーーーー面白かった。実名の出ている暴露本的。いろいろ知らない世界の事を知って面白かった。この人、人物的に大きいね。皆、読むといいよ。知らない世界だ。なお、印税は全部寄付するんだそうだ。昔、やくざ、今坊さんだもんね。

   

 「沈まぬ太陽」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ご存知山崎豊子女史の有名作品であるが、先日映画を借りてみた。やはり、小説にはかなわない。いくら渡辺謙が頑張っても文字にはかなわないね。仕方なし。読んだ時のショック度と見たときのショック度が違いすぎる。やはり、小説を読むべきだろうなあ。嫌なら映画でもいいけど。あれ見て思ったよ。日航があのザマになったのもむべなるかなってね。いろんな奴に食い放題にされたなれの果てって感じで、真面目にあそこで働いてきた人たちをかわいそうだと思う。

   

 「脱藩大名の戊辰戦争」中村彰彦著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

中公新書。700円くらい。上総請西藩主、林忠嵩の生涯。うーむ。この藩は、木更津辺りみたいだ、小藩である。なんとも哀れを誘う話で、かわいそうになってしまったのだが、94歳、昭和16年に永眠した最後の大名となっている。徳川家崩壊の流れで、紀州、尾張、彦根三藩の徳川家への背反行為を非難して最後まで戦った。つまり、徳川家再興のために決起したただ一人の脱藩大名。

このために彼は名誉回復、林家再興におそろしく長い期間苦労を重ねる。今でもあの地域では林様として慕われているのだそうだ。結束が強いのだろう。新聞記者に、現在において当時のことを思うと如何な感想が浮かびますかと聞かれて、「琴となり下駄となるのも桐の運」と答えている。健康法と聞かれて、「浮世は一夢の如し」と答えている。一人の大名の数奇の人生として、たんたんとして読むことを勧めたい。

   

 「奇跡のラーメン店はどのように誕生したか」永福町、大勝軒。草村賢治著。旭屋出版。1575円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

80歳の店主は今でも店に立つ。友人がここのラーメンを時々プレゼントしてくれていたので馴染みはあった。昔、店に行ったのだが、行列で諦めたことがある。

私がガキの頃に開店している。店と土産で1000杯を一日で売る。1050円もするのだが、2杯分らしい。どこでもラーメンと餃子とライスということになるが、店主はラーメンで腹いっぱいになってほしいのだと。この店主の生きざまをみると、努力、精進、発想、勤労、サービス、プロ、そういったものを全て感じ取れる。店を出したい人だけでなく、経営者皆が読むといいと思う。全ての原点があると思う。池袋の同名店とは違うようだ。https://eifuku-taishouken.com/

地元の柿生のいつもいくラーメン屋のおやじにこの本を持って行ってやろう。それにしても黒川にある大勝軒は同名にも関わらず、最低の味だが、いったいあのラーメン屋はなんだ?うちの若いのは、一口食べて、通販の尾道ラーメンのほうがうまいとつぶやいたのである。まずいラーメンは許されない。

   

 「捕虜」学研文庫1300円。パウル・カレル著。畔上司訳。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初の訳本が出たのが1986年。これは2007年出版の文庫本で650ページもある。できたらハードカバーの方を探したほうが良いと思う。訳が良いので読みやすい。

まず、私は戦争の類の書物をたくさん読んできているが、欧州戦線のことには全く興味がなく、知らなかったことが多い。そして、今回、その無知を大いに感ずることになった。これほどの反戦記があるのだろうか?しかも、捕虜と言う視点で戦争を語るのはすごい手法で、しかも事実に即して描かれている。

日本は英米相手の戦争で実に幸運であったと思う。戦後、ドイツ人捕虜は何と1100万人である。何百万人も死んでいる。拷問、強制労働、飢餓、大脱走、復讐、なんでもござれである。誰も書かなかった第二次大戦ドイツ人虜囚の末路。我々が学んできたのはいかにドイツがユダヤを迫害したか、ヒトラーがいかに残忍か、の話ばかりであった。だが、それを上回る地獄をドイツ人捕虜たちは経験した。しかも、私が生まれた1949年にやっと大多数の捕虜が解放された。最後の捕虜帰還は1956年である。

一番良い待遇を受けた捕虜はイギリスにつかまった連中、次がアメリカ。イギリスほどジュネーブ協定をきちんと守った国はない。なるほど、英米が日本軍の捕虜処遇に対して厳しく糾弾したのもわからないではない。ところが、ユーゴスラビア辺りで捕まったドイツ人は地獄絵図を見せられた。何がパルチザンだ、チトーは英雄だと思う。教科書にはいいことしか書かれていなかった。だが、あれほどの残虐集団はなく、なるほど、クロアチアだセルビアだといまだに争いが続いているのもよく理解ができる。この箇所を読むのが一番しんどかった。

中立国であったスゥエーデンなど逃げてきたドイツ兵たちをロシアを恐れてロシアに引き渡した。ひどいのはロシア赤軍につかまった捕虜たちである。ところが、やっと日本兵のシベリア抑留などの話が理解できたのだ。ロシアは貧しく、国民全部が飢えているような状況だったのである。1944年地点でドイツに捕まったロシア人捕虜も500万人でそのうち200万人が死亡、100万人が行方不明という有様。ドイツも実は困ったのである。飢餓といってもあまりの大量の捕虜の数に対応できなかったのである。だから、どっちもどっちとも言える。ロシアに捕まったドイツ兵たちも辛酸をなめさせられ、多数が死んでいる。

西独政府捕虜史委員会の報告をもとに書かれている。この本のことを書きだしたらとても収まらない。私は頭を殴られたような心境である。日本男児は全員この本を読むべきであろう。

   

 「なぜ、君は絶望と闘えたのかー本村洋の3300日」 新潮社。1365円。門田隆将著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、ご存じの例の光市母子殺害事件。書評で評価が高かったので読んだ。買ってからしばらく放置していた。今は裁判員制度のこともあるし、司法のことを詳しく知らないとならないような時代になった。ドラエモンポケット弁護団、正義を貫いた検察。いろいろわかる。それにしても、彼はすごいね。たいしたものだ。皆が読むべき本だろう。
   

 『駅路』

 AKI評価:☆☆☆☆☆

『駅路』は、定年やターニング・ポイントなどの時に訪れる人生の“駅路”をテーマにしたミステリーの名作。人はなぜ生きるのか。そしてその人生の終着点に近づいた時果たして何を思うのか。物語の終盤でさりげなく語られる主人公の言葉は、それらの問いかけに一つの答えを与えてくれる。
   

 「渥美清の肘突きー人生ほど素敵なショーはない」福田陽一郎著。岩波書店。2500円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初の1−2ページ読んだだけで、良い本にめぐり合ったと思った。文章がきれいで頭にすっと入ってくる。題名はミスだと思う。人生ほどが主題で渥美清のほうを副題にすべきだったのではないかと思った。この福田という人はその世界では有名な人らしいのだが、私はあまり知らなかった。彼が手がけたものを知ってわかった次第。どういう人かというと、一言で言うと、三谷幸喜の大先輩っていうところ。50歳以上の人は読むといい。読むべきとは書かない。読んだら楽しく、思い出にひたれるよ、って感じ。値段が高いが、払ってもおつりが来るくらい良い本だった。渥美清のことも時々触れているんだけど、ますます寅さんが好きになるね。お勧めの本だ。
   

 父子鷹(上・下) 子母沢 寛 講談社文庫

 AKI評価:☆☆☆☆☆

篤姫の人気が高いが、勝海舟が最近よく出てくる。私は勝海舟を非常に尊敬しているのであるが、ガキの頃、テレビで父子鷹をやっていたんだ。すごく良かったので、本も読んだ。ものすごく感銘を受けた本で是非とも読んでもらいたい。勝海舟があのようになったのは父親の慈しみのある教育のおかげなんだ。
   

 三国志:吉川英治著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

レッドクリフ:評判が高いので見に行った。あの映画、女性客も多かったが、女性向きではないなあ。男性は皆楽しめると思う。CGをあまり使ってなくて、人民軍も出ていると聞いた。監督は黒澤監督の影響を強く受けており、馬を使った戦闘場面では七人の侍を大いに参考にしたようである。赤壁の戦いは、三国志にも出てくるよね。張飛と関羽と孔明ばかり印象が強くてよく覚えてないなあ。三国志をまた読むかね。吉川英治の書いた本が読みやすいよ。
   

 決断力:羽生善冶。角川。686円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

羽生のイメージは、私にとってはテレビのドキュメンタリーによるものが大である。だから、これを読み始めて、どうも最初はしっくりこなかった。ところが後半からはすごく言ってる事に迫力が増してくる。彼が引用しているエジソンの言葉がある。「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」この言葉が全てを物語っている。相場にかかわる人には一読を勧めたい。読み方としては、最初はチンタラと読破する。次は、赤鉛筆を競馬のおじんのように持って、大事な箇所を赤線を引いていく。これがお勧めである。羽生君も言っておるで、近道はないってよ。持続こそ力なりだとよ。
   

 「おそろし」宮部みゆき:1785円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

三島屋変調百物語事始。旅に出る時に本屋にちょっと寄って目にした本。違う世界の本を読みたかったし、宮部みゆきなら失敗はないだろうと思ったので買った。結構、怖い場面もあったりして、分厚い本だったが、比較的短時間で読んでしまった。要するに面白かったということで、さすが宮部みゆきって感じ。高いから文庫本になってから読んでもいいと思う。
   

 「将軍家御典医の娘が語る江戸の面影」 安藤優一郎ー平凡社新書735円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ちょうど篤姫をやっている時代背景と同じなので読者には入りやすいのではないか?幕臣たちが維新後どういう運命をたどるようになったのかがよくわかる本。昭和10年ごろに、今泉みねが80歳を越えて語った「名ごりの夢」という聞き書きの本が元になっている。静かにしみいるように当時の様子が頭に描ける優良な作品である。一読を勧めたい。
   

 市場の神々

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私の本。うちの若いものが言うには、読む人間のレベルによってこの文章から受ける印象は違うらしい。為替を始めたばかりの頃に1度。そして半年経ってから1度。そして1年経ってから・・・そうやって何度も読み返しているようだ。是非試してもらいたい。
   

 伝説のディーラー(8割の男・改定)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本の主役”北原”のモデルとなった、当社顧問の中山氏の推薦の文を紹介しよう。
これまで、わたしたちディーラーの生態を描ききった小説はなかった。おそらく、これからも無理なのかもしれない、と思い込んでいた。そこに、この小説があらわれた。わたしも、この作者から取材を受けた一人だが、この小説は、じつにみごとにわたしたちの世界を描ききっている。ディーラーの勝負師としての緊張感、息遣いまで、生々しく伝えている。プロのわたしが読んで、一箇所のまちがいもなかった。しかも、ディーリングの歴史、日米関係もわかりやすく書いてある。為替相場の入門書でもある。また、為替相場だけでなく、あらゆる勝負に共通するノウハウ、教訓、若い哲学もこめられている。わたしは、ついに滅びていく主人公を他山の石とし、明日からも戦いをつづけていくつもりである。
   

 「日本の選択」ビルエモットとピータータスカの対談集

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、エモットは例の「日は昇る」、「日はまた沈む」を書いた有名な人だ。最初のうちは、タスカがしゃべりすぎるせいか、彼の箇所が多すぎて、どっちが何を語っているのかわからなくなったりしたが、基本的な流れは私の考えと一致していたので、ドンドン読み進んだ。先週は、日経の書評欄で取り上げられていて☆5個だった。私も☆5個の評価である。皆さんにも是非一読してもらいたい
   

 「敵兵を救助せよ」恵隆之介、草思社。1700円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、最近つぶれてしまった良心的な本をたくさん出していた出版社だ。フジテレビーアンビリバボーで紹介。感動の秘話。これが真の武士道だ。1942年3月、スラバヤ沖海戦のあと、武士道を発揮、危険をおかして英兵422名を救出した工藤少佐の感動の物語。となっている。工藤少佐は眠そうな顔をした人で最初のほうはあまり面白くなかった。ところが四分の一程度読んだ辺りから俄然面白くなった。駆逐艦雷の艦長だった人だが、180センチ以上ある長身で、眠そうな顔は、実はきわめて温厚な人柄のためだと知った。

当時、敵兵の救出には潜水艦の攻撃などがあり、下手をすると自分たちの船もやられるというくらい危険な事だったようだ。救助した甲板上で、工藤艦長は、「諸君は勇敢に戦われた。いまや諸君は、日本海軍の名誉あるゲストである。私は英国海軍を尊敬している。ところが、今回、貴国政府が日本に戦争を仕掛けたことは愚かなことである」と英語でスピーチをしている。海軍兵学校の教育、この駆逐艦の救助劇、その後の駆逐艦雷の運命というような流れになっている。

戦後、この話を出版するような話もあったらしいのだが、当時は軍隊や兵隊に対する蔑視はひどく、出せないうちに流れてしまっていたようだ。この工藤少佐は恐ろしく権力とか、私的なことには無縁の人のようで、戦後も海上自衛隊へのカムバックの話も断り、大企業への就職も断ってひっそりと地元山形から埼玉に移って暮らしていたようだ。どうして出版になったかというと、英海軍からなのだ。当時救助された人たちは、皆工藤少佐の人柄を尊敬しており、恩義を忘れずに、戦後、ずっと彼のことを探していたらしい。ところが、海上自衛隊でも見つけられなかったようだ。それがひょんなことから、わかったのだが、そのときにはすでに工藤少佐は亡くなっていた。

私は、この本で初めて英海軍の事を知った。米海軍とは大違いで、さすがに伝統の海軍であり、私は英海軍に大変に好意を持つようになった。また、工藤少佐の人柄を知れば知るほど、まことに立派な海軍軍人であり、私は今までいろいろな軍人の本を読んできているが、一番尊敬できる人かも知れないと思うのである。ぜひとも一読し、わが国にもこういった人物がいたということを知り、日本民族に誇りを持つべきであろう。
   

 重臣たちの昭和史

 AKIの評価:☆☆☆☆☆

アキの戦争シリーズ
   

 歴史街道

 AKI評価:☆☆☆☆☆

歴史街道という雑誌は面白そうだね。まだ買ったことがないのだが、新聞のCMで見かける。1月号は、あの最強とうたわれた零戦パイロットの坂井三郎氏の話だ。以下のような説明になっている。
太平洋戦争時の日本の傑作戦闘機・零式艦上戦闘機。その零戦を愛機とし、日中戦争から8月17日の最後の空戦までを戦い抜いた撃墜王が、坂井三郎です。彼の操縦技術、64機という通算撃墜数もさることながら、特筆すべき点は、戦いを生き抜いたことでしょう。絶体絶命の危地に何度も陥りながらもそれを突破できたのは「不撓不屈」、すなわち最後まで絶対に諦めない彼の生き方でした。その気迫を現代人に問います。https://digimaga.ocn.ne.jp/magazine/124003.html ここで立ち読みを部分的にできるようだ。彼の本は、昔からもう5冊以上読んでいる。大空のサムライが最後だったかな。今でも書棚に何冊か置いてある。生き残った数少ないエースパイロットの話だから、すごく面白い。右目の視力を失い戦線離脱となった。

坂井 三郎(さかい さぶろう)大正5年(1916年)8月26日 − 平成12年(2000年)9月22日)は、大日本帝国海軍の戦闘機搭乗員(パイロット)。佐賀県佐賀郡西与賀村(現在の佐賀市)出身。太平洋戦争終戦時は海軍少尉、最終階級は海軍中尉。太平洋戦争時における日本のエース・パイロットとして知られる。戦後に海軍時代の経験を綴った著書「大空のサムライ」は世界的ベストセラー。

このような紹介もあるね。代表作となる戦記『大空のサムライ』は各国語に訳され、世界的ベストセラーとなった。因みにイラク空軍でも、この作品をパイロットの必携書として義務付けていた。晩年、『朝まで生テレビ』に坂井が出演した際、戦争の是非や戦争への構えかた等についての彼の発言に対し、周囲に陣取った反戦系の論客は何一つ反論できなかった。実戦を体験した者のみが持つ言葉の凄みが彼らを圧倒した。また現在の若者への苦言を期待された質問には、「自分の時代にも若いやつは駄目だと言われ続けた」とかわすと、スタジオ内で観覧していた若者から拍手が起きた。

飛行する敵国機は軍民・武装の有無を問わず撃墜する命令が出ていた。容易に撃墜可能であったが、坂井はこの機に敵の重要人物が乗っているのではないかと考え、生け捕りにしようと味方基地へ誘導するために輸送機の横に並んだ。この時、坂井は輸送機の窓に震え慄く母娘と思われる乗客たちが見えることに気づいた。これを見て「逃がそう」と思った坂井は手を振ってその場を離れ、帰投後上官には「雲中に見失う」と報告した。命令通りに撃墜せずに逃がしたことは恥ずべきことと感じていた坂井は、戦後の著作にもこのことを記述しなかったが、年を重ねるに従って考え方が変わり、終戦から50年近く経った頃の講演会で初めてこのことを明かした。なお、これと同じ頃、当時機内から坂井機を見ていたオランダ人の元従軍看護婦が、「あのパイロットに会いたい」と赤十字等の団体を通じて照会したところ、当該パイロットが有名な坂井三郎であることを知り、非常に驚いたようである。2人は再会し、互いの無事を喜び合った。

彼は亡くなっているんだね。まだ存命かと思っていた。なんで今回、彼を取り上げたかというと、イージス艦の情報漏えいの話で、あまりに自衛隊の士気がお粗末なので頭にきたのである。逮捕されたあいつは、鞭打ち千回の罰だよ。なるほど自衛隊が軍隊ではないのだと実感させられた。米軍が呆れて怒るのも無理ないよ。国防予算3割カットすべし。

   

 「みんな、野球が好きだった」小田豊二&根来広光著。ホーム社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2年前に刊行された本だ。これを読んで、今の50歳以上でノスタルジーに浸れない奴はおかしいと思わせる本である。

根来と言えば日本一の大投手金田。6大学のヒーロー長島が巨人に入団して、金田との初対決をするのだが、その時のエピソードから始まっている。金田は根来と飯を食いながら、「いいか、ゴロ、よう見ておけよ。長島がどんなにすごいと言ったって、所詮アマから来たばかりのルーキーや。こっちはプロで何年もメシを食ってる。プロの力がどんなものか、明日、この俺が長島に教えてやるから。俺は絶対にあいつに打たせない。ゴロ、いいな、よう、その目に焼き付けておけよ。」と語る。金田のすごさは、この勝負に4打席4三振に長島を押さえ込んだ事だ。金田の記録はいまだに破られていないのが多い。400勝投手。防御率2.34.365完投。4490奪三振。64回無失点記録。14年連続20勝以上。完全試合。根来は、この本の中で、その後の長島の立ち直りをみて只者ではないといたく感銘を受けている。

この本にはデータもたくさん出ているんだよな。昭和42年のベストナインをちなみに書いてみよう。セリーグ:小川健太郎(中日)森(巨人)王、高木守道(中日)長島、一枝(中日)、江藤慎一(中日)、中(中日)、山本一(広島)パリーグ:足立(阪急)、野村(南海)、大杉(東映)、ブレイザー(南海)、森本(阪急)、大下(東映)、張本(東映)、土井(近鉄)、長池(阪急)。まあこんな具合で懐かしい名前が年代別に全部掲載されている。野球の好きな人にはたまらない本だろう。なつかしい写真もたくさん出ている。
   

 「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか」島村英紀著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初はチンタラと、後半になると凄みを増してくる本。国民必読の著だと思える。我々はいつ誰でも国家権力にふりまわされる存在になるかわからない。最初の冒頭から事件つくりについて書かれている。検察は、このやろう、と思った奴は必ず捕まえるのだそうだ。まず、マスコミにリークする、マスコミは検察からの情報が途絶えるのが怖いから従う。マスコミはストーリーを作るのが得意。そして、世間的に悪者に仕立てる。そこで社会的抹殺となる。悪者にしてから白馬の騎士として検察が登場する。

国家の意思に背いた者には制裁という構図だ。検察とはテレビドラマの検察官シリーズとは大違いの連中である。これほど奢った組織が存在するのかと慄然とする。中には良い検事もいるわけだから、あまり全員一緒というようには考えたくないが。だが、この法治国家でこのようなことが行われているとは驚きである。そして、我々の誰もがこの大学教授のようにされるかわからないという事を知っておいたほうが良い。いくら自分が正しいと考えることでも、彼らの考える正しい事とは異なるのである。やはり、一読すべきだろう。
   

 滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか(立花隆)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この日経の本高いなあ。2310円もする。立花氏は私が一目置く人である。そう、よくNHKに出てくるよね。おばさん的顔の人。彼の本は、臨死体験、宇宙からの帰還、を読んだ事があって、それ以来のファンだね。ドキュメンタリー番組での解説も気に入っている。いやあ、この本、面白い。まだ途中なんだけどね。ホリエモンの件でもリーマンの儲け独壇場とか、闇の世界の話とか興味津々。若い人読むといいよ。年配者は考えが固まっている事が多いので柔軟性が必要だ。
   

 シドニーシェルダン

 AKI評価:☆☆☆☆☆

シドニーシェルダン死んじゃったね。89歳だったから結構小説は遅いデビューだったようだ。ゲームの達人にしても真夜中は別の顔血族神の吹かす風明け方の夢星の輝き遺産私は別人天使の自立明日時間の砂陰謀の日女医、これ全て読んだと思う。どれも全て面白かった。訳もうまかったと思うね。この人は尊敬するよ、あれだけ面白いものを書けるんだからね。読んでない人も是非読んだらいい。古本屋にたくさんあると思うよ。問題は読み出すと夜中も眠れなくなってしまうことだ。合掌。
   

 黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

 AKI評価:☆☆☆☆☆

うーーーむ。なかなかの名著だったぞなもし。最初はあまり読んでいてもそれほど面白くなかったのだが、ページが進むにつれ読み応えが出てくる本だ。日米の映画文化の違いというよりも、日米の文化比較論と言ったほうが良さそうだ。黒澤監督がどうしてトラトラトラの監督から解任されたのかという観点から、日米の契約社会の違い、情報の違い、組織の違いなどが触れられている。2500円とえらく高い本なのだが、図書館で借りても良いと思う。ってなわけで久しぶりに読み応えのある本に出会った。
   

 「竜馬が行く 1-8」 (司馬遼太郎)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

坂本竜馬:何だか昔から有名だったと思ったのだが、どうも違うようだ。何でも日本海海戦に連合艦隊が出航した日、明治天皇の奥さんが夢を見たんだそうだ。坂本竜馬が自分が創建した日本海軍を護るといって、あらわれた。宮内省は、伏見の寺田屋の主人が大阪にいることをつきとめ、宿にあった竜馬の手紙をゲットして、上奏したそうだ。坂本竜馬が有名になったのはこの時からなんだって。国民的英雄になったのは、司馬遼太郎の「竜馬が行く」が発表されてからなんだそうである。竜馬が行く、あの本、いいよねえ。男子であの本読んでいない人いるのかね??
   

 「よく見る夢」 (上) (下)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

例のシドニーシェルダン。彼の小説は面白く一気に読み終わらせてくれる。ダラダラと読み続けないとならない宮部文学とはまた一味違う。シェルダンの本は面白い代わりにあまり頭には残らない事が多い。だがこの小説は頭にこびりついてしまった。多重人格、言葉を変えると悪霊、って世界の話だけど、何がすごいって、最後の1ページがさりげなく大逆転だからだ。いやあ、このシドニーシェルダンと言う人はすごいね。脱帽だ。

書籍コーナー        映画コーナー

   

 ベスト&ブライテスト (上) (中) (下)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

良い本だよ。今アメリカがイラクでやっていることを比較して読むとこの昔のベトナム戦争当時の米政府の中枢を批判したノンフィクションはすごく面白いかも知れないね。誰が書いたかわからないけどネットに出ていたものを下に掲載。著作権違反?だって、誰が書いたのかわからんのだよ、検索したら出てきたものだし。どうも書評みたいだなあ。

アメリカの著名なジャーナリストであるD・ハルバースタムが記したベトナム戦争に関する良質なノン・フィクション。『輝ける人々Best&Brightest)がなぜベトナムの泥沼に嵌っていったか』を膨大なインタビュー取材を元に、克明に描き出した作品です。アメリカという国の政治というものがどういった人々によって担われているのか、どういった価値観の中で動いているのか。時代は変わっても変わらずに残っているアメリカの姿がここにはあるように思います。ここに語られるのは『間違った人々』の物語でもあるわけですが、その間違いを断罪しようとするのでは無く、ただ事実を積み重ねることで何かを語ろうとする著者の視点の置き方が、非常に好ましく、また他人に対して口を開く際の一番フェアな立ち位置なのだと思っています。(ジャーナリズムの仕事として最上のものと言って良いでしょう。)現在入手できるのは、3分冊で出版されている朝日文庫版ですが、できれば、倒産してしまったサイマル出版会版を図書館とかで読んで頂きたいなと。本文は朝日文庫版と変わりませんが、序文として「娘への手紙」という短い一文があり、これも一読する価値があると思いますので。D・ハルバースタムは他にもたくさん著書がありますが、どれも素晴しく、尊敬するジャーナリストの一人ですね。

私も全く同感なのである。絶対にお勧めだね。惜しい人が亡くなったね。交通事故とはね。
   

 遺したい日本の風景ー駅舎(光村推古書院2310円)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これは実に美しい写真集だ。駅舎だけ集めてあるのは初めてではないか?子供の頃の原風景がそのまま残っている。記憶に残る駅舎写真が多いが、中でも日本唯一というかやぶき屋根の会津鉄道湯野上温泉駅が良い。この温泉は昔よく行ったものだが、新幹線の新白河から車で40−50分というところだ。だが、今度行く時はやはりこの会津線に乗って行きたい。門司港駅も素晴らしい。是非一度行きたいと考えている。この写真集を眺めているだけで旅情にひたれる。2310円は高いと思わない。こういう古い駅でなんともぴったりあっているのが、ポスト。今の角型のポストもあるが、それはいまいち。昔の丸いポストが駅舎にぴったりだ。何がしらけるかというと、飲み物の自動販売機。あれは全く興ざめの代物である。お勧めの一冊だ。80から90の駅が取り上げられている。
   

 美しき日本の残像

 AKI評価:☆☆☆☆☆

題名にひかれて、何かのコメントを読んで買った。日本人皆がアメリカ人に日本文化の事で説教されて、すみません、と反省させられる本。

彼は本当に日本を愛しているんだなあ。それだけに批判も厳しい。日本、特に京都に厳しい。京都人は日本文化を本当は好んでいないとまで書いている。彼がほめているのが、大阪。外人は皆大阪に住むべきだとまでほれこんでいる。

日本ほど、自国の文化と歴史を大事にしないで壊している民族はいないってさ。どんな田舎に行っても、鉄塔、電柱、電線、パチンコ屋 の行列だと。パチンコ屋が景観を壊しているのは認めるけど、しょうがないんだよ、この国の政府はカジノは違法だ、500円のトトカルチョも逮捕、だけどパ チンコだけは全部OKって国なんだから。そうか、政府自ら景観を壊しているのね。電力会社も。

まあ、これは一部なんだけど、日本文化の将来に対して危惧する人は絶対に読むべきだろうね。しかし、参ったなあ。この著者は私とさ ほど年齢が変わらないけど、私がアメリカ人になって、彼が日本人になったほうがいいかも。それから、驚いたけど、日本の歴史的な古いお寺の住職の半数以上 が外人だってさ。

   

 セブン・イヤーズ・イン・チベット   (映画版) (書籍版)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本もあるし、映画もある。私は映画の方を鑑賞した。実話に基づいた話である。ブラッドピットとデイヴィッド・シューリスと監督が無期限中国入国を禁止された。オーストリーの登山家と幼少の頃のダライラマとの交流を描いた作品。音楽はジョンウィリアムズだから当然いい。ダライラマ役の少年もすごくいい。

チベットが毛沢東共産党に征服される。8000人対9万人の戦争で11日で陥落。その後もチベット民衆が100万人殺されたと最後に追記が出てくる。インドに接するチベットが欲しかったのか詳しいことは勉強不足で知らないのだが、要するに我々が思い浮かべるのに適しているのは、例のブータンが中国共産党に占領されるという感じだろうか。日本も満州を占領したし、ソ連はチェコを60万の軍隊で制圧したりしているから、私は、その面では中国の事をとやかく言ってるわけではない。だが、何しろ、この映画に出てくる共産党軍の将軍たちがあまりに無礼、傲慢だったために、強烈な印象を残している。ってことを考えると日本が満州を占領したことを文句言うのもおかしな話ではある。

中国で上映禁止になった作品であるが、映像美と音楽がいい。チベット仏教の聖地の感じもすごくいい。あの仏教国と中国共産党は全く相いれないなあ。ブラッドピットがすごくいい。ぜひ、映画を鑑賞して欲しい。

   

 淀川長治自伝ー上巻:1340円。中央公論。(下巻)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1985年作品。98年に89歳で亡くなっている。途中で、あれ?上巻だ、と思った。時々私は上巻を買って面白ければ下巻を買うと言うことをする。

この著書を読んで、この人の事をもっと知っておけば良かったと思った。映画ファンにはたまらない作品である。しかし、大正時代、昭和の初めにそんなに日本人が映画に夢中になっていたとは知らなかった。アメリカの映画もよく見ていたようだ。太平洋戦争勃発の日までやっていたのだそうだ。古すぎて知らない作品が多いのだが、さすがに昭和10年を越えてくると、知っている名作がいろいろ出てくる。駅馬車と言う名画も彼が命名したようである。彼のホモ説についても触れられている。いやー、この人はすごい。下巻を注文したのだが、早く来ないかと待っている次第である。

   

 風が強く吹いている

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2006年の作品。知らなかったなあ、2007年にラジオドラマ化、漫画化、2009年に映画化、となっているそうだから、私が疎かったのね。だから、多くの人に知られた作品なんだと思う。箱根駅伝の小説なのだが、最近ジョギングやったり、マラソンやっている人たち多いらしいが、読むといいよ。非常に面白く、作者はいろいろなことを伝えたかったのだと思うが、ジョギングやマラソンをやり続けるのが楽しくなる話だ。これを読んで、来年の正月の箱根駅伝をテレビで見ると一層楽しめるだろう。長編であるが、気楽に読めて、楽しくなる作品だ。☆5個。
   

 「横道世之介」吉田修一著

 AKI評価:☆☆☆☆☆

3年前の作品。この著者は、映画にもなった「悪人」を書いた人だ。驚いたなあ。こういう小説の書き方というのは初めてで面食らった。読み応えのある厚さ。途中から、おかしくて、おもしろくて、寝床で笑いをこらえるのが大変だった。それからだんだん引きづりこまれていって、読み終わる頃には涙が出そうになる作品。座布団5枚だなあ。後からわかるのだが、本当の事件を題材としている。非常に心に残る優秀な作品だと思う。是非とも一読を勧めたい。
   

 平家物語(吉川英治著が一番わかりやすい)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

平清盛:視聴率が最低になっても私は気にしないで見てきた。最初は、貴族の連中の顔化粧が気味悪かったけど。人気がないのは、今の時代の潮流にあっていないからだけだと思う。後は勝手な理屈付け。神戸の連中は見ないといかんでしょ。繁栄の源を作ったのだから。

前回放送の重盛の箇所はなかなか良かった。「衣の下に鎧がちらつく」という諺まで生んだ、有名な父子対面のシーン。聞いたことあるセリフだなと思っていたら、重盛だったんだね。忘れていた。「忠ならんと欲すれば孝ならず。孝ならんと欲すれな忠ならず。重盛の進退ここにきわまれり」と、ハラハラと泣く。

テレビでは、この重盛を後白河法皇は利用したというのだから、悪だねえ。悪に見えるからあの役者はうまいのだろう。

どうしても大河ドラマの平清盛を見たくないなら、平家物語(吉川英治著が一番わかりやすい)でも読むべきだろう。一気に読めるだろうし、人生の何かを強烈に教えてくれる書である。

   

 「海賊とよばれた男」 (上巻) ・ (下巻)。百田尚樹著。講談社。1600円+悪税。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本屋で何気なく取り上げて買った本。表紙は大事だと思ったね。表紙だけで手に取ってみたからね。

出光興産の出光佐三氏の伝記。上巻の途中で、持ち上げ過ぎだなあ、なんて考えていた。次第にそんなことはないことがわかってくる。圧巻は下巻のほうだろう。下巻は面白く、寝床で眠りに入れずに困った。出光石油の乾坤一擲のタンカー日章丸に暗号発信、アバダンに向かえ、の箇所はスリル満点であった。戦後の経済史、石油がらみ、大変に勉強になった。イランの苦しみが良く理解できた。

あまり本を読まない人たちにも比較的わかりやすい本だと思う。だが、今いちばんこの本を読むべき人たちは、苦境に陥っている経営者たちだろう。苦難に向かう勇気を与えてくれる。☆5個。

   

 「64」横山秀夫著。文芸春秋。1995円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この著者は、半落ち、臨場、クライマーズハイなどで有名である。空港で時間つぶしに眺めていたが、過去の著書からつまらないはずはないと思い、購入した。最初の2−3割程度はなんだか焦点が定まらず、あまりページが進まなかった。ところがどっこい、後半の7割程度は一気に熱を帯びてきて、筆のタッチもリズム感が出ているのがわかった。なかなか面白かった。☆5個。正月のお勧め本。

   

 ジェノサイド:高野和明著。2011年発刊。角川。1890円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

13階段を書いた著者だ。このミステリー何とか賞1位、本屋大賞2位とかいろいろな賞をとっている。カスタマーレビューでは、1から5まで分かれている。1はつけたらいけないよ。著者に失礼だと思うよ。本を執筆するってえのは大変な事なのだ。グチャグチャ言ってる書評など読まずに、黙ってお勧め。座布団5枚。感想?おもしろ〜〜〜〜〜〜〜〜い、ぞなもし。

   

 「ノルゲ」佐伯一麦著。講談社。2205円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2007年野間文芸賞受賞。以下のように説明されている。「佐伯文学の真骨頂、六年の時を経て完結! 妻の留学、自身の精神の快復を求め一年の滞在で旅立ったノルウェー。人、北欧の季節、未知との出会いの日々。主人公の一年の意識を通して描く希望の再生の物語。」やはり、キーはノルゥエーではないか。私自身は1968年にアメリカの土を初めて踏んだ気持ちを彷彿させてくれたし、ノルゥエーに魅力も感じた。読んでいくうちにズルズルと引きずりこまれる作品。読書の好きな人には高評価、本を読まない人には理解ができないかも作品。私は座布団5枚。

   

 「日日平安」山本周五郎著。新潮文庫。660円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山本周五郎の戦前、戦中、戦後の短編集。江戸時代の話がほとんどだから、いつ書かれたかは関係ないだろう。日日平安もこの短編集の中の一つ。私は、しじみ河岸というのが一番良かった。心に残る情的なものが多く、日本人にしかわからないのではないか?とも思わせるが、最近、外人の方がよほど日本的なので何とも言えない。お勧め。座布団5枚。

   

 「人間臨終図鑑」  (第1巻 ・ 第2巻 ・ 第3巻 ・ 第4巻)山田風太郎著。徳間文庫。720円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

デフレなのに文庫本が720円とは物価なんて下がっていないじゃんか。それはどうでもいいのだ。最初から座布団5枚。

この図鑑は別に絵が挿入されているわけではない。第一巻は49歳までに亡くなった人が対象となっている。この本を読んでいて、私は思ったよ。いくら私が知識が多いなんて言っても、歴史や人物に詳しいなんて言っても全然話にならないくらい知らない事や知らない人物が多いので衝撃を受けたってこと。どういう死に方をしたのか、死そのものに向き合ってみて、いろいろ考えさせられることが多かった。

一番面白いと思ったのは、第4巻だと思うのだが、106歳で死んだ爺様が、長寿の秘訣を聞かれたときに、「夏の夕方、街を若い女性が薄着でぶるんぶるんとお尻を振って歩く。それをとうもろこしをかじりながら眺めているのが長生きのもとです。」と答えたやつだね。なお、この第一巻で著者がもっと生かしておきたかった人物2名をとりあげているのだが、それが夏目漱石と島津斉彬だった。一読を強く勧める。

   

 「リクルート事件・江副浩正の真実」改訂版:中公新書。1000円

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2010年。衝撃の本であった。今月亡くなったから、この本の2年半後に死去。中央公論がよく出したなって感じ。マスコミ、特に朝日新聞、特捜、検察、これらの権力の構図が浮かび上がる。誰も彼と同じ立場に追い込まれる可能性があり、自分とは無関係とは思わない方が良いだろう。あの村木厚子女史の検察に対する挑戦でずいぶんと変わったが、彼女の執念にも頭が下がるのであるが、人々は権力を持つとどうしてここまで変われることができるのだろうか。法曹界の異常さも知ることができる。可視化が必須だと思う。

江副氏の人生とはなんだったのだろうかと思いをはせる。何しろ裁判13年間である。出る杭は打たれるの見本みたいな人ではある。政治家たちとのつきあい、実業界での立ち位置等、彼は終わりにそういったことの反省も書いている。何にせよ、マスコミについては、日経新聞やNHKくらい中道であってほしいと思う。朝日や検察の反論も読んでみたいとは思う。でないと、一方的な理解となってしまう。座布団5枚

   

 「人間臨終図鑑」第2巻。山田風太郎著。徳間文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

再び参ったね。人生とは何かを強烈に語りかけてくる。軍人では、伊藤整一中将、安達二十三中将、栗林忠道中将の評価が高い。山岡鉄舟の豪快な死に方も脳裏に残る。特高の甘粕、この男は反吐が出る。明治時代にはまだ宮本武蔵は有名ではなかったらしいね。秀吉の辞世の句は彼のものではないらしいね。

みんないう、いつか死ぬことはわかっている。しかし、今死にたくないのだ。死の瞬間に何びとも悟るだろう。人生の目的なるものがいかにばかばかしいものであったかを。自分の死は地球より重い。他人の死は犬の死より軽い。是非とも一読を。

   

 「あかね空」  文春文庫660円。山本一力著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2004年直木賞作品。はい、座布団5枚。豆腐屋の話だ。江戸時代だ。最近この手の日本の暖かい作品に出会わなかったので新鮮であった。さわやかな気分になる。途中で読むのを止めるのが大変。いい話であった。一読を勧めます。
   

 「人間臨終図鑑」第3巻。山田風太郎著。徳間文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

65歳から76歳まで。解説は三浦しおんが担当している。どうも多数の小説家や文芸人たちがこの本を読んでいるようだ。なんともいろいろなことを考えさせる本で、知識も豊富に得られる。下手な歴史の書より、為になる。大佛次郎の箇所が心に残る。再び座布団5枚。
   

 「人間臨終図鑑」第4巻。山田風太郎著。徳間文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

とうとう、4巻全て読んだ。最終版は、77歳から100歳以上までだ。山田風太郎氏は、12年前に亡くなっている。誰かが引き継いで、この12年間に亡くなった人たちを追加していくと良いと思ったのだが、誰も手を出さない理由が何となくわかる。風太郎しか書けない文体と内容なのである。

「人間には早すぎる死か、遅すぎる死しかない。」「意味があって長生きするわけではない。」「別れの日。行く人、やれやれ、送る人、やれやれ。」「生者は死者の為に煩わさるべからず。」若い人も読むといい。下手な人生論よりも、よほど為になるだろう。たびたび、この欄でも人物を取り上げさせてもらおう。再び座布団5枚。

   

 春告げ坂:安住洋子著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2011年作品。小石川養生所の若い医師を取り巻く、江戸の庶民たちの話。読みやすく一気に読める。読んでいる間中、さわやかな、暖かい風が心を吹き抜けていく感覚となり、自分の心も洗われていくような気持にさせてくれる。座布団5枚。

   

 「聖の青春」 大崎善生著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

東の羽生、西の村山、と呼ばれた青春将棋物語というところ。村山は、幼少のころからネフローゼという難病をかかえ、それでも将棋の道を目指すのだが、名人に届く前に29歳の若さで命をたたれた。師弟愛、家族愛、友情を通して描く感動ノンフィクションと書かれている。座布団5枚。

   

 「清貧の思想」中野浩次著。草思社。1992年作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本のタイトルは聞いたことがあったが、そんなに有名な作品だったとは知らなかった。たちまちベストセラーになったのだそうだ。ちょうどバブル破滅のタイミングに出版されたものらしいが、意図的ではなく、たまたま合致した。

この本で取り上げられている主な人物は、本阿弥光悦、鴨長明、良寛、吉田兼好、池大雅、与謝蕪村、橘曙覧、芭蕉。これだけでだいたい予想できるだろう。古い文章もあるのだが、簡単な訳がわかりやすい。読んでいるうちに、次第に背筋を伸ばしたくなる本。この本を学校教科書に導入しなかった文科省や教授たちは、後ろめたかったのだろうか?英語を導入するのも結構だが、この本で日本文化の神髄を教えることはもっと大事だと思うね。読みたくない人も読みたい人も、日本国民が皆読むべきだろう。我々の先祖たちが残した日本文化と国民性を思い出すべきだね。高尚な本のわりには、スムーズに読めた。座布団5枚

   

 「ぺコロスの母に会いに行く」 岡野雄一著。西日本新聞社。2012年作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

62歳の漫画家が描く、認知症の母との可笑しくも切ない日々と表紙に書かれている。これは、最初自費出版だったようだ。ラジオのインタビュー番組に著者が出ていて、話を聞いている内に、これは読んでみたいと思ったのだ。親、介護、認知症、家族、人生、いろいろ考えさせてくれるのだが、漫画とエッセイ―の構成になっている。何ともホンノリと心に残る作品である。座布団5枚

   

 一路:浅田次郎著。中央公論。( 上巻下巻 )

 AKI評価:☆☆☆☆☆

星ひとつが多く、いまいち人気に欠けているようだ。私は違うな。座布団4−5枚あげるよ。中山道(中仙道)を参勤行列をする集団のお話で幕末。浅田作品は、どれも大体外れがなく面白い。読者が何を求めるかだと思う。これは面白かった。ただ、馬同士の会話だけは、横道にそれすぎて、気に入らなかったけど。気楽に楽しめるだろう。

   

 「タイム誌が見た日本の50年」 上巻。タイム編集部。プレジデント社。越智道夫氏訳。(下巻

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1998年作品。表紙には美智子妃殿下の若い時の写真が掲載されている。これは、若い連中が読むべき本だね。10代、20代、30代だ。どうして日本は強かったのか、どうして、こんな風になってしまったのか、振り返って若い人たちに学んでもらいたい。まだ、上しか読んでいないのだが、下を読むのが楽しみだ。上巻は田中元首相、中曽根元首相のところまで。アメリカ人たちの視点が非常に新鮮である。翻訳も良い。上巻は、復興と繁栄、下巻は、栄光と試練。座布団5枚。

   

 「おちおち死んでられまへん 斬られ役ハリウッドへ行く」 創美社。2004年作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ご存じ、福本清三の話。ラストサムライで、寡黙なサムライとして、一躍表舞台に出てきた斬られ役。死んだ回数5万回とか言われる。皆も顔を見たらすぐにわかる。私は騒がれる前から彼の事は気が付いていた。本当に悪人面なんだよね。いつも悪役で出てきたからね。悪人面というだけなら私でもできそうではあるが。しかし、彼が仁義なき戦いにも目立たないながら出ているとは知らなかった。

小田豊二という人が聞きながら書いたもの。彼の人間性がそこかしこににじみ出ており、素晴らしい。いわゆる我々がイメージする日本の男そのまま。座布団5枚。読むことを是非お勧めする。肩もこらずに読めて、後は涼しくなる感じ

   

 「タイム誌が見た日本の50年」 下巻。プレジデント社。沢田博氏訳。 (上巻)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今度の表紙は、雅子さん。副題は、栄光と試練となっている。日本の絶頂期、バブル、大蔵省疑獄、バブル崩壊って流れ。忘れていたことを思い出させてくれた。これは若くない人も読むべきだろう。再び座布団5枚。

   

 「大往生したけりゃ医療とかかわるな」 中村仁一著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1年半前の作品。久しぶりの骨太作品。私の人生観に多少なりとも影響を与えた。この本は、60歳以上が読むべき本で、50歳以下の人が読む必要はない。一番大事なテーマは、60過ぎれば、体も下降に向かうのが当然であって、死ぬまでの残りの人生の生き方を考えなさい、ということ。70歳で、人間ドックなどやって悪い箇所をみつけることは何の意味もないと。座布団5枚。還暦後に必読すべし。

   

 「あなたが知らない太平洋戦争の裏話」 新人物文庫。新名丈夫著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

旧題:昭和史追跡ー暗黒時代の記録。1970年の作品。これは、お客さんから頂いた本。

著者は、戦前戦後の毎日新聞記者。多くの人の書いた現代史は信用しないとしている。それは残された文献を調べて書いたものだからだと言う。従軍記者だった彼が直接見聞きしたものだけを書いているとしている。マスコミが軍部の台頭を許した。そのため、後年、真実をマスコミは書けなくなったとしている。昭和の初めにマスコミが本当の事を伝えていたら、もっと違っただろうとしている。ここにいろいろ出てくる話の中で衝撃的だったのは、あまりにお粗末な軍の将軍たち。こんな将軍たちに命令されたらたまったものではない。極東軍事裁判で死刑になったのは、7名。ところが、海外の各地で裁判が行われ、4200人も銃殺もしくは絞首刑となっており、その多くが、上司に罪をきせられた、恨みによって断罪された類で、裁判の体をなしていなかったようだ。ガダルカナル以降は、もう戦略も何もなく、追い込まれていく日本の姿に悄然たる思いを改めて持つ。座布団5枚。

自衛隊が強くなるのは結構であるが、文民統制がきちんと行われること、マスコミが時流に流されない事、戦略をきちんと描ける軍隊である事などが必須である。ことさら感情的に、軍備増強を唱えてもダメである

   

 冬の伽藍:小池真理子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

14年前の作品。最初は、これ、恋愛小説?エロ小説?って感じだった。えらく長い恋愛小説。話半ばあたりから、話は急変する。これだけ長いストーリーだと心に残ってしまう。女性の書く恋愛物っていうのは、こういう感じねと思った。記憶から消えないのだから、座布団5枚かな。
   

 「わかっちゃいるけど、やめられない」植木等伝。戸井十月著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2007年。植木等への鎮魂歌と言う感じ。途中から、ぐっと展開が面白くなってくる。付き人だった小松政夫のところが、一番植木等の人間性を表してくれている。私は、子供のころに楽しませてくれた植木等とクレージーキャッツに感謝したい。団塊の世代以上は、皆同じ感情だと思う。座布団5枚。https://www.youtube.com/watch?v=Pn029qV9U9I
   

 戦争の世界史:ALサッチャー著。大谷堅士郎訳。祥伝社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

副題:燃え続けた20世紀、それは大英帝国の凋落から始まった。ズバリ言って、名著。太平洋戦争の事ばかり考えていても意味なかった。全ては欧州から始まっている。ヒトラーの怪奇性、ムッソリーニの狡猾さ、チェンバレンのアホさ加減、チャーチルとルーズベルトのすごさを知った。当時のアメリカが、引っ込み思案で動かなかった理由もよくわかった。パリ陥落で初めて目が覚めた。欧州全土はナチに席捲されたわけだが、残るイギリスも風前の灯だったのがよくわかった。あの破竹の勢いでは、日本がドイツと接近したのもわからないではない。ただ、ここに出てくる連中をみていると東条英機は非常にまっとう。もしもであるが、連合軍が負けていたら、ドイツと日本が分け合うなんてありえない話で、アーリア人しか人間として認めないナチと日本が衝突したのは100%確実だろうね。どちらにせよ、あの時代の全ての背景を知ることができて、非常に学べた。中高で教えている近代世界史の教科書なんて低級。最初からこれを読ませておけば、当時の世界の構図を簡単に描ける。というわけで、必読の書として座布団5枚。
   

 殺戮の世界史:ALサッチャー著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

燃え続けた20世紀。シリーズ物の第2弾。ここに書かれている衝撃の事実を書こうかと思ったが、やめておく。500万人死んだとか、1000万人死んだとか読んでもピンと来ないだろう。まさに、学校の教科書不要の世界歴史絵巻。昔、NHKでやった20世紀の映像を、もっと詳しく書いたものと言っていいだろう。学校の先生は、教科書で子供たちに教えるのでなく、この本を皆に読んで聞かせると良い。これらの著書を読まないのは、すごく損な話である。知識が、増えるわかめ的に脳に入ってくるって感じ。まさに、必読の書と言えよう。座布団5枚。
   

 「ペン字練習帳」30日できれいな字が書けるー宝島。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

紀伊国屋に行った時に買ってしまった。私は、ひねくれているから、世間が英語だと騒ぐと国語をやろうと思うのである。最近、ハガキで自筆で書くようになったので、自体が乱れ、漢字を忘れと、おそまつなことになっているので、以前から気になっていたのである。知り合いが達筆で、というか、きれいな字なのでうらやましいと思っていた。ってわけで、ひらがな、なんてなぞって書いていると、背筋を伸ばして、小学生の気分である。

   

「道、果てるまで」戸井十月。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ユーラシア大陸横断3万キロ。著者は私より多少先輩であるが、バイクでまわるのである。過去には豪州、北米、南米、アフリカと4大陸10万キロも走破している。いろいろ、ここに書き連ねても良いのだが、やはり直接読んで感激、瞑想、思考をした方が良いだろう。素晴らしい旅日記である。私はこの手の類は、小田実の何でも見てやろう以来、ほとんど読んできている。是非、あなたにも読んでもらいたい。20代、30代、40代、50代、60代、男性女性、それぞれ読後感想は異なるだろう。四の五の言わずに座布団五枚。

 

「散り椿」葉室麟著。角川書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から読みやすい。いわゆる時代劇シリーズ的。直木賞作家の云々と出ている。内容はともかく、読みやすく、おもしろかったので、それだけで座布団5枚。読んでいる間は、他の事を忘れられる。

   

 「わが母の記」井上靖著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なんとこの本は、1975年の作品である。手元には、しっかりとしたカバーのついた単行本がある。当時の値段で1600円である。どうしてこの本を読んだかと言うと、同名の映画が発表されて、賞を受賞したんだよね。それで本を入手した次第。著者自身は、1991年に84歳で亡くなっている。あの有名な恍惚の人は、1972年で、映画は1973年で社会的衝撃を与えたことはよく覚えている。つまり、あの当時にすでに現在の社会現象の源が出始めていたんだね。いろいろと考えさせられる書であった。しかし、小説家が母親の事を執筆すると、こういう書き方になるのね、と思ったよ。座布団5枚。

   

 「小野田寛郎の終わらない戦い」 戸井十月著。新潮社。単行本。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

小野田少尉の本は、多数読んできたので、これも読んだ事あると思っていたが、読んでなかった。あらためて読むと考えさせられる事が多かった。若い人たちは知らないかもね。戦後30年間、フィリピンルパング島で戦い続けた日本兵。知っておかないとならないのは、彼は通常の兵隊でなく、中野学校から派遣されたスパイだったということであり、上官の命令があるまで、解散ということにはならなかったこと、そして、中野学校の教えは、絶対に死んではならない、生き続けて情報収集と後方攪乱を続行しないとならなかったこと。世界で、ほめられる日本人であるが、ここには、外人の知らない我々日本人が知っている嫌らしい日本人たちが多数出てくる。マスコミ、政治家、その辺の市井の人びと。彼が帰還した時の背筋を伸ばした兵隊姿は今でも覚えているが、その後の彼の過酷な運命もたどられている。日本人必読の書と言えよう。座布団5枚。

   

 「銀漢の賦」 葉室麟著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

時代小説。この著者の本は、パターンがあるようで読みやすい。江戸時代の友情みたいなものを描いた作品。小説の利点に、読者を心地よくする、浮世を忘れさせる、というのがある。それを、大きなポイントに入れれば、座布団5枚となる。本が知識を得るもの、学ぶもの、という観点だけならつまらないだろう。肩の力を抜いて読める作品。イメージ通りの時代小説。

   

 「空白の5マイル」 角幡唯介著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

副題は、チベット、世界最大のツアンボー峡谷に挑む、となっている。ラジオ深夜便だったか、彼が出ていて、話を聞いているうちに面白そうだから、読んでみようと思った。冒険家というのはとんでもない種族だと思っていたが、彼も例外ではなかった。なんでそこまでしてと思ったが、ひとつの生き方なのだろう。中国当局の事や、携帯電話の普及が印象的だった。自分が行けない、やれない世界を見せてくれたというところ。開高健ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。労作に座布団5枚。

   

 「団塊の秋」堺屋太一著。祥伝社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

団塊の一番下に属する私も読まなければなるまいと思って、本屋で手に取って買ったもの。気分暗くなるだろうなあ、と思いつつ、読んでいった。堺屋氏の著書は読みやすいのが特徴で、そのために暗くなるような話も多少ソフトになる。登場人物たちが何人かいるのだが、私も自分の事を振り返ってしまった。50歳以上の人はやはり読んだ方が良いだろう。若い人も現代と将来を考えた時、読んだ方が良いかもしれない。読むべきとして座布団5枚としておきたい。

   

 「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵著。サンマーク出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

テレビで何気なくドラマ?映画を見たのだ。仲間由紀恵が主演だった。彼女のファンなのであるが、片付け?お掃除?なんとか会社の社長で、すげええ、面白かったのである。あまりに面白かったので原作を探したら、この本だった。巷にこの手の本が多数出ているのは知っている。この本は、もう断然、座布団5枚。私も早速やろうと思っている次第だ。一人住まいの人はすぐにできるだろう。非常にためになる良い本である。お勧め。

   

 11/22/63 ()。スティーブンキング著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

単行本で上下1000ページを超える分厚い本。本屋で積んであったので、取ってみて、ぱらっと見て、購入。いろんな賞をゲットした本。この著者も有名なようである。うんざりるするくらい長いミステリーであるが、なんとなくやめられなくなってしまう本。アメリカの宮部みゆき的。発想も題材も良いと思う。タイトルでわかると思うが、ケネディ暗殺日。座布団5枚。

   

 「父の帽子」 森茉莉著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これがエッセイーかとうならせる書。文筆が優れているのは当然で、森鴎外の娘。実に文体文脈がきれいで、読みながらその風景が頭に描けるくらいだ。

一例をあげると、「赤坂溜池の電車通りに店を出していた、禿げた大きな頭の清蔵というお爺さんの握ったお寿司が、錦手の大皿に色とりどりに盛られて、それが二枚も三枚も持込まれた。光る藍色や赤、緑、白なぞの、美しい複雑な模様を染めつけた大きなお皿に、淡桃色の透った鮪。柔い黄色い卵焼。白い鳥賊。白と紅の混りの海老。薄い緑や紅に鈍く鯛や鮃。藍色と銀のこはだ、このしろ。蛤やあなごの上にはとろりとした「たれ」が薄茶色に、光っていた。黒い艶のある海苔巻は干瓢の見える真白な切り口を見せて二段にも三段にも、積み重ねられている。お寿司の廻りには海老の形に截り込んだ濃緑の笹の葉が、ぴんと出ていた。母はお寿司がなにより好きで、御飯の直ぐあとでも、「お寿司の入る所は別よ」と言って、沢山たべるのだった。」

彼女は父親の鴎外に溺愛されるのだが、あまりにも御嬢さんとして育ったために、二度の結婚に失敗している。そのかたわら、最後に出ている彼女の作品集を眺めると、膨大な著書を残している。多数がエッセイである。この父の帽子も日本エッセイストクラブ賞を受賞している。大正時代、戦前の昭和の東京が静かに描かれている。まるでドラマでも見るように読めた。唯一、夢というエッセーは理解できなかったので通読した。彼女のこの作品で、鴎外という人物像がくっきりと見えた。鴎外の書は読んできているが、再度読みたいと思った。座布団5枚。

   

 「テロルの決算」 沢木耕太郎著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1978年原本執筆。深夜特急以来の沢木ファンであるが、やはり期待を裏切らず。私の小学生の時の事件だから、多くの人は知らない。だが、ガキの記憶にも鮮明に残っている事件である。当時の庶民人気一番の社会党委員長浅沼稲次郎が日比谷公会堂で17歳の山口二矢という右翼テロリストに刺殺された事件である。この二人の物語と周りの人々と当時の政治情勢など、ノンフィクションとして描いている。地道な調査をしている。力作である。座布団五枚。

   

 「春秋山伏記」藤沢周平著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1984年の作品。時代小説だから、いつ書かれたというのはあまり関係ないけど。藤沢ファンは多いよね。非常に読みやすく、興味深く、楽しく読めた。山形庄内鶴岡の辺りの村の人々の生活がメインである。作者のこだわりで、庄内弁がそのまま文体に出ている。作者は方言が衰退するのではないかという危惧があるようで意図的に庄内弁で押し通したようだ。江戸時代の農村、村人たちの生活がよくわかり、面白い。座布団5枚進呈。

   

 「新幹線をつくった男ー島秀雄物語」高橋団吉著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

初版2000年。鉄ちゃん、鉄子がこれを読んでなければ失格という感じの書物である。私は新たな知識を得て、非常に得した気分になった。新幹線の最初の計画が、昭和14年というのだから驚いた。東京ー下関、そして、壱岐と対馬をつないでトンネルで釜山へ。そこから、満州の新京と中国の北京までつなぐという壮大な計画。関係者たちの非常なる苦労と努力で完成した新幹線であるが、その苦労と努力が並大抵のことでなかったので、運賃が高くても、はい、結構ですよ、なんて言ってしまいそうである。明治からの汽車、電車の歴史が網羅されている。やはり、たくさんの海外渡航をして、学べるものは学ぶという真摯な姿勢が肝要である。座布団5枚とし、多くの人に読んでもらいたいと思った次第である。

   

 「邂逅の森」 熊谷達也著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山本周五郎賞と直木賞受賞作品。11年前の作品。何かで褒めてあったので読んだ本だ。熊を追う猟師の物語。自然とのふれあいがどうのこうのと説明されているが、やたらと性的描写が多く、驚いてしまった。話は、大正から昭和の初め。秋田、山形地方。最後の結末は、すさまじいものとなった。この猟師の話で、私は全く知らない世界を知ることとなった。1日たっても頭から離れないので、やはり優秀な小説なのだろう。座布団5枚進呈。

   

 「プルーフ・オブ・ヘブン」 エベン・アレクザンダー著:早川書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

アメリカで45週連続でトップセラーとなった本。死後の世界は存在するという著作なのだが、キーは著者である。なんと彼はトップクラスの脳神経外科医なのである。彼は臨死体験をするのだが、戻ってきてから、自分の脳のカルテ(病で1週間昏睡)を調査研究をする。彼の脳は動いていなかったのであるが。彼自身は患者たちの臨死体験などは聞いてきており、はなから信じていなかったそうである。まあ、そういうことを信じない人は、どんな人が書いても信じないのだろうから読んでも仕方ないかもしれないが、私は読んでよかった。私は、100%信じるよ。脳細胞なんかの詳しい話の箇所は、私にはチンプンカンプンなので通読した。1980年代にキュープラスロスの死後の世界の話があって、あれは読んだことがあり、とても良かった。欧米では、死後の世界の研究が盛んのようだ。座布団5枚は当然。

   

 「浮雲」林芙美子著。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

古い話。彼女が執筆開始したのは、私が生まれたころだもの。放浪記は読んだことがまだない。浮雲は本格的小説となっている。今の人たちが読んでも、面白くもなんともない作品だと思う。書評の評価が高いのは知っている。誰かが良いと書いているからこの本を買ったはずだし。暗い気分になる。離れられない男女を描いた作品で心理的描写も良い。もしかして、彼女の半自伝?彼女を褒める声が多すぎて、いまいち、とは書けない感じ。他の著書を読めばよいのだろうし、私の読解力がたいしたことないと言われればそうかもしれんし。

   

 「お別れの作法」 矢作直樹著。ダイヤモンド。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

東大病院のERの部長ってとこかな。ERの現場で、人の死を見つめていくうちにいろいろな体験をして、人々に情報を発信している。

あの世の研究では、欧米と日本の研究レベルの差が、あまりに違い過ぎて、日本ではあまり学べないかもしれない。アメリカでは、あちらの世界の研究は、各大学の大学院が競って研究している。向こうには、研究対象が多数いるのだが、日本では同じような体験をしても多数が語りたがらないのだそうだ。変人扱いにされるからだろう。戦後の教育のせいかもしれない。ちなみに、こういうことを信じない人は、考え方の違いだから読まなくてもいい。

1958年と50年後の2008年の調査があるのだが、驚くべき結果が出ていた。2008年というのは、大震災以前なので、現在はもっと比率は上がっていると思う。あの世の存在を信じるかという設問。一番信じる人が多い地域は、なんと四国。それも22%→61%と急増している。一番信じていない人の多い地域は、なんと近畿。20%→29%。兵庫、大阪、京都、滋賀、奈良,、三重、和歌山辺りでは、この手の話はしないほうが良いのかもしれない。近畿地方は意外も意外だった。四国では気楽にしゃべれるのではないか。ちなみに関東は17%→38%。九州は昔も今も同じで31%→37%となっている。

知り合いで、この手の話を信じないで、それでいて、死を怖がっているのがいるのだが、何ともなあ、と思ってしまう。この書では、現世での生き方の知恵や倫理が書かれていて、きちんと生きていこうと思わせてくれる。良い本だ。座布団5枚は当然。

   

 「かすていら」  さだまさし著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前ここにも触れたが、テレビドラマで見たのがきっかけ。ドラマが良かったので、本も読もうと思った。ドラマもなかなかの出来であったと感じた。さだまさしと彼の父親との思い出をつづったものだが、なかなか良い。面白いし、リズムよく読める。座布団5枚進呈。

   

 「死の淵を見た男」 門田隆将著。PHP.

 AKI評価:☆☆☆☆☆

初版は2012年暮れに出ている。だから、もう1年半たつ。新聞の広告でよく出ていたので、いつか読もうとは思っていた。おそらく、多数の人が読んだのだと思う。私は、この本を読んでいて、一番思ったのが、再稼働の事。崩壊寸前が天恵によってこの国は助かったのだが、よく簡単にこういったことを忘れるよね。日本人ほど過去を引きずらない国民はないのだが、それにしても、こればかりはそうはいかないだろう。基本的には、全てありえないという思い込みと油断と自惚れが原因となっているのだが、もし、それが原因なら、日本の原発の将来が何とかなっても、必ず他の国で事故を起こすだろう。それにしても、最悪、チェルノブイリx10だったとは驚いた。黒澤監督の「夢」みたいなことが本当に起きるとはなあ。経済成長、コスト、金儲け、天変地異、いろいろなことを常に考えるために、日本人は皆この本を一読しておくべきだろう。座布団5枚。

   

 「食品の裏側2」安倍司著。東洋経済。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

東洋経済がこういったものを出すところが、なかなか良い。日経と一線を画している感じだ。

私が食品に興味を持っていたのは、アレルギー問題なのだ。最近やたらとアレルギーの話ばかり耳や目に入る。アレルギーで死ぬなんて考えられない。私のガキの頃は、クラス55人のうち、アレルギーで皮膚が荒れるとか、咳をするとかいうのはいたことはいたが、一人か二人程度の話で、さして重症でもなかった。それが、今見ればわかるでしょ。それで、まあ、食品や食事に興味があったんだよ。

この本は衝撃の本で、結構売れているらしいし、最近は、この手の食品の話が人々の興味をひくらしいね。私は、この著者がメーカーや商社の必殺仕掛人にやられるのではないかと心配したくらいだ。まず、気にしたら切りがないから無視というのは、その人の勝手だから別にかまわないが、子供がいる家庭は絶対に知識を持っていた方が良い。親として当然の義務だと思うよ。

コンビニやスーパーなどのカット野菜がいかに添加物で危ないものになっているのか、中国の食べ物は食べないという人でもファミレス系のサラダバー食べ放題で食べる野菜が、消毒剤などでどんな化け物になっているのか、知らないといけない。インスタントラーメンを食べながら、減塩醤油を使う人もラーメンの塩分を調べたほうが良い。以前、鎌倉に行ったときに駅前の肉屋で鎌倉ハム買ったんだけど、高かった。だが、世間のハムがどうやって作られているのか聞いたとき、私は非常に納得したのである。パンも山パンでなくて、街のパン屋で買うとかね、工夫が必要だ。

野菜でも見た目の良いものが安全とは限らない。曲がっているキューリやナスがまともなのかもしれないのである。コンビニ弁当やおにぎりや、なんとか弁当屋の食品が、どんなものなのか、知らないといけない。私は、これを読んで、この20,30年のアレルギー症の急増は、食品添加物であると100%確信したね。ってなわけで、長くなったがこれでも短く書いた。子供のいる親は必読だぜ。座布団5枚。

   

 「殺人犯はそこにいる」清水潔著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

年末に発売された。子供のいる両親が読むのは当然。私は、検察、警察、裁判所のような権力が嫌いであるし、マスコミも嫌いである。

私はこのような真実を報道した日本テレビや、出版した新潮社と、当たり前であるが、この記者にも深い敬意を払いたい。権力というのものが、いかに恐ろしいものであるかを知らしめるもの。例の冤罪の菅家氏の足利事件で彼が無罪となった、女の子5人の殺人犯はその辺にいるのである。この記者はそれをつきとめて、警察や検察を問い詰めるが権力は動かない。国会議員たち有志、首相まで出てきても司法は動かない。動いてこの人物を捕まえると非常に都合の悪い事実があるからである。もう一つの冤罪があるのだが、その人はすでに死刑にされている。それが冤罪だとわかってしまうからである。つまり、司法=正義なんて嘘なのである。

桶川事件なども出てくるのだが、我々に無関係ではないのである。いつ、刑事たちが突っ込んできて逮捕!なんてことがありえないわけではないからだ。我々誰もが、いつ殺人犯にでっち上げられるのかわからないのである。どうしてそんな不条理なことが起きているのかを書いている。そして世に問いている。殺された女の子5人の無念を晴らすためが最初の動機だったが、よくこの清水氏は取材したものである。金箔座布団5枚。

もともとやらせとは思っていたが、私は、沢口康子の科捜研も検事名取裕子も検事朝比奈耀子も十津川警部も大ファンであったが、もう見ないことにしたのである。ちなみに、事件報道のテレビや新聞は、99%警察発表を鵜呑みにして、そのまま出しているのだそうだ。

   

 「「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい」」 森達也著。ダイヤモンド。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の事はあまり知らなかった。ずいぶんとネットの匿名で売国奴だとか、おまえは日本人ではないとか批判されるようだ。書評で1にしているのは、そういう人たちなのだと思う。ああいうネット批判を見ると何だか戦前の雰囲気と同じ印象を持ってしまう。

最初はチンタラと読んでいた。しかし、次第に、ふ〜む、そういう視点もあったか、なるほど、そういう見方もできるのだなと、感心することが多くなった。あまり固定観念に捉われずに読むと良い。なかなか良いことを言ってると思う。バランスがとれている。座布団5枚。

   

 「詐欺の帝王」溝口敦著。文春新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

おれおれ詐欺、未公開株勧誘、ヤミ金etc.裏社会のシノギ、驚愕の手口。まあ、表紙に書かれている通りのお話。驚くことが多かった。著者は、詐欺師の隆盛は続くと結論付けているが、私も同感だ。興味深かったのは、大金を稼いだこの連中の金の使い道。いろいろ私がここで述べても意味がないことで、読むのが一番。読んだ方がいいでなくて、義務として読みなさい。座布団5枚。

   

 「村上海賊の娘」 ) 新潮社。和田竜著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

週刊新潮に2年間にわたり連載されたもの。広告がよく出てるから知られている作品。本屋大賞。彼の前回の「のぼうの城」も確か同じ大賞。本屋さんに好かれる作家なのだろう。

最初、語りが現代語だったりする場面が多いので、読みにくかったが、その後はそういうこともなくなったか、慣れたかで普通に読めた。結論から行くと面白い。座布団5枚。

戦闘の場面は脚色もあると思うが、あまりこの手の作品が多くないので新鮮ではあった。私が驚いたのが、最後に出ている参考文献の多さ。私が感心したのが、登場人物たちのその後。要するに、よく調べているのである。テレビがない時代に、いろいろな時代小説が流行ったが、この小説もネットが、なければもっと読まれていたと思う。

まあ、読書と言うのは、やらない人は、ほとんどしないし、する人は黙っていても勝手にやっているので、その辺はご自由に。私の方は、残り人生が長くないので、なるべく多く良い本を読みたいと常に考えている。だから、つまらない本に出会うとがっくりしてしまう。どんな本でも最後まで読むことにしていたが、今後は、半分読んでつまらないなら捨てようかと思っている。

   

 「下町ロケット」池井戸潤著。小学館。2011年直木賞作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前から気になっていた本。買おう、読もうと思いつつ、日が過ぎていってしまった本。たぶん、すでに読んでしまった人も多いと思う。

ご存じ、半沢直樹を書いた作者であるから、面白くないはずはない。最初は、大銀行と大企業の悪代官的なものばかりが目立っていたが。途中から俄然と面白くなってくる。後半は、面白くて、睡眠を削ってまで読み終わらせたものだから、眠くて仕方がない。読みながら思い出していたのは、日本の高度成長期。こんな企業ばかりだったろうなあ、役所も官僚も今のように足を引っ張るのでなく、国策が経済成長だったから後押しも強く、1億人全員が目標を持っていた時代、そんなことを思い出していた。

そして、この本は、日本人にプライドを取り戻させて、なおかつ、元気にさせてくれる作品である。これを読んでも元気が出ない日本人なら、アホではないかと思う。座布団は圧倒的5枚。老若男女、皆に読んでもらいたい作品である。しかし、この作者は、読者の心をひきつける力が並ではない。

   

 「太平洋の試練」 ()。真珠湾からミドウェーまで。イアン・ドール著。村上和久訳。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

アメリカ側から見た太平洋戦記であるが、いやあ、実に面白かった。読みながら頭の中に大パノラマが展開する感じ。

非常にフェアに書いている。あの南雲司令官をかばうような事を書いているのは目を引いた。確かにそうだ。もともと不適任人事だしね。ミッドウェーまでは読んでも楽しい。ミッドウェー前から、読むスピードが激減する。元気なくなるよね。結果もわかっているし。あの海戦がどのくらいの影響度があったのか、その前の珊瑚海海戦がどのくらい影響度があったのか、よくわかる。アメリカ人たちが何を考えていたのかよくわかる。

今年、ミドウェー以降の海戦をたどった続巻が出るようで非常に楽しみだ。第二次世界大戦のアメリカの戦史の中心は欧州戦線であり、陸軍史らしく、海戦史は珍しいらしい。戦記物の良いところは、心理学、戦略、いろいろな事を研究、学ぶことができることだ。座布団5枚。日本男児諸君、是非とも読んでもらいたい。

   

 「坂本龍馬を斬った男」幕臣今井信郎の証言。今井幸彦著。新人物往来社刊。新人類文庫

 AKI評価:☆☆☆☆☆

仲の良いお客さんから贈られてきて読んだ。最初は特に何も感じなかったのだが、途中から終わりまで、この今井信郎という侍の後半生の激動を読んで、いたく感動した。こんな話は知らなかった。昔から謎の龍馬殺害事件の概要をよく知ることができた。座布団5枚。

   

 「死刑執行人サンソンー国王ルイ16世の首を刎ねた男」集英社。安達正勝著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

仲の良いお客さんから贈呈されたのだが、嫌なタイトルなのでいまいち乗り気でなかった。静かに読み始めたが、後半は、涙が出そうになった。事実の話なのである。フランスの最後の王様、ルイ16世、奥さんのマリーアントワネット。ナポレオン。フランス革命。いろいろ絡むのだが、200年くらい前の話。あの当時の欧州の歴史は、実に知る価値のあるものだ。知らない世界だったので、私には新鮮で、非常に感銘した。座布団5枚。

   

 「マーケットの魔術師」エッセンシャル版。小野一郎訳。ダイヤモンド。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

う〜〜ん。マーケットの魔術師と新マーケットの魔術師が秀作だったので、何もあえて短縮版を出すこともないと思ったけど。逆にあの二冊が光ってしまう。あの二冊も必ず読むと言うことならば、座布団5枚進呈。

   

 「サイゴンから来た妻と娘」文春文庫。近藤紘一著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私がサイゴンに行った頃に、この人は産経のサイゴン支局長だった。ここに出てくる話が、すっと入ってくるのも同時期に私もサイゴンにいたからだろう。最初から、とても面白い。楽しく読めて、笑える。次第にいろいろ深い話になっていく。含蓄があり、全てにわたって是非とも読んでもらいたい本。去年、再刊されて20版を重ねている。それで、この著者の事を調べたら、「サイゴンの一番長い日」を執筆している。昔読んだことがあるので、ああ、あの著者かあと思った。当然、座布団5枚進呈。さっき、1986年に45歳の若さで亡くなっていることを知り、衝撃。

   

 「絶望の裁判所」 瀬木比呂志著。講談社新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

衝撃の本。わかりやすく書いたと著者は言ってるが、やはり素人にはむずかしい。それでも細かいところは飛ばして、通読をすると全容は理解ができる。訴訟を起こした人の満足度は18%だそうだ。私も最近の裁判に違和感があったので、納得はできる。裁判官というのは、我々の想像を絶する人種らしい。何かあったら裁判で決着をつけたいなどと思ってもあまり意味がないらしい。面倒だから和解勧告の連発らしい。我々一般人は裁判所に疎い。だからこそ、読んで知識を得るべきなのだと思う。なお、著者は元裁判官。座布団5枚。

   

 「ウォール街欺瞞の血筋」英語のタイトルは、すっきりのBlood on the Street. チャールズガスパリ―ノ著。田村勝省訳。東洋経済。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から座布団5枚の大著。著者はミズーリ大学卒だし、訳者は私と同い年だから、馴染みやすかった。著者は元ウォールストリートジャーナル紙の記者。しかし、日本ではどうしてこの類の本が出版されないかねえ。1億儲かった話だとか、儲ける方法とかそんなのばかりだものね。

ナスダックが400くらいから5000越えまで暴騰して暴落した90年代から2000年当時のストーリー。事実であるが、まあ、呆れる呆れる。アメリカ人というのは、というかウォールストリートは金まみれで狂っている。たぶん、こんな経過をたどったにも関わらず、リーマンの伏線だったのだと思う。シティ、ソロモン、ゴールドマン、モルガンスタンレー、メリル、まあ、悪ばかりだよ。そして、金まみれは、弁護士連中も同じ。政治家も同じ。

アナリストたちがバブルを醸成したとなっているのだが、その起点から結末まで、丁寧に描かれている。金融証券界の事を知らない人でも引き込まれる話だと思う。恐るべしアメリカの金の亡者たち。あまりに桁が違うので茫然自失である。SECは監督庁だが、あまりにいいかげんだったことも知った。スピッツァーはNY司法長官で追及したほうだが、その彼も名声を受けて、それを土台に知事になっている。裏話、和解案、まあなんでもあり。是非読むと良い。読みがいがある。

   

 「夢をかなえるゾウ3」水野敬也著。飛鳥新社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1と2で280万部とは驚き。最初は、三番煎じだなあ、とあまり気乗りせずに読み進んだ。途中から、俄然、勢いを増してきて、ズンズンと心に入ってきた。再び学ぶこと多し。このシリーズが学校教育に取り入れられるようになれば、教育界も変わりそうだ。取り入れるだけの度量があるとは思えないが。再び、座布団5枚。ところで玄関にガネーシャ像が座っている。数年前にカンボジアで売っていたので買ったのだ。

   

 「あっちの豚 こっちの豚」佐野洋子著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

風呂の中で読み終わってしまった。その割には高い。作家は5年前に亡くなっている。読後、なんだろ、何言いたいのだろう?時間を置けば、何かわかるかもしれないと思った。表紙を読んで、さらに考えて、なるほどねと思った。大人と子供のための名作絵物語となっている。今も脳裏に残っている。座布団5枚。

   

 「日本軍と日本兵」−米軍報告書は語る。一ノ瀬俊也著。講談社現代新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

捕虜になった日本人が語った事や、日本軍と対峙した米軍人たちの意見などを参考にして、米軍は小冊子にして全軍に配布していたようだ。あまりにも無残に太平洋の島々やビルマ戦線で負け続けるので、嫌になってくるが、さすがに、フィリピン戦線、沖縄戦線では、満州の陸軍の第一師団が出てきて、相当に米軍もてこずったようだ。圧倒的に兵器が足りない状況で、戦う前線から学ぶことは多い。なお、沖縄や硫黄島では、太平洋の島々と違って、本土から近いので、食料などは豊富にあったようだ。我々は、歴史から学ばなければならない。座布団5枚。

   

 吉村昭著の戦艦武蔵

 AKI評価:☆☆☆☆☆

武蔵の事で話題もちきりだね。武蔵を知るには、やはり、吉村昭著の戦艦武蔵を最初に読まないといけないだろう。それから、他の武蔵関連を読んだ方がいいね。肝心な時に石油不足で活躍できなかった優れた戦艦であるが、補給という発想がなかった軍部の犠牲になったというところか。アキの書棚にないね。でも事務所の本棚にはあるから、20年以上前に読んだのだろう。

   

 「ソロモンの偽証ー決意」宮部みゆき著。新潮社。単行本。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

3部作のうちの2部目。1部はずいぶん前に読んだのだが、読む本が多すぎて、後回しになってしまっていた。ところが映画をやるというので、慌てて購入して読んだ。しかし、こんな分厚い3部作を映画で2時間?無理だと思うんだけどなあ。今のところ、座布団5枚は必至だけど、現在、三部作目を読み始めた。しかし、すごい執筆力だなあ、彼女は。アシスタントたちも多いのではと思うけど。彼女の作品は、外れがない。全て面白い。

   

 「原発事故で、生きものたちに何がおこったか。」永幡嘉之、写真、文章。岩崎書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

先月出版されて、すぐにあちこちで売り切れになって、手に入れるのが大変だった作品。私がとやかくいろいろ書く必要はないと思う。読んでから何日もたつが、脳裏を離れない。あえて二つばかり書くとすると、遺伝子が壊れるというのと、30−40年後でないと本当の事はわからないという事かな。写真は大きく、本も大きい。文章は長くない。別に原発批判をしているわけでもない。淡々と今の実情を写真と共に語りかけている。原発再稼働を目指している人たち、当然と考えている人たち、原発誘致をしようとしている人たちは、絶対に読むべき本と言えよう。文句なしに座布団5枚。

   

 「ポーツマスの旗」吉村昭著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりに寝るのも惜しく読みふけった本。35年前の著作。内容は、日露戦争後の日露外交交渉にあたった小村寿太郎外務大臣を中心としたドキュメンタリー風物語。物語と言っても事実なのだが、物語風に読めてしまう。

私は、明治時代の政治家、軍人、官僚に強い尊敬の念を抱いているが、偉大さを再確認させてくれた。当然ながら、昔の事は良く書かれることが多いので、その辺は差し引かないとならないのだが。この外交交渉は、外交の歴史の浅い日本人にとっての教科書と称されている。その駆け引きがゲームのように感じられる。

物語は、終戦交渉締結までと、締結後の話と両極端に分かれている。前半は、胸躍る、ハラハラとした展開、後半は、沈む展開で気分が塞いでくる。けっこう、私はこの時代の事は知っているつもりであったが、新たな知識を得ることができた。日本海海戦で海軍は大勝利を収めたのだが、満州戦線での陸軍と露軍の戦いが、日本の財政事情もあり、陸軍も政府も、戦争継続ができないとしていた。露軍のほうが圧倒的に強いのは、その後のノモンハンの戦いで惨敗を喫したことからもよくわかる。負けたから事変などという言葉でごまかしているだけ。

問題は、当時の政府も軍部も懐が空っぽで、戦争継続は無理ということを国民に言えなかった事。言えば、ロシアは協定締結などしないし。そういったことを知らない国民やマスコミは政府批判と小村殺せの運動を展開して、暗い動きに転じる。外交関係の本で、これほど面白いものはないだろう。しかし、日本人というのは、普段はおとなしいのに、突然豹変して傍若無人となる。

あらためて、明治の先人たちの努力と苦労に頭を垂れたい。座布団5枚。

   

 「心のふる里を描く」原田泰治著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

恥ずかしながら、この人の事を知らなかったのである。ラジオ深夜便をよく聴くのだが、彼がゲストとして出ていて、再放送もあったので、頭に残っていて、この本を購入した。1800円であるが、3000円出しても良いと思った。座布団も5枚でなく、10枚出したい気分である。素晴らしい絵である。この人の絵をパラパラ見ながら、技術革新のIT時代に、我々日本人が得たものと失ったものが、くっきりとわかる。必ず、諏訪の彼の美術館を訪れたいと思う。是非とも皆さんにも読んでもらいたい。感動を共有したい。

   

 「足元の小宇宙」 埴 沙萠著。NHK出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

82歳の植物生態写真家が見つめる生命 非常に高評価な作品。私も座布団5枚。知る人ぞ知るで、この人の植物写真とストーリーは、何度かNHKで放送されたらしい。以下が彼のブログ。

https://ciabou.com/ciabou/index.html  美しい植物の写真集をテレビ映像でなく、本の写真でどうぞというもの。徐々に感動が湧きあがってくる。私の植物を見る目も変わると思う。何気なしに見逃していたものがあまりに多かったと実感した。写真と共に彼のコメントが味わい深い。是非、見てほしい作品である。

   

 「東京新聞の筆洗」 瀬口晴義著。廣済堂新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

朝のラジオで、エコノミストの内橋克人氏が勧めていたので読んでみた。内橋氏は、一般人にもわかりやすく解説するので評価の高い人だ。

最初は、民主党、次は自民党となるのだが、批判ばかりで、辟易していたのだが、そのうち、新聞は、政権批判をすることも大事な役割なのだと改めて感じた。つまり、戦前の愚を起こさないためには、言論の自由を失ったら、元も子もないわけで、批判精神は常に持つべき媒体なのだと思う。ただ、何でも批判することよりも、良いことは良いと認める姿勢も大事だとは思うが。

新聞が政府と同じような事ばかり言ってるのでは、不要な存在だ。新聞、報道の正しい姿勢は、真実を伝えることに尽きると思う。権力にとって都合の悪い事でも暴くべきだろう。読んでいるうちに、つまり、この4−5年程度の事なのだが、忘れていた大切な事をいろいろ思い出させてくれた。そして、大切な事を再考させてくれた。いろいろな観点から、座布団5枚進呈したいと思う。青臭い事も書かれているが、それはそれなりに良いと思う。検察、特捜を持ち上げてヒーローにしてしまい、鬼平どころか、ゆがんだ正義感、傲慢な世直し姿勢、などにより、いろいろ不祥事を起こした。マスコミにもその責任はある、としているのだから、ダメだったことはきちんと認める姿勢のようだ。
   

 「恋文」 連城三紀彦著。新潮社。ハードカバー。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

作者は2年前に亡くなっている。直木賞受賞作。恋文も含めて短編5部作。最初の恋文は、いまいち好きになれなかったが、残り4作は非常に心に残る。直木賞の選考委員たちのコメントも非常に評価が高かった。読めば読むほど味のある作品集である。文句なく、座布団5枚進呈。友人が最近座布団5枚が多いと言っていたが、そうでないと困る。こちとら、大事な時間を読書に振り当てているので、外れの作品にあったときのショック度も大きいのだ。
   

 「逃亡」 吉村昭著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

実話のようだ。小説より奇なり。海軍にいた若い兵隊が事件を起こして逃亡するのだが、なんともすさまじい逃亡劇で、後半は息もつかせぬ展開。白黒画面が似合う小説って感じ。座布団5枚。
   

 「蛍草」 葉室麟著。双葉社。単行本。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

評価は高い。彼の作品はいくつか読んできている。この作品のイメージは、昔のテレビの時代劇。いわゆる悪い奴をやっつけるというタイプのもの。読んで楽しいかと言われれば座布団5枚、心に残るかと言われれば5枚、皆に必ず読んでもらいたいかと言われれば、3枚程度。割安な文庫本もある。
   

 「黒鉄の志士たち」 植松三十里著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

佐賀が日本で大砲を進化させた藩だとは知らなかった。藩主の鍋島直正が相当な名君だったようである。欧米に追い付けという大砲の技術革新をするのだが、その努力に頭が下がるのだ。こういう武士たちが明治以降を作ったのだと思った。歴史的にも参考になる話が多く、花燃ゆ、を見るなら、この本を読んだ方が良いだろう。座布団5枚。力作である。
   

 「馬券偽造師」 中山憲治著。アールズ出版ー幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2001年作品。これも読んでみてくれと言われて、読んだ本。まず、タイトルが失敗だと思う。これでは、最初から読者層が限られてしまう。読みながら、よくまあ、こんな人がいるものだと呆れていた。全く知らない世界であるが、こういうことに手を染める人種の心理が徐々にわかってくる。この本の最大の読みごたえは、警察に捕まった後の話。実に面白く、一気に読み終えてしまった。最後は楽しい気分になる本で、座布団5枚進呈。
   

 「群青」 植松三十里著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

副題は、日本海軍の礎を築いた男となっている。矢田堀景蔵という人物を知らなかったなあ。すごく良い。読みごたえがある。臨場感も一杯。男子諸君は是非とも読んでもらいたい。NHKも花燃ゆでなく、この作品を大河ドラマにした方が良かったのではないのか?官軍側から書かれたものより、負けた幕府側から書かれたものの方が、歴史がわかりやすい。座布団5枚。
   

 「咸臨丸、サンフランシスコにて」 植松三十里著。角川文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この作者は相当に詳しく調べて書いているね。すっかり、男性作家だと思っていたら、女流作家だった。ますます驚き。非常に良い。秀作である。一気に読んでしまった。いろいろ考えさせてくれて、学ぶことも多い。座布団、当然5枚。
   

 「優しさごっこ」 今江祥智著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ずいぶん古い作品で、1977年作品。自伝的作品。離婚して、男親と一人娘の物語。NHKで放映されたこともあり、当時のベストセラー。作者は今年亡くなっている。静かに流れる作品。迷って座布団5枚。いちおう心に残ったので。
   

 「桜田門外の変」 上下。吉村昭著。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本のおかげで睡眠不足になる事数夜。全体がドラマ、映画という感じ。NHKも花燃ゆ、でなくて、この本でしょ。視聴率15%は硬い。井伊大老サイドから見るものと水戸藩から見るものでは、全く異なった世界になると思うが、安政の大獄に至るまでが強い流れ、襲撃殺害で再び大きな山場。それでおしまいでなく、実行犯たちのその後を丁寧に追いかけている。映画で描かれている雪の中の襲撃は、そんな映像のようにきれいなものではなかった。作者の地道な取材と研究に頭が下がる。非常に心に深く残る作品で、これが座布団5枚は当然のことだろう。女性読者が好むかどうかはわからないが、男性諸君はおそらく、寝る間も惜しんで読み続けるだろうと推測できる。この8年後、明治維新となる。強く一読を勧める。
   

 「敗戦」 川島高峰著。読売新聞。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

副題が占領軍への50万通の手紙となっている。安保論議が現在活発であるが、この書を読んで、日本人の本質を見つめると良いと思う。戦前戦後の半年間での日本人の変貌ぶりに愕然とする。都合の悪い事は忘れるのが得意と言われる日本人であるが、まさにその通り。どうしても極端から極端に走りやすい。普段おとなしいから、ひとたび配線を間違えると一直線。手紙の中には漢字+カタカナという私の苦手のものがあるが、無理に読まずにそういう箇所は通読にした。読んでおくべき本として、座布団5枚としておきたい。若い世代が読んだら、呆れるのではないだろうか?
   

 「脳の強化書」 加藤俊徳著。あさ出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これは以前書かれたもので評価が高かったものだが、この後に出ているものも結構売れているようだ。あまり無理に書かれている通りにやろうと思わずに最初は読む。二度読みを勧める。二度目は、やれることをやってみたら良い。それなりに学べる本。座布団5枚。読んでみるだけの価値はある。
   

 「軍艦長門の生涯」 

 AKI評価:☆☆☆☆☆

阿川弘之が亡くなった。彼の著書はよく読んだ。心に残っているのは、「軍艦長門の生涯」かな。最後、アメリカの核実験の材料(長門だけでなく世界の古い戦艦も)にされてしまうのだが、人の一生が終わったみたいで、今でも読後感を覚えている。座布団は当然5枚で誰も文句ないだろう。
   

 「父の肖像」 辻井喬著。新潮社。( )。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私は読むのが速い。通読ができる。だが、この本には時間がすごくかかった。通読させてくれないのである。辻井喬は、西武セゾンの堤清二氏の事であるが、西武王国を築き上げた父・堤康次郎氏の事を書いた著作である。当然ながら清二氏本人も下巻では頻繁に出てくる。この人の文章は美しい。一字一句読まないとならないような気分にさせられる。読書好きには堪らない本である。

堤康次郎氏の破天荒ぶりもすごい。日本の傑物と言えよう。そして、詩人、小説家としての清二氏もすごいと思うのである。西武王国の崩壊を改めて調べると、この一族、血族、では結末は致し方なしと思わせる。なんともおかしな気分になる。清二氏の経営者としての資質には疑問符があったようだが、この本を読めば、彼にあまりそんな気もなかったのがわかる。2年前に亡くなったが、久しぶりに読書をしたという感動がある。座布団5枚。
   

 「銭天堂」 廣嶋玲子作、JYAJYA絵、偕成社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

新聞の下段の広告を見て、絵が面白そうだし、ふしぎ駄菓子屋なんて副題も面白いと思って買った。面白かった。大人も楽しめると言うのは本当だ。これ、本来は小学生向けかなあ。イソップ童話日本版みたいな感じ。五巻まで出ているので、第二巻をいつ買うか考えている。読む本が今たまっているからね。座布団?5枚ですよ〜。
   

 「ふしぎ駄菓子屋・銭天堂」2:廣嶋玲子作。JYAIYA絵。偕成社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

アマゾンも困るなあ。1を読んだ後、パラパラとたまに誘いメールが来る。それで買ってしまったわけである。再度面白かった。座布団五枚。大人向け童話、子供も読めるってやつかな。遊び心が必要だよ。こういう本を読まない奴が、路上ライブ禁止とか、屋台は禁止とかやるんだよ。そう、江戸時代の役人と武士みたいな連中。江戸っ子は、この本を楽しく読んで、粋に生きるのさ。
   

 どぜう屋助七:河治和香著。実業の日本。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初からスローなスタート。読み進むにつれ、面白さが拡大してくる作品。ご存知、駒形どぜうの物語となっている。あの店は江戸時代の後期に開店して、この話は三代目を中心としている。時代は、幕末が迫るころ。江戸っ子、江戸の言葉をたからかにうたいあげる。上方では七味唐辛子というらしいが、江戸じゃ、なないろ、に決まってるだろ、って感じ。むらさきも同じようなものなのか。非常に上方を意識しているのが江戸というのがわかる。

読み終わると、あとがきにかえてというのがあって、それを読むと、登場人物たちの事がわかると言う次第。私があの店に初めて行ったのは、35年くらい前の事。だから、あの店の佇まいを思い出しながら読んでいた。今度は、ドジョウ鍋だけでなく、どじょう汁、鯨も食べてみないといかん。今でもゴボウのささがきは手製だそうだ。それにしても三代目の親友があの有名な鰻屋を始めた人物だったとはね。この本は、東京の連中だけでなく、関西の人も読むと楽しめると思う。座布団5枚。
   

 「翼はいつまでも」 川上健一著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

坪田譲治文学賞作品。最初は石坂洋二郎の陽の当たる坂道を思い出し、スタンドバイミーを思い出し、日本テレビのこれが青春だと思いだして読んだ作品。明るい青春物で中学生の恋、スポーツ、学園生活を描いた作品。なんだかほんわかした小説。後で見ると作者は私と同い年で、おそらく、これは自伝的作品ではないかと思った。本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト1となっている。座布団5枚。
   

 「艦爆隊長の戦訓」 阿部善朗著。光人社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

戦記物は何十冊も読んできているので、おのずから焦点は、私が知らない事、新しい視点を探すことになる。その点については、申し分がなかった。まだまだ知らない事も多いなあと実感した。著者は真珠湾攻撃にも参加して、最後まで生き残った軍人。真珠湾戦争は不要だったと言う話も興味深かった。読者層は限られると思うが、読みやすくなっており、座布団五枚進呈したい。
   

 「僕の死に方」 金子哲雄著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私は彼の事をあまり知らないのだが、聞いた事がある程度。世界でもあまり例のない病気になって亡くなったわけであるが、41歳。家族が早死にしているようでDNAかもしれない。その彼が病気というか、いつ死んでもおかしくない宣告を受けてからの心の葛藤を死の直前まで書き連ねたもの。終わりに残された奥さんのコメントがあるのだが、さすがにあれは涙腺が緩む。60歳以上はともかくとして、60歳以下の人は読むべき本だと思う。そして、いずれ誰にでも来る死について考える良い機会になると思う。良書と言えよう。座布団5枚。
   

 「立花隆の書棚」 中央公論。3240円。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

こういうものまで税金を取るのは良くないよ。本屋で見かけて皆驚く厚さの本だよね。私も買ってからしばらく放置していた。圧倒的な知の世界と書かれているが、まさにその通り。あのおばさん顔の立花氏のテレビなどでの解説を聞いているととてもわかりやすく、頭のいい人だという印象は昔から強い。この本では、私の知らない事ばかりで、まさに彼の授業を受けている気分になった。ためになるとかそういう観点でなく、新しい知識を得る喜びみたいなものを感じる。本が分厚いのは写真のページが多いからだ。字体は読みやすい。彼の蔵書は10万から20万冊というのだから、もうびっくらである。あらゆる階層の人々に読んでもらいたい座布団5枚の強烈な本である。私は再読しようかと思っている。ただ、持ち歩くには厚すぎるので、読めるのはトイレ、お風呂、寝床に限定されるけど。
   

 「トランクの中の日本」 ジョー・オダネル写真、ジェニファー・オルドリッチ聞き書き。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆  座布団が5枚しかないのが残念。

座布団が5枚しかないのが残念。久しぶりに衝撃を受けた。

多数の人がこの中にある写真のどれかを見た事があると思う。核と戦争を考えるロングセラー写真集となっている。全世界の人が見るべきだろう。彼は従軍カメラマンで日本敗戦後、佐世保、長崎などを中心に写真を撮りまくった。彼は日本を離れてから、忘れたい記憶としてネガ300枚をトランクにしまいこんで封印していた。この本には57枚の写真が掲載されている。

1949年から5代の大統領の写真をとり、キング牧師、あの暗殺事件の時のケネディー夫人、マッカーサーなど撮った写真は有名である。それで私は彼の名前を記憶していた。1968年に、当時長崎を歩いたために原爆病になり、一線を20年遠ざかる。1989年にテネシーで写真展を開くものの賛同者も多かったが、反対するものも多かった。南部では特にそういう傾向が強い。1995年にスミソニアンに写真展示を企画するものの、反対派の圧力で潰された。2007年長崎原爆投下の日に亡くなる。その後、日本でも各地で展示が行われたようで、テレビでも紹介されている。

私は怒りを覚える。アメリカ憎しと思った。落とさなければ米軍が100万人死んだ等という馬鹿げたプロパガンダを信じているアメリカ人たちに憎しみを覚える。だが、アメリカ国内でいくら非難を受けながらも、原爆は悪であるとして、訴え続けたアメリカ人もいるのだという事実に救われる思いだ。

残酷だなと思った写真は一枚だけで、後は静かな写真ばかりである。そして、その一枚一枚の写真が我々に何かを語りかけてくる。後半では私は涙を抑えるのが大変であった。戦争の結末というのは、こういうことであると見せてくれている。2500円であるが、倍以上の価値があると思う。書棚に残して、子孫に見せるべきものだろう。感動の写真集である。白黒写真の良さが100%出ている。
   

 「終わりに見た街」 山田太一著。小学館文庫

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山田太一の作品なら、外れはないだろうと思って読んだ。いちおう反戦小説。日曜日のラジオ小説で以前やっていたのを思い出した。ラジオは最終回まで聞かなかったので結末は知らなかった。現代から、戦争時代の昭和19年にタイムスリップする話。最後が衝撃の結末。
   

 「小さな会社の社長の戦い方」 井上達也著。アスカ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

非常に面白い経営の本だ。この手の本で、目からうろこって事はあまりないのだけど、これは、うなづくことが多かった。一般の人が読んでも頭に入るのでお勧めだ。とても読みやすい。座布団5枚進呈。
   

 「ぼんぼん」 今江祥智著。理論社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

もともと岩波少年文庫だから、少年向けの作品だが、作者は大人にも読んでほしかったようである。童話の方に分類されているようだ。小学生の男の子の戦前戦時体験を中心としている。大阪が舞台。言葉は関西弁。良書と言える。しみじみといろいろ感じさせてくれる本。静かな反戦物語と言える。座布団5枚進呈したい。
   

 「卑弥呼のサラダ・水戸黄門のラーメン」食から読みとく日本史。加来耕三著。ポプラ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

幅広く知識を会得してきたと考えてきた私も、知らないことが多すぎて、最近は戸惑いすら覚える。この本は、学校の教科書の日本史と交換すると良いだろう。いろいろ学べて楽しい。しかし、昔から、牛乳やチーズみたいなものが精力剤だったとは知らなかったなあ。当人たちも知らなかったようだが、資料分析するとそうなってしまうのだそうだ。紫式部が50年前に日本から唯一世界の偉人に選ばれたらしいが、フランス人たちは、現代の女性と思ったらしい。謙信の強さのもとも披露されていたりして、入れ替わり人物が登場して、やはり面白かった。座布団5枚進呈。
   

 「深川恋物語」 宇江佐真理著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

吉川英治文学新人賞作品。彼女は先日亡くなったんだよね。私と同い年。それで読んだことがなかったので、取り寄せてみた。短編集6編が収められている。江戸深川辺りの人情を扱っている。江戸っ子言葉が、とても小気味よく、物語に花を添えている。ホロリとさせられる。心に残る。読書中は、江戸下町に自分もいる気分になる。座布団5枚。
   

 「新橋烏森口青春篇」 椎名誠著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

自伝的小説だが、エッセーのようにも感じられる。彼の最初の就職先が雑誌の会社。30年前の作品で、NHKのドラマにもなっており、当時話題になった。私の最初の就職先が銀座松屋裏の雑誌社で、最初読みながら、ニヤニヤしていた。あまりにもそっくりだったのでね。彼は私より5歳も上だから、私は当時彼の会社から近いところで同じような会社で同じようなことをやっていたわけだ。私はせいぜい1年だったが、彼はこの会社に数年いて編集長になっている。当時、つまり、1970年代の世相、社会、文化が匂う。若い人が読んで、うそ〜って思うかも知れないが、時代検証を思い浮かべながら読むと面白いだろう。迷ったが座布団5枚。
   

 「明日のことは知らずー髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

面白かった。読んでいるうちに、電車乗り過ごしてしまったもんね。それだけで座布団5枚。江戸情緒に富んでおり、楽しく読めた。気楽にお勧めだね。
   

 「雨の狩人」大沢在昌著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

さすがにやっぱり面白い。読み応えたっぷり。サスペンス、ミステリー。これを映画化、ドラマ化するのは相当に大変そうだ。省かないと終わらない感じ。単行本で分厚い。文句なしの100点。座布団5枚。しかし、彼の作品でつまらなかったものないなあ。
   

 「さらば新宿赤マント」椎名誠著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

週刊文春に23年も連載したものの完結編とのこと。とても面白く、とても楽しく、とても役に立ち、さすがシイナクンってところだ。エッセイ集だが、一部一部が長くないので読みやすい。ぜひともご一読を。損はしない。座布団5枚。
   

 「特攻」栗原俊雄著。中公新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

航空特攻だけで4000人というのだから、相当なものである。テーマとして、彼は、戦後、生き残ったトップの連中が、特攻の責任を大西中将一人に負わせている、つまり、死人に口なし、だけど、本当にそうなのか?という疑問点が起点のようだ。多くの将軍たちが、特攻作戦にかかわってきているが、私から見れば、敗戦の時、将軍たち全員切腹が妥当だったと考えている。歴史的にも昔からそうではなかったのか?上が責任をとるのではなかったのか? 飛行機がなくなってからの特攻については、あまりにも常軌を逸しているので、語る気にもなれない。 大西司令長官は相当に人間的に魅力があったように見受けられ、私も当時若くしてパイロットだったら、彼の命令に従ったかも知れないと思うのである。特攻は、いろいろな事を考えさせてくれるが、永遠のテーマとして、常に読み続けていかなければならないと思う。姿勢を正して、座布団5枚。
   

 「真実の一球」 松井優史著。竹書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

だれでも江川は知っているだろう。栃木県小山、そして作新学院、そして法政、そして巨人だが、あくまで高校時代に絞っている。1973年は、日本中が江川フィーバーだったそうだ。騒がれていたのは知っていたけども。江川が最高だったのは、高校二年。確かに、掲載されている成績表を見ると、すさまじい。奪三振数や完全試合、ノーヒットノーランの数もすごい。松坂、ダルビッシュ辺りは論外みたいな感じ。その江川を巡るドキュメンタリー。丁寧な取材が好感される。著者の熱い思いに座布団5枚。
   

 「江戸捕物帳の世界」 山本博文著。祥伝社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この人は、よく歴史物のテレビに出てくるね。面白いというより、為になる、勉強になる、知識が増える。大岡越前や遠山の金さんや鬼平も出てくる。鬼平のところは興味津々であった。知らなかった人物も多い。これで、今後の時代劇を見る楽しみができた。と言っても、時代劇やってないなあ。NHKのは面白いの?面白くなさそうだから見てないだけけども。とにかくそういうわけで、座布団5枚。
   

 「富嶽」 前間孝則著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

副題が米本土を爆撃せよ、なんてなっているから、また提督の決断のようなフィクションものだと思って、放置していた。読む本がたくさんあるので、順番が回ってきたわけ。な、なんと、これが、座布団5枚だったのだ。

著者は、IHIで航空宇宙のジェットエンジンを担当していた人。富嶽の事は知っていた。あのB29よりも大きな長距離爆撃機でアメリカ本土を狙ったやつ。中島飛行機という会社があるのね。その創業者の中島という人が、巨人中島と呼ばれるくらいのすごい人だったのだが、彼を中心として話が進んでいく。中島飛行機は現在の富士重工だね。それで、大正、昭和にかけて、飛行機時代がやってくるのだが、中島氏は飛行機を戦闘用に考え出した人で、戦争の行く末も見事に的中させてしまったくらいの傑物。

飛行機、航空から見た太平洋戦史と言えるもの。今まで、そういう観点であの戦争を分析したものを読んでなかったので、非常に新鮮で、深い知識を得ることができた。日本は、誉という当時の世界水準のエンジンを開発したのだけど、彩雲という偵察機にもついていた。このあたりの飛行機名は全て提督の決断で覚えたからね。戦後、米軍が来て、彩雲を飛ばさせたらしい。ガソリンをハイオクタンのものにして、飛ばしたら、あまりのすごさに米軍もびっくり。作ったほうも、悪質なガソリンのせいで冴えなかったことがわかった。それで、その彩雲は戦争中でも米軍の戦闘機が追い付かなかったのだけど、終戦頃の最新鋭のベアキャットという戦闘機がかなわかった。アメリカが、日本に長いこと飛行機の自主生産を許さなかったのも理解できる。だからこそ、三菱の飛行機に感動する人たちも多いんだよ。

日本の技術はやはりすごいのだ。男子諸君は、ぜひとも読んでもらいたい。
   

 「義輝」 宮本昌孝著。徳間書店。単行本の

 AKI評価:☆☆☆☆☆

文庫本もあるようだ。足利義輝、剣豪将軍となっている。知らなかったね。足利将軍は、似たような名前が多いので、ごっちゃになっている。小説とは、事実と虚構の間の薄い紙と言われているが、まさにそんな感じで、本当のところはよくわからない。江戸時代になって、結構いろいろな歴史が幕府の意向に沿って、変えられたという話もあるし。時代背景としては、塚原卜伝、信長、信玄、謙信、松永弾正がいた戦国時代末期。長い小説であるが、力作と言えよう。上と下でずいぶん内容が変わるが、下のほうが面白いかもしれない。いろいろ考えたりして、小説として楽しめる。著者も結構研究している。座布団5枚。
   

 「哀しすぎるぞ、ロッパ」 山本一生著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

分厚い単行本。古川ロッパという喜劇役者は、私が子供の頃に亡くなった人で、よく聞いた名前であるが、知らない。彼の膨大な日記から抜粋されている彼の人生と彼を取り巻く芸能界の話とその時代背景などが書かれている。後半生があまりに悲しいものになっている。座布団5枚にすべきか迷ったが、5枚にしておこう。読後にいろいろ思いをはせることがあるからだ。まっこと、人生とは終わってみなければわからない。読む人によって読後感は違うと思う。
   

 「時代の風音」 堀田善衛&司馬遼太郎&宮崎駿。朝日文芸文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

三人の対談集。1997年出版だから、相当に古いよね。しかも、二人はすでに亡くなっているし。ただ、読み方としては、その後の推移を思い浮かべるとよい。ずいぶん知らなかった知識を得た感じがする。そう、学んだ感触。知の指針として、とても良い本である。相変わらず、☆一つを入れる人がいあるが、無視して、ぜひ読んでもらいたい。座布団5枚。
   

 「ほっぺん先生と帰らずの沼」 舟橋克彦著。岩波少年文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

初版は1974年と古いがその後新刊として出ている。著者の最後の言葉が良い。子供たちに読ませたい本であるが、大人の我々が読んでも学べることが多い。どうして、この本がいまだに人気を保っているのかわかるような気がする。座布団5枚。
   

 「羊と鋼の森」 宮下奈都著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ブランチブックアワード大賞とか本屋大賞を受賞。ピアノの調律師の事なんかまったく知らなかったし、興味もなかったし、それでも読んでみた。読みながら、昔ピアノがあったころの調律師の事を考えていた。総合評価として、秀作である。知らない世界の事だったが、知ってる知らないは関係なかった。作者の最後の謝辞もとても良い。人物の掘り下げが薄いとかということで、☆一つにするような人たちがいるが、理解できない。評価できなくても、せいぜい☆3だろう。感動ものという扱いでないと思う。この物語がこの主人公を介して、何を説いているのか考えるべきだろう。座布団5枚。
   

 「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」 くさばよしみ。中川学。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

過去2年で29版となっている。27万部突破と出ている。これは絵本になっている。小学校中級生から読めそうだ。簡単に読み終わるので値段が高い気がする。ただ、頑丈にできているので、長く家庭に置いておける本だと思う。この人の事はあまりにも有名になったので知らない人はいないと思う。この人の人相が全てを表している気がする。大人にもぐさっとくるもの。座布団5枚。読んでいるときに、日産のゴーンがテレビに映っていたので、彼に違和感があったね。
   

 「ただ栄光のためにー堀内恒夫物語」 海老沢泰久著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

30年も前に書かれたもの。彼の書いた名著と言っていい美味礼賛からもわかるように、非常に丁寧な取材と執筆が光る。堀内はジャイアンツ全盛期の9連覇の時のエース。そんなこと誰でも知っているのかと思ったが、知らない世代が多いので驚いてしまった次第。私の留学時代に最高の活躍をしているので、当時の騒ぎはこの本で知った。私は特にファンだったわけではないが、名前が同じなので、知識はそれなりにあった。スポーツ小説やドキュメンタリーは、だいたい面白いものだが、この本もごたぶんにもれず、とても面白かった。野球ファン、特にジャイアンツファンは必読すべきものだろう。なつかしい選手たちの名前がいろいろ出てきて、なつかしかった。座布団5枚。
   

監督

 「監督」 海老沢泰久著。文春文庫。1979年に初版新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いや〜〜〜〜〜〜、面白かったなあ。若い人は知らない?広岡達郎。まあ、その広岡がお荷物球団ヤクルトを優勝させた物語なんだけど、広岡を追い出したジャイアンツにリベンジする話ね。相手は長嶋で、その昔、サード長嶋、ショート広岡という鉄壁の三遊間と言われてた。何しろすげえ面白いから、野球の事わかるなら、読まなきゃ損損。座布団5枚。野球小説の金字塔って書いてあるよ。
   

 「高熱隧道」 吉村昭著。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初は1969年発行。黒部の太陽の黒部第四ダムの話でなく、戦前の黒部第三ダムの話。相変わらず丁寧な取材と研究が行われたことがよくわかる。多数の人が亡くなっているのだが、黒部という自然の驚異と人間との戦いのような観点。熱意があふれた作品で、座布団5枚。
   

 「漂流」 吉村昭著。新潮文庫。初刊は1976年。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から座布団5枚。感動巨編。人間と自然。寿命と人生。生きる力。生き抜く力。これらすべてを強烈に我々に教えてくれる小説。これは事実をもとに書かれている。歴史的記録に肉付けするには、この作者の地道な取材と研究が当然ながら必須の事。

物語は、1785年から始まる。天明。天明の大飢饉で有名な時代。浅間山が大噴火して2万人死んだりして、田沼意次の時代。土佐の船乗りたちが、難破して4人が鳥島にたどりつく。その後、大阪の船乗りたちが難破して鳥島にたどり着く。その後、鹿児島の船乗りたちが難破して同じくたどりつく。土佐の船乗り長吉を中心に話が進む。長吉は生き残り、13年後に生還を果たす。24歳が37歳になっていた。大阪の連中は10年、鹿児島の連中は7年。この絶海の孤島で生き抜いた。合計14人が一緒に生還するのだが、10人程度は途中で亡くなっている。

このアホウドリしか生存しない孤島で年半分は鳥たちはいない。火山なので木も草もない。まあ、書いていると切りがないのでやめておくが、この絶望的な状態からどうやって生還を果たしたのか。発見されたのではないのだ。自力で脱出したのである。鳥島ー青ヶ島ー八丈島ー伊豆と地図ばかり眺めていて地形を覚えてしまったよ。長吉は60歳で人生を終える。絶望的な、これでもかこれでもかの苦難、語る言葉もない感動の物語であり、作者吉村昭にも敬意を表したいのである。これを読んで感動しない人がいたらお会いしたいものである。

書籍コーナーへ        映画コーナーヘ

   

 「荷風と東京」 断腸亭日乗私註。川本三郎著。都市出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

分厚い本で読破するのに時間がかかった。当初は、いまいち興味わかず、チンタラであまり進まず、途中から俄然読むのが楽しくなり、終わらせるのがもったいなく進まず、という感じであった。作者の永井荷風に対するゾッコンぶりがよくわかる。また、永井荷風がどうして、いまだに人気があるのかこれもよくわかる。

明治後半から終戦後までの日記が主体であるが、大変に勉強になった。東京を知ることができる本だね。私はずっと多摩だから、麻布から向こう浅草、本所、隅田川、玉の井、向島、亀戸、市川辺りは全く知識がないので新鮮であった。今度行ってみたいと思う。当時の女性たちの姿も理解しやすい。知らないことも多く、驚いたことも多い。

関東大震災後の昭和元年から昭和10年くらい、東京は高度成長したんだね。そして、一番平和だった時代。日中戦争始まって、昭和13年くらいから、すでに食糧事情は悪く、よくまあそんな状態で日米開戦に向かったものだとひたすら驚いた次第。荷風が静かな批判的論調で書いているのですんなりと心に入った。震災後、大東京の中心は浅草から銀座に移ったのだけど、銀座の当時の全盛期は今とさして変わらないのでさらに驚いた。和光の時計台も昭和4年完成らしいし、三越前駅は三越が作ったらしいね。銀座線が浅草ー上野だったのが、銀座まで延伸したことによって、銀座の繁栄が確定したようだ。松屋、三越、松坂屋など勢ぞろいとなった。

まあ、そんなこんなで、東京に興味ある人や、荷風に興味のある人にとっては、心に響く本である。私は荷風に非常に興味がわいた。四畳半の本を買おうと思ったら、完全品切れ。あったとしてもとんでもない値段がついているのだろう。座布団5枚。作者の川本氏は、いまでも新聞で古い時の東京と比較したエッセイをよく書いているようだ。
   

 お迎えされて人は逝くー終末期医療と看取りのいま:奥野滋子著。ポプラ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読むべし。座布団5枚。
   

 「大晦日のローストビーフ」 秋山ちえ子著。23の物語。文化出版局。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今年春に99歳で大往生したエッセイスト。この本は1976年に刊行されたもの。40年前のものだが、全く色あせない。読み進むにつれて、味わいが深くなる名著。昔、TBSラジオで彼女の語りがあり、よく聴いていて、それ以来のファンである。ほのぼのとする彼女らしい本だ。座布団5枚。
   

 「りんごかもしれない」 ヨシタケシンスケ著。ブロンズ新社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

絵本。2013年絵本屋さん大賞。産経児童出版文化賞、美術賞、リブロ絵本大賞、などなどいろいろ獲得している。3年たっても売れ続けているのだからすごい。大人には簡単に読めてしまうのだが、1日経過してもいろいろ考えさせられる。考える頭があれば、世の中は果てしなくおもしろい。と書かれている。面白いかも。座布団5枚進呈。
   

 「ぼく東綺譚」 永井荷風著。岩波文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1937年作品。文庫は1947年出版。荷風の最高作品と言われている。映画化は3度されている。挿絵が素晴らしい。小説に合っている。読書家には座布団五枚。読書をあまりしない人には、この小説の良さはわかりにくいかも。断腸亭日乗を読んでいたので、私にはすんなり入ってきた。この昭和12年とか昭和の初めの時代ってすごくいいね。
   

 「人間の目利き」 吉村作治、曽野綾子対談。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から座布団5枚。いやあ、面白かった。全然知らなかったことばかり。どうしてイスラム教があれだけ拡大しているのかもよく理解できたし、日本とアラブの大きな差異も理解度が深まった。これを読まないと、世界でいろいろ起きていることが判読できないのでは?と思う。
   

 「F1地上の夢」 海老沢泰久著。朝日新聞社。1987年発刊。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者の取材能力が発揮されていて、いつも通りに海老沢タッチの読み物が面白い。本田技研物語って感じ。F1の歴史もわかる。1987年以降、どうなっているのか知らないのでこれから調べてみようと思っている。車好きにはたまらない書物だろう。座布団当然5枚。実に面白かった。私は自分の車のエンジンをふかしてばかりいて気分が高揚した。一度見に行きたいものだと思って調べたら、実にお値段が高いので驚いてしまった。自分の車を限度の260キロは怖いから無理としても、180キロや200キロ出してみたいと思って、サーキットを調べてしまったよ。残念ながら、私の年齢からちょっと、、、、。残念である。
   

 「欧米に寝たきり老人はいない」 宮本礼子著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ヨミドクター。ベストセラーのトップにあったので、読んでみた。読んでいて実に嫌になる。日本では好きに死なせてくれないのだそうだ。過剰なまでの延命治療。読んでいて思ったのだが、どうも全てのガンは医師のようだ。医師たちが発想や思考方法を変えてくれないと今のやり方が大きく変遷することは無理な気がした。こうなるとこの本のように世間に情報発信を続けていくしかないようだ。座布団5枚。どの人も、近しい人に死が迫っていると思われるから、読んでおいたほうが良いだろう。見守る側の問題も大きいと思った。
   

 「天狗争乱」 吉村昭著。新潮文庫。元は朝日新聞社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

毎度毎度、吉村氏の取材力、研究力、分析力に頭が下がる。真実を強く反映した小説を書き続けていた人。この小説をNHKの大河ドラマでやったら、1年では終わらず、2年はかかるだろう。たった150年前の話である。

それにしても、人はあそこまで非情冷酷になりうるものかね。若年寄の田沼など名前を忘れないだろうなあ。徳川慶喜については昔から、なんだかすっきりしない、はっきりしない人物だと思っていたが、その通りであった。どうも好きになれなかったんだよね。この天狗争乱の始末で、こんなでは幕府が崩壊したのも当然かもと思ったが、当時の多くの人々も同じように思ったようだ。天狗党の事は知っていたし、この中の人物たちも知っていたが、まさかあんな結末を迎えていたとは知らなかった。後半読み切るために寝床で読み過ぎて今は眠い。当然、座布団5枚進呈。
   

 「ナショナルジオグラフィックが見た日本の100年」 日経BP.2012年発刊。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

高価な本であるが絶賛したい。明治から現代までの日本と日本人がよくわかる。あまりに昔と今が酷似しているので驚く。写真は何気ないものが多く、その普通の写真が素晴らしく語る。座布団5枚。
   

 「不当逮捕」 本田靖春著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

30年前の作品。講談社ノンフィクション賞。読売新聞花形社会部記者と検察の内部闘争と新聞業界を巻き込んだ話。ハードな内容。強烈な印象。著者の丁寧な取材と調査の力作。ここで暗躍していた検事たちは皆すでに亡くなっていると思うので権力争いとは何だ?と思わせる。座布団5枚。
   

 「大君の通貨」 幕末円ドル戦争(このサブタイトルは頂けないけど)佐藤雅美著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本は、当初、講談社から出たらしいのだが、これが難解で、いろいろ加筆修正などをして文春から出したようだ。この本を一番読むべき人は、官僚たち。財務省、日銀、外務省のトップは全官僚に手渡して学びなさいと言うべきだね。この著者は相当に研究、取材などをしていて、力作、労作と言える。

こんな幕末の歴史なんて知らなかったなあ。学校で教えてくれたっけ?アメリカのハリス、ヒュースケン、イギリスのオールコックたちに詐欺のように幕府が富を強奪されたなんて。ゴールドラッシュが起きた話は以前聞いたことがある。ハイパーインフレが起きて、それが幕府を崩壊して明治維新が成功した背景なんてね。恐れ入りました。

ただ、アメリカとイギリスの政府たちは日本から富を強奪するなんてことは考えていなかったようで、国の命令に背いて、あの外交団が勝手にやったようだ。金や銀やドルとの交換比率で騙されたのだけど、通貨価値の重要さがよくわかる。幕府の役人たちも研究不足。唯一理解していたのが水野という人だが、ハリスやオールコックに幕府上層部は騙されて、彼らにとって目の上のタンコブ水野を左遷してしまうんだよね。この辺りの話になると、日本人なら皆頭にくると思うよ。座布団五枚。
   

 沈黙。遠藤周作

 AKI評価:☆☆☆☆☆

映画の影響で本が増版続きのようだ。古い本を持っていたのに誰かに持っていかれた。5千円に値上がりしていた。高校時代に読んで、それ以来、遠藤周作のファンになった。そのつながりで北杜夫のファンになった。強烈なインパクトを私に与えた本。映画が小説に勝るとは考えにくいが、映画の出来も気になるところだ。
   

 「君死に給ふことなかれ」 古川薫著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は怒ってこれを書いている。信じられない事なのだが、特攻機がなくなってしまい、最後は木と紙でできた練習機赤とんぼで出撃した話。驚くことに駆逐艦一隻沈没させたのであるけど。こんなことをさせた軍首脳部や国に対して不信の一語。私はこの手の本を多数読んできているけど若い人はぜひ読むべきだろう。
   

 「心を整える」 長谷部誠著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

150万部以上売れたベストセラー。印税は全て寄付のようだ。評判の本だったので読んでみた。私はサッカーについては、常識程度しか知らないのだが、彼の名前は知っていた。読んでいて、なるほど売れているのも納得できた。非常にさわやかな奴って感じだね。還暦前の人は読むべきだろうね。私のようなおっさんには、苦い思い出がよぎったりするものだ。彼の説いていることは極めて正論だね。
   

 1Q84:村上春樹著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

3巻もあるので読むのが大変だった。村上氏は私と同い年なので、ある程度理解できると思ったが、関係なかったね。発想がすごいね。話の組み立て方もね。途中で読むのを断念する人もいるようだが、あるところまで行くと、すっと理解できるようになる。座布団5枚としておこう。
   

 「バブル」永野健二著。日経。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

評判が高かったので読んでみた。著者は私と同い年だから、同じバブルの時代を生きてきている。バブルを知らない世代が増えてきている。どこまで人はアホになれるのかみたいなものがバブルだが、バブルの怖さは、全く関係ない生き方をしてきた人まで巻き込まれる事だと思う。この本は途中までいろいろ思い出しながら読んでいたが、一番良かったのは後半だと思う。バブルを知らない世代は読んでおくべきだろう。座布団5枚。
   

 クアトロ・ラガッツィ(天正少年使節と世界帝国)若桑みどり著。集英社。

 ( 上巻下巻 )。大仏次郎賞。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

名著と呼べる。著者はすでに他界しているが、千葉大名誉教授。さすがに大学の先生で読んでいるうちに次第に大学の講義でも受けている気分になる。16世紀に欧州に渡った伊東マンショ。千々岩ミゲル。原マルチーノ。中浦ジュリアンが中心なのであるが、特に彼らだけに焦点が当てられているわけではない。信長とキリシタン、秀吉とキリシタン、徳川とキリシタンという感じで、宗教と権力、宗教と時代性、そういった観点からの歴史書と言える。キリシタンを通して見た歴史書という感じかな。長編であるが、読んでいるうちに、知識欲が満たされていくという満足感が染み渡る。よく理解できないところは飛ばした。座布団5枚。
   

 「破獄」 吉村昭著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

時間待ちで本屋で見かけて購入した。吉村昭氏の著書で面白くなかった作品はないので安心感がある。風と太陽みたいな話。本当にあった話を小説化するのがこの作者の真骨頂で、その綿密な取材力には頭が下がる。この本も巨編である。座布団5枚は当然である。ドラマ化されて放映されたが、これから録画を見てみる。とてもこの小説を2時間以内にまとめあげるのは不可能だと思うのだが。。。
   

 「南鳥島特別航路」 池澤夏樹著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の本は読んだことがある。南鳥島、マーカス島と呼ばれているはるか彼方の島。ただ、この本はそれだけでなく、12の地域が取り上げられている。いろいろ学ぶことができた。知らないことが多かった。すぐれた旅行記になっている。座布団5枚。
   

 「一汁一菜でよいという提案」 土井善晴著。グラフィック社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

お客さんから頂いたもので、しばらく置いておいた。読みだしてから、すぐにわかったね。これは本当に良書だってね。これ読みだしてから、味噌汁を作るようになったけど、いまだに満足の味が出ない。それはそれとして、著者も彼の父親も有名な料理家だよね。この本を読み進むにつれて、日本の食文化は当然として、日本文化そのものの世界にまで入っていく。器の世界、農の世界、私も襟を正して、講義を受けている気分になった。読み終わった後の爽快感も良い。先日、NHKのクローズアップ現代にも登場していたね。座布団は当然5枚です。
   

 「勘定奉行・荻原重秀の生涯」 村井淳志著 集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

誰かがえらく褒めていたので買いためておいた本の一冊。荻原重秀という人は知らなかったなあ。有名な天才経済官僚となっている。実際、読んでいると、バリバリのやり手で最後は勘定奉行になっている。新井白石や折たく柴の記は知っているよね。教科書に出てきていたから。歴史とは勝者の書き方次第でどうにでもなる。新井白石は、変な、嫌な奴だったとこの本では書かれている。新井白石が荻原重秀を追放した。この著者の大学の先生は、学生の歴史や社会の教科の不人気ぶりを憂いていて、文学者がいるから歴史は面白いので今の教育と教科書を嘆いている。江戸時代の経済の事に興味がなければ、読んでも面白くないが座布団5枚としたかったのだが、この本の後半を読み終えると、これはやはりこの分野に興味がなくても座布団5枚としたい。なんとも読後に気持ちに何かが残ったので。
   

 駅格差。首都圏鉄道路線研究会。SB新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

待ち合わせの時に本屋に並んでいたので鉄好きの私はすぐに買ってしまった。しかしこういう組織があるとはね。だから一人で書かれたものではない。ランキング好きの私には興味津々であった。よくまあたくさんのランキングを作ったもので面白い。駅そばのランキングも時代の変遷で様変わりになっていた。半ば以降は不動産などが絡んでくるのでビジネス要素の比率が高まる。今は西でなく下町から千葉などの東にいろいろシフトしているようで知らなかった事を知るのも面白い。座布団5枚。
   

 「母」 三浦綾子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1992年作品。有名な小説「氷点」を書いた人だね。すぐに小林多喜二の話だとわかった。多喜二の母親が作者に語る形式で物語が進む。多喜二は「蟹工船」を書いた有名な人だよね。警察で拷問で殺されるという恐ろしい結末を終えた人。その拷問のひどさは、後々、その時の特高の刑事が狂って死んだことからも推察できる。権力を持った組織の冷酷さがわかる。この母の慈愛に満ちた多喜二の一生の話には皆心打たれる。感動の小説。国民必読の書かもしれない。かつてこんな時代があったのである。座布団5枚。
   

 「食堂かたつむりの料理」 オカズデザイン、小川糸著。ポプラ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

短時間に読めてしまう本。料理の写真が素晴らしく良い。デザインも良い。お話も良い。気持ちがホンノリする。レシピも出ているが、とても素人の私には作れない。材料がちょっとすごい。ただ、お茶漬けは是非作ってみたい。デスクに置いておきたい本。座布団5枚。
   

 「つかこうへい正伝」。1968−1982.長谷川康夫著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞。演劇の事などわからないので、しばらくは読んでいてもピンとこなかった。だが、途中から俄然と読書が輝いてきた。なつかしい、今でも活躍している俳優たちも多数出てくる。つかこうへいの破天荒な生き方を読んでいると、黒沢監督とダブってきた。ああいう天才たちは、皆似たようなもので一般人とは異なるようだ。最後は蒲田行進曲の映画について語られている。裏話でいろいろ知った。紀伊国屋ホールであれだけの人を連日集めたというのはすごい。読後感は充実しており、爽やかさもある。当時、演劇を見に行けば良かったと後悔している。今は誰の演劇がいいのかも知らないのだけど。非常に厚い本で読みごたえがある。あんな時代があったのである。熱海殺人事件を知らないので、映画でも見たいと思ったが、とんでもない値段になっていた。文句なしに座布団5枚。
   

 「草原の風」() 宮城谷昌光著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いやあ、いつも中国の歴史小説を読むと楽しいと思う。この小説は、後漢の光武帝の話。有名な人で教科書にも出ていた記憶がある。どの年代の人が読んでも面白いと思うが、将来に夢を描いている高校生や大学生には優れた本と言える。中国人の名前が似通っていて覚えにくく、地名もわかりにくいのだが、読んでいくうちに次第にわかってくる。読んで楽しい小説で時間を忘れる。しかし、光武帝は、紀元0年頃の皇帝で、中国の歴史の深さを知る。戦争ばかりやってきたんだなあ。三国志はこれよりもっと前の話なのだから、恐れ入る。本当に日本陸軍は中国を占領できると思ったのだろうか?だとしたら、私には信じられないね。非常に懐の深い国だ。
   

 「ヒトラーのオリンピックに挑めー若者たちがボートに託した夢」ダニエル・ブラウン著。ハヤカワ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

それはそれとして、この本の原題は、The Boys in the Boatとなっている。このほうがすっきりしている。若者たちの連帯感、友情、信頼感などがボート競技の素晴らしさなのであるが、読んでいくうちにわかる。日本ではこの本はあまり売れなかったようだが、アメリカでは220万部売れて、映画化も決定しているそうだ。このドキュメンタリー番組が去年アメリカで放送されている。NYタイムズのベストセラーリストに107週連続ランクイン、アマゾンアメリカの座布団5枚の数は、1万5千近いようだ。80年前も今も、若者の五輪への想いは変わらない。感じよ、ボートに懸けたこの情熱を、と推奨されている。感動する。若い人たちに読んでもらいたい。座布団5枚。
   

 「歌枕」 中里恒子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

文庫本なのに1200円プラス税だって。40年以上前の作品。読売文学賞。静かに流れる時間を感じさせる作品。女流作家が好きな人や、小説や文学の好きな人には、座布団5枚だろう。
   

 「日航123便:墜落の新事実」 青山透子著。河出書房新社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日本だけでなく、世界のどこでも同じ。権力と組織は、闇の世界。ありえないというのは、単なる思い込み。国民必読の書。座布団5枚。
   

 「人間の証明」森村誠一著、角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1975年初版のミリオンセラー。今まで800万部売れている。翻訳版を入れると3000万部とも言われる。映画、ドラマにもなっている。映画では故松田優作が演じている。不朽の名作と言われる。東山演じる棟居(むねすえ)刑事のスタートはこの小説。還暦以降の人の99%がこの小説と詩と歌を知っている。母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。で始まる西条八十の詩は当時大流行となった。何十年かぶりで再読したのだが、感じた事がある。それは、今のミステリー作家たちの書くものの土台に、森村誠一作品や松本清張作品や横溝正史作品の影響が強くあるということ。そうやって進化して今の作品群があるのだと思う。あえて座布団5枚にしたのは、私の周りの若い人たちが誰もこの小説や詩を知らなかったからである。若いと言っても、55歳以下の人たちであるが、感想を聞いてみたいと思ったのだ。ケチをつける批評はあるけど、それはどんな小説でもそうだし、切りがないから、特に気にしない。
 

 「戦争と平和」百田茂樹著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

意外と薄い本だったので驚いた。彼の書いていることは至極まとも。やたら彼を叩く向きがあったが、彼の言い分のほうが正しいだろう。あの永遠のゼロの販売にあんなに苦労していたとは知らなかった。私はベストセラーになる前に読んで良かったので、正直驚き。彼はよく勉強している。とりあえず座布団5枚。
 

 「魂でもいいから、そばにいてー3.11後の霊体験を聞く」奥野修司著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ベストセラーになっている本。不思議でかけがえのない再会の告白、奇跡と再生の記録となっている。霊体験など信じないと最初から言われてしまったら元も子もないのだけど、命とか人生とか、つながりとか、いろいろ考えさせてくれる。あちらの霊の現象は以前から聞いていた。宮城、岩手では当たり前のように話されていた。皆、頭がおかしいと思われるので、黙っていた人も多い。著者は正確を期すために、同じ人物から三度話を聞くようにしたようだ。皆、忘れてしまうものだから、やはり読んでおくべきだろう。なお、多くの読者が、かわいそうで、泣いてしまうそうである。座布団5枚。
 

 「ぼくの東京全集1951−2016」小沢信男著。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

銀座生まれの高齢な方である。お名前は聞いたことあったのだが、先日、深夜にこの人の話を聞く機会があり、とても興味を持っていた。読む人の年齢層や、育ちや、いろいろからむけど、面白かった。いろいろな知識を得られて、嬉しい感じ。江戸、東京の今昔を知ることができた。座布団5枚。
 

 「日の名残り」カズオ・イシグロ著。早川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

例のノーベル賞作家の小説。彼は、完全にイギリス人だね。そんな視点を感じさせる。ダウントンアビーを見てて良かったと思った。頭で重複して読んでいったので違和感がなかった。日本人には馴染みにくい話だけど、静かな文体でなかなか良かった。これの映画があるんだね。知らなかった。映画が小説を抜けるとは思わない。座布団5枚。
 

 「蒲団」田山花袋著。青空文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

皆が教科書で一度は目にしたことがある作品。私小説だね。実在の人物もきちんといる。この著者の屈折した恋愛が描かれている。意外に心に残ってしまった作品なので、座布団5枚としておこうと思う。
 

 半七捕り物帳。岡本綺堂著。光文社

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いやあ、面白かった。大正6年から中断をはさんで、昭和12年まで続いたもので、全6巻。もう、残り5巻読むつもりだものね。あの時代、テレビもないし、この小説が人気を博したのもよく理解できる。テレビや映画でも作品化されたが、昭和6年に出た野村胡堂の銭形平次ほどの人気は出なかった。新聞記者が、著者の事だと思うが、隠居した半七にいろいろ話を聞いて筆記していく形をとっており、何篇もの事件が取り上げられている。当時の江戸文化、江戸の町、を読んでいるだけで描ける。最初は普通に読んでいたのだが、そのうち、漫画の時代小説でも読んでいるような気分となり、読書の楽しさを知る。座布団5枚。気楽に読めて、楽しい。
 

 「ヒルビリー・エレジー」J.D.Vance著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2016年の作品が翻訳されたのが2017年3月だったので、ちょっと時流から遅れてしまった感じ。副題がそのまま表している。「アメリカの繁栄から取り残された白人たち」となっている。今のアメリカとトランプの事を知りたいなら、テレビ解説など聞くよりもはるかに有益。座布団5枚。
 

 「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

評判になっていた本だったので、本屋で見つけて買った。いろんな世界があるもので、いろいろ知識が増えた。一番心に残ったのは、京大の学長との面接のときの彼の心の場面。そして、後半、彼のような地味な研究が報われる筋がとても良かった。青少年に読ませたい本。座布団5枚。
 

 「銀河鉄道の父」門井慶喜著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

直木賞作品。もともと宮沢賢治が好きだったので、本屋で見かけて購入。彼の生涯のこと全くわかっていなかった。彼の亡くなった後なんだね、有名になったり、著作が売れるようになったのは。知らなかった。一周忌に岩手日報が掲載した雨にも負けず、、が後半に出てくるのだが、いろいろ知った後なので再読すると新たな感覚を得た。後半では、涙が出てきて困った。座布団5枚。
 

 「半七捕物帳ー2」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

親分、あ〜〜、続きを読んでしまったよ。困るじゃないか。寝床で面白くて読むから寝不足だよ。浮世のゴタゴタを忘れて、時代をタイムスリップして楽しい。座布団5枚。あとがきの森村誠一の説明がわかりやすいと思うよ。
 

 「津波と人間ー地震雑感。寺田寅彦随筆選集」千葉俊二・細川光洋編。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

寺田寅彦の名言と言われる天災は忘れたころにやってくるは、あまりに有名。私は寺田寅彦のファンである。彼の書いた随筆、エッセーがどれもすばらしく、愛読してきている。とても心に残る。彼は高知の人で、夏目漱石の門下生。東京帝大の物理学の教授。つまり、理系の頭ながら、文体も美しいと言うことで、すばらしいのである。彼は昭和10年に亡くなっているのだが、この昭和の初めに書かれた津波と人間、地震に関する随筆を読んでいると、この当時の彼の分析が、そのまま東日本大震災にまでつながるのである。関東大震災についても、安政の大地震と同じような経緯となっていて、つまり、人間はいつまでたっても変われないとしている。科学的見地、国民気質の見地から分析していて、警告を発しているのだが、今回も同じような事になった。人も国も50年、100年先に必ずやってくるものに対しても、ずっと先の事などすぐに忘れてしまうもの。記念碑なるものについても触れていて、江戸時代から大津波のたびにそのようなものが作られるが、いつしか旧道になり、草に隠れて朽ち果てている。津波後は皆高台に移る。だが、いつしか、また便利さを求めて、平地に降りてきて家を建てる。どうしてそうなってしまうか、その対策は、なども触れられている。今こそ、彼の分析と明言を振り返るべきだろう。最後に編集者のあとがきが出ているが、これも理解に役立つ。当然ながら座布団5枚。
 

 「カメラはじめます」こいしゆうか。サンクチュアリ出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

漫画ですね。この出版社は変わったところで、本を読まない人のための出版社となっている。出版不況の中でいろいろ画策している感じで好感が持てる。この本は出版されて1ヶ月で2万部も売っている。1月から2月だから今でも伸ばしているのだと思う。カメラ業界に活を入れたい。キャノン、オリンパス、ニコン、リコーたち、いくら良い製品を作っても、高級カメラ業界が不況に落ち込み、スマホに乗っ取られると言うザマを演じたのは、これらのメーカーの自業自得である。営業なのか企画なのかわからないが、ソフト面が全くダメ。昔から、小さな字でメガネなしでは読めないような解説書をつけて、初心者たちがわからないような用語も平気で使って煙に巻くようなことをやってきた。そう、そしてそれは今でも続いており、サービスという感覚がない。聞きに行けば、電話すれば教えてくれるのだから、なんでも大きな説明書でも作ればいいのにと思う。そして、そういうのを見越して虎の巻みたいな副次説明本が他から発売される。それでもメーカーの書いたものを多少わかりやすくしただけのもの。この本を書いた女性は、同じような経過をたどり、カメラはむずかしい、わからないといって、カメラをしまいこんでいた。それが目覚めて、カメラの楽しさにたどりつくストーリー。副題を見れば、覚えることは三つだけとなっている。自業自得のカメラ業界に猛省を望みたい。座布団5枚。
 

 百貨の魔法:村山早紀著。ポプラ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

株の本を毎週本屋でゲットしているので、書店内を歩きながらチラチラと眺める。本の置き方がわからない店員ばかりいる書店は最初から失格なのだが、この本屋は私が時々買ってしまうので置き方がうまいのだろう。本屋大賞ノーミネートとかなっている。著者は女性で、おそらく選んだ書店員も女性かなと感じる。文体から小説含めて女性的。なかなか良い本であった。心が洗われる感じの本である。表紙の絵もなかなか良い。私もデパートに足を向けたくなった。座布団5枚。
 

 「盆まねき」富安陽子著。偕成社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者がラジオで語っているのを聞いていて興味を持って彼女の本を読んでみることにした。彼女は著名な児童文学者で多数の童話を出していて賞も多数もらっている。富安陽子が描く日本の夏。毎年8月がくるとなっちゃんの家族はお盆を迎えにおじいちゃんの家へでかけます。と表紙に書かれている。童話だと思って読んでいたが、最後には、大人向けと言ってもいいような童話だとわかる。心に残る、子供には読んであげたい本。座布団5枚。
 

 「寂しい生活」稲垣えみ子著。東洋経済。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

元朝日新聞の記者だったようで、やめてからは、いろいろテレビや執筆などをやっているようだ。夜中のラジオで彼女がいろいろしゃべっていて、おもろい女だなあ、と思ってこの本を買ってみた。とても面白い。目からうろこも多い。座布団5枚。
 

 「サピエンス全史」上巻。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

評判が高かったので読みたかったのだが、中古も値下がりしないくらいの人気なので、読んでみた。250万年前にヒトが進化とか、50万年前にネアンデルタール人がどうのとか、1万3千年前にホモサピエンスが唯一残った人類とか、そんな類の話で、犬は1万1千年前にすでにペットだったとか、今は、+2018年だから、あまりの悠久の時間を感じてしまい、あらためて目を白黒だった。そういう話が進むのかと思ったら、次第に話は複雑となる。タイトルを改めて見ると、文明の構造と人類の幸福となっているので、納得した。下巻を読むのも楽しみであるが、高評価の理由がわかる。知識を得る事、学ぶこと、知らない事を知る事、など脳へ新鮮な空気が入ってくる感じ。座布団5枚。
 

 「砂のクロ二クル」 船戸与一著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆

サンデー毎日に1年半掲載された小説。各種の賞をとっている。書評も評価が高い。作家は、日本人全てに読んでほしいなどと書いている。中東の少数民族クルド人。その独立のための武装蜂起を話の中心にして、クルド・ゲリラのハッサン、革命防衛隊副部長ガマルと隊員のサミル、複雑な過去を持つ女シーリーン、そして日本人の武器密輸業者「ハジ」、そして別人だが同じ名前を持つもう一人の「ハジ」の思惑と戦いを描いた、1980年代末期のイランを舞台にした作品である。という説明になっている。えらく読むのに時間がかかった。全てを含めれば、座布団5枚ということになるのだろうが、私が勧めるかというとわからない。ただ、言えることは、この作品完成にかかった時間のすごさと作者の熱意がすごいということ。
   

 サピエンス全史・下巻。 河手書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

上巻からの流れだが、一気に展開が変わっていく。知識を得ることの楽しさを教えてくれる。非常によく分析していて、感心する。未来の人間について触れているのが印象的だった。いちいち説明するより読んでもらった方がいいだろう。座布団5枚。
 

 「熊撃ち」 久保俊治著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前、プロフェッショナル仕事の流儀に出てた人で、それを覚えていたので、読んでみた。全く知らない狩猟の世界。だが、男たちはDNAのせいなのかもしれないが、血が騒ぐ。狩猟犬のお話。アメリカでの狩猟。知らない話ばかりなので、とても興味が尽きなかった。座布団5枚。
 

 「写真の裏の真実」 岸本達也著。幻戯書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ラジオ聞いていたら、読んで欲しい本に取り上げられていたので読んでみた。テレビのドキュメンタリーで放送されていて、各種の賞を受けている。副題は、硫黄島の暗号兵サカイタイゾーの選択となっている。持ち主を探して欲しいと日本人夫婦の写真をアメリカ人から預かってからの追跡と結果と思いを巡る旅。あの硫黄島で何があったのか、真実を探る。重い命題を我々につきつける。座布団5枚。
 

 「母・野際陽子」 真瀬樹里著。朝日新聞出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私は、「赤いダイヤ」以来の野際陽子ファンなのだ。それで、本屋でウロウロしていたら、この本があったので買ってしまったのである。野際陽子ファンには座布団5枚で決定だろう。ファン以外の人にはわからない。
 

 「未来の年表」 河合雅司著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ものすごい部数が売れているようだ。友人に勧められていた。彼の書いている事、分析していることは、私も同様の思いだったので、全く違和感がなかった。ただ、彼の見方に、非常に感銘する点も多かった。読むのにすごく時間がかかった。理由は読んでいるうちにあまりの暗さに愕然とするばかりだったからである。ベストセラーなのだから国民の方がはるかに事態の深刻さを理解している。本の中では中高生あたりでも認識が進んでいるようである。私が、ウンザリしたのは、この国の政治家たちはいったい何をやっているのかという怒りである。議員増、カジノ法案、タバコ法案、何やってんだかと思う訳。目の前の事ばかり。首相はこの本を読んでいないだろうなと薄々感じるが、大多数の政治家は読んでいないのだろう。まったく、遊離している。どうして、皆真剣にならないのか考えていた。東京に住んでいると事態の進行が読めないのだと思う。町は賑わっているし、若い人たちも多く、いずれ迫る国家存亡の危機など実感がわかないのだと思う。ただ、東京は最後の砦で、東京がこけたらそれはもう手遅れってことだね。この本の最後に処方箋が出ているのが救いと言える。座布団5枚。
 

 「未来の年表2」 河合雅司著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

引き続き、気分が落ち込んでしまうので、読み終わるのに時間がかかってしまう。国民必読の書だと思うのだが、彼の意見に賛成の私ですら、東京を見ていると実感がわかない。おそらく、大多数に危機感がないだろうね。だから、いつものことだが、どうしようもない状態が続々と出現して、慌てふためいて、対策どうのこうのということになるのだろう。政治や行政や東京都の動きを見ている限り、悲観せざるを得ない。そういえば、この本に出ている森林の事だけど、中国が最近、大量に木材を輸入してくれているようで、なんとかなりそうだ。面白いコメントがあったね。中国人は、自然も克服しようとして、日本人は自然と共存しようとする、だから、中国には森林が育たないとかね。座布団5枚。
 

 「水神」 帚木蓬生著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

福岡久留米辺りの筑後川沿いの農民たちの水との戦いを描いたもの。新田次郎賞受賞作品。江戸時代の実話からもってきたもので、優秀な作品と言える。座布団5枚。
 

 「夢の燈影」 小松エメル著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

またまた新選組。新選組がらみは、もう15冊以上、読んでいるかな。それぞれに味があっていいのだけど、司馬遼太郎と浅田次郎の著書が好きだったね。新選組ファンには座布団5枚だけど、そうでない人にはわからない。今回は、知らなかった隊士たちを知った。
 

 「桑港特急」 山本一力著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

あかね空以来の著者の本。父島ー上海ーハワイーサンフランシスコを結ぶ壮大な冒険物語。ジョン・万次郎が出てくるので江戸時代後期の話。アメリカはゴールドラッシュ、大陸鉄道敷設前。とても面白かった。気楽に読書を楽しもうと思う人には、座布団5枚。
 

 「ナチスの楽園」 エリック・リヒトブラウ著。徳川家広著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

う〜〜む、なかなかの読み応えであった。翻訳もなかなかわかりやすい。しかし、知らなかったなあ。戦後、多数のナチの連中がFBIとCIAに雇われて、履歴を改ざんしていたとはね。そのナチたちを司法が追うのだが、それも1975年ころからつい最近までなんだよね。全然知らなかった。当時のアメリカがいかに共産主義を恐れていたかの証左なのだが、私には新しい知識。おそらく、多くの日本人が知らないのではないか?何かの書評で称賛されていたので読んだのだが、非常に考えさせる素晴らしい本と言える。久しぶりに読み応えがあった。座布団5枚。
 

 「かみさまは小学5年生」 すみれ。サンマーク出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これほど、☆5と☆1が分かれている本もないなあ。キュープラ・ロスだったかなあ、はっきりしないけど、インドで3歳か5歳までの子供に前世の記憶を聞く研究調査があったので、意外と私にはすっきりと入った。こういったものに興味がない人や信じない人は読むべきではないだろう。そんなバカなで終わるだろう。だが、信じる者にとっては、また、心に悩みを抱いている人はやはり読むべきだろう。彼女と会って話をすると皆すっきりした顔をして帰ると言うのもよく理解できる。私には座布団5枚。
 

 「アメリカひじき・火垂るの墓」 野坂昭如著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

直木賞受賞作。私が19歳の頃に発売された本で、400円と書かれている。引きずり込まれるように読んだ。女性はあまり好まないかもしれないが、私は男なのでわからない。野坂昭如は、世間を騒がせた人だけど、文筆はさすが。私が驚いたのは、短編の火垂るの墓をあれだけの素晴らしいアニメにまとめたことだね。高畑勲氏は、すごい人だ。アニメが書物を凌駕するなんて初めてだ。座布団5枚。
 

 「死んでたまるか」 伊東潤著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なかなかの力作という感じ。幕末の大鳥圭介を取り巻く、土方歳三、榎本武揚、勝海舟を中心に物語は回る。函館の戦いに多くを割いているが、ここまで詳しく書いたのを読んだことがなかったので勉強になった。当時の海軍の砲撃戦なども知った。いろいろな俳優が歳三を演じてきているが、ぴか一はやはり山本耕史だろう。いつも彼がイメージにある。勝海舟は、やはり、ピタリ、武田鉄矢のイメージだね。大鳥圭介が主人公の作品は、たぶんないから、これが初めてではないかね。読み応えのある戦記だったし、彼らの最後まで解説されている。座布団5枚。
 

 「サカナとヤクザ」 鈴木智彦著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ラジオで著者が出演していて話を聞いていて、とても興味を持ったので、さっそく買って見た。密漁に焦点を当てているのだが、漁業全般にわたる。日本の漁業の実態がよくわかった。とんでもない世界ではある。彼がすごいのは、とぼけて、実際に潜入してルポを書いている事で、これが他のルポ物とは異なる。下手すれば殺されるような世界であることは読んでいればわかる。この本には、我々が知らない事実が多数出ていて、衝撃的でもある。座布団5枚。
 

 「暖簾」 山崎豊子著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私が8歳の時に発表された作品。やはり、山崎作品は裏切らない。久しぶりに読み過ぎて寝不足。大阪商人の物語。著者の実家が昆布問屋だったので、それが題材になった感じ。大阪人は昆布好きで書かれているけど、昆布と言えば、富山だとばかり思っていた。大阪で昆布にお目にかかったことないなあ。今でも昆布が皆好きなのかね?私にはお茶漬けに入れるものというくらいの感覚なんだけど。面白かったので、当然座布団5枚。
 

 「スッキリ中国論」 田中信彦著。日経BP。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

田中氏の論調も年ごとに明確で素晴らしくなった。知らなかった事も多く、非常に勉強になった。これを読まないと中国人と商売はできないだろうね。しかし、IT、スマホ社会の進歩は驚異的で、日本は10周遅れの印象だね。進歩する地合いがあったから、日本と全て比較するのは正しくないかも知れない。読んで損はない。座布団5枚進呈。
 

 「人間晩年図鑑1995−99年」 関川夏央著。岩波書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山田風太郎の臨終図巻という優れた作品があり、ここにも取り上げたが、それを継いだ感じの関川氏の書。非常に良い。うーむ、そんなことあったのか、うーむ、そうだったのか、うーむ、この人知らない、とか、当時そうだったのか、といった類で興味が尽きない。座布団5枚。
 

 「1941 決意なき開戦」 現代日本の期限。堀田江理著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

人文書院。女性の書くこの手の本には非常に注目している。東大かな加藤女史もそうだったし、男と視点が違っていて、とてもフレッシュだ。勝ち目のない戦争にどうして突っ込んでいったかの分析なのだが、全員勝てないだろうと考えていたのに開戦してしまったという点。これは、最近の日本にも同じように当てはまるとしている。彼女は、プリンストンを出て、オックスフォードで博士となり、4年位教えていた。まだ40代後半かな?当初、アメリカ人向けに書かれたもので、それを日本語に翻訳して出版している。興味津々で読み進んだ。私の知らなかった事実も多く非常に格調の高い分析である。座布団5枚。
 

 プロ・トレーダー

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日経BP.翻訳の森山氏の訳がとても良い。座布団5枚。
 

 深海の使者 吉村昭著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

戦時中の潜水艦の話。この作者を私は極めて尊敬しているのだけど、やはりこの人はすごい。執筆するにあたり、取材の積み重ね、資料の徹底した分析、すばらしい。彼が戦記物を書かなくなったのは、取材する対象の人たちが徐々に亡くなってきて、完璧な執筆ができなくなったからだという。大多数の戦記物で潜水艦を扱ったものは、少なく、深海に沈んで命を落とした人たちへの鎮魂歌の意味合いもあるのかもしれない。日本からドイツへの往復なんて考えられない。片道3ヶ月だよ。半分以上撃沈されてしまうのだけどなんともすごい話。戦争末期に建造された特殊大型潜水艦にはアメリカもびっくりして徹底的に調査されたあと、沈められた。攻撃機3機搭載が可能で、これでパナマ運河攻撃やニューヨーク爆撃を計画していたと言う話には私も驚いた。読後感満点で当然ながら座布団5枚。
 

 大本営が震えた日 吉村昭著。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらず強烈な読後感を残してくれる。この本も綿密な取材にもとずいている。彼は自分の足で回るのだそうだ。しかし、マレー侵攻作戦がそんなに苦労したものとは知らなかった。簡単にシンガポール陥落だとばかり思っていた。タイ軍と一時戦闘状態だったんだねえ。その他もろもろ他では扱っていない情報が満載で、文句なしの座布団5枚。
 

 向田邦子との二十年 久世光彦著。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今でも向田ファンが多いのかわからないけど、向田ファンドと久世ファンにとっては、座布団5枚だろう。そうでない人には面白いかわからない。
 

 バスを待って 石田千著。小学館文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この作品はラジオで取り上げられていたと思う。バスが大なり小なりからんでいる短編集20で構成されている。すごくいい。読んでいて、気持ちが入り込んでいく。文句なしに座布団5枚。
 

 町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう 角川文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

評価1をつけるひとは常にいるのだが、買う前にチェックして、さすがの悪口にためらったが、構わずに読んだ。とても面白かった。確かに都内にはまだ多数の町中華はあるのだが、郊外ではほとんど姿を消しているね。府中あたりにはあったけど、近代化したものだから、絶滅したと思う。そう言えば、子供の頃、ラーメン30円と35円の店が競争していたな。昭和のおっさんたちにとっては、座布団5枚は当然。
 

 工藤写真館の昭和 工藤美代子 (著)。講談社文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

講談社ノンフィクション賞。戦前、戦中、戦後を生き抜いた一般民間人の生活を通して、昭和を描いた作品。読み終わってから余韻が残る。座布 団5枚。
 

 幕末まらそん侍 土橋 章宏 (著)。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そろそろ映画公開されるようだ。映画より小説のほうが断然面白いのは常なのだが、ラジオ聴いていたら、この本が面白く紹介されていた。それで、興味をもって読んでみた。気楽に読めて、楽しく読めて、なかなか良かった。この幕末のマラソンだが、安中から軽井沢の熊野権現までなのだが、去年この辺に行ったことがある。結構、きついと思うなあ。座布団5枚。
 

 さるすべりの花のように 島崎保彦著。K&Kプレス。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

国家放送が土曜の夜におじさんがわからない番組を長くやっているので、ラジオの選局をしていたら、ラジオ日本が大人のジャズタイムというのをやっていて、これを聴いてから毎週楽しみに聞いている。この番組の前の女性DJの番組も良い。島崎氏はジャズタイムのDJをやっている。80歳を超えている人なのだが、アシスタントの紗理もすごく良い。根強いファンが多く、有名なミュージシャンたちも聞いているようだ。その島崎氏の本なのだが、なるほど、育ちが良いというのはこういう人なんだなと思う。楽しく知識も得られるし、座布団5枚。
 

 背中の勲章 吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらずの綿密な取材によるドキュメンタリー系小説。日本兵捕虜第一号はサカマキ海軍少尉であることは知っていたが、この話は、知らなかった第二号の中村一等水兵の事である。昭和17年の最初の日本空襲の時に、太平洋上に放たれた多数の哨戒艇(と言っても漁船の改造)のうちのひとつで、中村氏を含めて5名が、捕虜となった。そして、捕虜生活は4年に及んだ。最後には捕虜総勢3千人が帰国するのだが、それは、昭和21年11月。反乱を恐れて、敗戦は知らされてなかった。富士山を見ても、まだ日本が勝ったのかと思っていたらしいので、洗脳の恐ろしさを知る。富士山から米軍機を見て初めて日本の敗戦を知る。知らない歴史を教えてもらった。この本は、45年前のものである。いまでも色あせない。座布団5枚。
 

 東京の下町 吉村昭著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なかなか読み応えがあって良かった。これは30年前に書かれたものであるが、違和感はない。当時、著者は若い人、東京以外の人たちからの読後感想に手紙を多数もらったようで意外だったと書いている。氏の故郷のある日暮里を中心として、上野、根津、谷中辺りの事が書かれている。はるかに歳上の著者であるが、私の思い出ともダブルところがあった。若い人に人気があったのは、彼らの親から聞いていた話とダブっていたからのようだ。読んでいてとても楽しい、ほろずっぱい気分になった。氏は、昔は良かったという類の話には異議を唱えている。座布団5枚。
 

 第一阿房列車 内田百闥。新潮

 AKI評価:☆☆☆☆☆

先生は、夏目漱石の弟子で芥川龍之介たちの友人でドイツ語教授。この人の事を知ったのは、黒沢監督の最後の作品、まあだだよ、を見たからだ。ノラやも有名だ。映画に出てくる松村達雄が好きな俳優で記憶に新しい。先生を慕う学生は多く、それが題材となっている。この人が昔のてっちゃんであることは知っていた。初めて読んだ。最初は気難しい人だなあと思いながら、昭和25年ごろの鉄道紀行を読んでいたのだが、そのうち、文体にも慣れて、なるほど、さすがに凄い人で、読み進むにつれて、引き込まれていった。なんだかんだで名著だと思う。しかし、大酒のみで煙草をプカプカ吸って82歳で老衰死。人の寿命というものはわからないものだ。座布団5枚。
 

 手鎖心中 井上ひさし著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これが面白いのかなあと読んでいたのだが、最後にとんでもない結末にびっくり。最後の1ページで直木賞受賞だったのではないのかなあとすら思わせる。さすがにすごい作者で、この流れが例の吉里吉里人や東京セブンローズなどの名作につながっているのだろう。座布団5枚。見事な終わり方。
 

 先任将校 松永一郎著。光人社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

軽巡名取がフィリピンーパラオ間で撃沈。生き残った200人くらいでカッターという船三隻で2週間かけて、フィリピンに漕ぎつく物語。途中、疲労や食料不足などいろいろな要因で何人も亡くなる。星を眺め、潮の流れを読みながらの航海。カッターは、通常45人が定員らしい。海難事故がどうして起きるのか、食料などでなく、希望を失った時に死がやってくるとか、到着後の話とか、最初は説明文が多く、海に詳しくない人にはわかりにくいのだが、その後、圧倒的迫力で迫ってくる。史実というものの強さだろうか。座布団5枚。
 

 海霧 原田康子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

吉川英治文学賞。まだ上巻しか読んでない。久しぶりの骨太作品。新聞に2年にわたって掲載されたもの。幕末から明治時代を描いている。最後は昭和初めまで繋がるようだ。佐賀の男が北海道に渡る。当時、鳥取藩とか佐賀藩とか北海道に移住した人たちが多数いたようだ。廃藩置県となり、複雑になるのだが、石炭掘りが最初なので、男の物語だとばかり思っていたが、上巻の終わりから、徐々に女性に焦点が移り、帯には、北辺の地で凛々しく生きた女三代の物語となっていた。今の釧路の開拓史みたいなもので、明治時代の人たちのたくましさを感じる。実に読みごたえがあり、座布団5枚。今までドラマや映画にならなかったのが不思議だが、おそらく大河ドラマとか朝ドラとか、そのくらい長い時間かけないと無理だと思う。
 

 海霧・下巻 原田康子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

単行本は上下。文庫本は上中下。上巻で褒めたけど、下巻も面白かった。骨太。これをドラマにするには、やはり大河ドラマくらいにしないと無理だろう。さすがに登場人物が増えてしまい、最後の方は、スピード上げて書き上げた感じ。新聞版から本にするのに追加付け加えしているようだ。幕末明治から昭和の戦争が始まるまでのお話し。読みごたえあり。やはり座布団5枚。
 

 東京の戦争 吉村昭著。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読んでいるうちに、これ読んだ事あるかもと思ったら、本当に以前単行本で読んでいた。戦争を知らない世代は巻末の私の年譜というのを先に読むといいらしい。著名人が、第一級の回想文学と書いていた。座布団5枚。
 

 本屋、はじめました  辻山良雄著。苦楽堂。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

荻窪に本屋を開店するまで、開店してからの話。書店員としての長い経験も書かれている。最初は、本屋始めたい人や本好きにはお勧めの本だと思ったが、何か個人的にお店を出したい人にも良いのだが、本好きには良い本という結論だった。この著者の真摯に物事に対峙する姿勢に好感を持てる。発想方法や考え方が、なかなか説得力がある。座布団5枚。
 

 春に散る 沢木耕太郎著。朝日新聞出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者の作品はほとんど読んできている。これは、著者得意のボクシング小説。チャンプになれなかった4人のボクサーの話でとても面白い。上巻が終わって、これから下巻楽しみ。彼の作品でつまらなかったものないなあ。座布団5枚。
 

 春に散る 下 沢木耕太郎著。朝日新聞出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

面白かった。映画かドラマにするなら、主人公は、高倉健がバッチリはまる。座布団5枚。
 

 昭和の店に惹かれる理由 井川直子著。ミシマ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

出てくる店は、各ジャンルがあるが10軒。昭和がわからない人向けに各店の終わりにきちんと説明が載せてある。丁寧な本である。本物の店とはどんなものなのか、という観点で書かれている。座布団5枚。
 

 江分利満氏の優雅で華麗な生活 山口瞳著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

直木賞をとった作品で、本も著者も広く、知られている。いわゆる昔の作品で私は読んだことがなかった。興味をもって読んだのは、主人公はどうも著者自身のようなのだが、私の父と同い年だったからだ。父の生きた若い時代の事を知りたい気分もあった。著者はサントリーのサラリーマンだったようだ。最後にわかったのだが、道理で、主人公はやたらとウィスキーばかり飲んでいた。今の若い人たちがこれを読んでどう思うのかわからないが、要するに戦後の典型的サラリーマンの原形だ。映画もある。とりあえず座布団5枚かな。
 

 インドクリスタル 篠田節子著。角川書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この著者は変わった経歴を持っている人で、ラジオに出てきて話していることがとても面白かったので印象的だった。それで彼女の本を一度読んでみたいと思っていた。変わった分野の小説だったが、なかなか面白かった。座布団5枚かな。
 

 第二阿房列車 内田百闥。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

内田先生の文体にも慣れて、第二阿房列車は第一より読みやすかった。どこに行っても、新聞記者が来るのだから、やはり著名な人だったんだね。どこの駅でも駅長たちが挨拶に来るし、同行している弟子が国鉄勤務ということもあるのだが、なかなか自由になれないからそれなりに大変そうだ。それにしても、お酒と煙草が大好物だね。楽しく読めた。昔の鉄道紀行。座布団5枚。
 

 私の財産告白 本多静六著。実業之日本社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私が生まれた頃に書かれた名著と呼ばれている本。日本の偉人のお金の話である。誰もが勝てるが、ほとんどの人がしない勝負と言われている。至極当然のことが書かれているが、じゃ、自分ができるかというと、うーんと唸ってしまう。これを読むときの年齢もからんでくる。若い時なら、トライしたかもしれないが、たぶん継続できなかっただろうと思う。だが、この本多博士の語っていることは、人生哲学そのものなので、若い人は、実行するしないは好き勝手であるが、年に1度は読むことを義務づけると良いと思う。この本をいつも手元に置いておけば、詐欺に騙される人もいないだろう。副題の日本人必読の名著というのは正しいと思うし、長い年月が経っても読み継がれていることはすごいことだと思う。座布団5枚。
 

 豊臣秀長 堺屋太一著。PHP出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

分厚い文庫本だった。読み応え十分。秀吉の弟であまり世に知られてない人物。著者の説明が非常にわかりやすく、新たな視点で読むことができて、読後感も十分。信長の登場部分が多い。秀吉より多かったかも。テレビドラマで今でも信長にピッタリと思うのが、高橋幸治。秀長にぴったりなのが、中村雅俊だね。彼のイメージで読んでいた。座布団5枚。
 

 海の史劇 吉村昭著。新潮者。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日本海海戦をロシア側から見た記録文学。名著だと思う。読むべし。太平洋戦争惨敗の伏線。座布団5枚。
 

 第三阿房列車 内田百闥。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私が5,6歳ごろの話だね。昔のてっちゃんは読むのは当然として、若いてっちゃんたちも読むと宜しい。この頃の黒白写真があるんだけど、私が目黒の駅前にいる頃、うしろにSLが走っていて、線路があった。だから、今のような山手線の高架ではなかったんだね。八王子駅が130周年記念だそうだ。絹で横浜と結ばれていたからね。座布団5枚。
 

 星を継ぐもの ジェームズ・ホーガン。池氏。東京創元社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ビブリオバトル?で聞いた本であまりにも褒めるので読んでみた。これ、有名なSF小説なんだね。今でもこれからも愛され続ける永遠のロングセラー、圧倒的支持、読者投票1位、100版突破などと表紙に書かれている。1977年の作品で、翻訳は1980年。当時、SFブームだったらしいね。私は、SF分野に詳しくないので覚えていない。しかし、この当時にこの発想には驚くなあ。しかも、2028年にはこうって感じになっている。もう近いよね。結構ピンポンだね。SF好きな人には座布団5枚。あまり気にしない私でもその発想の豊かさに敬服です。
 

 令和を生きるための昭和史入門 保阪正康著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前書いたものに令和になったので書き直ししたもの。入門と書いてある通り、だいたい、私は知っていることが多かった。だが、今の50歳以下の人は読んだ方がいい。団塊以上は脳が固まっているので、異なった考えは受け入れないだろう。後半は良かった。50歳以下に座布団5枚。
 

 朱の丸御用船 吉村昭著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

22年前の作品。著者は、日本残酷物語の波切沖の怪事というものに興味を抱いて、調べ上げて、この小説を書いたようである。幕府の天領でとれた米は江戸に運ばれるのだが、この事件では、新潟かな、から下関?経由で宇和島を通って、串本、三重の鳥羽、的矢辺りで停泊してから、一気に下田まで向かう船なのだが、それでいろいろ横領とか事件が起きるのだが、事実である。主人公の名前だけ違うが他は書に残っているままなのだそうだ。相変わらずの調査と聞き込みとすばらしいフットワークでできた力作だ。これがドラマ化や映画化がされないのが不思議。我々は、いい時代を生きていると実感できる。座布団5枚は当然。
 

 夢酔独言 勝小吉著。勝部真奈長編集。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

勝海舟の父親の書き残したもの。侍ながら、報われず、やけになって生きた人。江戸でも有数な剣客で、顔役、露天商の親分などをやっている。彼の遺したこの書によって当時の旗本たちの生活が読み取れるという解釈になっている。とにかく原文を手直ししたとはいえ、実に読みにくい。ただ、そうしないと本当の感覚がわからないということだろう。巻末の勝部氏の説明がわかりやすい。不遇だった父親から大出世を遂げた海舟の話はやはり、親子鷹も併読したほうがいいだろう。私は小吉が好きだが、坂口安吾は小吉を高く評価している。むずかしいのが読みにくいなら、親子鷹を必読。というわけで、なんとなく座布団5枚。
 

 生きるって、なに? たかのてるこ。テルブックス。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ラジオで彼女の話を聞いていて、購入してみた。簡単な小さな本。こういう人が、こういったことを伝播していかないとならないんだね、って感じの本。教会の牧師やお寺の坊さんが説いて当たり前のことを68か国を旅する彼女が説けば、光って見える。座布団5枚かな。
 

 日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 吉田裕著。中公新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

うーむ、今まですごい数の戦史の本を読んできたが、もしかしたら、この本が一番優れているかもしれない。全く違った観点から分析している。戦死した人数と病死、餓死、自殺の人数の差があまり大きくない事に衝撃。精神に異常をきたしてしまう兵たちの事も書かれていて、これはアメリカでもあったよね、ベトナム戦争やイラク戦争などで多数の兵が心を病んで自殺したりしていた。軍服から軍靴、飯盒まで分析している。途中で日本兵たちの置かれた状況にかわいそうになってしまった。最後に、日本軍はこんなに強かったという本を静かに鋭く批判していた。戦争を知らない俺から、戦争を知らない若いあの国会議員に100冊くらい贈呈したいと思った。座布団5枚。
 

 ご臨終の不思議な世界 志賀貢著。カドカワ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この人は医者でなく、お医者様であろう。なかなか良い本だった。学ぶことも多かった。イラストが最初邪魔だったのだが、そのうち、それなりに意味があるんだと思った。誰もが知っておくべき知識も満載。座布団5枚。
 

 うつ病九段 先崎学著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

何気なくラジオの小説を聞いていたらこの作品が主題だった。それで興味をもって、読んでみた。有名な棋士らしいが、私は知らなかった。羽生や森内あたりと同じ年齢層。九段なのだからすごく強いプロだね。この人がある日突然うつになってしまって1年間苦しんで再起する話。彼にとって救いは兄さんが精神科医だったこと、慶応の精神病棟に入れたことだった感じがする。うつとは心の病だと思っていたけど、脳の病気だとは知らなかった。そして完治する。世間の偏見や誤解が多いのだが、身内にうつの人を抱えている人たちが多数いる国民的病になっている感じ。自殺願望に走ると言うのだから、あちこちで自殺している人たちにはうつの人も多いのかもしれない。友人がうつになって、間接的に亡くなってしまったのだけど、今になって、あいつ、あの時こういう感情だったのかあとやっとわかった次第。応援したくなる良い本だ。座布団5枚。
 

 長い時間をかけた人間の経験 林京子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は長崎被爆者。イメージが湧いてしまうと思うけど、素直なとてもスムーズに読める良い本だ。彼女は多数の受賞を受けている。受けるだけのきれいな文体だ。非常に好感が持てて、お勧め。座布団5枚。
 

 宇宙から帰ってきた日本人 稲泉連著。文芸春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本の中に、立花隆の宇宙からの帰還がよく出てきた。宇宙飛行士たちや筆者に大いなる影響を与えたようだ。私もよく覚えている。あれは名著だね。今回知ったのは、宇宙船から眺める地球も当然美しいのだけど、宇宙船から出て、外で修理などをした飛行士たちの話で、言葉にあらわせない、文字にできないもどかしさ、その景色のすごさが強い感動を与えている。12人全員が外に出たわけではない。空自のF15戦闘機のパイロットだった油井氏の話はとても印象的だった。読み終わってから、私は、宇宙船から出て、暗黒の世界で眺める地球の事ばかり目に浮かんでいた。是非読んだ方がいい。未来を考えるのは素晴らしい事だ。座布団5枚。
 

 夜明けの雷鳴 吉村昭著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

幕末・明治のころの医者、高松凌雲の伝記。幕府の命を受けてフランスに留学。医学を深める。吉村昭氏によって、後年世間に知られるようになった。まさに、お医者様と言う名前がふさわしい人で、日本で初めて赤十字的発想と実行をした人物。座布団5枚。
 

 甲州子守唄 深沢七郎著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

有名な楢山節考の作者。山梨の石和、よく行くのだけど、明治末から大正、昭和にわたる農家の一家の物語。おかあの独り言で話が進む。なんてことない小説なのだが、なんということもなく読み終えたのだけど、なんだか心に残ってしまった作品。座布団5枚。
 

 陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英著。双葉。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

作者は数年前にテレビで見たこともあるし、有名な事は知っていた。バカ売れてしている時代小説らしい。もともと、時代劇の映画もテレビも小説も好きだったのだが、最近はご無沙汰だった。いや〜〜おもしろかった。時間を忘れてしまい、寝不足。読書が楽しいと思わせてくれる。気楽に楽しみたい向きには座布団5枚。さっそく、2冊目を買ったけど、すごい数があるみたいだね。
 

 AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子著。東洋経済。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ビジネス大賞をとっているね。聞いたことはあったが、読んでなかった。最近の本はネイミングがいいね。私には衝撃的な本だった。AIが何なのか?何を誤解していたのか、よく理解できた。彼女がこの著書で去年書いていた子供たちの読解力の低下への警告は、今年なにかの発表で日本人の読解力が激しく落ち込んだことで実証されてしまったね。この本は当然ながら座布団5枚であるが、読みたくなければ読まなくてもいいが、読んでおいた方が身のためだよ、って感想だな。
 

 雪の花 吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

江戸時代後期の福井の町医者笠原良策の天然痘撲滅の戦いを描いた作品。感動の生涯。座布団5枚。
 

 淳子のてっぺん 唯川恵著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

女性初のエベレスト登頂、7大陸最高峰登頂を果たした田部井淳子さんの小説。彼女はよくラジオに出たりして、話を聞いていた。あの福島なまりの温かい語り口が非常に好感が持てて、とても好きな人だった。彼女の登山家としての履歴は、すごいものだが、そんなことを感じさせない立派な女性だったと思う。日本では、山は女人禁制みたいな歴史があって、とても偏見があったのだが、それも打ち破った芯の強い人であった。是非とも一読を勧めたい。座布団5枚。
 

 60年前の東京・日本 ヒギンズ著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

秘蔵写真382枚。団塊の世代以上には、めちゃくちゃなつかしい写真ばかり。現代の鉄チャンもびっくりの鉄道写真集。主体は路面電車。東京だけでなく、日本各地の写真で、1955年―1965年が中心。今の風景と当時の風景との違いに、逆にフレッシュさを感じる。座布団5枚。
 

 零式戦闘機 吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

丁寧な取材には、堀越二郎氏も入っている。牛車で最新鋭の 戦闘機を運んでいた国の勃興と壊滅の歴史。最初から最後まで飛び立っていたゼロ戦の物語であるが、感動的作品に仕上がっている。あとがきに、誰かが零戦は日本人自身であると書いているがそうかもしれない。日本国民必読の書と言えよう。座布団5枚。
 

 寒雷ノ坂 居眠り磐音 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

参った。参った。はまってしまったこの小説。50巻くらいあるのですごいな。映画もやったようだが、観てなくても断然小説の方が面白いと推測。時代小説好きの人には座布団5枚。眠れなくなると困る人には座布団1枚って感じかな。
 

 花芒ノ海 居眠り磐音(三) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらず面白くて困る。寝不足になる。斬り合いの場面の説明がちょっとむずかしいな。思い描くしかないのだけどね。巣鴨高校では剣道が必須だったので、よくやったが、親友の熊谷と言うのがいた。彼はめちゃくちゃ強い。背筋伸ばしてね。あいつのせいで剣道を諦めた。今でも思い出す。江戸時代に生きていたら、私は、簡単にチャンバラで殺されていただろう。時代劇の好きな人には毎度の座布団5枚。
 

 わけあって絶滅しました 丸山貴史著。ダイヤモンド。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

実に面白かった。漫画で説明だね。次々とページをめくってしまう。大人向けなのか、子供向けなのか、親子向けなのかよくわからないが、誰でも楽しめる。著者も含めて、皆真摯だね。座布団5枚。
 

 雪華ノ里 居眠り磐音(四) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

時代劇好きには座布団5枚。こういうの中古で買うんだけど、1円で売って儲かるのかね?昔から不思議でならない。
 

 ふたりの老女 ウォーリス著。亀井よし子訳。草思社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

アラスカインディアンの話。人間の持つ生命力の強さに敬意。素晴らしき本であった。座布団5枚。
 

 雨降ノ山 居眠り磐音(六) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

笹の雪が出てきたり、南町奉行所が出てきたり、隅田川の花火が出てきたりして、だんだん、江戸の情緒を描くようになっているね。時代劇好きに5枚。まあ、奴は必ず勝つから、それはそれで楽しい。
 

 キジムナーkids 上原昭三著。現代書館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

戦中戦後をたくましく生き抜いた沖縄の子供たちの話。途中まで適当に読んでいたのは、沖縄の言葉がときどき理解できなかったからだ。後半は圧巻的で胸を打つ。やはり、座布団5枚だろう。
 

 知の旅は終わらない 立花隆著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、あのおばさん顔の立花氏。私は、宇宙からの帰還以来、彼を尊敬している。テレビのドキュメンタリーも見逃していない。田中角栄研究の頃にはあまり知らなかった。最初の方は、彼の生い立ちが出ていて、カミソリのような頭脳を持っている人だなあ、秀才だ、くらいしか感じず、普通に読んでいた。彼のすごいところは、若いころから海外に貧乏旅行も含めて、何度も行っている事、膨大な数の多種類の分野の本を読んできている事。「中核vs革マル」「日本共産党の研究」あたりから、俄然面白くなってきて、どんどんのめり込んでいった。彼は、新聞を全く信用していない。最後まで、面白さが止まらなかった。まさに知の巨人、鉄の意思を持つ人と言える。一歩も引かない強さを兼ね備えている。座布団5枚。特に若い人向けには10枚。私の言う若い人とは50歳までだね。
 

 サラダ記念日 俵万智著。河手書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1987年の作品がいまだに増版されている。280万部ととんでもないロングセラー。とても心に残る。2度読みしながら進んでいくと余計に良い。日を置いて再度読みたい。三十一文字に凝縮されているのが見事。座布団5枚で足りず。君の待つ新宿までを揺られおり小田急線は我が絹の道。「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
 

 朔風ノ岸 居眠り磐音(八) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今回は江戸のお正月の様子が描かれている。長屋についての説明がなされていた。ちょっと、必殺仕掛人的雰囲気満載。評価はいつも通りで、時代劇好きには座布団5枚。字が大きくて読みやすい。
 

 もう一度 花咲かせよう 残間里江子著。中公新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女は私と同じ団塊の世代。彼女の事はあまり知らなかったのだけど有名らしい。実に面白かった。そして、とても賛同した。団塊の世代には座布団10枚。他の世代は知らない。
 

 遠霞ノ峠 居眠り磐音(九) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

引き続き大変に面白いので時間を忘れてしまう。今回は最後に吉原の事が詳しく説明されていて勉強になった。時代劇派にはいつも通り5枚
 

 朝虹ノ島 居眠り磐音(十) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

面白いから常に5枚。うなぎは当時も高級だったんだね。蕎麦16文の時に鰻は200文。なるほど庶民には程遠いものだった。今回は、熱海の初島が舞台だった。
 

 ぼく、ドラえもんでした。 大山のぶ代著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

感動的なドラえもんの思い出。ドラえもんの人形を買いたくなった。ドラえもんのアニメを送りたい相手は、当然ながらトランプ大統領。彼ドラえもんの事知っているはずがない。皆さんは是非読んで感動と思い出に浸ってもらいたい。座布団5枚。
 

 新宿鮫XI 大沢在昌著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりの新宿鮫。すごく厚い本になっていたが、期待を裏切らない作品。とにかく、いつもワクワクして読む。座布団5枚。
 

 無月ノ橋 居眠り磐音(十一) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

主人公が鰻屋で鰻をさく仕事をしていて、当時の江戸で鰻が流行り始めるころの話がよく出てくる。読むたびに鰻屋に行きたくなる。将軍が日光東照宮に行くのだが、驚いたことに従者は10万人。行列の先頭が夜中の12時に出る。最後尾は朝10時だったそうだ。とんでもない出費で。吉宗の後は、48年後になっている。この本が読みやすいのは字が大きいからだね。当然本の厚さのわりには早く読めてしまう。いつも通り、楽しいから5枚。
 

 探梅ノ家 居眠り磐音(十二) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

引き続き面白い。気分的には、昔読んでいた少年サンデーを毎週読んでいる感じ。天ぷらって、1785年くらいから流行りだしたみたいだね。庶民が秋刀魚を食べるようになったのは、1750年くらいかららしい。5枚で同じ。
 

 アメリカ 暴力の世紀 The Violsent American Century。ジョン・ダワー著。田中和幸訳。岩波書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この著者の作品は、数々の賞をとった敗北を抱きしめてを読んでから、高く評価していて、読む前から必ず良いと信じていた。ベトナム戦争敗戦の心の痛手がアメリカ人にどのくらいのものだったかよくわかる。あちこちの戦争、反乱、革命に手を貸していて、この国のヒステリー症候群は相当なもの。何をそんなに怯えているのかとすら思う。核の軍拡競争などは異常である。まさに魅入られている。核反対運動の効果などたいしてないと思っていたが、意外と強いメッセージになっていることを知った。しかし、ベトナムはよくアメリカに勝てたね、あらためて驚き。やはり名著であった。座布団5枚。
 

 残花ノ庭 居眠り磐音(十三) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日暮里って、ひぐらしのさと、って読むんだね。なかなかいい。日暮里、谷中、根岸は当時の別荘地的存在で田畑が広がっていたようだ。いつも通りの座布団。気楽に読めるのがいい。
 

 帰郷 浅田次郎著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

大佛次郎賞作。単行本の表紙の帰還兵の写真がすごくいい。短編6集が収められている。なんとなく読んでいったが、終わってから、やけに読後感が染みわたってくる書。ああいう年齢で亡くなっていった兵隊たちには言葉もないが、是非とも現代の10代、20代の人に読んでもらいたい。どんな状況に生きていても、あの戦争に駆り出された若き兵隊の事を知れば、今とは違った生き方ができるだろう。私は戦後世代だが、いちおう、戦争に行った父親やおじさんたちの話はごまんと聞いて育ってきているからね。座布団5枚。
 

 人と会うと明日が変わる 残間里江子著。イーストプレス。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらずなかなか良い。団塊の世代だけでなく、若い人への生きていくための指針になるかもしれない。座布団5枚。
 

 夏燕ノ道 居眠り磐音(十四) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1776年の徳川家治の日光詣では、延べ400万人、馬30万頭というのだから、凄まじい。ただ読んでいると、幕府の金蔵は空になっているのだが、当時の財政政策みたいな働きになったのかも知れないと思った。座布団5枚。
 

 驟雨ノ町 居眠り磐音(十五) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

主人公は甲府に向かうのだが、当然ながら甲州街道を行く。最大の宿場が新宿、次が下高井戸、布田五宿と言われる国領、下布田、上布田、下石原、上石原、そして府中、次が日野宿で、ここはすごく大きい。今でも日野宿本陣として残っていて歴史館になっている。朝5時に江戸を出て、日野に着くのが午後4時。日野の渡しは、六郷の渡し(川崎)と並ぶ水上交通の要衝。今回は、長屋の大家というのがどういう存在なのかと言う説明があってなかなか面白い。相変わらず座布団5枚。
 

 勤番武士の心と暮らし 酒井博・容子著。文芸社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

豊後藩の武士が参勤交代で江戸に来て、こまめに書いた日記を翻訳しながら、江戸の食事、生活、などなどを綿密に詳しく説明したもの。この武士は絵を描くのも得意でそれも多数載っている。最初はそうでもなかったが、読むにつれて、非常に面白くなり、興味津々で読んだ。この後、10年後にペリー、25年後明治維新なのだが、そんな乱が待っているとは思えない平穏な日々。なお、居眠り磐音も豊後なので、大分は何かあるのだろうか。楽しく読める。座布団5枚。
 

 オオカミの護符 小倉美恵子著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ラジオの山カフェで聞いて、読んでみた。著者は宮前平?土橋の出身。郊外ブームになる前は相当な田舎で農村ばかりだった。オオカミ護符を出しているのが、東京の御嶽山。昔はそこまで皆歩いてお参りした様だし、神社からもやってきたようだ。その後、話は、秩父の三峯神社まで進んでいく。狛犬だと思っていたら、あれは、オオカミだったんだね。オオカミ自体は、100年前に滅亡している。最後は奈良で発見されたようだ。関東全域から信州、栃木あたりまでオオカミが多数いたようだ。今でもいれば、農地でのイノシシやシカの被害もなかったと言われる。信仰というより、昔からある祈りの文化との事で、なかなか味わい深い書であった。最初は、映画が出て、それから本になったようだ。柳田国男の世界のような感じで、民俗学的な知識が増える。座布団5枚。
 

 キラキラ共和国 小川糸著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、ツバキ文具店の続編の感じ。著者の文章はとてもきれい。読んでいて、すがすがしい感じがする。ポッポちゃんがどんな女性なのか思い描ける。辛い時、目をつぶって、キラキラとつぶやくといいらしいよ。代書屋という商売がまだあるのかね?昔は電柱なんか貼ってあった気がする。ああいう商売がなくなっているなら、それはそれで寂しいものだ。座布団5枚。
 

 螢火ノ宿 居眠り磐音(十六) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いつも面白い。高田純次もこのシリーズの本で、全部読んだそうだが、よくわかる。吉原、5千から7千人いたらしいね。完全隔離の別世界で幕府に統制されていた。戦後、赤線廃止で沈んでしまったが、なんでも管理したがるお上なのだから、潰す事もないのにと長い事思ってきた。結局、遊郭自体がなくなっても、やっていることは同じで裏の世界に移っただけ。北尾重政という絵師が出てくるのだけど、実在の人物なんだね。美人画がすごくいい。まあ、そんなこんなで楽しい時代劇である。座布団5枚。
 

 なにがあっても、ありがとう 鮫島純子著。あさ出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

高い評価を受けている本。この人の話はラジオで聴いた時の方が本よりもインパクトがあった。だから、講演など聞きにいったら、それなりに感動するだろう。人生に迷っている人には、良い指針になると思う。座布団5枚にするか迷ったが、彼女が本で語っていたことがやけに脳裏に残ってしまっている。そんなわけで、座布団5枚。
 

 紅椿ノ谷 居眠り磐音(十七) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いつも楽しく読む。期待を裏切らない。江戸時代の人たちは、歩きで旅をするのだが、1日10里、38キロくらい歩いたらしい。すごい健脚だね。いつも通りに座布団5枚。
 

 内田さんに聞いてみた 「正しいオヤジ」になる方法 木村政雄対内田樹。宝島社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

木村氏のラジオでの話を聴いていて、面白い事言う人だなあと思って、本を一冊読んでみた。最初はいまいちだったが、読み進むにつれて、面白くなってくる。座布団5枚。
 

 天稟  幸田真音著。角川書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

友人が是非読んで欲しいと言う事で頂いたもの。山種の創業者である山崎種二氏を私は昔から尊敬している。城山三郎の「百戦百勝」で知られている。売りの山種として、米相場から商品相場、そして株式相場と市場と共に生きた達人。経営にもすぐれ、日本画の山種美術館をのこしている。彼を取り巻く話で、いろいろな登場人物があり、非常に興味津々と読んだ。著者が相当な時間と労力をかけたものだと推察される。力作と言えよう。座布団5枚。
 

 孤狼の血  柚月裕子著。角川文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりの興奮させる極道小説。著者は、相当に仁義なき戦いの影響を受けていることを感じたが、事実そのようだ。驚くのが著者が、女性であることだ。なかなか良く、息をつかせぬ展開。映画の評価も高いので、見たが10分程度でやめた。小説が100点とするならば、50点というところだろうか。小説のほうがはるかに優れている。文句なしの座布団5枚。
 

  遠藤周作著。新潮文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私の青春時代に大いに影響を与えてくれたのが、北杜夫と遠藤周作。ほとんど読んでいたと思っていたが、これは読んでいなかった。途中から史実だとわかった。学校の教科書にも出ているはずだが、支倉常長(六右衛門)の事。そう、江戸時代初期に仙台藩から、数人と宣教師で船でメキシコ、スペインに渡った使節団の話。あの「沈黙」とは似ているようで異なるもの。深い話で、長いが心に残る。浦島太郎じゃあるまいし、帰国したら、国が一変していた。座布団5枚。
 

 捨雛ノ川 居眠り磐音(十八)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

テレビドラマ見ているよりもおもしろい。職人の解説があった。人気ランキングでは、大関が大工と刀鍛冶、関脇が左官、家根藁、小結が船大工、橋大工、前頭に畳、建具師だって。座布団5枚維持。
 

 梅雨ノ蝶 居眠り磐音(十九)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらず面白く、座布団5枚。この本のせいで、他の本が読めずに実に困る。
 

 野分ノ灘 居眠り磐音(二十)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今小町おこんの美しさがよく書かれる。浮世絵にも誘われるくらいの美形らしい。是非とも会ってみたいものだ。19巻で磐音が初めて斬られたので、おっとなった。毎回座布団5枚。
 

 鯖雲ノ城 居眠り磐音(二十一)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚は変わらないが、御家騒動みたいな話はあまり好まない。ありふれた題材で、テレビドラマでも昔から定番だ。
 

 荒海ノ津 居眠り磐音(二十二)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。今回は御家人の説明があった。当時は世襲制でどんなに優秀でも上がることはできない。非常に不条理なのだが、現代は、なんだかんだと言っても良い時代なのだろう。
 

 検事の本懐  柚月裕子著。宝島。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の本は2冊目。最後のストーリーは秀逸。とても良い。検察の印象はあまり良くないが、そのストーリーもあった。大藪春彦賞受賞作品。座布団5枚。
 

 しゃぼん玉  及南アサ著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

感動。いい話だった。彼女の別な作品も読んでみようと思う。心に残る。心理描写が素晴らしい。座布団5枚。
 

 藻屑蟹  赤松利市著。徳間。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

大藪春彦賞作品。福島原発のニュースがやたらとお涙頂戴、悲惨という表現ばかりだった気がする。ニュース報道の限界なのだろうか。なるほど、週刊誌やSNSが活躍するはずだ。新聞やテレビの偏向報道を感じた。まさに不条理の世界そのもの。著者は除染作業員を経験していて、路上生活も経験し、執筆は漫画喫茶でされた。皆が読むべき本と言える。座布団5枚。
 

 漂巽紀畧(ひょうそんきりゃく)  全現代語訳。ジョン・万次郎述。河田小龍記。谷村鯛夢訳。北代淳二監修。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ジョン万次郎に関する著作は多い。特に直木賞の井伏鱒二著が有名なようである。この本は、全ての大元になったもの。ジョン万次郎15歳の時に、計5人で漁に出て、漂流して鳥島に着く。そこでアメリカ捕鯨船に救われる。1人死んで、4人のその後のストーリーが展開していく。最初はオアフ島。万次郎は日本初の留学生、アメリカに最初に行った日本人となっている。彼らの長年の苦労に思いをはせる。何度か日本近海に来ているのだが、鎖国で帰国できないなど、波乱万丈。当時のアメリカ人やハワイ人たちが親切だったのが救いか。今のアメリカ人とはあまりに違うので驚く。人を助けることなど当然と言う感じ。帰国後の万次郎の活躍は知られているが、英語のほうが堪能で、日本語はまともに教育も受けていないのでチャンポンだったようだ。帰国後、しばらくしてペリー黒船が到来するのだが、当時アメリカの事を知るために日本人は万次郎の記述や書などを参考に学んだようだ。わかりやすい訳本で、まさに感動的著作。座布団5枚。
 

 凍える牙  乃南アサ著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1996年作品。直木賞作品。テレビドラマでもやったらしいね。長いストーリー。女性白バイ隊員が主人公という面白い設定。25年前の小説だから、今の若い人が読むと、え?って事が多いと思う。面白かったから座布団5枚。
 

 忘れられた日本人  宮本常一著。岩波文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

幕末から、戦後の日本までの話で、柳田国男的な民俗学の語り。この宮本氏は柳田氏の傘下だったようだが、司馬遼太郎などにも影響を与えた人。この人の文章は、非常に優れている。驚いたのが、昔の日本人の性に対するおおらかさだね。まさか、田植えをやっている女性たちがエロ話をしているなんて思いもしないよね。この著作は1984年に出たが、なんと71版まで続いている。文庫本で1000円だもんね。問題は、字が小さくて参った事かな。本の途中から、俄然面白くなる。読んでいて楽しくなったね。座布団5枚。
 

 万両ノ雪 居眠り磐音(二十三)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

第23巻。なんか、いつもとのりが違うなあと思っていたら、著者はこの頃、体調が良くなく、お休みしていたようだ。最近、時代劇小説が人気の様子。テレビの方がダメだからなあ。どこも刑事もの一辺倒。時代劇小説は昔から特定の固定ファンがついているが、なんだかよくわかるなあ。皆主人公に入れ込むのだが、危ない場面があっても必ず切り抜けて勝つからね。その安堵感かなあ。皆あの時代に思いをはせる事ができるからかな。藤沢作品だと、これまた、深刻すぎてしまうのだが、それはそれで、またいい味となる。いつも通りに座布団5枚。どうもこのまま50巻まで読むことになりそうだ。
 

 朧夜ノ桜 居眠り磐音(二十四)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

江戸地図が出ているのだが、これを見ると、いかに江戸城ー皇居から東側ばかり発展していたかよくわかる。西側はさっぱりである。関東大震災後に人口の大移動が始まり、西が大いに発展するのだが。隅田川沿いだね。だから時代小説は、ほとんどこの界隈。面白かった。おこんが皆がため息つくくらいの美人で、今小町と呼ばれる。会ってみたいものだ。座布団5枚。
 

 夏目漱石先生の追憶  寺田寅彦著。青空文庫POD。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

青空文庫というのがネットにあって、それはボランティアでやっているようだ。それを小冊子にしたものだが、たったの15ページで400円なので非常に驚いたのだが、どうも、青空文庫なるところに寄付されるようだ。私は、寺田寅彦をとても尊敬しているのだ。それにしても、夏目漱石門下というのは、すごいね。キラ星のごとく人がそろっている。あの内田百閧烽サうだし。なんだか、とても漱石が慕われていた様子がわかって、すぐれた先生だったんだね。座布団5枚。ネットで読んでも構わない。私は本棚に置きたかっただけ。
 

 凶犬の眼  柚月裕子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

刑事とやくざの物語第二弾。著者が女性と言うのは、今でも驚く。第一弾の1割引きの面白さというところ。相変わらず良いテンポで話は進む。彼女の著作を全て読んでみようかと思っている。期待を裏切らない。座布団5枚。
 

 白桐ノ夢 居眠り磐音(二十五)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

兵法目録。十悪。我慢、過信、貪欲、怒り、恐れ、危ぶみ、疑い、迷い、侮り、慢心。なるほど、相場にも言えるね。ラジオで言ってたな。日本人ほど、道をつける民族はいないみたい事。となると、相場道かね?相変わらず、面白く、座布団5枚。
 

 津波の霊たち 3.11、死と生の物語  リチャード・ロイド・バリー著。早川書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

海外で高評価を受けた作品。著者は在日歴長いイギリスのジャーナリスト。翻訳のせいもあるが、慣れるのに時間がかかった。出てくる人名は覚えないとならない。ページを変えて何度か出てくるので、あれ?誰だっけ?となりやすい。これが唯一の欠点かな。必読の書と言える。最後の偉い坊さんの話の箇所は食い入るように読んだ。圧巻。イギリス人から眺めた違った視点が、新鮮だ。もちろん、座布団5枚。
 

 最後の証人  柚月裕子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いつも通りに最初はさして面白くなさそう。途中から俄然面白くなり、最後はドンデン返しで、唸ると言う展開。検事佐方が弁護士佐方に転身した後の物語。座布団5枚。
 

 慈雨  柚月裕子著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

お得意の刑事もの。相変わらず出だしはダラダラ。途中から俄然熱気を帯びてくる。最後は余韻の残る型。座布団5枚。
 

 検証 戦争責任〈上〉  読売新聞。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

15年前に読売新聞で1年にわたって掲載されたもの。渡辺会長の指示を受けて、戦争責任検証委員会が設置された。当時のメディアの事もきちんと追跡している。言論弾圧は言い逃れとか。けっこう、冷静に丁寧に書かれている。若い人は読むとわかりやすいと思う。若くない人には復習になる感じかな。座布団5枚。
 

 検証 戦争責任〈下〉  読売新聞。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読売新聞。中公文庫。読み応えがあった。下巻は総括となっている。最後に渡辺会長が東京裁判で一旦完結しているが、詳細で適切な日本国民自身による戦争責任検証が不可欠だと書いている。若い人たちには必読の書と言えよう。あまりのひどさにため息ばかり出た。座布団5枚。
 

 軍旗はためく下に  結城昇治著。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

浅田次郎が表紙に歴代直木賞受賞作中の白眉であると記している。まさにその通りで非常にすぐれた作品。戦地で起きた普通の兵士たちの話で、敵前逃亡、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害に分かれている。羅生門のような物語の進め方となっている。50年前の作品で最近また注目を集めている。若い人には、必読の書と言えよう。衝撃的な話が多く、戦争とはこういうものだという説得力がある。座布団5枚。
 

 検事の死命  柚月裕子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

テレビで、上川隆也が好演していたので、佐方を読んでいる時は、常に上川がダブっている。実に、ぴったしの俳優だね。相変わらず、冴えた小説だ。いつもワクワクしながら読む。しかし、検察と言う組織には呆れた。なるほど、最近も騒がれていたよね。読んで楽しいから座布団5枚である。
 

 紅花ノ邨 居眠り磐音(二十六)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いつも面白い。文庫本なのに字が大きいのが助かる。座布団5枚。
 

 石榴ノ蠅 居眠り磐音(二十七)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

引き続き面白い。今回は忍者の解説があった。手裏剣は使ったなかったようで、刀、仕込み杖、鉄扇、鎖鎌が武器だったようだ。家康が本能寺の後、国に逃げ帰るのに伊賀の忍者が助けてくれたそうで、それ以来、伊賀忍者は将軍家お抱えのようになったみたいだ。座布団5枚。
 

 照葉ノ露 居眠り磐音(二十八)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今頃なんだけど、結構、史実に基づいているところが多いのに気が付いた。時代劇や歴史物や大河ドラマなど読んだり、見たりすると、人名チェックをすることにしている。ウィキで調べる。ウィキは寄付しているから威張って利用する。これが結構勉強になるんだよね。今回は歴代将軍を調べてみた。相変わらず飽きない。座布団5枚維持。
 

 冬桜ノ雀 居眠り磐音(二十九)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらず面白く読める。瓦版って、別名、読売と呼ばれたらしいね。決まり人気記事は、火事、心中、敵討ちだったそうだ。大げさな読み物が人気。そういうわけだが、引き続き座布団5枚。
 

 ある男  平野啓一郎著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読売文学賞受賞作品。著者がラジオで時々話すので、この人はどんなものを書いているのだろうかと思っていた。余分に書かれている事も多いのだが、これは彼の作風なのだと思う。小説はどう読んでもらっても構わないと彼は言っているし。内容だが、そんなことあるのかあ、という驚きが大きかった。多少話には聞いたことがあったけど。いろいろ考えさせてくれる作品だと思う。座布団5枚かな。
 

 侘助ノ白 居眠り磐音(三十)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

江戸時代、5キロ違えば、言葉も違ったらしい。そんなわけだから、東北の藩の連中と九州の藩の連中で会話が通じないなんてことも当然なわけで、ずいぶん困ったようだ。徳川秀忠など、おじゃると言ってたらしい。京都、上方が最初は、主流で、その後、武家言葉と商人言葉が成立し、これが明治以降の標準語のもとになったらしい。剣術でいい言葉があった。「天地万物同根一空、花は紅、柳は緑、夜あらば昼、陰あらば陽あり、生あるものは必ず滅し、型あるものは必ず無に帰す、人は死して土に還る、しかして土から芽が生じて花が咲き、実を結ぶ」座布団5枚。
 

 アメリカが見た山本五十六・上巻  ディック・レア著。原書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ボストン大学のジャーナリズムの教授が書いたもの。山本提督の事は、多数の本を読んできているので、ほとんど知っていた。だが、この本は、山本提督側、と撃墜した米陸軍パイロットのミッチェルの同時進行的に話を進めている。下巻は撃墜になるのだろう。アメリカサイドの事は新鮮だった。鬼のように思われていたんだね。学生時代、トージョー、やまも〜ととよく語り掛けられたので有名なのはわかっていたけど、元憲兵の東条と一緒にするなよ。アメリカの暗号解読班のすごさは知っていたが、珊瑚海海戦でも漏れていて待ち伏せされているんだね。驚く事に戦争の5-10年前から、暗号解読のプロたちが日本にスパイでとぼけて住んでいたんだよね。知らなかった。さすがだ。この情報、ITみたいなものの日米差はDNA的なものかね?まだ、下巻を読んでないが、座布団5枚。
 

 アメリカが見た山本五十六・下巻  ディック・レア著。原書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山本元帥がそれほどアメリカ人に憎悪されていたとは、ある程度はそう思っていたものの、想像以上だった。卑怯と言う事らしいが、悪意に満ちている。あれは、提督の責任ではなく、外務省・日本大使館の大チョンボだったわけで、ちょっとなあ。日本大使館の連中は責任取らなかったし。ミッチェル少佐率いるライトニング(当時最強)16機が待ち伏せ。一式陸攻2機、零戦6機が島着陸近い時。日本防空圏だったとはいえ、島からは出迎えの零戦は飛び立ってなかったし。通常、高官が来る時はアメリカではそうするらしい。油断だらけ。暗号が全て読まれていたのだが、アメリカ側も時間通りに飛行区域に入れるかどうかは博打だったようだ。撃墜後のアメリカ側のはしゃぎかたは尋常でなく、むかついた。暗号解読がばれないように長く秘匿されていた。しゃくだが、当時のアメリカの雰囲気はわかる。今はビンラディン殺害と一緒にされている。現在、太平洋戦史を一番研究しているのは、中国海軍だろう。むかつくが、座布団5枚。
 

 更衣ノ鷹 上 居眠り磐音(三十一)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

徳川家康が鷹狩りを実施した回数は1000回に及ぶと言うから、すごい。民の生活の視察も兼ねていたらしい。従者が凍死するような天候でも強行したので、健康おたくの彼もそれで死期を早めたのではないかとも言われている。この小説は田沼意次が悪者なのだが、池波正太郎の剣客商売では、好人物に扱われているし、いまでも好き嫌いの極端な人である。座布団5枚。
 

 孤独ぎらいのひとり好き  田村セツコ著。興陽館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

忙しくて、孤独なんて感じてないのになんでこの本を買い置きしておいたのだろうと思いつつ、読みだした。そもそも、なんでこの本を買ったのだろうか。たぶん、ラジオで彼女の話を聴いていて、買ったのだと思う。最初は面倒くさそうに読みだした。途中から、結構いい事書いてあるんだよね。彼女は、80歳なのかな、有名なイラストレーターで、女性向けの雑誌などに挿し絵を描いている。なかなかであった。悩みのある人は読むと良い。座布団5枚。
 

 食堂かたつむり  小川糸著。ポプラ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前、食堂かたつむりの料理と言うのを書いたが、これが元々の本だね。著者は、ツバキ文具店を書いた人。なかなかの良い本でした。座布団5枚。
 

 国家の罠  佐藤優著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読み終えるのにえらく時間がかかった。いろいろ考えさせてくれた。検察とは、世間の動向をそんなに気にしているのね、新聞、メディアとは、想像していた通りの媒体だったのね、外務省と言う役所とは、やっぱりそういう官庁だったのね、とそんな感じ。一番興味深く読んだのは、監獄生活のところかな。知らない事で、とても、面白かった。座布団5枚。
 

 幻夏  太田愛著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は相棒の脚本をいくつか担当している。この本には参るね。冤罪を扱った作品。巨大な組織である警察、検察、裁判所にいる闇の中の人たち。憎しみすら覚えたね。一般世間から遊離した連中である。最後は怒りから悲しみに感情が移動した。座布団5枚。
 

 更衣ノ鷹 下 居眠り磐音(三十ニ)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

鷹狩りは、唐で始まったらしく、その後、日本に伝わった。吉宗の頃、鷹50羽で餌代が年間1億円だというのだから驚く。鷹は、1日に雀なら10羽、鳩なら3羽食べるそうだ。将軍家のスポーツイベントですな。座布団5枚。
 

 わくらば日記  朱川湊人著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

参ったな。すごく良かった。ノスタルジーと共に現代人の忘れ物を届けます、と書かれている。後半のほうでは、涙が出そうなほどの感動があった。著者は、時々、世にも不思議な物語も手掛けているようだ。アマゾンでの評価は、高評価とはなっていないが、それは、読者たちそれぞれの心の立ち位置によるものだろう。私は、圧倒的座布団5枚。著者の文体も気に入っている。
 

 孤愁ノ春 居眠り磐音(三十三)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

早飛脚。交代で走る?のだろうが驚くことに、江戸ー尾張、つまり、東京ー名古屋だけど、一番速いのが24時間だったようだ。驚くべき健脚ぶりだ。民衆も主体は徒歩だけど、よくまあ、遠距離を歩くもので、実にすごいものである。やじきた道中がお馴染だけど、あれは旅行ガイドブックの役割を果たしていたようだ。座布団5枚。
 

 尾張ノ夏 居眠り磐音(三十四)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

尾張名古屋のお城。鯱は対だが、雄雌に分かれているらしい。鱗の数は、雄194枚、雌236枚。金量は慶長大判で1940枚、小判だと1万7千975両分らしい。すごいね。今度、名古屋に行ったら、よく見てみたい。座布団5枚。
 

 姥捨ノ郷 居眠り磐音(三十五)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。多摩川の鮎は有名だが当時、府中から江戸まで、朝釣ったものを急いで持ち込んで売ったらしい。鮎を出す店なんてあったかなあと思ったが、調べると府中には結構鮎料理を出す店が多かったので驚いた。日野でも結構釣れるが、最近は支流の浅川のほうが釣れるらしい。小骨が多いので私はあまり好まないけど。
 

 花まんま  朱川湊人著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。著者の作品は二冊目。実にいい。楽しくて、悲しくて、せつなくて、って感じの短編集。舞台は大阪。笑ったのが、摩訶不思議という短編。風呂で読みながら笑いこけた。大阪人の言葉は、文章で読むとみんなヤクザに思える。いい本だ。
 

 いっぺんさん  朱川湊人著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。彼の短編集は最高だな。時々涙が出そうな話が出てくるので参る。大人の童話って感じかなあ。この著者の作品は好きだ。いい話が多いと思う。一読を勧めたいな。
 

 砂漠  伊坂幸太郎著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

特定な伊坂ファンがいるようだ。東北大学の学生たち5人の青春小説。著者自身が東北大出身になっている。のりのいい小説で良いテンポで話が進む。楽しい作品と言える。座布団5枚。しかし、国立大学の学生って勉強しないのかね?
 

 臨床真理  柚月裕子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2008年のこのミステリーがすごいという賞を受賞。彼女の作品は最近好んで読んでいる。最後にどんでん返しで、え?そいつが犯人だった?って感じ。座布団薄い5枚。
 

 宝島  真藤順丈著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

山田風太郎賞受賞。戦後の沖縄。分厚い小説。熱い小説。植民地となった沖縄がたどった苦難の道。3人の主人公を中心に物語が進む。あのゴザ騒動も書かれている。アメリカ時代に友人だった沖縄人のネッドの事ばかり考えていた。彼の考えていた事が今頃わかったという感じ。今の若い人は、沖縄県はれっきとした日本だと考えているからそれはそれで良いのだが、あの島がたどった運命を我々の世代は知っている。読み応えあり。結局、植民地になるとどの国でも好き放題にやるってことだね。戦勝国は触れないけど、慰安婦的な問題は、どの戦争でも同じ。座布団5枚。
 

 流人道中記(上)  浅田次郎著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の作品は裏切らない。作風も同じで慣れているので、スムーズに読める。今回も感動的流れだ。いろいろ考えさせてくれる。下巻も読みだした。座布団5枚。
 

 流人道中記(下)  浅田次郎著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

しんみりする良い話。なるほど、武家社会の掟を潰すのは明治維新しかなかったんだなと実感。旗本・青山玄蕃に会って話を聴いてみたいものだと思った。感動の名作。文句なしの座布団5枚。
 

 ニコライ遭難  吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

遭難と言うのは、生命の危機に遭う事らしい。作者の作品は全て座布団5枚。私が一番尊敬している作家。この人のすごいのは、事実を知るためにあちこち自分の足で調べまくることだ。ニコライとは、最後のロシア皇帝で、皇太子当時に日本を訪問した。教科書にも出てくる大津事件というもので、津田巡査が皇太子に斬り付けた事件だ。その程度しか知らなかったのだが、当時、この事件で日本中大騒ぎとなり、裁判ももめにもめた。明治天皇は、謝罪に神戸港に停泊中の皇太子の船にまで会いに行っている。天皇は熟睡できなかったようだ。当時、ロシアは最強の軍事国家と言われていて、日本は必ずや攻められて、植民地にされると怯えていた。明治24年の事だから、まだ日本は小国だった。その後、明治27年に日清戦争、37年に日露戦争だから、猛烈な勢いで軍事国家になったのがわかる。この事件の後の、津田とニコライの運命を考えると何とも言えない気持ちになる。事実は小説より奇なりとは、まさにその通りである。
 

 一矢ノ秋 居眠り磐音(三十七)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いよいよ、終わりに近づく感じ。当時の百姓の事について書かれている。農村の話になると貧乏となるのだが、飢饉の時代をのぞけば、そんなにひどいわけではなかったらしい。米もたまに食べていたし、酒も時々飲んでいたらしい。田舎芝居も時々見てとか。農村の最大の頭痛の種は、浪人たちだったらしい。ゆすり、たかりは、時代劇にもよく出てくるが、あの按配らしい。座布団5枚。
 

 幕末雄藩列伝  伊東潤著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

実に面白かった。知っている話も多かったが、知らない話も多かった。しかし、明治維新から、もう何年?いまだに二本松は裏切った三春を許さず、犬猿の仲。水戸は、二つに分かれていたそうだが、凄惨な内輪喧嘩が尾を引き、当時のまま、お互いに口も利かない、結婚も認めないとかいう話を読んで、怨み骨髄、内輪揉めの怖さを感じたね。それにしても、とても勉強になる。著者は、今でも同じような失敗が多い理由に、歴史から学ばない事を最大の理由に挙げている。座布団5枚。
 

 武者始め  宮本昌孝著。祥伝社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

戦国時代の有名な武将たち7人の若き時代を描いたもの。小説は、面白くなくちゃ、っていう人には座布団5枚。私は、楽しんだよ。
 

 JR上野駅公園口  柳美里著。河手書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

飾りの宣伝がすごいので目につく。全米図書賞受賞。これはわかる。ランキング続々第一位。全世界が感動した一人の男の物語。30万部突破。NHK,朝日新聞他、メディアで話題沸騰!となっていて、まさに、映画の売り出しの宣伝のようになっている。本自体は、こんな宣伝とは異なり、静かに流れるストーリーになっている。あとがきに誰かが、天皇制がどうのと書いているが、あまり気にしないほうがいい。読み手が勝手に考えるのが良い。ストーリーを書くわけにもいかないのでこの辺で。しかし、読みながら、よくこれを英訳したものだと思った。訳者は、相当な人に違いない。座布団5枚。
 

 夢見る帝国図書館  文春。中島京子著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の作品は好きなので期待して読んだ。面白い構成だったが、話が最後ダラダラ続きすぎた印象。図書館好きと小説好きには座布団5枚。そうでない人は、それなりに。
 

 鴨川ホルモー  万城目学著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は京大卒。話も京都。最初、鴨川と書いてあるので、千葉の鴨川かと思った。おふざけストーリー。京大、立命館、京都産業大学、龍谷大学が登場する。漫画チックな京都の地図が載っているのだけど、これが、 とてもわかりやすい。いつも何見ても京都の地図感覚がなかったのだけど、やっと、京都の町がどうなっているのかわかった次第。時々、クスクス笑いが出る青春物語。私の頃は、青春デンデケデケデケというエレキを題材にした小説が有名だったが、今はこんな感じの青春ね。映画にもなっているんだね。プリンセストヨトミを書いた人と知った。なかなか良い余韻の残る作品だった。座布団5枚。
 

 おもかげ  浅田次郎著。毎日新聞。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

また、映画の説明につきそうなコメントが表紙に載っている。ま、いつもの泣ける、感動、とかいうやつ。実際に映画になるらしいね。最高傑作と書いている人もいるが、そんなことはないだろう。彼の作品の中にはもっと優れたものがあるからね。主観だから、どうでもいいか。倒れて、病院に入った主人公の独白と彼を取り巻く人々の話。最後の締めは、オッと思う切り口で良かった。全般の印象は、やさしい、あたたかい本 というイメージ。座布団5枚で良いだろう。
 

 慟哭  貫井徳郎著。東京創元社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

作者のデビュー作。幼女誘拐連続殺人事件、警視庁捜査一課。新興宗教。だから、まあ、それなりの作品と書こうと思っていた。もう、びっくり仰天の結末。なるほど、これこそ推理小説って思ったね。どんでん返しがすごく、座布団5枚。
 

 白夜行  東野圭吾著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

20年前の作品。分厚い小説。面白かった。なるほど、作者が売れっ子だというのは理解できる。なかなかの構成で、よくできている。この手の推理小説?が好きな人も多いだろうね。座布団5枚。
 

 兜町の風雲児  比嘉満広著。新潮新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最近出た本で友人が読んで感想を聞かせて欲しいと言うので、読んでみた。中江滋樹、投資ジャーナル、知っている。覚えている。ただ、彼の活躍時代と袋叩きされた時は、私も当時超多忙だったので詳しく知っていたわけではない。今の50歳以下の人は知らないと思う。ここで彼が語っている事の全てが本当なのかわからないわけだが、波乱万丈というのはこの人のためにあるような言葉。暴騰して、大天井をつけて、暴落して地獄の底って感じだ。ここで、私がいろいろ書いてもあまり意味がないと思う。理由は読む人の年代によって感じ方が違うと思うからね。ただ、現代の尺度で読まないほうがいい。当時は、こんなそんな時代だったのだ。そして、それはそれなりの相場の世界だったのだ。読む価値はある。座布団5枚。
 

 秋思ノ人 居眠り磐音(三十九)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

甲府から江戸までの逃避行。大月で追手から逃れるのに、北の小菅村を目指す。それで、青梅の方から、多摩川沿いに江戸に向かうのだけど、小菅村?聞いたことあるなあ、とか調べてしまった。あの辺は、秩父多摩甲斐国立公園と呼ばれている地域なんだね。それで、多摩川の源が笠取山というところだと知った。さらに調べていくと、私が甲府から秩父に行くのに利用する雁坂街道のそばだった。険しい山々で、よく、あのキレイな道路を作ったものだと思っていた。途中、ヘリコプター墜落の場所があったりしてね。もっと北西に行くと例のJALの落ちたところ。小説では、笹子峠、小仏峠がどのくらい難所なのか書かれており、あそこに高速道路を作ったのだから、すごいものを作ったのだなあと新たに感激した。座布団5枚、いつも通り。
 

 駅物語  朱野帰子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

東京駅に勤務する新卒の男女を中心に話が進む。青春物的感じ。鉄道好き、駅好き、撮り鉄などなどいろいろ出てくるが、JR東日本の東京駅が舞台。知らなかった事も多く、知識が広がった。駅員たちは、本当に大変だなあ。そんなに大変な仕事だとは知らなかった。読み終われば、さわやかな気分で、座布団5枚。
 

 春霞ノ乱 居眠り磐音(四十)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いろいろ当時のスキャンダル。豪華接待や忖度や裏取引や裏金やお家騒動、まあ、いろいろ出てくるのだけど、今の政財界や役人たちとかのゴシップが流れるたびに、なんだか江戸時代も現代も似たようなものだなあ、と呆れる事多し。いつも楽しく読んでいる。座布団5枚。
 

 散華ノ刻 居眠り磐音(四十一)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

抜け荷の事が出ている。当時は鎖国だったが、膨大な海岸線をチェックできるわけもなく、結構行われていたようだ。ご存知、薩摩が一番潤ったわけだが、長崎、富山、松前等々あちこちだったようだ。懲罰は過酷。相変わらず、面白い。作者の印税はすごいだろう。シリーズものが多いからね。受け取るだけの価値のある作品群ではある。いつもながら、座布団5枚。
 

 洲崎球場のポール際  森田創著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いや〜〜面白かった。明治から始まった日本の野球は、現在の高校野球、現在の六大学野球、都市対抗野球とアマチュア野球が主体で、長いこと、プロ野球が存在しなかった。そのプロ野球が始まったころの話。昭和11年頃。職業野球と呼ばれ、卑下されていた。東陽町、木場の辺りに洲崎というところがあり、赤線地帯であった。東京湾に面したその地に洲崎球場が完成。ひどいもので、水はけが悪く、3塁ゴロは、途中で止まってしまうし、外野席にはカニが歩き、満潮の時は、水没で試合中止とか驚き。ここと、上井草球場が東京だったが、その後、後楽園が完成し、洲崎球場は姿を消す。伝説の大投手沢村栄治の話が、よく出てくる。高3で日米野球に投げて、8回5安打1失点の好投をして、一躍有名になる。数々の記録を出し、ノーヒットノーランは3度とか、防御率は、0点台という事で凄まじい。今でもいったい何キロ出ていたのかという検証すらあるようだ。左足を大きく上げる独特のスタイル。右手首を曲げると右腕についたという。やってみたが、信じられない。真似して、左足あげたら、足がつってしまった。伝統の巨人阪神戦は、この当時から始まった。日本にプロ野球を作った人たちに敬意をあらわしたい。そして、沢村を始めとして、多くの有能な若い選手たちは、日中戦争から続々と兵隊にされて、そして命を落とした。恨むべき戦争。当時のヤジがとても面白く、吹き出す事が多かった。あとがきで、洲崎球場の記録が一切なくなっており、著者の大変な苦労の上で完成した本だと知り、著者にも敬意。全野球ファンが読むべき本、読むと楽しい本、読むとためになる本、座布団500枚あげたい気分。
 

 作家との遭遇  沢木耕太郎著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

一番気に入ったのが、女性写真家のゲルダ・タロー。あのキャバのパートナー。全体的に非常に難解だった。文学が好き、小説が好きと言う人には、座布団5枚だが、そうでもない人には読んでも面白くないかもしれない。
 

 幸せのプチ  朱川湊人著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。いつものように心が洗われる話。こういうのを読んでいたら、SNSの誹謗中傷なんてことやらないと思うけどなあ。都電荒川線のとある町の小話が続く。コロナで、気分も滅入っているなら、読むといいと思うよ。
 

 西部戦線異状なし  レマルク。秦豊吉著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

そう、あの名画の原文を読んでみたいと思って読みだした。第一次世界大戦は日本の大正時代の戦争だが、1600万人が死んだとされる戦争で、過去最大と言われているようだ。いろいろ読むと、この戦争の規模と複雑さはすごいもので、第二次世界大戦より学ぶことが多そうだ。毒ガス、戦車、Uボートを始めとする潜水艦が登場した戦争。1929年に出版された。昭和4年で大恐慌の時。ちなみに今語られるスペイン風邪は、この戦争の終わりの1918年から拡大した様だ。1955年に日本で出版された。増版は73回に及ぶ。翻訳した秦氏は、昭和4年当時、憲兵隊に呼びだされたそうだ。原書は、当然ながらナチに狙われて、焚書処分を受けていて、著者はスイス、アメリカに逃れた。18歳の登場人物を中心にストーリーは進む。多くの若者たちが戦死するのだが、平凡な形で戦地の話が流れていて、それが、最後には圧倒的な迫力で我々に何かを語りかけてくる。映画、原書共に座布団5枚は当然の事だろう。読後に非常に心に残るものがある
 

 木槿ノ賦 居眠り磐音(四十二)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

当時の旅を知ると今昔の感に堪えない。江戸から豊後(大分)まで、徒歩で20日間。健脚ぶりにも驚くが、20日も泊まるとなると、路銀だけでも相当なもので、庶民には無理だろう。だから、参勤交代などとんでもない出費なのは十分にわかること。それを考えると、今では新幹線で博多まで行けるわけで、泊りもせいぜい一泊だろうし、飛行機なら、あっという間。我々が、いかに便利を享受しているのかよくわかるね。座布団5枚。
 

 徒然ノ冬 居眠り磐音(四十三)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。この著者は、シリーズものを多数手がけているね。西村京太郎と同じ。印税は莫大だろうなあ。面白いから、特に文句があるわけではないよ。このシリーズも52巻までいくのだそうだけど、決定版だから、改編される前のシリーズもあるのだから、すごいよね。
 

 湯島ノ罠 居眠り磐音(四十四)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。このシリーズ、結構、江戸時代の勉強になるなあ。小伝馬町牢獄と読売が説明されていた。知らず知らずのうちに、知識がつくってやつだね。文庫本なのに、字が大きいので読みやすい。
 

 ふぉん・しいほるとの娘(上)  吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この著者の作品は全て座布団5枚というくらい評価している。史実に沿ったものが多く、結構入れこんで読むので、すごく時間がかかる。だけど、読書の楽しみを十分に味わえる。今回も知らない事を多く学んだ。シーボルト事件は、教科書にも出ているが、凄惨な結末だったんだね。下巻は、娘の稲を中心にストーリーが進む。
 

 ふぉん・しいほるとの娘(下)  吉村昭著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

大河小説だね。テレビの大河でやったら、3年くらい放映するくらいの感じ。結局、女三代のストーリーって事になるのだが、著者の検証や研究などによって、分厚いストーリーとなっている。1978年の作品だが、その後、重版を続けている。著者はこの時の参考文献などから学んだことを契機として、その後、多数の作品を手がけた。しかし、久しぶりに歴史を勉強したという感じ。幕末、欧米に支配されなかったのは紙一重だったという印象。座布団5枚。
 

 空蝉ノ念 居眠り磐音(四十五)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ここまで読んできて思うのは、この作者も相当に当時の事を研究しているってこと。巻末に高齢者の事が書かれている。高級幕閣の最高齢は94歳だって。80代が10人、70代は39人となっている。健康に注意して長生きし、仕事に励むのが、忠であるとしている。大岡越前も75歳まで現役だったようだ。まあ、そんなこんなで、私の知識も広がり、嬉しい限りである。座布団5枚。
 

 弓張ノ月 居眠り磐音(四十六)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

10代将軍家治の時に、田沼意次が権勢をふるったのだけど、家治死去で失脚。家治の養子、11代将軍家斉は、なんと子供53人産ませたそうだ。相手の女性は20人だが、お手付きを入れると40人。55歳までに産ませた。その53人のうち、成人したのはたったの28人。当時、子供が死ぬのは当たり前のようで、なるほど平均寿命が短いはずだ。子孫を増やすためとか言われるが、この家斉と言う人、ある時期から政治に一切無頓着となり、大奥に入りびたっていたというのだから、ひどい殿さまではある。座布団5枚。
 

 海苔と卵と朝めし  向田邦子著。河出書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。一度は読んだことあるエッセイも入っていると思うが、何度読んでも彼女の著作は最高に良いね。食の話題が多いので、腹減っている時には読まないほうがいいかも知れない。向田作品のテレビドラマは全て好きだったけど、小説もエッセイも楽しい。彼女が長生きしていたら、もっといろいろ書いたと思うので、それが残念だ。
 

 失意ノ方 居眠り磐音(四十七)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

結構、本当の話が入っているので、あらためて驚いた。著者の力量もたいしたもんだ。北尾重政という浮世絵師も実在の人物。蔦屋はすぐにわかったけど。田沼は敵で一貫しているのだけど、特に息子の田沼意知などぼろくそ。ただ、調べると田沼意知ほど日本全体を考えた人物がいないということで、殺害された後、イギリス人は、日本の開国はこれで相当に先延ばしになると書き残している。巻末に、道場破り、剣術修行の事が書かれていたが、とても勉強になった。座布団5枚。
 

 白鶴ノ紅 居眠り磐音(四十八)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

映画ができたのは知っていたけど、NHKで何年かにわたって放映されていたんだね。知らなかった。日曜の夕方の時代劇なのかな?人のため 義のため 坂崎磐音が剣を抜く! 驚異の545万部突破した新たな時代小説の金字塔「居眠り磐音江戸双紙」。NHKで放送されるや大反響を呼んだ時代劇ドラマが、遂にDVDで登場! 新しいヒーローのドラマが誕生! 眠狂四郎然り、木枯らし紋次郎然り、時代劇には誰もが憧れるヒーローが時として現れる。そして、ついに新しいヒーロー坂崎磐音が登場すると宣伝されていた。びっくり。わかるなあ。面白いもの。NHKの俳優陣のほうが、すっきりする。合っていると思う。まあ、それでも小説の方が断然面白いと思う。座布団5枚。
 

 意次ノ妄 居眠り磐音(四十九)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

テレビでは、山本耕史が演じたようだがイメージ通りって感じ。彼は、以前、土方歳三を演じたけど、あれもピッタリだった。日野の町中に歳三の写真が飾ってあるし、銅像も山本耕史みたいだ。著者は、残り少なくなって疲れてきたのかなあ。刺客5人との戦いは、ちょっといただけない。今までの戦闘では、結構丁寧に描かれていたのだけど。残り少なくなった。座布団5枚。
 

 吉村昭の平家物語  吉村昭著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

当初は、少年少女古典文学館・平家物語であった。ダイジェスト版的にも感じられる。現代語訳本は、著者には似合わないと思った。著者は、自分の足、目、耳、で多大な時間の資料集め、分析が真骨頂だからだ。彼も途中でそれを感じたらしい。平家物語自体はご存知の通り、心打つ国民文学。まさに諸行無常の世界。名前が多く、そのたびに平氏系図、源氏系図をチェックしないといけないが、それはそれで楽しいものだ。それにしても、源頼朝はどうも好きになれないなあ。座布団5枚であるが、もっと深く楽しみたいなら、やはり、吉川英治の新平家物語全16巻をお勧めする。感動間違いなし。睡眠不足になるだろう。。
 

 日本の絶景鉄道  レイルマンフォトオフィス著。昭文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

田村淳のニュースなんじゃらにこのプロの若い写真家が出演していて、話を聴いていて、おもしろそうだな、と思って購入して読んだ。というより説明文と写真を眺めていた。100以上の写真が飾られている。しかし、そんな路線があったんだあ、そんな駅があったんだあ、なんてきれいな写真だ、って感じでまさに感動的である。撮り鉄なる人たちが多いらしいので必見だろう。撮り鉄でない人も十分に楽しめる。説明がとても丁寧で好感が持てる。皆撮りに行きたくなると思うね。写真をとる心構えや、準備なども書かれている。1650円の本だが、2倍の価値がある。2度読みたくなる。座布団5枚。
 

 吉永小百合 私の生き方  NHKプロフェッショナル仕事の流儀・築山卓観。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

日本中のおっさん、おじさん、おじいさんの永遠のアイドル、マドンナ。若い時、彼女の映画を見て、こんなきれいな人がいるんだあ、と驚いたが、大多数の男たちは同じように思い、あこがれたものだ。今、彼女は75歳だよ、もうびっくりだよ。あの容姿でその年齢はありえない。なるほど最後のスターだ。密着取材は300日に及ぶ。読んでいくうちに、彼女がなんでいまだに魅力的なのか、よく理解できた。制作班も最後は皆ぞっこんになっていたようだ。どんな有名な俳優も彼女の前に出ると緊張しっぱなしらしい。彼女の女優としての分岐点になったと言われる動乱、高倉健との共演を見てみようかなと思う。私は、彼女のピチピチの若いころの青春映画しか見てないんだよね。座布団5枚。
 

 ゴミ清掃員の日常  滝沢秀一著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

長い事、清掃員に白い目だった。どっちみち高給取りって思ていたからね。40年くらい前、毎日新聞だったかなあ、シリーズものがあったんだ。八王子市の放漫財政を追求するもので、清掃員や給食の女性たちの退職金が5千万というので、皆がびっくりしてしまったわけ。当時5千万は相当な額だったからね。ところが、今回、すっかり様変わりしていることを知った。著者は、芸人で食っていけないので二足の草鞋なんだけど、その奮闘ぶりに好感が持てる。漫画だったけどね。心に残ったのは、引っ越し先を選ぶときは、その町のごみ集積所を見るのが一番ということだった。民度がはっきりとわかるらしく、散らかっているようなところは、そういったことを気にしない人たちが住んでいて、きちんとしているところは、住民たちの清潔度が出ているとか。なるほど言われて見ればそうかもしれない。座布団5枚。
 

 落日の宴  吉村昭著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

勘定奉行川路聖謨。一歩あやまれば植民地となる激動の幕末に日本を守った男というサブタイトルになっている。名前は知っていた。大河ドラマでは平田満が演じていた。詳しい事は知らなかった。幕末に日露条約を結んだ人。幕末の頃の話は、いろいろ読んで知っているつもりだったけど、知らない話ばかり出てくるので参ったね。日本の外交官だね。明治には、偉人が多数出現したと考えていたけど、この幕末の頃に幕府は、身分に関係なく、大河ドラマの様に人材登用を活発にやっていたんだね。つまり、幕府にも幕末にも優れた人たちが多数いたという当たり前のことを思い知らされた。下手をすれば、中国のようにされたわけで、日本の当時の運命は非常に危うかったんだね。当時の官僚たちの優秀さを知ると、公金横領の最近の経産省の若いバカ二人など、恥を知れと言いたくなる。いろいろと考えさせられたが、とにかくいろいろ学べたことが大きい。しかし、この人、江戸ー長崎をはじめとして、江戸ー大阪、江戸ー京都、江戸ー下田などなどなど、よくまあ、歩くものですごいことだ。当時のロシア人がいろいろ出てくるのだけど、けっこううまくいっていたんだね。プーチン、知らねえだろう。座布団5枚。
 

 竹屋ノ渡 居眠り磐音(五十)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

51巻で終わりだから、寂しくなりそうだ。竹屋の渡しの説明があった。本当に実在したんだね。当時の絵図も出ている。読者の人の先祖が渡しと茶屋をやっていたようだ。今の向島辺りで、あの辺りは当時武家はいなくて、商人や百姓がいたようで、田園風景。桜が有名だったようだ。いろいろ知識増えたなあ。座布団5枚は当然だね。楽しいシリーズ。
 

 鉄道無常  酒井順子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

内田百閧ニ宮脇俊三の二人を知らないと、鉄ちゃんとは言えないだろう。内田百閧ヘ、なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う、という名書き出しで始まる本を書いている。宮脇俊三は、鉄道の時刻表にも愛読者がいる、という言葉を残している。この二人の先駆者たちの後を追いながら、時代と鉄道、人の心と鉄道を語っている。いろいろ考えさせてくれる。座布団5枚。
 

 転迷 隠蔽捜査4  今野敏著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

作者がラジオでしゃべっているのを聴いて、ああ、まだシリーズが続いているのかあと思って読んだ。最初、あれ、つまらない、変だなあ、と思ったが、徐々に思い出してきて、面白くなった。作者によると、警察という巨大な組織は、小説にしやすいとか、いじりやすいみたいなことを言ってた気がする。確かに、民間では考えられない事が堂々とまかり通っている。座布団5枚。
 

 宰領 隠蔽捜査5  今野敏著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

隠蔽捜査の流れを思い出したので、楽しく読んだ。気楽に読めて、なかなか良かった。まあ、第1巻から読んでみてよ。座布団5枚。
 

 増補版 時刻表昭和史  宮脇俊三著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者の本は、ほとんど読んだつもりだったが、これは、どういうわけか読んでなかった。評価の高い本で、読みだしてから、だんだんのめり込む。昭和8年の著者の子供の頃から、昭和23年までが収められている。時刻表を中心として、彼自身の事や家族の事などが時世に沿って書かれている。途中から、これは名著だと感じて、時間をかけて読んだ。読後感もやはり名著であった。巻末を読むと、歴史は嘘をつく、新聞も嘘をつく、だが、時刻表は嘘をつかないと書いてあった。司馬遼太郎、北杜夫、阿川弘之氏などの著名な人たちから絶賛を浴びる。だろう、だろう、やっぱりなあ、と思った。それほど、優れた本だと思う。時刻表に興味がない人にもお勧めだ。しかし、日本の鉄道はやはり世界一だと思う。天皇の敗北宣言の時も電車は走っており、詔後、国民全員が喪失感を抱いた後も電車は時刻表通りに走っていたというのは、さすがに唸らせる。座布団5枚。2001年版は安い中古があった。
 

 自覚 隠蔽捜査5.5  今野敏著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なかなか面白かった。しかし、著者は相当に警察組織の事を調べまくったね。よく知っていて理解している。なんで面白いかというと、この警察組織というのが、我々民間とあまりにも感覚的にかけ離れているからだね。信じられない話ばかりで驚くよ。警察に就職しないで良かった。座布団5枚。
 

 去就: 隠蔽捜査6  今野敏著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらずの竜崎。後半で、指揮権が誰にあるかで揉めるんだけど、あんなこと、民間ではありえないので、やっぱり警察官にならないで良かったと再確認だなあ。面白く、当然座布団5枚。
 

 新選組 幕末の青嵐  今木内昇著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

巻末に新選組小説の最高傑作と出ているが、そうかもしれない。新選組の類の本は、ほとんど読んできたが、この本はなかなか心に残る。私は、地元の英雄だから、土方歳三が好きなのだが、今回、どうして、自分が彼に惹かれるのかよく理解できた。秋に司馬遼太郎の「燃えよ剣」の映画が出るらしいので、とても楽しみにしている。司馬遼太郎のこの著作は、1962年に出たのだが、土方歳三を取り上げたもの。今回の幕末の青嵐も結論的には歳三をメインに扱っている。歳三がどうして今女性に人気があるのかよくわかる。司馬遼太郎によって、一躍、新選組がクローズアップされた。単なる人殺し集団と見られていたのが、一気に変わった。座布団5枚。一読をお勧めしたい。
 

 蕎麦ときしめん  清水義範著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

30年前の本。昔読んだが、また読みたくなって再読。この本は電車の中で読まないほうが宜しい。突然吹き出してしまうからだ。表紙には、東海三県限定発売。日本の名古屋は世界の日本、なんて書いてある。そうかあ、名古屋には蕎麦屋がないんだあ。名古屋にまつわる話はたまに聞くよね。他の作品も出ているが、蕎麦ときしめんだけで十分だな。笑い転げてばかりいた。名古屋人は、これを読むとやはり怒るのかね?面白いから、座布団5枚。
 

 旅立ノ朝 居眠り磐音(五十一) 佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

やっと最終回。なんと15年かかったそうだ。著者がこの作品を書きだしたときは、貧乏だったと書いてある。今度は、息子の空也の物語として引き継がれる。まあ、わからないでもないね。これだけ書けば、思い入れも相当なもの。テレビや映画でやったが、51巻もの大作は所詮無理だろう。著者がいろいろ調べて書いていたのは、途中で気がついたので、勉強になった。座布団5枚。
 

 人生の1冊の絵本 柳田邦夫著。岩波新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

絵本はすでに一つのジャンルとして存在感を出しているらしい。大人こそ、読むべきという事なのだが、教育関係者、つまり、幼稚園、小中学校の先生たちには必須だろう。150冊も取り上げられている。最初は、たいして興味も湧かなかったのでチンタラ読んでいた。途中から、著者が意図していることがわかるようになり真剣に読んだ。私は、今後、本屋に行ったら、ぷらりと絵本のコーナーに行って、手に取って、購入しようと思っている。近所にバカでかい本屋があるのでちょうどいい。結局は、大人が読むべきという結論になる。精神科でも取り上げていそうだけど。座布団5枚。
 

 棲月―隠蔽捜査7 今野敏著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

相変わらず面白くて、寝不足になる。隠蔽シリーズは何度かテレビドラマになっているけど、とても主人公の竜崎の心のブツブツまで表現できるとは思えないなあ。彼の心の中が面白いのであって、そうでなければ、普通の警察小説になってしまう。座布団5枚。
 

 木下サーカス四代記 山岡淳一郎著。東洋経済。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

子供の頃、父が連れて行ってくれた。ピエロが来たのを鮮明に覚えている。10年以上前かな、立川に来た時にまた見に行った。サーカスは楽しい。この本では、いろいろ知らない事を学んだ。100年企業だって。年間観客動員数が120万人。世界で一位二位を争うらしい。北海道から沖縄まで巡業するんだね。最後は、動物愛護の話だった。サーカスはロマンだ。座布団5枚。
 

 清明: 隠蔽捜査8 今野敏著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これが、最終になるのかな。主人公が警視庁から神奈川県警に移動。この本でも触れられているが、東京と神奈川の仲の悪さは、つとに有名。この小説、何度かテレビドラマになっているけど、さっき俳優陣も見たが、どうもピンとこないなあ。前回もそんな事に触れたけど、やはり、このあくの強い主人公を演じるのはむずかしいと思う。心の描写は小説で書けるけど、ドラマで俳優が演じるのは難儀だから、まったくの別物と考えたほうがいいね。別物と考えれば、テレビドラマもそれなりに楽しめるのではないかと思う。あれ?小説新潮に隠蔽捜査9が出ているね。間もなく出版されるのかな。座布団5枚。
 

 めんのずかん 大森裕子・石毛直道。白泉社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

柳田邦男氏の大人こそ絵本を読むべしに従った。読んで子供の頃の感受性を思い出せないなら、相当にお疲れだからということであった。近所の大きな本屋に行ったら、驚いたなあ、絵本コーナーが大きいんだよ。なるほど、あれなら一つのジャンルだね。それで気に入った絵の本をいろいろ引っ張り出して買ったうちの一冊。絵がとてもいいな。楽しい本だ。評価も高いね。困るのは、これを見ているとラーメン食べたくなることだね。だから、パンのずかんというのは買わなかった。すぐにホットドッグ買いたくなると思ったので。評価も高いようだ。座布団5枚。
 

 ちいさいおうち バージニア・バートン。石井桃子訳。岩波書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

原題は、THE LITTLEHOUSE。1942年の作品。アメリカで最優秀絵本に選ばれている。すごく良かった。読んでから、1日たっても心に残っている。大人にも子供にも自信を持って勧められる。座布団5枚。
 

 暁の旅人 吉村昭著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

幕末の名医である松本良順を扱った感動の歴史長編。司馬遼太郎が、最初に胡蝶の夢で松本良順を書いている。著者は異なる見方で書いている。新選組にも関わりがあり、歳三も出てきてなかなかいい。こういった本を読んでいて気が付くのだが、いつも長州、薩摩の新政府になってから、いろいろ新しい事がなされたように歴史は書いている。だが幕末の幕府も海外の知識、医学、技術など積極的に取り入れて、留学生も多数送り込んでいた事を知る。井伊直弼もぼろくそに書かれることが多いが、開国や立国に熱心であった。今まで刷り込まれていた常識なんていいかげんなものだ。座布団5枚。
 

 ふるさと60年 絵・金斗鉉、文・道浦母都子。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

絵本。福音館書店。この人の絵は、すごくいいね。大型本。1946年のある町の風景が、どう変わっていくのか、1951年とかそういう感じで進んでいく。当時の子供たちの流行などが説明されている。おじいちゃん、おばあちゃんが、孫たちに語るスタイルをとっている。ほんのりしていて、気持ちが和む。よく、細かく絵が描かれていて、素晴らしいと思う。座布団5枚。
 

 赤い人 吉村昭著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

外れのない吉村作品。囚人たちの北海道開拓裏面史となっている。明治の初めに、月形村、空知に函館の次の監獄が作られた。その後、釧路、網走とか増えていく。知らなかった。札幌から旭川、旭川から釧路方面、この道路を作ったのが囚人たちなのだ。囚人と言っても、凶悪犯ばかりでなく、当時は言論の自由がなかったので、政府から弾圧を受けた思想囚たちも多かった。炭鉱もそうなんだね。ひどい扱いで、厳冬の北海道で火をつかってはいけないので暖房もない。凍死は多数出て、病人だらけ。相当数の死者が出た。そんな過酷なところだから、脱走犯も多数出る。斬り殺されるか射殺されたりしている。著者は、いつも通りに史実に即して、淡々と書き連ねる。衝撃の作品で、この作品の後に、例の名著であり、映画でも有名な「破獄」が出されている。座布団5枚は当然の事。
 

 恨み残さじ 佐伯泰英著。双葉社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

地図を載せてくれたので、わかりやすくなった。人吉、五木、八代などは、ボンヤリとわかる程度だったからね。だんだん面白くなってきた。これなら座布団5枚だね。
 

 人は死なない  矢作直樹著。バジリコ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は、東大の臨床医のようだ。生と死の交差点で、神は在るか、非日常的な現象、霊について研究した人々、人は死なない、となっている。欧米のこの手の話は、結構進んでいて、多くの科学者たちが研究している。その点が日本と大いに違うところだろうか。日本も昔は、目に見えないものに対する畏怖はあったんだけど、多くの日本人がそういったものを失ったようだ。あちらの世界の事を信じていないと、死ぬのは怖いのではないかと思うんだけどなあ。全てが消滅すると考えるから、恐怖があるんだと思う。日本でこの手の話題を潰すのは、だいたい、新聞などのメディア。科学的根拠がないとか言うのだろうが、欧米では有名な科学者たちが多数手がけているんだけどね。座布団5枚。
 

 剣と十字架  佐伯泰英著。双葉文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今度は五島列島だ。行ったこともないので地理感覚ゼロ。今回は、刀とサーベルの戦い。いろいろ面白くなってきた。座布団5枚。
 

 盤上の向日葵(上)  柚月裕子著。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この著者の作品は外れがあまりないね。いつも面白い。今回は、砂の器を彷彿させるような手法をとっているような気がする。と言ってもこれから下巻読むので、まだわからない。いつもながら、彼女の作品は座布団5枚は当然。
 

 異郷のぞみし  佐伯泰英著。双葉文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

空也の武者修行は、今度は五島列島から、対馬、壱岐、平戸となっている。載っている地図を見ないと全然わからない地域だ。この後は、長崎に向かう。引き続き、いろいろ歴史的な話が出ていて、なかなか勉強になる。空也のイメージは、向井理かな。磐音も時々出てくるが、彼も50歳になっている。座布団5枚。
 

 未だ行ならず(上)  佐伯泰英著。双葉文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

直心影流、野太刀流、東郷示現流、これら、本当の流派なんだね。知らなかった。登場人物も本当の人たちが多数いるね。引き続き、おもしろい。残り1巻でおしまいなんだなあ。がっかり。座布団5枚。
 

 死ぬ気まんまん  佐野洋子著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

有名な『100万回生きたねこ』の絵本作家。著者は11年前に亡くなっている。実に豪快な女性で面白い。座布団5枚かも。
 

 未だ行ならず(下)  佐伯泰英著。双葉文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

とても面白くなってきたところでおしまい。最後は、相打ちなんだけど、空也がどうなったのかわからない。筆をたったのは、作者が高齢できつくなったとか云々。だけど、この人、いろいろシリーズものやってんだけどなあ。残念だが、座布団5枚。
 

 硝子戸のうちそと  半藤末利子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読み始めから、面白いタッチの進みで、向田邦子女史が歳をとってから書いたようなエッセイという感じがした。著者の母親は、夏目漱石の長女だから、彼女は孫にあたる。文章力というのは、DNAなのかなあ。本の中に太田治子と言う人が出てくるのだけど、彼女も太宰治の娘なので、やっぱりDNAなんだなあ。あの元気だった半藤一利氏が、衰えて亡くなっていくのだけど、いろいろ感じさせる話があった。しかし、夏目漱石の事をいろいろ知った。知らない事が多かった。著者は、新宿の漱石記念館の館長。思い出の残る本であった。笑えるのが、半藤氏が認知症の検査の時に、好きなものはなんですかと聞かれて、お酒です。今何をしたいですか、と聞かれてお酒を飲みに行きたいと返答した箇所。座布団5枚。ちなみに漱石の最後の随筆は硝子戸の中。
 

 闇を裂く道  吉村昭著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

大正7年に着工し、苦行難行の末、16年もかけて、昭和9年に完成した丹那トンネルの歴史小説。全て史実に沿っている。著者の作品に外れはない。当時のトンネル工事は大変で、犠牲者も多数出た。丹那トンネルができるまでは、国府津から御殿場のほうに迂回して、大変な思いで急坂をのぼっていった。今でも御殿場線として残っており、山北駅にはその名残がわかるはず。つまり、当時熱海には鉄道で行けなかったのである。トンネル工事が始まってから、トンネルの上にある丹那盆地の水が枯れてしまう。芦ノ湖の3倍の水量がなくなったとか書かれている。丹那盆地は、水がきれいでワサビなどが盛んだったが、村々は死活問題に直面する。その紛争とか、トンネルが崩れて、何人も死んだり、それはそれは、ため息が出るくらいの難事業だった。7年で完成するはずが、16年もかかったことからそれはよくわかる。当時の鉄道技術者たちの健闘ぶりが光る。なお、現在の新幹線は、新丹那トンネルを走っている。著者は、子供の頃に丹那トンネルに入る前に見えた慰霊碑からこの作品を書くことを思いついたそうだ。座布団5枚。
 

 先生のお庭番  朝井まかて著。徳間書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読み始めて、すぐに先生とはシーボルトだとわかった。吉村昭の著作を読んでいるので、おおよその流れは理解できている。庭師の少年の話なのだけど、感動の物語。シーボルトがいかに日本の草木を愛していたかわかる。欧州は、そんなに多数の種類がなかったようだ。日本は誇るべき7000種もある。淡々と流れるお話は、スムーズに頭に入る。読むと楽しめると思うよ。座布団5枚。
 

 もうあかんわ日記  岸田奈美著。ライツ社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女は有名なんだね。テレビやラジオにも出ているし。混乱の家族の中で、明るく振る舞う彼女はいいね。座布団は5枚なのかなあ。
 

 太平洋 その深層で起こっていること  蒲生俊敬著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

理系脳でない私にも興味深く読むことはできた。むずかしいところは、当然ながら、通読。3年前の時点で、宇宙飛行士550人、1万メートルの深海底にたどりついたのは3人だけと書かれている。日本は深海大国らしい。ハワイ島の横に海底火山があって、時々噴火しているらしい。そのうち、島ができて、ハワイ島につながる、と言ってもものすごい年数が必要なのだが、興味津々。近海に日本は昭和17年には探査船を出しているんだね。明神礁という大爆発を起こして、船が木端微塵にされたような海底火山噴火も書かれている。伊東と初島の辺りでも海底火山が噴火した様だ。そんな昔の話ではない。なんと、深海1万メートルにも生物がいるんだと。驚き。最後は、そんな深海にも人間が作りだしたPCBsなる高濃度の毒物が漂っているらしく、例のプラゴミのようだ。その汚染状況の恐ろしさで最期を閉じている。理科音痴の私でもうなりながら読んだのだから、やはり座布団5枚だろう。
 

 東京骨灰紀行  小沢信男著。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から、座布団5枚。著者は先日亡くなっている。単行本は2012年に発刊。彼の著作は別のものを読んでいるが、それも良かった。両国、日本橋、千住、築地、谷中、多磨、新宿、再び両国。いろいろ学ぶことが多かった。そして、読んでいて知識が増えるのが楽しかった。
 

 かなしきデブ猫ちゃん  早見和真著。絵/かのうかりん。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ラジオに作者が出演していて面白そうだったので、購入してみた。泣いて笑って、ほっこりした気持ちになる感動の絵本文庫とかかれている。実際にその通りだった。12月からテレビ放映もするようだ。舞台は、愛媛。愛媛の魅力も伝えている。絵がとてもすてきだ。本の魅力を倍増させている。座布団5枚は当然だろう。
 

 遊廓と日本人  田中優子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

君君、エロい事考えたらいかんよ。そういう箇所もあるのだが、このように表現されている。遊女が高い教養を持ち、香木を焚きしめ、とても良い香りを放ち、和歌を作り、三味線を弾き、生け花や抹茶の作法を知っており、一般社会よりもはるかに年中行事を行い、日本文化を守り通してきた存在であったことも忘れてはならない。などと記されている。??原遊郭の消滅は、やはり、江戸文化の消滅と言ってもよい、としている。確かに、明治以降、特に昭和に入ってから、??原は大きく変遷する。そして、今はご存知の姿。とても勉強になったなあ。面白かったので興味津々に読んだ。田中優子、聞いたことあるなあ、と思っていたら、元法政大の学長だったんだね。座布団5枚。
 

 信長と弥助  ロックリートーマス著。不二淑子訳。太田出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

信長の家来にアフリカ系黒人がいたって?うーん、記憶があいまいだ。それで、ネットの発達と、ゲームの進化で、弥助の存在が海外でも有名なんだって?知らなかった。資料があまりにも少ないので、ずいぶん苦労して書いたようだ。良かったのは、弥助の出自にからんで、世界的な奴隷貿易とか、あまり知らない分野の事が書かれていた事。とても興味深く読んだ。世界ふしぎ発見って番組まだやっている?弥助を取り上げていたらしいが、著者は反論を試みている。労作と言える。外人の目から見るといろいろ視点が違うのだとわかる。座布団5枚であるものの、この手の歴史ものが好きでない人は関心が薄いかもしれない。
 

 嫌われた監督  鈴木忠平著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初から座布団5枚。友人が是非読んで欲しいとプレゼントされた。新聞広告が派手だったので、そういうのをあまり信じない私であるが、この本については宣伝通り。日本球界、最強の打者のひとりであり、最強の監督のひとりであることは十分承知。著者の思入れの書き方もとても良かった。落合の態度は全て納得できる。文句なしに読んでいただきたい。すごく分厚い本であるが、ピッチよく読めるので、厚さほど読むのが大変ということはない。
 

 東天の獅子〈第1巻〉  夢枕獏著。双葉社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

天の巻。明治初期の柔道界の話ということになっている。そうそうたるメンバーが出てくる。最初は、無敗の木村政彦、そこから過去に戻る。嘉納治五郎が講道館を創設する。彼は秀才なんだね。講道館四天王。後半に空気投げの三船十段が出くる。チラッとあの前田光世が触れられる。要するに、キラ星のごとくって時代。当時の柔道は今のスタイルとは異なり、ルールが厳しくないので、本物の闘いだね。面白くて、面白くて、分厚い本がなんてこともない感じ。今後の展開が楽しみで仕方ない。座布団5枚。文庫本あり。
 

 東天の獅子〈第2巻〉  夢枕獏著。双葉社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

第2回。天の巻。この頃の柔術は、今の柔道とは大違いで、プロレスを思い浮かべれば良いと思う。もともと、柔術は寝技中心で、それを嘉納治五郎が、投げ主体に変えて、柔道という経緯。絞めは、参ったするか、落ちるかまで続く。関節技も腕や肘を折ることまでするので荒い。とても今の柔道からは考えられない。講道館柔道の完成までの嘉納治五郎の研究はすごいね。彼は、帝大を出て、学習院で教鞭までとっていて、西欧のレスリングやボクシングなどの研究している。老いた後の写真でしか知らないが、当時まだ20代。会津の西郷頼母が達人だったとは知らなかった。勝海舟と嘉納治五郎が親しい仲だったとか、新しく知った事も多い。座布団5枚。
 

 東天の獅子〈第3巻〉  夢枕獏著。双葉社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

第3巻。天の巻。今度は、沖縄空手、唐手が登場してきた。今の型どりみたいのと違って、一撃で殺すと言う元々のもの。廃れそうだった柔術などの武芸は、警察のおかげで生き残る事となった。面白い。引き続き、座布団5枚。
 

 ライオンのおやつ  小川糸著。ポプラ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の作風は、いつもそよ風の様にやさしい。彼女の多くの作品が、いろいろな言語に訳されて、世界中に読まれているのもよくわかることだ。今回は、ホスピスを取り上げている。生と死の問題を探求している。NHKでドラマ化もされている 座布団5枚。
 

 東天の獅子 第4巻  小川糸著。ポプラ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

第4巻。天の巻。夢枕獏著。双葉社。これでとりあえず終わり。前田光世が題材だったそうだ。そう、あの有名な無敗でブラジルに柔道を広めた人。ところが、書いているうちに、嘉納治五郎、講道館の物語になってしまったようだ。そもそも、4巻も書くはずではなかったみたい。いずれ、地の巻で前田光世を取り上げるそうだ。本に出ている柔術家、柔道家たちの最後も書かれているのが印象的。しかし、肘折り、肋骨骨折とか、歯がとれるとか、今の柔道とは大違いで、すごいものだ。格闘技そのもの。座布団5枚。
 

 あしたの君へ  柚月裕子著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

家庭裁判所調査官という仕事を知ることになった。何か事件があるたびにメディアなどが無責任に?批判するけど、なかなか実態がわからなかった。若い調査官補を中心にストーリーが進む。彼女の作品にしては、いまいちかなあ、なんて読んでいたが、途中から盛り上がってきた。いろいろ心に残る。座布団5枚かな。
 

 いとみち  越谷オサム著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。映画もあるようだが、小説の方が断然お勧め。高校一年生女子。津軽弁満載。津軽三味線。メイド喫茶店。感動の物語。みんな、いとを応援したくなる青春小説。あ〜〜楽しいお話しでした。
 

 ミチクサ先生 上  伊集院静著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

上巻。座布団5枚。あの文豪夏目漱石の生まれた時からのお話。楽しく読んだ。先日読んだ東天の獅子にしてもそうだが、あの頃の明治時代というのは日本が、日本人が生き生きとしていた時代だなあと感じさせてくれる。軍部の台頭は、もっと後の事だし。今、下巻を読んでいる。
 

 ミチクサ先生 下  伊集院静著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

下巻。漱石の門下生、先輩後輩らの名前がいろいろ出てくるのだが、綺羅星のごとくという感じで驚くばかり。え?彼も?あの人も?って感じで、よほど人を惹きつける何かを持った人なのだとわかる。明治時代から大正時代にかけては、非常に面白い時期で、日本の文学の勃興期、発展期だったと言える。読み応えがあった。座布団5枚。
 

 海も暮れきる  吉村昭著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

嘉納治五郎、夏目漱石と明治、大正、昭和につながる本を読んだが、まさか、この本もそうだとは、何の縁かね?俳人尾崎放哉という人の話。東京帝大を出て、その頃、虚子の教えなども受けた。この人は、アル中で、あちこちでトラブルを起こして、あちこちで首になる。最後は、小豆島。死ぬまでの8か月間を描いている。なんか暗い話で、闘病記のような感じで、途中でやめようかと思った。吉村作品に外れはないと信じて読んだ。次第にこの人が可哀そうになってきた。読み切って、けっこう心に残ってしまっている。二日ほどたってもこの人の一生を考えてしまっている。座布団5枚推奨するしかない。
 

 悪人  吉田修一著。朝日新聞。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

長編だね。著者がいろいろラジオで語っているのを聞いて読んでみようと思った。毎日出版文科賞と大佛次郎賞を受賞している。不朽の名作と書かれているけど、そこまで持ち上げるかなあ。殺人事件と逃亡劇なんだけど、映画でもやったらしいね。だけど、映画で、登場人物たちの心理描写なんてできるのかなあ。やはり、小説だろうね。おもしろかったので、座布団5枚かな。
 

 機関車先生  伊集院静著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。感動の物語。口が不自由な先生が瀬戸内海の小島に赴任してきた。子供たちとの暖かい関係。教育とは何かを教えてくれる。読後感は、さわやか。
 

 国宝 (上) 青春篇  吉田修一著。朝日文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。賞を二つ受賞している。浅田次郎氏激賞と書かれている。これは、よくわかるなあ。変わった小説手法でなかなか良かった。始まりが、長崎のヤクザ同士の抗争で、読んでいる限り、仁義なき戦いの長崎版かと思ったくらい。ところが、歌舞伎役者の話に変わる。殺されたヤクザの親分の息子の物語。たぶん、彼は私と歳が近い。歌舞伎は三度くらいしか鑑賞していないから、詳しくないのだがそんな私にもわかりやすい物語の展開。実話だと思うが、ストーリーの展開がとても面白く必見の価値だね。
 

 国宝 (下) 花道篇  吉田修一著。朝日文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

今度は林真理子絶賛と書かれている。朝日文庫。結局、国宝となった歌舞伎の女形の一生の物語。ここに出てくる歌舞伎の説明がきちんとされているので、わかりやすい。語り口で進める物語は好感が持てる。大作だね。座布団5枚。
 

 乗り鉄」教授のとことん鉄道旅  宮村一夫著。潮出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の話は、ラジオでいつも聴いていた。印象としては、ラジオの方が本より面白い。彼ほどの鉄ちゃんになると、私など、昔の単なる鉄道好きのおっさんというだけ。彼の駅弁に対する思入れはたいしたもので、京王の駅弁祭りで探して買ってみようかと思う。いろいろお得な切符の事が書かれており、各社、各地域の駅のウェブサイトを事前に調べておいたほうがいいね。一番残念なのは、地図なんだよね。あんな単純な地図でなく、もう少し詳しい地図を載せて欲しかった。読みながら、どこなのか調べるのも面倒だったので、通読したけど。鉄ちゃんは全員読んだ方がいいだろうね。座布団5枚。
 

 昭和天皇の声  中路啓太著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読み応えがあった。戦前に連合艦隊司令長官、海軍大将、軍令部長で、ポツダム宣言受諾の引導を渡した鈴木貫太郎元首相の話が非常に印象的だった。最終章の地下鉄の切符で、亡くなった昭和天皇の遺品整理の話は、感動的で涙が出そうになった。いろいろな天皇関係の本を読んできたが、この本は秀逸だ。座布団5枚。
 

 孤絶  読売新聞社会部。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

自分には無関係と皆考える。だが、全員がいつそんな状況に追い込まれるかわからない。怖い話ではあるが、皆に伝えるべきことをしっかり書いてある。国民みんなが必読なのかもしれない。介護の果て、親の苦悩、幼い犠牲、気づかれぬ死、海外の現場からとなっている。座布団5枚。
 

 異変ありや 空也十番勝負(六)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

やっと出た。楽しく読んだ。結構、史実に沿っている面もあるので勉強になる。しかし、評価欄を見て、嫌になったね。読んでいる人は皆ファンだと思ったが、平気で座布団1枚にする。嫌なら、読むなよ。しかも、この人物は長崎、異人、交易船は面白くないよ。銃が出てくるのも興ざめ。「陽炎の辻」からのファンで、思えば長い付き合いになった。が、書き手が老いたことで、磐音も弱冠二十歳の空也もまるで枯れ老いた老人のように精彩を欠く。言葉遣い、言葉の選択、全てに違和感。次作に期待することはない。ここまで書くかね。著者に対してリスペクトが皆無。不愉快だね。私?当然座布団5枚だよ。作者は苦労して、遅くに開花したので、それなりにリスペクトがある。春に第7巻が出るようだ。
 

 いとみち 二の糸  越谷オサム著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

続編。途中まで明るい青春物語みたいな感じだったが、途中から俄然面白くなり、感動的な流れとなった。読後の余韻も良かった。作家は、おまけのつもりなのか、別な話を最後に載せているが、これは余分だったね。余韻が冷めてしまう。映画もあるらしいが、小説の方が断然いいと思う。座布団5枚。
 

 恐竜まみれ  小林快次著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

化石発掘の苦労が語られている。興味津々に読んだ。勉強になるね。恐竜に興味がない人には、なんてこともないだろうが、そう言う人は、どっちみちこの本を手に取らないだろう。恐竜に興味ある人に座布団5枚。
 

 同志少女よ、敵を撃て  逢坂冬馬著。早川書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本屋大賞ノーミネート、8.5万部。アガサクリスティー賞受賞。直木賞候補作。ソ連の女性スナイパーの物語だけど、久しぶりに読み応えがあった。いちいち説明する必要性を感じない。素晴らしい著書である。この本は去年の秋に刊行されたのだが、地域は今のウクライナ戦争が行われているところでハリコフとか今は馴染みのある都市名が出てくる。この本は分厚い。だが、最後の1ページまで、気を入れて読むと良い。感動作だ。当時、ソ連だけだったみたいだね、女性兵士たちがいたのは。座布団5枚。今のこの時代、是非、読んでもらいたい。
 

 食堂のおばちゃん  山口恵以子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

累計35万部という人気シリーズ。佃島の定食屋兼居酒屋での諸々のドタバタ劇。とても楽しかった。巻末に、レシピとワンポイントアドバイスが載っているのが親切。とても面白いので、続編も読んでいこうと思う。座布団5枚。
 

 恋するハンバーグ 食堂のおばちゃん(2)  山口恵以子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

昭和の開業したころの佃島の定食屋のお話になっている。つまり、これは、最初だね。1は現在。実にいい話ばかりで、読み止まらない。心が和む。今の時代には必要な小説だなあ。絶賛。座布団5枚ですね。アマゾンもえぐいなあ。リンクさせようとするとキンドルにされてしまう。
 

 愛は味噌汁 食堂のおばちゃん(3)  山口恵以子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

はまったね、このシリーズに。食べ物の話は面白いのが常であるが、人間ドラマがとてもさわやかで好感が持てる。10巻まであるんだね。当然、座布団5枚。気晴らしに最適の本。
 

 白鯨 MOBY-DICK  夢枕獏著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

あのジョン万次郎が主人公。エイハブ船長も出てくる。名作「白鯨」は難解と言われている。この本でも途中長いのでよく理解できないような事が多かった。読み方としては、理解できない部分を通読する事。面白くなってきたら、またちゃんと読む。この方法が最適だと思う。ずいぶん時間がかかったが、読後感は、読んで良かった。座布団5枚。
 

 いとみち 三の糸  越谷オサム著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いとみちシリーズの最終。三味線のプロ級の女子高生の青春物語。さわやかないい小説だ。映画でなく、小説を読んだ方が楽しいと思うよ。しかし、津軽弁とはすごいね。聞いたら、あまり理解できないかもしれない。座布団5枚は当然。幸せな気分になる本だ。
 

 ヒトごろし  京極夏彦著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

分厚い。重い。1083ページの長編。新選組副長土方歳三の物語。司馬遼太郎の燃えよ剣と対極にある感じ。300ページくらい、ちょっとなあ、って感じ。その後、俄然、通読から熟読に移る。後半はさらに考えながら読んだ。この本では沖田総司は、ボロクソに書かれている。途中で思ったね、司馬遼太郎も京極夏彦も歳三が好きなんだって事。私も好きだからよくわかる。彼の合理的な考え方が好きだ。勝海舟との対談にもそれがあらわれている。そういえば、歳三の記念館が秋には閉鎖されてしまうから、行かないと。結論として、秀作だった。座布団5枚。
 

 ひさしぶりの海苔弁  平松洋子著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の事はあまり知らなかったのだが、ラジオで聴いていて、面白かったので、著作の一点を読んでみた。最初は、小泉博士の食の話と似ているなあ、程度の感じだったのだが、読み進むにつれて、とても味わい深い読書となった。今は、八重洲に紀伊国屋の海苔弁を買いに行きたい気分である。挿絵の安西氏の絵もなかなかのもの。是非、一読を勧めたい。食の話は楽しくなる。座布団5枚。
 

 道路を渡れない老人たち  神戸利文。上村理絵著。アスコム。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

300万人もいるんだって。介護保険利用者の寝たきり率は75%で、他国と比較した日本の高齢者の寝たきり率は、41%で欧米では4−7%、これは衝撃の数字だったね。介護保険制度自体は、素晴らしいものだと聞いてきたのだけど、制度に魂が入っていない事がわかる。世界一の寝たきり国家という事実。人手不足でベッドにとにかく寝かせるから始まり、一度ベッドに入ると体の機能が衰えていき、自分で動けなくなる。自宅療養もベッドでなく、布団の方がいいらしいよ。布団から起き上がること自体が大事らしい。いろいろ知らない事実が書いてあり、施設に入れれば解決という訳ではない事も知り、どうやって介護保険を利用するのか、どうやってリハビリを継続するかなどの方法も書いてあり、良書と言える。医者に批判的な感じがする。とにかく、手にとって読み、何かあればすぐにチェックできるようにしておくことが肝要だと思う。町にもいるんだよね。私の帰宅する深夜に横断道路と踏切を苦労して渡ろうとしている高齢者の人がね。どうして彼女がそんな時間に出てくるかというと、深夜だと車は少ないし、電車も少ないからなんだよね。踏切のむこうが0時閉店のスーパーがあるから買い物なんだよ。座布団5枚。
 

 ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん(4)  山口恵似子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

毎回いろいろ物語が展開する。やはり、食に関わる読書は面白い。累計35万部だそうだ。気楽に読めて楽しめるのだから、やはり座布団5枚だね。
 

 男どき女どき  向田邦子著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

短編集だね。私も多くの向田ファンと同じで、彼女の書いたものなら何でも楽しく読む。この本も昔読んだことがあるかもしれないが、ファンはそんなことは気にしないのである。ファンなのでいつも座布団5枚である。
 

 あじフライを有楽町で  平松洋子著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女のファンって多いんだねえ。今回のは、前回の海苔弁より面白い。いろいろ大事な個所があるから、ピンポイントで再読しようかと考えている。作り方とかお店の名前とか。楽しい本で、座布団5枚です。
 

 ゼロ戦特攻隊から刑事へ  芙蓉書房。西嶋大美ー太田茂著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりの戦記物。主人公は私の父と年齢が近い、著者たちは私の年齢。つまり、そういった世代のもの。特攻隊の本当の実態が分かった感じがする。この手のものでは秀逸かもしれない。多くの紙面がそれに注がれている。後半の刑事と剣道の達人の話は、追加で書かれた印象。主人公はもう亡くなっているかもしれない。6年前の出版だから。特攻、いろいろ考えさせてもらった。わずか、17歳、18歳の若者だものなあ。国家とは恐ろしいものだ。座布団5枚。
 

 真夏の焼きそば 食堂のおばちゃん(5)  山口恵似子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

食堂のおばちゃん第5巻。どうも10巻まであるようだ。登場人物の説明が毎回出てくるのは、ちょっと食傷気味。もう覚えてしまっているし。途中から読む人にもわかりやすくってことらしい。数編の物語が入っているのだが、時々、ハッとするようないい話が出てくる。料理、食材については、いつも手を変え品を変えで楽しい。座布団5枚。
 

 あの日の親子丼 食堂のおばちゃん(6)  山口恵似子著。ハルキ文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

5話でまとめられている。いつも通りに各話がそれぞれいろいろなストーリーがあって、いろんな人生が語られる。出てくる料理の数が多すぎて、覚えようと言う気がうせてしまったのは残念。毎回、座布団5枚。累計35万部は納得できる。
 

 わくらば追慕抄  朱川湊人著。角川文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読みだして、あれ、読んだことあると思ったら、これは、続編だった。この著者の作品は、いつも心に響く話が多い。今回も期待を裏切らなかった。座布団5枚。
 

 まるまるの毬  西條奈加著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

先日の彼女の作品は直木賞。これは、吉川英治文学新人賞。この作品の方が断然良い。江戸時代のお菓子職人家族の物語で、感動的なお話。江戸時代のお菓子なんて考えた事もなかった。文句なしの座布団5枚。
 

 蒲田行進曲  つかこうへい著、角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

映画は何度か見ている。この作品は、最初が舞台、そして小説、そして映画のようだ。知らなかった。脚本をやった作者がそのまま小説を書いたというところ。読んでいる間、いつも、風間杜夫、平田満、松坂慶子の姿出てきて困ったね。最初半分くらいは、おかしくておかしくて、笑いをこらえるのが大変だった。後半は真剣になるんだけど。音楽そのものは、昭和の初めの作品らしい。その後、映画に採用された。階段落ちは、やはり、舞台と映画を見ないとね。あー、つかこうへい最高。座布団5枚。
 

 霞町物語  浅田次郎著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

霞町のホテルに昔泊ったことがあって、そういえば、霞町って聞かないなあと思っていたら、今は西麻布っていうんだって?しかし、改名する連中というのは、センスがないと言うか、風情のない人ばかりだな。なんでも東西南北をつけたがる。絶対に昔からの名称があるはずなんだ。こういうところが嫌いだなあ。それはともかくとしてさすが浅田次郎、絶対に裏切らない。読み進めば読み進むほど、胸に響く。祖母の事を書いた雛の花は、圧巻で、多数がじ〜んときてしまうようだ。私もいたく感動した。25年前に出た作品だけど色あせない。これが賞をとっていないこと自体が驚き。座布団5枚。
 

 無恥の恥  酒井順子著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の話をラジオで聞いていて面白い人だなあと思って読み始めた。しかし、本当に最近の文壇は女性がのしているね。彼女の文体に慣れるのに時間がかかったが、慣れてきたら面白くなった。昭和のおっさんとしては、女性たちが何を考えているかわかって楽しく読んだ。そして、最近の風潮を知らない私などは、へえ?と驚くような話が多かった。まあ、楽しく読めるよ。座布団5枚。
 

 ウクライナ戦争日記  左右社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ロシアが攻め込んできた日、すべてが変わってしまった、という副題。24人のウクライナ人たちの日記。この24人は、我々と同じ普通の人だということを忘れないで下さいと書かれている。読み終えて感じたのは、ウクライナ人たちの愛国心の強さ、長い歴史でやっと得た自由だから理解できる。そして、ボランティア精神の旺盛さ。60歳以下の男子は全員が軍に入隊したので、女性の活躍ぶりが目立つ。我々日本人もいつ攻め込まれるかわからないのだから、万年安全などと思わず、ここに書かれていることをわが身として考えることが必要かも知れないと思った。最近出たばかりの本。ラジオで勧められていた。座布団5枚。
 

 実家じまい終わらせました!  松本明子著。祥伝社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

とても良かった。とても参考になる。 一家に一冊って感じかな。彼女らしさが随所に出ている。彼女が苦労したことが、この本の完成に至ったようだ。座布団5枚。
 

 塩狩峠  三浦綾子著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

あの有名な氷点の三浦女史の作品。旭川に彼女の文学館があるようだね。新聞で何気なく読んでいたら、自分の命を投げ出して鉄道事故を防いだ人の話があって、その実話を小説化したもの。この人物の子供時代から、亡くなるまでの話が書かれている。50年前の作品で、日露戦争当時の話を題材にしている。世の中にはいろんな人がいるものだと思った。こんな本でもイチャモンつける人たちがいるのは、ひたすら驚き。素直に読めばいいだけなのに。座布団5枚。
 

 TUGUMI(つぐみ)  吉本ばなな著。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

文庫版100万部突破。いつまでも色あせない青春小説の名作などと書かれている。山本周五郎賞とっているんだね。詩人、評論家で有名な吉本隆明氏の娘。一言で言って、優しい小説という印象。これが純文学というやつだね。33年前の作品。読みやすい。読後感が残っているので、やはり良い作品なのだろう。座布団5枚。
 

 銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯  藤本英夫著。草風館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

帯には、世界が先住民族の人権に注目する現在アイヌ民族出身である知里幸恵の19歳の生涯が鮮やかに蘇る。もともと、アメリカインディアンや、豪州あたりの先住民族に関心があった。それで、いつだったか、テレビで、アイヌの遺骨問題で、アイヌ人たちと北大の長年の確執だったか、そんな関係の番組を見てからさらに関心が深くなっていた。それで、ラジオで確か、知里幸恵の話を聞いて興味をもった。それらが背景にあるが、この本は、タイトルに強く惹かれた。とても美しい言葉である。彼女の遺した一冊のアイヌの神謡集で、銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに、で始まる。いい旋律だ。当時、明治ー大正時代の頃のアイヌ人たちと和人との確執がいろいろ書かれている。ひどい話で、彼ら先住民を土人と呼んでいたんだね。多くの国で先住民との確執が現在修正されているが、当然だろう。ま、それで、その土人たちに教育を施してやろう、和人の中に取り込んでやるというような政策がバックにある。差別は相当なもので、各所で触れられている。この若くして亡くなった彼女の弟、知里真志保は、北大教授になり、アイヌ言語学者、文学博士である。知里幸恵の生涯に大いなる影響を与えたのが、あの金田一京助、後の帝大教授で、アイヌ言研究の先駆者であり、民俗学者、盛岡の人である。私の世代は皆、金田一京助氏と金田一春彦氏の事を知っている。金田一氏との関わりがとても興味深い。著者の藤本氏の説明が、うまいのか、むずかしい分野のむずかしい話などを非常に丁寧にまとめていて、一度本を開いて読みだすと止まらなくなる。終わって感動を覚えた。座布団5枚。
 

 暴虎の牙  柚月裕子著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

弧狼の血、狂犬の眼に続く最終作。文庫本を待っていたが、いつまでたっても発売しないので、単行本買ってしまった。期待を裏切らない作品が多い。女性がこの小説を書くことにいつも驚きを感じる。映画もやっているが、小説の方が5倍面白いと思う。一気に読ませるね。彼女の作品は、ほとんど好きだ。岩手出身で山形在住で広島の小説というあたりが面白い。文句なしに座布団5枚。
 

 一下級将校の見た帝国陸軍  山本七平著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

途中まで通読という感じだったが、あまりの分析力のすごさに驚き、その後、熟読したので時間がかかってしまった。多数の戦史物は読んできているが、これは、誠に名著である。恐れいりました。自分があまりにも何も知らなかった事を思い知らされた。日本人であることを恥じるような気持もある。やたらと日本人すごい的なものが最近多い中、日本人というのはどういう人たちなのか、日本陸軍がどんな軍隊だったのか、深く考えさせられた。著者は、学徒動員で入隊し、陸軍少尉である。私は辻正信という参謀が大嫌いなのだが、彼についての話もずいぶん出ている。当然A級戦犯と思っていたが、逃亡していたんだね。その後の彼の復活について、書かれたものも秀逸である。「帝国陸軍」とは一体何だったのか。この、すべてが規則ずくめで超保守的な一大機構を、ルソン島で砲兵隊本部の少尉として苛酷な体験をした著者が、戦争最末期の戦闘、敗走、そして捕虜生活を語り、徹底的に分析し、追及する。現代の日本的組織の歪み、日本人の特異な思考法を透視する山本流日本論の端緒を成す一冊と解説されている。座布団5枚。
 

 暗約領域 新宿鮫XI  大沢在昌著。カッパ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

9年ぶりの登場らしい。相変わらずの激しい刑事物だ。ずいぶん長編ストーリーになっている。しかし、著者はよく取材したり、分析したりしているようで、そんな労作というのがよくわかる。知らない地下社会の話は相変わらず面白い。ストーリーの結末からいくと、第12巻目は、そんなに時間がかからないと思う。当然、座布団5枚。
 

 貧困旅行記  つげ義春著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いや〜〜〜面白かった。スタートが、えええ?って感じだったので、どうなるのか気になったが、その後、この小説、旅行記の醍醐味がジンワリと心に響いてくる。私も観光旅館とか高級旅館より、小さな旅館の方が好みだ。作者は漫画家であるが、名前はよく知っている。まだ、ご存命のようだ。ウィキにこの人のエピソードが出ていて、やけに納得させるものだった。つげの人柄を表すエピソードとして、以下の逸話がある。1980年代に、ある広告代理店が某メーカーのTVコマーシャルへの出演をつげに打診。出演料は郊外なら家一軒が建てられる金額を提示されたが、つげは考慮することなく断った。理由は以下の通りであった「とくに貧乏というわけではなく、それより、撮影のためのスタッフと何日も過ごすのが耐えられない。それに、自分がコマーシャルに出るという意味が分からないし、だいたい恥ずかしいよね」であった。味のある旅行記で、若い人にも勧めたい。でも、もうこんな旅ができない時代になってしまったと思う。読みながら、思い出していたのは、福島の四倉の温泉。高木海軍大将の実家なのだが、すごく古く、昭和の初めの頃の写真とか、大将の写真とか飾ってあって、やけに心に残る旅館だった。原発でもう廃業なのかもしれない。上野原、ここから近いのだが、そんなにいろんな温泉、鉱泉があるとは知らなかった。犬目峠?あの辺走った事はある。中央高速なんて走らないで、旧甲州街道を走ってみるのもいいかもしれない。サンメンバーズとか大月カントリーの近くなんだね。楽しい本であった。座布団5枚。
 

 貧困旅行記  つげ義春著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いや〜〜〜面白かった。スタートが、えええ?って感じだったので、どうなるのか気になったが、その後、この小説、旅行記の醍醐味がジンワリと心に響いてくる。私も観光旅館とか高級旅館より、小さな旅館の方が好みだ。作者は漫画家であるが、名前はよく知っている。まだ、ご存命のようだ。ウィキにこの人のエピソードが出ていて、やけに納得させるものだった。つげの人柄を表すエピソードとして、以下の逸話がある。1980年代に、ある広告代理店が某メーカーのTVコマーシャルへの出演をつげに打診。出演料は郊外なら家一軒が建てられる金額を提示されたが、つげは考慮することなく断った。理由は以下の通りであった「とくに貧乏というわけではなく、それより、撮影のためのスタッフと何日も過ごすのが耐えられない。それに、自分がコマーシャルに出るという意味が分からないし、だいたい恥ずかしいよね」であった。味のある旅行記で、若い人にも勧めたい。でも、もうこんな旅ができない時代になってしまったと思う。読みながら、思い出していたのは、福島の四倉の温泉。高木海軍大将の実家なのだが、すごく古く、昭和の初めの頃の写真とか、大将の写真とか飾ってあって、やけに心に残る旅館だった。原発でもう廃業なのかもしれない。上野原、ここから近いのだが、そんなにいろんな温泉、鉱泉があるとは知らなかった。犬目峠?あの辺走った事はある。中央高速なんて走らないで、旧甲州街道を走ってみるのもいいかもしれない。サンメンバーズとか大月カントリーの近くなんだね。楽しい本であった。座布団5枚。
 

 南の島に雪が降る  加藤大介著。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ニューギニアとは大きな島で世界二位というから、マダガスカルの次なのかもしれない。大戦時、東部は激戦区で惨敗となったが、西部は助かった。米軍が、それらの島々を吹っ飛ばして、トラック、フィリピン、マリアナに侵攻したからだ。その助かった西部でも多数の病死や餓死が相次いだ。それでも7千人が生き残って、戦後、1年くらいたって本土に帰還した。その西部ニューギニアでのお話。演劇団を作ったのだ。人は、演劇とか文化とか芸能とかあれば、生きられるという証明みたいなもの。演劇を見て、良かったあ、と言いながら、その晩に死んでしまう兵隊や、病床で死の淵にある兵隊が劇を見に行くけど、起きれないなら先にいくぞ、と言われて、突然立ち上がって参加する兵などもいた。あまりに兵隊たちがかわいそうで涙腺も緩む。劇でパラシュートで作った雪を降らせるのだが、その時にいた東北出身たちの部隊の300人程度は、シーンとして皆故郷を思い出して、泣いていた、というような話が出てくる。この小説は、テレビドラマ化、映画にもなっている。本も当時のベストセラーになっている。加藤大介のお姉さんが、沢村貞子。50代の人たちが沢村貞子を知らないので、驚いた。加藤大介が出ている映画は子供の頃みた記憶がある。結局、反戦小説と言える。最後に保坂正康氏の説明文が出ているので、あまり知識のない人にはわかりやすいと思う。座布団5枚。
 

 ロレンスになれなかった男  小倉孝保著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

作者は、いろいろなノンフィクションを手掛けてきているね。空手をアラブ世界に広めた岡本氏の話。この本は、最後まで読まないとダメだね。読後、いろいろな思いがこみ上げる。重厚なノンフィクションだと思う。私がここでいろいろ書いてもあまり意味はないので、一読するのが良いと思う。座布団5枚。
 

 雲を紡ぐ  伊吹有喜著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

高校生直木賞なるものを受賞している。不登校の女子高生の自立と成長を描いた作品、家族の在り方も問いている。布、羊の毛皮、糸紡ぎとか私にはさっぱりわからない世界なのだが、すんなりと入っていけた。全体的に暖かい感触の小説。読んで、気持ちが良くなる感じ。座布団5枚。
 

 聖職の碑  新田次郎著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最近、書棚の整理をやっている。それで、古い本で、字が小さいのは、廃棄するか、古本で売るか、にしている。それでも、手放したくない本もあるわけ。そういうのは、新しいのを買って、再読することにした。この本は、40年前に読んだもの。映画では三浦友和主演だったと思う。大正時代に起きた信州駒ヶ岳の小学生たちと先生の37名のうち、11名が亡くなった登山の遭難事故を扱っている。なんともすごいストーリーで、いろいろ考えさせられる。新田次郎氏は、信州生まれで、登山もやる、気象庁につとめていたので、台風などにも詳しい。終わりに取材記がある。それを読むと、著者がどのくらい精力的に調査をして、書き上げたものかよくわかる。八甲田山死の彷徨と同じくらいの力作と言える。座布団5枚。
 

 兎の眼  灰谷健次郎著。理論社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

児童文学の金字塔のような作品。40年ぶりに買い替えて再読。40年過ぎてもやはり良かった。新卒の泣き虫先生、小谷先生と小学校1年生を中心とした子供たちとの心温まる物語で、小谷先生も子供たちも成長していく姿を描いている。今の人たちが読んでもそう感じ取ってくれるのだろうか?教師、親、子供たち、それぞれ、時代と共に大きく変身してしまったが、比較を考えてしまう。著者の太陽の子、我利馬の船出も有名な作品だ。良いものはやはり、いつまでたっても良いと言う結論で、座布団5枚。
 

 なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか  藤井聡著。ポプラ新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

あまりこの手の本は読まないのだが、興味をもって読んだ。消費税の事を鋭く切り込んでいることに好感が持てた。ずっと長い間、どうして、いつから、こんなに非正規雇用が増えたのか気になっていた。今や労働力の38%というのだから驚きである。著者の説明で非常に納得できた。恐るべき実態だなあという印象。今や租税と社会保障費の国民負担率は、46.5%だと聞く。昔なら、一揆レベルに近い。それでも、国民は羊の様におとなしく、唯唯諾諾である。国と一緒に国民も廃れていくのだろうか。この箇所は私のコメントであるが、著者も同じような見解だ。元内閣官房参与で京大大学院の教授の説いている事ですら、 政府に通じないと言うのは、ちょっと驚きだ。発売されてから、1年経過しているが、さして実態は改善されているとも思えず。多少、違和感の残る箇所もあるが、全体を通してわかりやすく、訴えてくるものもある。一読を勧めたい。座布団5枚。
 

 文明が衰亡するとき  高坂正堯著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

この本を読みだしてから、知識が増える喜びみたいな感覚が湧いた。高校時代から知っている著者であるが、この著書は40年前に一度読んでいる。日本が衰えていくのを肌で感じていて、読んでみようと思ったわけ。神州不滅だから、滅ぶことはないけど、衰えていくことには逆らえないと思っている。この書は、ローマ帝国、通商国家ベネチア、そしてアメリカに分かれている。最後に今後の日本。あまりにも古い本なので、現代に通じるものがあるのかちょっとした疑問を抱きつつ、読んでいた。驚くなかれ、現代にもすっぽりはまるのだ。なかなかの推察力と分析力で敬服する。裏に、繁栄の陰に衰亡あり。衰亡の歴史から現代を読み解く、と書かれている。是非、ご一読をお勧めしたい。座布団5枚。
 

 あたりまえを疑う勇気  植松努、清水克衛、共著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

イーストプレス。私より若い世代が読むべき本だね。この植松氏の話を何かで聴いていて、なかなか優秀な人物だと思ったわけ。それで、興味を持って植松電機の事を調べた。ロケットをやっているんだね。清水氏は町の本屋の主人。変わった本屋らしい。彼らの語っていることは極めて大事な話で、やはり、子供を中心に物事を考えている。読むべき本としてお勧めしたい。座布団5枚。
 

 探花―隠蔽捜査9  今野敏著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

このシリーズは裏切らないなあ。とても面白かった。リズム感がいい。テレビドラマでもやりそうだが、断然、小説の方が面白いと思う。警察もの中でも秀逸だ。当然、座布団5枚。
 

 裏が、幸せ。  酒井順子著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

7年前の作品。裏とは、つまり、裏日本の事。彼女は立教の観光学科なるところを出ているんだね。どうりで、女鉄ちゃんだ。今は裏日本とか表日本とか言わなくなったようだが、昔は普通に使われていたし、教科書もそうなっていた。この本では、谷崎潤一郎の有名な陰翳礼讃という書を引き合いに出して、陰とか裏の隠れた素晴らしさを書いている。多く出てくるのは、新潟、石川、山形、秋田、青森、福井、鳥取、島根、京都あたり。なかなか、唸らせる箇所もあり、読んでいて学べるし、楽しくなる。秋田美人というのは本当なんだね。美人率、つまり、顔の造形美なんだけど、他地域の2,3倍なんだね。なかなかの作品で座布団5枚。
 

 風に訊け 空也十番勝負(七)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

磐音と空也で280万部というのだから、すごい。全62巻になるね。シリーズものというのは、漫画でもそうだが、読みだすと止まらない。一旦中止して時期を置いても、簡単にストーリーに戻れるので弱ったものだ。相変わらず面白い。著者は歴史や地理など当時の研究をちゃんとやっている様子。座布団5枚。
 

 名乗らじ 空也十番勝負(八)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最近の文庫本は、字が大きくて読みやすい。その分、値段も高くて、税込みで814円。よくまあ、本に消費税なんて悪税を課すよなあ。これが八番勝負で、今週、九番勝負が発売。剣道をやっている人にとっては、たまらなく面白いのではないか。剣の戦が多いもの。ここのところ、萩、山口、広島、姫路、明石、松山、高松などが登場する。京都が出てきたので、最後は奈良と江戸になりそうだ。連載物を読む場合、面白いと結局、全部読むことになるので、高い映画を何べんも見ると言う感覚になるね。頑張れ、坂崎空也って感じだ。座布団5枚。
 

 イヨッ たっぷり!: 高田文夫の大衆芸能図鑑2  高田文夫、佐野文二郎絵。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

小学館。2017年の作品。単純に面白く、楽しい。芸人、俳優、歌手など一人一人を解剖分析。高田文夫は私より1歳上だけなので、なんとなく理解できる。彼の能力の高さは折り紙付き。佐野文二郎という人の絵が実にいい。しかもそっくり。一人、3ページ、絵が1ページとなっており、60人が登場する。図鑑1はいずれ読むとして,3がないなあ。座布団5枚。
 

 逝きし世の面影  渡辺京二著。平凡社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は最近亡くなって、その訃報記事を読んでいて、この本が出ていた。素晴らしいタイトルに魅かれて、読むことにした。タイトル通りに素晴らしい著作だった。17万部も売れているようだ。この手の本にしては多い。解説には以下のように書かれている。我が国が西洋化し近代化することによって失った明治末以前の文明の姿を追い求めたものである。著者はおびただしい幕末、明治年間の来日外国人の記録を精査することによって、それをこの分厚い一冊にまとめた。西洋人という鏡に映った旧日本の姿に新鮮な驚きを感じた著者の、イデオロギーや先入観にとらわれない、素直な反応が、美しい日本語に表現されていて、本書を価値あるものとした、となっている。しかし、よくまあ、と驚くくらいの文献を調べている。明治以降、古い日本を恥じて、近代化に走ったのだが、今でも日本嫌いの日本人がいるようで、当時の古い文明を卑下する向きがいるのだそうだ。この本を読んでいると、時代劇なんて作りものだと思わせる。感動の書であり、読めば、懐かしい昔の日本が浮かび上がり、日本人であることに誇りを持つだろう。江戸後期に完成した日本文化の奥は深い。座布団、当然5枚。是非、読んでもらいたい。熟読したので時間がかかったが、楽しかった。
 

 荒ぶるや 空也十番勝負(九)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

累計300万部などと書かれている。磐根、空也の剣客小説も次回が最終回。5月になるようだ。だいたいわかっているし、字も大きいから、簡単に通読できてしまう。気楽に読めるって事。最初から読むなら、座布団5枚。全部で61冊になるけど。
 

 Jimmy  原作、明石家さんま。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

5年前の作品だね。面白い箇所が何度かあり、寝床や車内で笑いを抑えるのが大変だった。ジミー大西が画家として成功する結末は、なかなかいいものだった。だが、私が一番感動したのは、さんま。彼が、とんでもなくすごい奴だった事がわかったこと。並じゃない。ひょきん族以来、さんまが好きだが、彼の生き方や人生観などは、知らなかったからね。彼は、本当に笑いの天才だった。彼の思考方法が大好きになった。座布団5枚。
 

 歴史のダイヤグラム  原武史著。朝日新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

朝日新聞に連載されていたようだ。著者は学者であるが、鉄ちゃん。父親が鉄ちゃんで、いろいろ連れられて行った経験が活きている様子。この本は、いろいろ読んできた鉄道がらみの本と比べると異色と言えるかもしれない。よく、研究していて、興味津々で読んだ。なかなかの著書だ。あとがきでいいことが書かれていた。欧州では、鉄道を社会インフラと捉えていて、赤字路線にも投資する。そして、鉄道の文化的価値を認めている。日本では、スピード、採算ばかり気にして、なおかつ、道路にばかりお金を使っている。まあ、日本は文化を大事にしてそうで、実際にはそうではないからね。衰退していても文化、歴史などを大事にする国になればいいのにと私も思う。座布団5枚。
 

 ふがいない僕は空を見た  窪美澄著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

13年前の作品。著者は同じ市内に住んでいるので、馴染みがあった。つぶれた酒屋の娘だったようだ。話を聞いていて好感をもったので、一冊選んで読んでみた。最初から官能小説というかエロだらけで、うわ、女の書くものはこんなにすごいのかと驚いていた。それが半分まで進む。そこで、この本がどうして、山本周五郎賞を受賞したのか不可思議だった。後半の物語の展開で、うーむ、なるほどと真剣に読んだ。そんなわけで、受賞の理由もわかった気がする。この著者は、なかなかである。座布団5枚。
 

 坊っちゃん  夏目漱石著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

江戸っ子の坊ちゃんは、漱石自身かもね。松山での体験が半分くらいなのかな?当時の中学教職員写真もあり、モデルと思われる先生たちの指摘もある。高校時代以来だから、記憶が薄れていた。後記に説明文があるんだけど、そんなに難解に説かなくてもいいのにと思った。座布団など、漱石先生にはおこがましい。
 

 櫛挽道守  木内昇著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

10年前の刊行。櫛に興味はなかった。そもそも、今の女性たち櫛していないものね。やってもプラスティック製?それでも評価の高いこの作品は読んでみようと思った。父の背を追い、櫛挽職人をひたむきに目指す女性を描く。中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞受賞作。となっているわけ。信州の藪原という村での話。調べたら、すごい山奥のほうだね。奈良宿に近い。江戸時代後期の話。読み応え?あったね。結構、ストーリーに惹かれた。座布団5枚。
 

 冒険者たち―ガンバと十五ひき  斎藤淳夫著。薮内正幸絵。岩波。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

小学4−5年生以上などと書かれている。最近は、大人も童話を読む。一作目を出した後、全国の多くの子供たちから、早く続編を書いてと殺到したそうだ。ネズミたちとイタチたちの戦い。ネズミにとって天敵らしいね。八丈島はネズミの大量発生で困っていたそうだけど、イタチで助かったらしい。最初、適当に読んでいたけど、擬人化したネズミとイタチ、面白かった。いろいろなことを教唆しており、学ぶこと多し。子供に座布団5枚。
 

 何が記者を殺すのか  斉加尚代著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

田村淳の番組に彼女が出ていて、話を聞いていて、読んでみようと思ったわけ。いや〜〜恐るべし最近の風潮。といってもこの数年間の話なんだけど。ネット社会については、あまり興味がないので、ほとんど知らなかったのだけど、なんだか、地下社会ってイメージができた。記者たちも攻撃されたり、脅迫されたり、大変だなあ。身の安全を考えて、及び腰になる記者たちもいるだろう。それで筆を折ったり、大勢に沿った報道になるのも困ったものだ。ネット社会になる前から、同じような構造だったと思うのだが、匿名やネットの出現で陰湿になった気もする。いろいろ勉強になった。骨のある女性だ。座布団5枚。
 

 紀行  日本カメラ博物館監修。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

秘蔵古写真。幕末明治。日本の風景。500点。京都、奈良、鎌倉、長崎、横浜、函館、箱根、熱海、飯坂、掛川、沼津、厚木。当時の外人カメラマンと日本人カメラマンの作品。すごく数が多いのだけど、一枚一枚に解説、説明文がつけられているのでわかりやすい。撮影者不詳というのも多くあった。なかなか、興味深く、ページをめくっていった。座布団5枚。
 

 ジェイソン流お金の増やし方  厚切りジェイソン著。ぴあ。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いかにもアメリカ人が書いたとわかる本。この手の本としては、なかなか良いと思う。特に、投資の未経験者や若い世代には良いのではないか?帯には2022年日本で一番売れた本とか1位とか出ているが、この手の宣伝はあまり好きではないが、こうやって大々的にしたほうが買う人が多いのかもしれない。若い人向けに座布団5枚。
 

 名人  川端康成著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

囲碁の話。不敗の第21世本因坊秀哉が引退戦で初めて負けた。昭和13年とか14年のころの話。囲碁なんてまったくわからないから、読んでいてもついていけなかったのだが、なんとなくイメージ描きながら読んでいった。終わってみれば、なかなかの著書だと思ったね。今は将棋が大騒ぎになっているけど、昔の囲碁はそんな感じだったみたいだ。将棋でも麻雀でも勝負ごとに興味ある人は読むといい。勝負ごとに興味ない人には、向いてない。この作品は、名人の死後10年後に書かれたようだが、その前から用意されていたようだ。当時、川端康成は、新聞社の観戦記者。当時の人たちは新聞の観戦記をよく読んだようで、新聞社にとっては、囲碁とか将棋というのは、相当な大事だったようである。終わりに解説があるけど、それを読むといいと思う。座布団5枚。
 

 等伯 上  安部竜太郎著。日経。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

有名な長谷川等伯の物語。直木賞作品。骨太の著書だね。等伯の事は詳しいことは不明が多いらしいが、筆者は、いろいろな文献から研究し、完成させたようだ。下巻は、後日読むが、物語の展開が面白くなってきて、読みがいがある。信長のころの絵師だ。この人の作品は調べれば多数出てくる。教科書にも名前が出ていると思う。現在、等伯はモナリザを見て、驚いているところ。新境地に入っていくのだろうか。座布団5枚。
 

 きたきた捕物帖  宮部みゆき著。PHP。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

前回の彼女の作品が、つまらなかったので、そんなこともあるまいと思い、この本を選んだ。評価も高い。面白かった。時代劇の嫌いな人はともかく、好きな人には楽しめる本。座布団5枚。
 

 私のぼく東綺譚  安岡章太郎著。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

昭和10年ごろの話。永井荷風生誕140年だそうだ。何度か過去に映画化されている。随筆と小説が織りなす幽艶な詩的世界と書かれているが、まさにそんな感じ。安岡章太郎氏の解説があって、ぼく東奇譚と水の流れが掲載されている。永井荷風は、今でいうと村上春樹的な人気度があったようだ。昔はそんなこともなかったのだが、私は、荷風の書いたものが好き。座布団5枚は当然。
 

 赤星鉄馬 消えた富豪  与那嶺恵著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

久しぶりに読み応えのある本に当たった。膨大な資料の解読、探索、分析、著者の労力に敬服。ファミリーの系図が載っているのだが、そこをいつでもチェックできるようにして読んだ。彼の父親のお兄さんが、あの有名なカリフォルニアのワイン王。弟の赤星六郎は有名な日本のゴルフの先駆者。どこかで名前を見たことあるなあ。本かゴルフ場で。明治の幕開けから始まるのだが、薩摩の閥のすごさに驚いた。芋ずる式にみんなつながっている。明治の上流階級は、子弟を皆、欧米に留学させているのにも驚いた。ペンシルベニア大のウォートン校の日本人留学生たちの同窓会なんてあったんだなあ、もうびっくり。上流階級の前に、新政府や藩が留学生たちを派遣していた。しかし、私は数えるくらいしかいないのかと思っていた。薩摩閥は、昭和金融恐慌で潰れたが、脈々とその後も継続。長州もそうだったのだろうか。明治政府の懐の深いところは、旧幕派、具体的には会津藩などだが、優秀な人材を次々に登用したことだね。そして、この本は、昭和26年に赤星鉄馬が亡くなるまでが書かれている。生々しい当時の時代の匂いを感じさせてくれる。読んで損はない。当然ながら座布団5枚。
 

 等伯 下  安部龍太郎著。日経。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

絵師とか画家という人たちは、そんなに根を詰めるものかと驚く。こちとら、全くその世界がわからないので初めて知ること多し。この人の水墨画は国宝になっているんだね。当時、隆盛を極めた狩野派に対抗するように出てきた長谷川等伯。なかなか奥深い世界だ。まあ、座布団5枚というところ。
 

 人間晩年図巻 1990-94年  関川夏央。岩波書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

やはり面白い。興味津々読んだ。知らないことも多く、驚くことも多い。著者は私と同い年だから、彼のコメントは私にとってはわかりやすい。しかし、オードリー・ヘプバーンがオランダ人で、アンネフランクと同い年で、同じようなところに住んでいて、日記も下書きの時から読んでいたというのは驚いた。彼女はハーフユダヤ。まあ、そんな調子。一読を勧めるよ。読んで損はない。座布団5枚。
 

 奔れ、空也 空也十番勝負(十)  佐伯泰英著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

空也十番勝負第10巻。最終巻。まあ、いつも通り、字が大きく読みやすく、楽しく読書できた。ファンとしては非常に満足。著者は、もう80歳を越えているので、般若、空也シリーズも終わりかと思いきや、著者は、高齢になる般若を継続して書きたい意欲があるようだ。登場人物たちが独り歩きしているのだろうね。読書が娯楽と感じさせてくれるシリーズで、時代劇ファンにはたまらない。毎度の座布団5枚。老若男女が楽しめる。
 

 学問と野球に魅せられた人生  池井優著。扶養書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。この大学の先生の話を聞いていて、面白い人だなあ、と思って、購入。野球の事が主体ではなかった。後半に野球の話題が出てくるのだが、とても良かった。著者の慶応愛は相当なものだが、いやらしくなく、学問の話にしても、とても興味津々であった。熟読したので時間がかかった。というよりも熟読させる何かがあったということ。慶応の名誉教授だが、アメリカも含めて、あちこちで教鞭をとっている。後半は、しんみりとさせる話で、なかなか、心に届く文を書く人である。
 

 どんがら  清武英利著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

書評の評価は高い。読者層が決まっているからなのかもしれない。86復活に賭けるトヨタエンジニアたちの物語。若者たちの車離れを取り戻そうと、若者たちにも手の届く値段のスポーツカーをつくるというテーマ。自動車業界にも問題があり、スポーツカーは儲からない、ファミリータイプばかり作って、若者層を無視してきた背景もある。スポーツカーは、高く作ろうと思えば、いくらでもすごいのが作れるのだが、それでは多数の人たちの手に届かない、生産台数は増えない、赤字、もうからない、撤退を繰り返してきた歴史があるらしい。最低200万円からなのだが、私の86は、調べたら400万も払っている。2000台限定のイエローだったせいか、なんでもオプションをつけさせたからそんな値段になったのかもしれない。もう、8年前だ。現在も快調に走っている私の愛車。去年、アップグレードして、2000ccから2400ccまで排気量を増やしたそうだ。あの車を運転していて、一番楽しかったのは、群馬と秩父の峠を走った時かな。物語は、ほとんど実際の話で、富士重工との合作の経緯。スバルの方は、名前が違うようだ。少し、86とは違えているようだ。どちらにしても、生産台数は予想を大きく上回った。後半は、BMWとの合作や、スープラの復活、600万円かららしい。驚いたのが、86にしてもスープラにしても、圧倒的にアメリカでの販売台数が日本国内を上回っている事だね。アメリカ人は好きなんだなあ。車のエンジニアたちっていうのは、皆、スポーツカーをつくることに夢を持っていることを知った。長い年月でいろんな車に乗ったけど、高級車は、乗り心地は良いけど、やっぱり面白さはないよね。国内に多数の86同好会があるらしいが、スポーツカー好きにとっては、座布団50枚ではないだろうか。
 

 ガリバー旅行記  スウィフト著。柴田元幸訳。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

朝日新聞出版。子供の時に読んだのだが、記憶に残っているのは巨人ガリバーだけ。まさか、四つの国に行ってたとはね。ほとんどのページの横に注釈が書かれている。それを見ながらなので、読むのが遅くなる。わかりにくいところは通読って感じ。評価は高いようだ。夏目漱石は古今の傑作と評した。諷刺、皮肉だらけなのだが、注釈を読んで初めてわかるという按配。すごく読み終わるのに時間がかかったのだけど、どういうわけか、読後感がずっと残っているんだよね。やはり、漱石先生の言うように傑作なのだと思う。今にして思うと、もっとゆっくりと読んでも良かったかもしれない。座布団5枚ということになるだろうか。
 

 百間、まだ死なざるや  山本一生著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

すごく分厚い本で、読むのに時間がかかったが、あえて、時間をかけて楽しんで読んだ。百閧ニか字は変わるのだが、その背景は書かれていた。最初は、黒沢監督の遺作、「まあだだよ」を見て、こんなに生徒たちに愛される先生というのはすごいと感動したのがきっかけ。その映画で、所ジョージが好演していて、それ以来、所のファン。その後、鉄道紀行の名著、阿房列車、これは、その後、宮脇俊三などに引き継がれるのだが、を読んで感激をし、また、百閧ェ、私の好きな漱石の弟子と知り、ますます興味深々。知らないこともたくさん書かれていた。彼は、借金大魔王なのだが、なんで、そんなに金銭感覚がダメなのだろうと思っていたが、後半に初めて、彼のお金の使い方が書かれていて、とても納得した。多くの人に慕われながら、絶交なども多く、なんともたいした先生である。1971年に81歳で大往生。内田百閭tァンにとっては、座布団100枚くらい進呈したくなる。感動した。
 

 文豪、社長になる  門井慶喜著。文藝春秋。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

我々留学生たちは日本文字に飢えていた。友人たちの誰かが必ず、日本から、月刊文藝春秋を受け取っており、皆で回し読みしたものだ。分厚いから読みごたえがあった。菊池寛氏の小説では、恩讐の彼方へを子供のころ、読んで感動した記憶がある。この本は、文春100周年記念らしい。菊池寛氏は、私の生まれる前年に亡くなっていたので、道理で、あまり記憶がないはずだ。この著書は、温かく、菊池寛氏の人柄を扱っている。座布団5枚。
 

 廃線紀行  梯久美子著。かけはしくみこ。中公新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

10年くらい前の紀行文。読売新聞に掲載されていたようだ。彼女の著書は知っている。読んだと思う。硫黄島の栗林中将に関する著書で、テレビでもドラマが放映された。なるほど、そういう才能のある人が鉄道紀行文を書くとこうなるのかという感じで、非常に読みやすかった。地図と写真も入って、一つの廃線に4ページを費やしている。書評評価が高いのもとても納得できる。それにしても、よくあちこち彼女は行ったものである。座布団5枚。行ったことなくても行ったような気分になれる。
 

 つげ義春  新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

夢と旅の世界。彼の貧困旅行記を読んでから、すっかりファンになったのであるが、私のような連中は多いようで、最近はファン層も若くなってきている。彼は、長いこと漫画は描いてないのだが、昔の作品の人気が衰えない。私も彼の変な漫画が好きだね。これは、つげ義春ファンにとっては、たまらない本であろう。座布団5枚。
 

 不死身の特攻兵  鴻上尚史著。講談社現代新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

軍神はなぜ上官に反抗したかー20万部突破と書かれている。増版を重ねているし、漫画も出ているので、そうなのかもしれない。この手の本がこれだけ読まれると言うのは、すごく良いことだと思う。著者は演出家として名をはせているようだ。この本で一番良かったのは、最後の第4章特攻の実像だろう。著者の怒りもきちんと伝わってくる。私は、いつもこの手の本を読むときに思う。神仏が、こんな国家や、こんな軍隊を護ってくれるはずがないってこと。座布団5枚。
 

 センセイの鞄  川上弘美著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

20年前の作品。谷崎潤一郎賞を受賞した名作となっている。谷崎潤一郎賞はとても納得。全体を流れる静かな時間、何と気なしにゆっくりと引きずり込まれていく小説。終わり方も唐突だが、あれで良いのかもしれない。男女物を好まないならともかく、座布団5枚。
 

 江戸の幽明  荒俣宏著。朝日新書。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2014年発行。江戸〜東京の町巡りという感じだが、著者の豊富な知識には驚くばかりだ。読んでいるうちに知識が増えてくる感じだし、外に出て、東京街歩きをしたくなる著書である。座布団5枚。
 

 日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条  山本七平著。角川。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

トヨタ幹部が読むように薦められた本となっている。いやあ、参りました、降参。もしかして、名著「失敗の本質」を上回るものかも知れない。数多くの戦記や戦争関連の書物を読んできたが、こういう観点から、つまり、日本人論なのだが、ものごとを分析しているのは初めてだ。私は、もうフィリピン戦線で犬死(ほんとはいけない表現だが、そう呼ぶしかない)した多数の一般兵士たちが、あまりにかわいそうで、胸が痛んだ。1975年の野生時代が最初で、この本は2004年に出ている。戦後30年たっても、かつての敗因と同じ行動パターンが社会の隅々にまで覆っていることを危惧して書いた書となっている。当然、座布団5枚で、読者は必ずや、目からうろこになるだろう。
 

 御宿かわせみ (2) 江戸の子守唄  平岩弓枝著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

時代小説でも江戸時代、町、商人、職人、役人というものと、戦いものは異なると思う。だから、平岩弓枝のこのシリーズは、池波正太郎、藤沢周平などの流れと同じで、司馬、山岡、大仏、浅田諸氏の作品とは違うね。池波―藤沢―平岩氏たちの時代小説は、読んでいて、ホッとするのだが、現代の宮部、佐伯、高田作品に大いに影響を与えていて、同じ空気感。たびたびテレビドラマが製作されてきているので、ヒロインはいろいろな女優が演じている。昔、何冊か読んだのだが、著者のラジオでの話(アーカイブ)を聞いていて、また読みたくなったのだ。期待を裏切らず、やさしい、楽しい、明るい、よい小説だ。佐伯作品が流れを一番引き継いでいるのではないかと感じた。座布団5枚。
 

 御宿かわせみ (3) 水郷から来た女  平岩弓枝著。文春文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

期待を裏切らない。気楽に読めて、時代劇小説は面白いと思わせてくれるので楽しい。32巻全て読むことになるのだろうか。居眠り磐音と同じだなあ。座布団5枚。
 

 夕べの雲  庄野潤三著。講談社文芸。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

昭和41年に読売文学賞を受けた作品となっている。日経に掲載されていたようだ。ずいぶんと人気があり、この文庫は1988年で今まで42版を重ねている。文学作品だね。何気ない日常の家族の話なのだが、なんだか知らないが引き込まれるように読んでいった。楽しく読んだかな。なるほど、文学賞を受賞したと言うのが納得できる。著者の自宅のあった生田を中心としているのだが、読み終わるまで、多摩地域の話だとばかり思っていた。生田は私の育った地域に近いので、ああ、あの頃かあ、って感じで分かる。つまり、高度成長で山々が切り崩されて巨大団地がつくられるようになった時の事だ。文学作品に興味ない人に勧めもしないが、私には座布団5枚で、なんとなく惹かれてしまった作品。あとがきで、ずいぶんたくさんの作家たちがほめていたね。
 

 平岩弓枝「御宿かわせみ」の世界  文春ムック。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

オール読物。永久保存版。かわせみの傑作がいくつか、対談集が名取裕子、真野響子、高島礼子、沢口靖子、阿川佐和子などなど、という感じで、かわせみの世界が広がっている本。昔は、男性の読者が圧倒的だったらしいけど、その後は、女性ばかりになったようだ。主人公の「るい」に惹かれる人が多いようだ。著者が今年亡くなったのでそれで出版された。最初に「日本のこころ」という題の講演が書かれている。非売品なのだが、これで読める。これには参った。長谷川伸と師弟関係なのだが、数多い作家たちの中でいちばん若くて、唯一の女性だった彼女に恩師はあふれるばかりの愛情をもって教える。特に長谷川伸が入院して、人生の最後の場面での師弟の交流には、涙が出そうで困った。最近、本を読んでそんなことにはならないのだが、実に感動的な話で恐れ入りました。そして、長谷川伸(瞼の母、一本刀土俵入り、国定忠治などで有名)の偉大さも知った。座布団5枚。
 

 ワセダ三畳青春記  高野秀行著。集英社文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

(早稲田大学正門徒歩5分路地裏胡桃の木古木造2階アパ野々村荘三帖)早大出身の友人から、早稲田には変わった人たちがよくいると聞いていたけど、なるほどと納得する本であった。人前で読まないほうが良いだろう。吹き出してしまうし、笑ってしまうので、気を付けて読まないといけない。著者は、非常に面白い奴で探検家でもあり、いろいろ著作も評価が高い。座布団5枚X5。すげえ、面白かった。
 

 神田鶴八鮨ばなし  師岡幸夫著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

1986年に初版が出ている。私にはなつかしい柳橋辺りの話が出てくる。著者が修行した地域だ。この親方の名前は聞いたことがあると思っていたら、なるほど、昔のドラマ、イキのいい奴の原作者だった。最初は、魚の話が多かったが、その後、修業時代の話となり、最後は鮨屋の哲学となっている。なるほど、鮨の値段が高いのがよく分かったし、回転すし辺りと何が異なるのかもよくわかった。手抜きした鮨と手抜きしていない鮨の差は歴然だった。やたらとうなずきながら読んだ。座布団5枚が当然で、お鮨が好きな人には是非読んでもらいたい名著だ。
 

 謎の独立国家ソマリランド  高野秀行著。集英社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2017年に刊行された文庫。著者は以前ここにも書いた例の早稲田の四畳半の探検家。この本を読んで、日本の新聞やテレビは、ソマリアの事全く知識がないのに報道していることがわかった。彼に取材すれば完璧なのにそうしないのはプライドか?そういうわけで、我々はこの地域のことを全く知らなかったという事実を知ることになる。そもそも、我々にとって、アフリカというのは難易度の高い地域で、どこも誰も理解のハードルが高い。高野氏は何度もこの地域を訪問している。ビビる地域である。彼は過去に世界各地いろいろ変なところに行っている。まさに探検家の面目躍如というところだろう。わかりやすく我々に理解させようと苦労しているのがわかる。群雄割拠、氏族支配、万年戦争状態というイメージだ。それでもソマリランドというところの政治形態は日本よりはるかに優れたものと評価されている。このソマリランドでは戦争はもうない。海賊くらいしか知らなかったが、いろいろ知識を得た。とても長い探検記なので、わからない箇所は適当に流すのがお勧め。著者の力作と労力にエール。座布団5枚を進呈。
 

 何でも見てやろう  小田実著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これは、60年、65年前の著書である。昔のベストセラー。この本は、私を含めて大多数の留学生が持っていたか、読んだかしていた必須本だった。著者はフルブライト留学生。ご自身は謙遜しているが、東大でギリシャ文学?フルブライトで行けると言うのは当時でもすごく大変な事。秀才だらけ。今調べたらまだフルブライト奨学金やっているんだねえ。小田氏はそれでハーバードの大学院に行ったのかな。そして、彼は、アメリカ各地、メキシコ、イギリス、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ドイツ、フランス、イタリー、スペイン、ギリシャ(この箇所は感動的)、エジプト、レバノン、イラン、インド、香港、かな?貧乏旅行をした。その紀行文みたいなもので、当時の我々留学生たちは感動して、むさぶるように読んだものだ。これ読んで、メキシコに行った友人数人いたからね。当時の留学生の大多数が著者と同じように貧乏だったのだ。今の人たちがこの本を読んだら、どんな感想を持つのだろうか、興味津々だ。最後のところに帰国後の日本に触れているのだけど、なるほど、当時の日本人と今の日本人は基本同じだけど、全く異なる民族になっているのかもしれないね。座布団5枚は当然。
 

 子孫が語る土方歳三  土方愛著。新人物往来社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

写真や参考文献が多い。私にとっては郷土の英雄。子母沢寛の「新選組始末記」が昭和の初めに出版されて、それから一気に新選組が浮かび上がった。賊軍にされていたから、時代が必要だったのだろう。その後、司馬遼太郎の「燃えよ剣」で土方歳三の人気が沸騰。高幡不動尊には毎月行くのだが、歳三の大きな銅像があり、いつも私は彼にいろいろ語りかける。なんだかわからないが、とても興味を持たせてくれる侍だ。剣は実際に相当な腕だったようだ。永倉新八や斎藤一も好きだが、やはり、歳三だなあ。歳三の生まれたところは、うちから1キロもないね。あの辺は昔から土方姓が多い。多摩川と浅川が合流するところで、歳三はいろいろやっていたようだが、家から近い。そんなわけで、どうしても身びいきみたいになる。近藤勇が打ち首にされて、最後は飾れなかったが、土方歳三は、遺骨が見つからないが、最後の死に方で良かったのではないか?明治を生きても、榎本武揚のように器用な生き方は出来なかったと思う。座布団5枚だが、歳三に興味があるならという条件付きだね。
 

 これはしない、あれはする  小林照子著。サンマーク。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いわゆる最近よく見かける高齢者向けの心構えの本。そんなものだろうと思って、適当に読み始めた。途中から非常に興味深くなった。高齢者向けとは言い難く、全世代向けの本だろうと思う。なかなか、いいことが書かれており、読後は清涼感がある。著者は美容の世界では有名な人のようだ。ラジオで彼女の話を聴いたかもしれない。座布団5枚。
 

 御宿かわせみ (8) 白萩屋敷の月  平岩弓枝著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

さすがに8冊目になるとだいたいの構図がわかっているのでわかりやすい。とは言え、つまらなくなったわけではなく、面白いスート―リーが増えている感じ。一冊8話になっている。時代小説ファンには座布団5枚。
 

 一夜:隠蔽捜査10  今野敏著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

竜崎伸也Xミステリー作家、誘拐事件に挑むという副題になっている。小説に登場する作家は、今野敏氏かも知れない。この竜崎という刑事部長、この肩書きは警察ではすごく偉いのだそうだが、彼の性格がこのシリーズの一番の面白さだと思う。最近、ドラマでやらないようだが、彼の役をやるのは結構大変なのではないかと推察する。警察系推理物が好きな人には座布団5枚だろう。
 

 風に立つ  柚月裕子著。中央公論。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼女の作品はほとんど読んでいるが、いつも期待を裏切らない。なかなかたいした作家である。今回は、盛岡を中心とした物語で、南部鉄をつくっている職人が主人公。非行少年を預かることになったわけ。自然に座布団5枚。
 

 死ぬ瞬間の5つの後悔  ブロニ―ウェア著。仁木めぐみ訳。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

10年前に出版されて10回も増版されているのだから、それなりに評判が良いのだろう。著者はオーストラリア人の女性だが、心のやさしい人なのはすぐにわかった。後半の方で彼女が鬱から立ち直る姿が描かれているのだが、なんだか、お釈迦様の悟りと似ているなあという感じがした。読み終えるのに時間がかかったのだが、結論的には、心に葛藤を抱えている人、辛い人、苦しんでいる人、鬱とか心理的にダメージのある人たちには、読む価値があるのではないかと思った。座布団5枚にしておこう。
 

 向田邦子ベスト・エッセイ  向田和子編。ちくま文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

やっぱり向田邦子は素晴らしい。飛行機墜落と聞くと、いつも向田邦子と坂本九が頭に浮かぶ。エッセイの中で、飛行機の事が書かれている箇所があり、なんともかわいそうになった。もっと長生きして、いろいろ作品を残してくれたらととても残念に思う。読むのは、楽しいに決まっているので、大事に大事にゆっくりとページをめくった。以前から知っているものもあるのだが、再読を感じさせない。さすがの筆力だ。彼女の事を最初知ったのは、たぶんテレビでドラマを見てからだと思う。TBSとNHKが多かったかな。珠玉のドラマが多く、久世光彦とのコンビが良かった。座布団5枚なんて当たり前の話で、恐れ多くもという感じ。彼女には高いリスペクトを抱いている。
 

 続 窓ぎわのトットちゃん  黒柳徹子。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

文句なしの座布団5枚。やはり彼女はすごい。私の子供のころから活躍しているから、スター寿命がおそろしく長い。それも当然のように感じる。しかし、彼女は本当にお嬢さんなんだなあ。文科省は教科書に入れるべきで、国民必読の書かもしれない。さりげなく書かれていることが、それなりに心に響く。
 

 わが投資術  清原達郎著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

株の友人に勧められて読んだ。著者は非常に癖のある人だ。実力のある人は、だいたいそんなものだろう。東大出て、スタンフォードで修士、というわけで、頭脳が違う。だから、彼が普通に書いていることもわかりにくい箇所がいくつかある。だが、私の脳みそでは理解できないだろうと考えて、読み飛ばす。最後の解説で、三度ほどジャーナリストの人が、書き直したとなっていて、納得した。この本を読むべき人は、長期投資をコツコツやる人、学ぶ、研究心旺盛な個人投資家と思う。人気乱舞している株を常時売買しているような投資家には向かないと思う。なかなか、良いことも書いてあって、楽しく、私も学ぶことができた。座布団5枚。
 

 触れもせで: 向田邦子との二十年  久世光彦著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

テレビプロデューサー、作家。向田邦子との絶妙のコンビで作られた寺内貫太郎一家、時間ですよ、が有名。描かれている向田邦子との話を読んでいると、男から見た、いわゆるかわいい女の印象が強く残った。彼女の没後、14年にわたり年1回の向田邦子原作のTBSドラマを演出した。これは、よく覚えていて、毎年みた。全てが、すごく素敵なドラマだった。終わりに彼女の親友だった黒柳徹子が解説を書いている。向田邦子ファンには当たり前の座布団5枚。なお、彼女が亡くなったのは1981年、これが書かれたのが1992年、彼が亡くなったのが2006年。
 

 終わった人  内館牧子著。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

主人公が最初から私と同い年だったのでビックリ、興味津々。結論から言うと、非常に面白かった。これから読む人には申し訳ないので、これ以上書かないが、座布団5枚。映画もあるようだが、小説のほうが良いだろう。
 

 世界から恐れられた7人の日本人 上巻  丸谷元人著。ダイレクト出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

むずかしい本は苦手とか言う人には、わかりやすいと思う。軍人7人が取り上げられている。この方面の知識はあるほうだと思っていたが、2人しか知らなかった。一番、感銘を受けたのは、堀栄三陸軍少佐と小野寺信陸軍少将。情報、スパイ、諜報戦というのはきわめて重要で、日本は戦前も戦後もこれが軽視されがち。今の日本はスパイ天国で隙だらけと聞いている。そういう点では、今の日本人は考えるべきだろう。マスメディアの報道ばかり信頼せずに自分で考えることの重要性も説いている。世間にはいろいろな考え方があるだろうが、私は座布団5枚で勧めたい。
 

 Distance  今日マチ子。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

Run press.インスタグラムやフェイスブックに掲載したものをまとめたもののようだ。各ページの絵が素晴らしく、なおかつ、そこに書かれている短文も素晴らしい。コロナ期の日々をつづったもの。感動的で新鮮な本である。座布団5枚。
 

 僕の樹には誰もいない  松村雄策著。河出書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読みだしてから、あれ?なんでこの本を選んだのかと思った。私には場違いな感じの本だったのだが、著者はビートルズを敬愛しており、特にポールとジョン。それで、やたらとビートルズの話だらけで、そのうち、ローリングストーンズだ、ジャニス・ジョプリンだとか出てくるようになった。著者は2年前に亡くなったのだが、私と歳が近いので、出てくる英米の音楽業界の話には懐かしいものが多かった。著者は、バンドをやっていたし、音楽評論家だし、というわけで、その方面では有名なようで、熱烈なファンも多いようだ。音楽、ロックなどに関心のある人には座布団5枚。
 

 チャップリン 作品とその生涯  大野裕之著。中公文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

最初は、あまり力入れずに通読的。そのうち、徐々にのめりこんで読むようになり、後半はむさぶるように読んだ。チャプリンについては、日本一の研究家である著者の面目躍如というところで、素晴らしい労作となった。チャプリンが親日家なのは有名。彼の運転手兼マネージャーの高野氏の話もなかなか興味深い。チャプリンは、アメリカに目の敵にされるのだが、「独裁者」の箇所にその詳細が書かれている。なるほど、今の混迷のアメリカを見ると、あの国はいつもあっちにホイ、こっちにホイ、なんだなあと実感できる。多くのテーマ音楽がチャプリンの作品で、皆が知っているものばかりだ。著者は尊敬の目でチャプリンを書いているが、私もチャプリンを崇高な人物と感じた。強い心の持ち主で、どんな権力の圧力も跳ね返してきている。ぜひとも読んで頂きたい本である。座布団5枚。
 

 夢をかなえるゾウ4  水野敬也著。文響社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

さすがに第4巻となると色あせてきた感じではある。とは言え、教えはたくさんあり、老若男女、皆が読めば、なんらかのプラスになることは確かだろう。玄関には、カンボジアで買ったガネーシャの像が座っている。座布団5枚。
 

 ふだん着の寺田寅彦  池内了著。平凡社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は宇宙論で有名な学者のようだ。この本は、寺田寅彦ファンにとっては、是非読みたいもの、そうでない人は興味がわかないかもしれない。と言っても、今回知ったのは、寺田寅彦ファンが極めて多いという事。寺田寅彦は、夏目漱石の弟子であり、なおかつ、著名な科学者。いろいろな提言や名言を残している。特に震災関係ではとみに有名。寅彦ファンには、座布団5枚は必然。
 

 容疑者Xの献身  東野圭吾著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

20年前の作品。直木賞。映画やドラマでもやっていたんだね。気が付かなかった。映画はちょっと小説と違うようだけど。著者の作品はいつもベストセラーになっていて、気になっていた。過去2冊読んでいて、どれも良かった。今回、3冊目。なるほど、人気作家だけの事があり、いいね。ミステリーだから、読んでいて面白くないとね。座布団5枚は当然か。
 

 ぼくはあと何回、満月を見るだろう  坂本龍一著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼は、中学の後輩にあたるようだが、年下なので面識はない。彼のつくる音楽の世界には、まったく縁もないし、知識もない。それでも、わからないなりに読んでいくと彼の哲学が見えてくる。門外漢の私が、ふむふむと読むのだから、やはり何か心に訴えかけるものがあるのだと思う。座布団5枚。
 

 ナチスが恐れた義足の女スパイ  中央公論。ソニアーパーネル著。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

座布団5枚。読むのにすごく時間がかかってしまった。単行本なのに行間が狭いので、私にはきつい。フランス人名とか、とにかく多数の名前が登場するので、誰が誰だったか思い出すのに一苦労。それはそれとして、こんな説明となっている。「イギリス特殊作戦執行部(SOE)やアメリカCIA の前身OSSの特殊工作員として単身でナチス統治下のフランスに単身で潜入、仲間の脱獄や破壊工作に従事、レジスタンスからも信頼され、第二次世界大戦を勝利に導いた知られざる女性スパイの活躍を描く実話」。イアンフレミングは、彼女の行動から、007の着想を得たそうである。ヴァージニア・ホールは実在で、凄腕の女スパイですさまじい。並の神経ではない。当時、アメリカには諜報機関が全く発達しておらず、イギリスを舞台に活躍。強く感じたのは、戦前、戦中、戦後を通して、欧米も男女平等なんて嘘で、つい、この50年程度の変化であり、日本も遅れているなどと思わなくてよい。彼女が、この女性軽視にずいぶん苦労していたのが描かれている。事実は小説より奇なりの言葉通りのスパイの生きざまである。
 

 鶴川日記  白洲正子著。PHP。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

以前から彼女の存在と書き手であることは知っていた。夫の白洲次郎の事が好きなので、昔よくいろいろ読んだ。彼女の随筆は初めてだ。今回読んでいるうちに、彼女が相当な力量のエッセイストであることがよくわかった。名随筆家という言葉がぴったりする。初刊は1979年で、これは改訂版。武相荘は、近いのに,行こう行こうと思っているうちに日が過ぎ去ってしまった。今年は行ってみようと思う。歩いて1時間くらいで行けるし。ウォーキングがてらだね。名家の令嬢というのは、さもありなんて感じ。私には素晴らしい随筆集でした。彼女の自伝や他のエッセイも読んでみたい。座布団5枚。
 

 軍艦「矢矧」海戦記  井川聡著。光人社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

軽巡矢矧は、大和の最後の出撃についていった軍艦。京王プラザホテル、霞が関ビル、新宿三井ビル、ハウステンポスを設計した池田武邦氏がこの矢矧で活躍した海軍軍人で、池田氏を中心に話が展開する。いつも負けた海戦の話を読むと歯ぎしりする。最後の出陣で、沈没後、海を何時間も多数が浮かんでいるところを米軍機は機銃を発射して殺す場面なんて、なるほど、日米まったく違う戦争をやっていたんだなあと思わせるし、奴らなら東京大空襲、原爆投下をやっても不思議はないと思ったね。池田氏は2年前に亡くなったようだ。久しぶりに読みごたえがあった本。座布団5枚。
 

 書いてはいけない  森永卓郎著。フォレスト出版。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

意を決しての最後の執筆という感じになっている。覚悟を決めて書いているので、なかなか読んでいて面白かった。中には反旗を翻す連中もいると思う。テレビや大手新聞の事がいろいろ書かれていたが、これについては、実に日本らしく、同感だ。日本民族のDNAなのかもしれない。好き嫌い、信じる信じないは後回しにして、とりあえず、手に取って読んでみる事をお勧めする。座布団5枚。
 

 総会屋とバブル  尾島正洋著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

元産経新聞記者が書いた総会屋から見たバブルの世界。今の40歳以下の人は、ほとんど実体験のない時代の話。ありとあらゆるバブル関係の本を読んできたが、この作品は、厚くない本にも関わらず、内容が分厚い。 名だたる大企業の恥ずべき姿が再現される。多くの人物たちはすでに亡くなっていると思うが、どんな気持ちで終焉の時を迎えたのだろうかと思う。これら大企業、名前を挙げても良いのだが、あまりにも多すぎる。なんだか、幕藩体制の頃の藩のイメージを持ってしまう。バブルの怖さ、破裂した後の怖さ、これは、この先、歴史的に語られていくのだと思う。ところで、若い人たちは、総会屋なんて知らないのだろうなあ。座布団5枚は当然。
 

 玄鳥  藤沢周平著。文春。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

5編の短編小説。しかし、藤沢周平がなぜ愛されるのかよくわかる。外れがないしね。短編は興味なかったので、今回初めて。長編も短編も良さは変わらなかった。5編全て、主人公を思い出すことができる。圧倒的座布団5枚である。
 

 文にあたる  牟田郁子著。亜紀書房。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

牟田郁子著。亜紀書房。校正者の書いたものなのだが、私はその世界を全く知らなかったので、興味薄で読みだした。著者は校正の世界では有名らしい。一つ一つの話が、3ページ程度なので、とても読みやすい。読後もやけに頭に残っている。本が一冊できるまでというのは、大変な事だ。興味ない人には面白くないかもしれないが、私も最初そうだったし、座布団5枚かな。
 

 真珠とダイヤモンド 下  桐野夏生著。毎日新聞。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

上巻では、バブル醸成期、下巻は、大天井を付けての崩壊期。若い人には、是非とも読んで、あの時代の強欲に走り、そして滅んだ日本人、日本の姿を思い浮かべてもらいたいと思う。どの時代も株式市場が主役。なんともやりきれない気がする。リーマンでも激震が走って、アメリカでは多くのドラマが演じられた。人生、終わってみるまでわからない、という結論になるのだろうか?どんなに冷静でも、全ての人が渦に巻き込まれてしまうものか?真実に近いような小説だね。座布団5枚。
 

 味なメニュー  平松洋子著。幻冬舎。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

楽しく面白かったので、座布団5枚。この本が、書かれたのが2015年、その後、コロナがあったので、掲載されている店がまだ残っているのか、不明。ただ、例のまずい青汁スタンドは、探したら、あったので入った。いろいろな店があるのだが、知られている店をピックアップする。たこ梅(大阪)おでん、まるます家(赤羽)居酒屋、アジアンランチ(キッチンカー)、カツサンド(肉の万世、秋葉原)、ニューキャッスル、ぴーまん(ジューススタンド)御苑、よもだそば(立ち食い)日本橋、茶漬け鹿火矢(新橋)、ニュー新橋ビル、万定フルーツ(ホットケーキ)。551(大阪)、銀の塔(銀座)。そんな感じで、30店舗かな。著者は、きちんと取材もしているので好感を持てる。まあ、タブレットで注文するような店は論外ですね。ラーメンは理解できるけど。
 

 面食い  久住昌之著。光文社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ジャケ食いというそうだ。そう、著者は例の孤独のグルメの原作者。彼は、多芸なんだね。ミュージシャン、漫画家、その他いろいろやっているようだ。彼の趣味は、どうでもいい、何とか食堂とか、冴えない料理屋などの中から、素晴らしい店を探り当てる事らしい。だから、当然の事、事前にネットで調べるわけでもないし、口コミも一切読まない。これで、名店を見つけるのが最高の喜びのようだ。彼の才能ぶりを見ていると、面白い。当初、あまり面白いとも思わなかったのだが、短編ずつの日本各地のいろいろな食堂の話を読んでいると、次第に引き込まれていく。だから、最後は座布団5枚になってしまった。各店の挿絵もすばらしく良い。
 

 明治商売往来  仲田定之助著。ちくま学芸文庫。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者は、日本橋、京橋、八重洲辺りで生まれ育った江戸っ子で、東京がふるさと。江戸っ子といっても、お坊ちゃんのようだ。明治21年に生まれ、大正時代にドイツに留学し、美術評論家、実業をする。東京風俗を書いた随筆で高名で、ちなみにこの著書は、日本エッセイストクラブ賞を受賞している。1970年に亡くなっている。明治、大正、昭和と時代が流れるに従い、いろいろな職業、お店が栄枯盛衰の道をたどってきたわけだが、中には私の子供時代のものもあり、やけになつかしい思い出がよみがえった。若い人には、わかりにくい職業等が多いと思うが、それはそれなりに、文明開化以降、我らが日本国と日本人が歩んできた文化、文明を知る良い機会になると思われる。東京への郷土愛の物語といってもいいかもしれない。一読の価値十分あり。座布団5枚。
 

 言い残しておくこと  鶴見俊輔。作品社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

有名な哲学者だということは知っていたが、初めて読んだ。彼は、小田実とも親しいんだね。哲学の本など読んだ事もないし、興味もなかったのだが、読んでいくうちに面白くなった。わかりにくいところは、パス。彼は、戦前の留学生で、戦争にも行っている。印象的だったのは、江戸時代末期から、日露戦争勝利までの日本人と、日露で勝ってから、敗戦までの日本人の変貌ぶりにふれているところだった。哲学者の書いたものとは、意外と面白いもので、それはそれで、私にとっては発見だった。私には座布団5枚。
 

 野望の屍  佐江衆一著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

著者の作品は何冊か読んだと思う。2019年、85歳の時に訪独。今回の著作のためだ。2020年、校正の段階で死去。というわけで、最後の作品になった。同い年に生まれたヒトラーと石原莞爾を取り上げて、両方の大戦を振り返る。冷静に史実を叙述しながらも、行間に悲憤が滲み、今書かねばの真摯な思いがみなぎる傑作と表紙に書かれているが、まさにそのとおりであった。読みごたえがあり、ページをめくるごとに読む真剣度も変わった。この時代に興味のある方には是非とも読んでもらいたい本である。座布団5枚。
 

 リーマンの牢獄  斎藤栄功著。監修―阿部重夫。講談社。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

どんな大事件でも風化してしまう。特に、こんなマネーの世界の話だと特にそうだ。私にも記憶が薄い事件。それで、当時の記事を見ると、巨額のカネはどこに消えたのか。病院再生ビジネスを手掛ける新興企業、アスクレピオスの破綻劇が、大型詐欺事件の様相を呈している。同社が仕組んだ投資スキームには、複数の上場企業だけでなく、有名デザイナーを含む個人投資家20人以上が資金を拠出。投資総額約400億円のほとんどが回収不能状態だ、中でもリーマン・ブラザーズ証券は、その額が突出。焦げ付き額は約320億円にも上る、となっている。丸紅が大きく関わっている。すごく分厚い本なので、最初のうち、適当に読んでいたので、このビジネスモデルの事が、むずかしくて、なかなか理解ができなかった。この斎藤という男は、学歴コンプレックスかもしれない。登場人物の学歴が必ずついている。言い訳が多いので、私はこの男が好きになれない。金をなんだと思っているんだと思わせる。元山一というのが象徴的。監修者が、うまくまとめている。斎藤氏が書いた原文は、もっと長かったようで、相当にカットしたみたいだ。読み終わってからは、文句ばかり言っている奴という印象が残った。それなりに、こういう人物たちを観察することによって、得られることも多いと思う。刑務所15年の話が、印象的。騙す方と騙される方の両者でドラマができる。あまりにも出てくる金額が莫大なので、ピンとこない。座布団5枚。
 

 星のこども  ステファニーロスシソン作、山崎直子訳。小峰書店。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

カールセーガン博士と宇宙のふしぎ。これは絵本。私の世代の人は、誰でも知っているカールセーガン博士。テレビで、よく星や宇宙の解説をしていたのを覚えている。「わたしたちの身体は、遠い昔、はるかかなたの大きな赤い星の中で作られた星のかけら、つまり、窒素や酸素などでできています」たかが絵本、されど絵本という感じだろうか。こんな知識を得ると、地球上の人間同士の争いなんて、バカじゃねえの、と思わせてくれる。単純な絵本なのだが、ずっと気になって心に残る。座布団5枚。
 

 あのひと  ビートたけし。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

彼の本は、ほとんど読んできているのだが、これは読んでなかったようだ。ラジオで、ラッシャー板前の話を聞いていて、購入して読んだ。いつも通りにとても面白かった。昔、友人は彼の事を良く言わなかったが、私は、最初から彼のファンで絶対に大物になると思っていた。とは言え、あんな大物になるとも考えていなかったので、たけしのすごさをあらためて感じいる次第。座布団5枚。
 

 逃亡(上)  帚木蓬生著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

読みだして、これは、吉村昭氏の作品だとばかり思っていた。同じような手法で、綿密に調べ上げている。主人公は、戦時、香港駐在の憲兵。ただ単に憲兵というのは、残酷で嫌な奴らと思っていたので、読み進むにつれて、次第に理解度が深まった。小野田さんのような情報将校とどう違うのかよくわからない。仕事がら、中国スパイも多数操っていたが、戦後、他の兵隊たちと異なり、長い間、解放されなかった。米英軍から執拗に追及され、お尋ね者手配書も出る。主人公は、あの手この手で、国内に復員したが、追及の手から逃れるために逃げ回る。戦時、戦後と続く物語で、非常に興味津々と読んでいる。座布団5枚。
 

 逃亡(下)  帚木蓬生著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ヘビーであった。本当の話のようだ。戦争、終戦、逃亡と続くのだが、結論はここでは書かない。途中、涙が出そうな場面もあった。実に、読みごたえがあった。いろいろなことを考えさせてくれる。とにかく、長い話。長すぎるが、それはそれなりに価値がある。今でも思い出せる局面の数々。この作品が出たのが、1997年。これは復刻版のようだ。座布団5枚。
 

 おいち不思議がたり  あさのあつこ著。PHP。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これ、24回も増版されているね。初回は2011年。テレビドラマにもなったようだ。江戸時代、医者の娘のお話。たいそうな小説でもないのだが、ほのぼのと楽しく通読できて良い。4巻まであるようで、全て読んでみるつもり。楽しく、気楽に読めるという点で座布団5枚としたい。
 

 桜舞う おいち不思議がたり  あさのあつこ著。PHP。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

これは第二巻。うーむ、なかなか面白くなってきたぞ。株が落ちている時、円相場がわからない時、気晴らしに最適だな。居眠り磐音シリーズが、10の面白さだとすると、7くらいであるが、気楽に読めて、楽しめる。座布団5枚。
 

 五郎治殿御始末  浅田次郎著。新潮。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

浅田作品は多数読んでいる。著者は、確か、市内に住んでいると思うけど、近隣の市かも知れない。短編6部が収められている。読みやすい。江戸時代が終わって、明治5年とかそういう時代に没落した武士たちの生きざまを描いている。なかなか、心を打つ作品だ。心に残る。座布団5枚。
 

 ベスト・オブ・ドッキリチャンネル  森茉莉著。ちくま。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

森茉莉は、森鴎外が溺愛した娘。「父の帽子」という本でいたく感動したのを覚えている。あれは、いい本だった。もともと、私は鴎外のファンなので当然ではある。この本は、古い話が多く、1979年から1985年だし、彼女は1987年に亡くなっている。これは、週刊誌に書いていたものを選別してつくられた本のようだ。だから、今の若い人は、出てくる俳優や芸人、歌手などは知らないかもしれない。それにしても、よくまあ、悪口ばかり書けると驚く。彼女にその認識があるとも思えないが、ほめる人とけなす人がはっきりしている。まあ、嫌な話ではあるものの、結局、最後まで読んでしまったので、それなりに面白い本であったということだろう。座布団5枚。
 

 DIE WITH ZERO  ビル.パーキンス著。ダイヤモンド。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

友人から勧められた本。以前から評判だったのは知っていた。15万部くらい売れているんだね。5年前に出版された。英語はもう少し前と思うが、増版を続けている。アメリカ人にも有用な本であるが、日本人向けに書かれたのではないかと思わせるくらい日本人は読む必要がある。この本の良さは、出てくるであろう疑問にきちんと答えている事だろう。我々はどうしても見たくないもの、知りたくないものから目を離したがる。それは自然な事であるが、それについても深掘りしてくれている。70歳以下の皆が読むべき本であるが、感心してどうせ忘れてしまうのだろうから、半年後、1年後に赤ペンを持って再読するほうが良い。残念なことに、私は10年前にこの本に出会いたかった。座布団金縁で5枚。
 

 「祭りの日」慶次郎縁側日記。 北原亞以子著。新潮社。

 AKI評価:☆☆☆☆

以前、テレビドラマで高橋英樹と石橋蓮司が好演したやつだね。読んでみるとあのドラマの出来が良かったことがよくわかる。シリーズものだから、続き物になっているが、基本的に江戸の小噺を集めたもの。気楽に読める。慶次郎、すまんが、座布団4枚だぜ。

   

 「ゆれるあなたに贈る言葉」 今井彰著。小学館。

 AKI評価:☆☆☆☆

例のNHKのプロジェクトXを作った人ね。今はNHKを辞めている。人によってこの本の重要度は違うと思う。サラリーマン諸君は読んだほうが良いと思うね。20,30,40代も読んだほうがいいね。私が驚いたのは、日本のサラリーマン社会ってすごいな、ということと、NHKという化け物みたいな巨大組織だね。若く、迷える人には読むべきことも多く書かれているから読むと良い。独立系のおいぼれの私には座布団4枚であるが、その他の人には5枚かもしれない。

   

 「はっきょいどーん」 やまもとななこ。講談社。

私の右に出ているような絵を多数描いてきてくれたななこさんが、初の漫画出版。相撲絵本。NHKのあさいちにも彼女出演したんだよね。相撲女子もここまでやるとなるとすごいね。出版おめでとう。

 

          

 「方丈記、徒然草、に学ぶ人間学」境野勝悟著。 致知出版社。1890円。

私が選んだ本ではない。お客さんが贈ってきたのである。私は、この本を読んで、悟りを開けと言われたような気がして読んでみたのである。今は学校で古典を教えているのか知らない。何しろ、日本史すら教えないと言うおかしな教育界なので、理解ができない。

中学か高校でこれはある程度学んだので入りやすくはあったが、この歳になって読むとまた感想も違うものだ。なかなか良いことを書いてある。だが、この人の解説がないとわからない。著者は、日本語の奥の深さを説いている。世界に冠たる言語で、これを感覚的に理解できる日本人であることを感謝しなさいとまで説いている。700年900年前に書かれたものだが、今にも通じると言うのはすごい。日本三大随筆は、枕草子、方丈記、徒然草なのだそうだ。私より、今の若い人が読むべきではないかと思ったけど。

   

 「むかしのはなし」三浦しをん著。幻冬舎。1575円。
7年前の本だね。昔の昔話が現代だとどうなるかって話。不思議な世界に入った気分になる本
   

 「身を捨ててこそ」白川道著。1785円。

しばらくすれば1955円になる。幻冬舎。あれ、この本最近出たばかりだね。この人の著書を以前読んだのでまた読んでみた。株で栄光と挫折を味わったらしいね。小説は麻雀中心で昭和44年頃の話。1969年頃。軽いタッチの本。自伝的ギャンブル小説だそうである。

   

 「文芸春秋」とアジア太平洋戦争ー鈴木貞美著。武田ランダムハウス。2310円

高い本だから分厚いということはない。タイトルと新聞の書評で買ってしまったが、中身は私の想定していたものとは大違い。私は文学に興味があるから、まあ何とか読んだのであるが。文学に興味のある人には、絶好の読み物。文学に興味がない人にとっては、私が物理の本を読むようなもの。菊池寛が好きな人は読むべきだろうね。 全体的に読んでいて思ったことは、今の我々、マスコミ連中の人々は特にだが、いかに言論の自由が素晴らしいことなのであるかってことだね。私があの時代にいたら、国税庁の悪口で投獄、安住大臣への批判で投獄、警察と検察の巨大な組織的暴力への批判で投獄で、全て国家反逆罪にされて、いつも投獄されていることになる。

   

 「AYAKO」岡本綾子。太田出版。1260円。

1986年著だから、26年前の本だね。若い人は知らないかも。ゴルフ女子の樋口と岡本が双璧で、現在の日本女子ゴルフの隆盛の祖。岡本綾子の全てが語られているのだが、マスコミに苦しめられる場面が出てきたときは、非常に不愉快だったね。まさにペンの暴力だよね。それは今も変わらない。私は、彼女の弟子たちの活躍に今は期待している。  

   

 「舟を編む」三浦しをん著。光文社。1575円。

本屋大賞の本。評判だったので読んでみた。読んでいるときにラジオで彼女が出てきて、話を聞いているうちにさらに4冊も買ってしまった。そうね、今まで読んだことがない分野だね。辞書編集という言葉からは、読みたいという気持ちは出てこないのだが、私は辞書とはこんな地道な作業の上に成り立っているのかと知っていろんな感情が湧いたね。彼女は、よくこんな薄暗い世界に光を当てたと思う。着眼点がいい。面白いから読むといいよ。肩は凝らないし、知らないことを知ると言う喜びを持てるだろう。

   

 「まほろ駅前番外地」三浦しをん著。文芸春秋。1575円。

まほろ町の多田便利軒のお話。なんとなく面白いタッチのお話。発想が面白いから、楽しく読める。表紙のデザインと帯が非常に印象的でナイス。

   

 「ひとり夜風」河治和香著。角川。660円。

面白い。続きを注文してしまった。柳橋芸者の見た幕末世情と幕末の人間像という斜から眺めたお話。色気満載であるが、こういうエロチックさのほうが、近来のギラギラエロよりも良い。気楽に読めるし、面白いからお勧め。

   

 「時雨ごこち」河治和香著。角川。650円。

ひとり夜風、紋ちらしのお玉の完結編。この芸者は実在らしいね。柳橋ではないようだが。携帯小説が本物の小説になったものらしい。

引き続き芸者が見た幕末の江戸事情と人間関係。非常に読みやすく、なるほどあの当時、江戸市民、江戸の町はこうだったのかとわかる。朝から銀色の雨がしんしんと降っている、などこの作者の文体はきれいである。タイトルも同様だ。気楽に読めるし、楽しめるからお勧め。

   

 「北天蒼星」伊東潤著。角川。1985円。

何かの書評に出ていたので読んでみた。負けた側からの視点で書かれた小説。上杉家の内紛、上杉ー北条ー武田の組み合わせで話が進む。

この小説では敵方にあたる樋口与六というのが出てくるのだが、途中で、あれれ?大河ドラマの天地人の直江兼続じゃないの?あまりに悪く書かれているので、はて?同人物かと思って調べてしまったよ。歴史は勝者が作るものとよく言われるし、資料不足で想像で書かれることが多いのだが、これはまさにそのままだなあ。新撰組にしてもそうだよ。ず〜と悪く描かれていたけど、司馬遼太郎で日の目を見たわけだし。まあ、勝者の側から書かれたものが多い中で、敗者側から見るとこうなるのかということで、その点では面白いし、いろいろ考えさせられる。

   

 「ビタミンF」重松清著。新潮社。1575円。

12年前の本。124回直木賞受賞作品。テレビドラマの「とんび」が気に入ったので彼の作品を読むことにした。それなりに彼のファンも多いようだ。若い家族の短編7つ。うーむ、私の眼力がダメなのかね?この作品が直木賞ですかってとこ。特筆はないです。

   

 「弧鷹の天」澤田瞳子著。徳間書店。

2010 年。2100円。えらく分厚い本。今の官僚たちが、襟を正して読むべき本と紹介されていた記憶がある。奈良時代かなあ、とにかく古い時代の小説なのだが、 あんな昔でも人間の営みも性癖も今と全く変わらないのが、逆に新鮮感を持たせる。誰かドラマ化しそうな小説。私は長いこと、この時代の小説を読んでいな かったので、なんとも不可思議な読後感。読むと宜しい。

   

 「日本中枢の崩壊」古賀茂明著。講談社。1680円。
これはアマゾンでなく、本屋でペラペラめくりながら買った本だ。売れている本だというのは知っていた。財務省が最強の役所で、傘下の国税庁の査察権を利用して、マスコミや政治家の弱みを握って、権力を維持している、というような事が書かれていたので、私も同感なので読もうと思った。 確かに財務官僚がそれほど日本の優秀な頭脳を集めた集団ならば、こんな国家財政状態にはならなかったはずだ。私は一切の増税に反対している。だから、増税に理解的なマスコミには冷ややかである。消費税を10%にして済む問題ではない。15,20%ときりがなく続くだろう。 私が国会議員の数を減らせと長年書いてきて、やっとそういうことを言う人たちが増えてきて良い傾向と考えていたが、死角があった。役人の数だ。彼らの給料と退職金とか無茶苦茶に高いと思っていた。この本でも一人の高級官僚を切れば、5人の失業者が救えるなんて書いてある。自分たちの懐を痛めないで増税かよ。こんな国家財政では、官もリストラをするのが当然である。 もう、嫌になるくらいの官僚体制への批判の嵐である。そこからは失望感しか生まれない。ただ、彼が書かなければ、こっちはそういうことはわからないわけ。マスコミはほとんどこのことに触れてきていない。仲良くやりたいからだろう。霞が関がどんな状態になっているのか知るには必須の本だとは思う。失望感を救ってくれたのは、この本の後半の終章の起死回生の策とあとがきである。私も同感である。この国はもはや若者たちに委ねた方がいいだろう。賛否あるだろうが、一読すべき書だと考える。
   

  「決断できない日本」文春新書。ケビン・メア著。820円。

勧められて読んだのだが、衝撃の本であった。マスコミというか、共同通信というか、恐ろしいところだ。この本を読んで、福島原発の時の日本中枢のお粗末さが露呈されていて驚いた。この国は戦争仕掛けれたら終わりだ。沖縄の事をよく知ることができた。読み終わって、この国はどうなるんだろう、とガックリきたね。皆、読んだ方がいいだろう。いつも読んでいる新聞との乖離がはなはだしい。新聞だけ読んでいても中途半端。

   

  「夜と霧の隅で」北杜夫著。新潮文庫。460円。

芥川賞受賞作品。1963年出版。彼の鬱病期の作品なのでマンボーシリーズとは異なる。他に4編短編が収められている。ナチスの精神病患者抹殺劇を通しての人間の不安、矛盾を追及した作品となっている。くらい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。皆に勧めて読んでもらうべきか迷う。評価は高いので、まあ、読んでみたら?私は暗い気分になったよ。

   

 江戸職人綺譚ー佐江衆一著。新潮社。1575円。

江戸職人の物語が9編収められている。しかし、職人の世界がこんなに多彩とは思わなかった。錠前師、凧師、葛篭師(つづら)、人形師、大工、化粧師、桶師。女刺青師、引札師。それぞれの物語が情緒的に描かれており、絵物語の世界に入った気分。すがすがしい気分になれる。一読を勧める。

   

 「木挽町月光夜咄」吉田篤弘著。筑摩書房。1890円。
何かの書評を読んで買ったものだと思う。不思議な本。本が好き、小説が好き、書物が好き、文学が好きという人が読むと俄然面白く、本をあまり読まない人にはどこまで受けるのかわからないというもの。私は彼の本は初めてであるが、印象はいい。文章の流れがいいと思う。
   

 「大人の流儀」伊集院静著。講談社。980円。
薄い本だ。特に読むつもりはなかった。ともだちが、文体が私の書くものとそっくりだというのである。 それで送ってきた。それじゃ、読んでみるか〜となった。彼の本は読んだことがない。調べると結構いろいろな作品を執筆してきているね。夏目雅子の旦那だっ たのね。それで思い出した次第。

うるさいこと言うおやじだなあ、なんて思いながら読んでいたら、彼は私と同級生なんだね。なるほど考えているようなことは似ているわ。 最初は気乗り薄で読んでいたが、途中からグングン良くなってきた感じでしっくりときた。最後に夏目雅子との出会いとその後、みたいのが書かれていて、それ は、丁寧な文章に一転して変わっている。この変わり方が非常に新鮮でなかなか良い本である。最後にしんみりさせるのはさすがというところ。一読を勧めた い。

   

 「北の海明け」佐江衆一著。新潮社。文庫。 
15年前の本だ。21年前の新田次郎文学賞受賞作。江戸時代後期に幕府から北海道に布教のため送られた僧たちの話。釧路の方の話であるが、土地勘がある北海道の人たちには読みやすいかもしれない。アイヌ人やロシア人たちが出てくる。後半は、遠藤周作の沈黙的になるので、あれれと思ったが、結末は異なった。アイヌたちに対する態度などはアメリカ人のインディアンへの態度を思い起こさせる場面も時々あった。仏教や宗教や先住民や蝦夷に興味ある人は一読すると良いだろう。
   

 「黄落」佐江衆一著。新潮社。1470円。

1995年。参ったなあ、この本は。老いは大多数の人に訪れる。死は全員に訪れる。そんな当たり前のことを胸に突き刺してくる。90代の親を70くらいの息子娘が看護する。そんな時代が来た。この本が出てから16年。この範疇に入る人が激増していると思われる。至極当然なことを皆は見たくないから避けたいものだ。だが、しっかりと見ないといけない。いずれ皆に訪れる。暗くなるのだが、やはり必読の本と言えよう。人生、考え込んでしまったよ。

   

 「夢紡ぐ人びと」笹本恒子著。清流出版。中古で2000円くらい。

ラジオを夜中に聴いていたら、彼女が出てきて、女性初のカメラマンとのことで、90歳を超えていた。当然ながら戦前からのカメラマン。その話がとても90歳を超えているとは全く思えず、声も若く、えらく感激したので、すぐに本を買ってしまった。彼女の本は別にこれだけではないのだが。うーん。これは読む人によって読後感は違うだろう。一隅を照らす18人となっているので、その選ばれた方々の多くは知らない人だ。問題は、10年前の本なのでこの18人の年配者たちの年齢も相当に高くなっていて存命かどうかわからない。頭を10年さかのぼらせて読まないとならないのが難点。今思うことは、もう一度最初から再読するのが良いという結論だ。

   

 池波正太郎が書いたもうひとつの「鬼平」「剣客」「梅安」 武田ランダムハウス1785円。

池波正太郎ファンなら絶対に見逃せない本。脚本だね。そう、舞台でやる芝居。だから、三幕目とかいう区切り方になっていて、舞台が変わる様子がわかる。テレビでやっていたドラマは全てこれが基本になっているんだね。舞台俳優を見ると、鬼平は松本幸四郎(今の中村吉右衛門の父なのかわからない)昭和46年だからね。剣客商売は加藤剛が秋山大治郎、昭和50年、必殺仕掛人は緒形拳が梅安。昭和50年。池波戯曲の面白さとなっている。普通の小説と違って面白かった。

   

 「通貨を知れば世界が読める」浜 のりこ著

PHP 890円。ともだちが読んでくれともってきたので読んでみた。最近、経済とか金融とか市場とかその分野、の本はあまり読まなくなってしまったんだよ。あまり面白いと思わないし、目からうろこっていうこともないし。ほとんど昔から読んできた本に基本が似ているしね。

彼女がこの本で書いていることはほとんど私も同じ意見なので、彼女のように目立ちたがる人は発信力も強いわけだから、いいのではないかね?ドル円が200円だ、1000円になるなんて本を読むよりいいだろう。最後の終章は著者には申し訳ないが、つまらないね。余分だったと思う。まあ、わかりやすく書いている本だから読んでみるといいよ。

   

 「超思考」北野武著。幻冬舎。1470円。

タケシ全開。よく私の語っていることが彼の語っていることと似ていると言われるのだが、なるほど私には読みやすいのである。彼の言ってることは90%くらい賛同してしまうのだ。彼が礼儀を一番重要視しているなんていうのは、ちと驚いたのであるが。肩もこらずに読めるから、是非一読を。

   

 「落としの金七事件簿」小野義雄著。産経。1000円。

何かの書評でほめていたので読んでみた。この人の書く警察物はファンがいるようである。良かったのは実際の事件の事が書かれていたことだ。その他はいまいちと感じた。捜査の弱点もわかるので、頭のいい奴は利用するのではないかと逆に心配してやったよ。

   

 「初陣ー隠蔽操作3.5」今野敏著。新潮社。1575円。

このシリーズのうちの1冊が何か賞をとっていたと思う。それで去年読んだんだ。本屋に寄ったら続編的にこれがあったので買った。今回は面白くて読みながらニタニタしていた。内容が面白いからニタニタではなくて、警察と言うか警察と言う組織の思考方法が、あまりにも一般世界、民間から乖離しているので苦笑いなのだ。これじゃお互い理解しあえるわけもないなと思う訳。いまだに薩長だ、東大が幅をきかせているあたりも驚いてしまう訳。私にはまったくついていけないなあ。若い時築地警察署に入らなくってよかった。一度行ったら歓迎されちゃってさ、親切にされたんだよね。私は警察とか自衛隊とか入りたいと思った時期があるわけ。だけど、この連中の出世の世界観なんて何か違うんだよなあ。っていうようなわけだが、面白いから読むといいよ。

   

 漂砂のうたう ー木内昇著。集英社。1785円。

前回ここに書いた直木賞作品がえらく良かったもので、また読んでみた。江戸末期から明治初期の頃の話。世間の評価は高い。私はいまいち乗り切れなかったなあ。各自、好みの作風なんかあるからね。読みたい人は私のこのコメントよりもアマゾンでほめている人のコメントを読んだ方がいいかも。

   

 「海辺のカフカ」村上春樹著。1680円。

そう、有名な彼の小説。実は彼の本を読むのは初めてなんだ。彼は私と同い年なので、そういう観点から読んでいた。面白いじゃん。とは言っても次に買った本は直木賞の別の本であった。彼が世界的な高評価を受けている理由はわかるようなわからないような、って感じ。

   

 「ギャンブルトレーダー」パンローリング。2415円。

アーロンブラウン著。パンローリングからプレゼントされて読んだ。この本、分厚いので、なるほど電子書籍が好まれるのかもなあ、と思った。

モルスタの奴だけど応用数学とか金融工学の専門家だ。この本はリーマンショックの前に書かれたものだと思う。ポーカーのプロ。ポーカーを中心に書いている。日本人は知らないだろうが、歴代の大統領や歴代のビジネス界の成功者の多くがポーカープレーヤー。ポーカーで起業資金を集めた大物も多い。もともと銀行から金を借りて起業なんて発想じゃないからね。

非常に優れた本で、ポーカーと現代のマネー、相場などについて書かれている。ポーカーがどのくらい相場とか心理学とか数学に結びついているのか日本人は知らないわけで、こういう本が日本で出版されてもこの本の良さはわからないだろう。そもそも、日本では賭博はご法度なわけで、子供にお金の教育をしても博打御法度では、この世界の門を狭められているようなものだから大変に残念である。

だから、今の日本から優れたトレーダーたちが出てこないんだよ。ポーカーやる人なら全員納得すると思うよ。たかが小さなトトカルチョですら捕まるんだから話にならない国だ。全ての事は表の世界、裏の世界、白があれば、黒もある。人の心には神と悪魔の両方が存在する。だから、道徳的に何でも禁止なんてやっていたら、詐欺にひっかかる正直者ばかりが出現してしまう。

カジノを開けばいいんだよ。ポーカーやブラックジャックを自由にやらせればいいんだよ。そのカジノでそういったギャンブルをしようとしまいと個人の自由だ。だが、禁止はいけない。間違っている。パチンコは良くてポーカーは駄目などとはおふざけである。パチンコよりもはるかにリスクの事を学べるだろう。多くのトレーダーにポーカーくらいやってもらいたいと願っている俺には非常に残念な日本の状況である。やりたくないならやらなくてもいいの。やりたい、やりたくないの選択肢くらいあってもいいのだ。ま、この本を読むとどうしてあの強欲なバンカーたちがばかすか出てきたかよく理解できるよ。

ポーカーわからない人が読む場合は、理解できる箇所だけ選んで読むといい。

   

 「秋月黒田藩第14代城主ー黒田長榮」

小田豊二。麗澤大学出版会。1575円。聞き書きという珍しいスタイルの本。そう、黒田官兵衛の子孫ね。昔なら殿様、若殿である黒田氏の生き方、考え方が述べられている。なかなか良い本である。若い連中!読んだらええで!

   

 「反転」 田中森一著。
相場が多忙で全く本を読めなかったのだが、ここ最近のどうしようもない往来相場に辟易して久しぶりに読書ができた。この本はベストセラーだったし、多くの人に読まれているようだ。この幻冬舎という出版社の宣伝はなかなかたいしたものだといつも思う。買って読んで見ようと思わせるだけたいしたものだ。

検察もここまで暴露する男が出てくるとは想像していなかったと思うのでショックも大きいだろうね。私が考えていた以上の世界だね、司法は。やっぱり、国の方針があって、あいつ気に入らないからやってしまえ、的なものが絶対にあると思ってきたから、読んでいてその通りだったので驚いた。権力を持った集団の怖さを感じるね。戦前の特高のような気がしたもの。

それにしても暴力団の組長と政治家とのからみなど、週刊誌によく出るような話だったが、本当だったんだね。だから、今、国会や世間で騒がれている政治と金の問題なんて本当なのかと思ってしまうよ。そして、国税庁や財務省の官僚たちがどっぷりと金に漬かっていたのを知って愕然としたね。あれでは、インドネシアとたいして変わらないし、江戸時代そのまんまではないか。官僚はまだ袖の下で裁量行政をやるのかね?だって、たった10年、20年前の話だよ。突然、クリーンになっているの?今、清廉潔白ならこれまた極端だと思うなあ。

まあ、元の職場の検察に刺されて、その仕返しに全て暴露したという感じの応酬であるが、この人も相当にドップリと漬かっていた感じがした。後から反省を書いているけどね。と言うわけで、それなりの著書なので、読んでおくほうが身の為だろう。いつなんどき巻き込まれるかわからないと思わせる世界だ。それにしても、全部実名だから慌てた人たちも多いのではないか?
   

 「トリックベイビー」ブルースインターアクションズ。1985円。

1年前の出版。何かの書評で☆5個もついていたので読んだのだが、うーん、5個ねえ。って感じ。詐欺師のコンビの話で1973年に映画化されている。1967年の出版。良かったものだけここに書くのだが、☆5個だもんなあ。新聞の書評を探してもう一度読んでみたら面白さがわかるかも知れない。映画のほうが面白いかもしれない。

   

 「坂の上の雲」と日本人
男が読むと大変に面白く、女が読むと20ページでさじを投げる本と言えよう。日露戦争当時の日本軍は世界の軍隊の鏡だったようで、日本男子はなかなか誇らしく読める。坂の上の雲を不滅の国民文学と書いているが、私もそう思うね。日本の高校生男子は国が命令して読ませるべしなどと思わせる名著だね。この解説書みたいな本は、最初はつまらない。後から面白くなってくる。当時、イギリス海軍が世界一だったのだが、ロシアは世界二位だったんだね。ただ、ロシアは戦艦の数に比較して、バルト海、日本海ー黄海、黒海と三分割されていたので兵力の分散になっていたようだ。これが日本には幸いするんだけどね。イギリスも世界の艦隊だから、分散されており、日英同盟が極めて大きな役割を果たしているのがわかる。
   

 「幸田文 しつけ帖」幸田文著、青木玉編集。平凡社。1680円。

編集は彼女の娘。若い人は知らないだろうが、私が中学高校の頃、幸田文の随筆が国語の試験や教科書なんかに出ていたんだよ。きれいな随筆を書く人だなあとは思っていた。それでこの本の紹介があったので買った。彼女の父上は、かの幸田露伴。最初の頃は私が生まれる前の話だし、文章についていけなかったが、それが途中から1960年代頃に移っていく。古い話もそれで納得ができる。皆が皆、読んで理解できるかどうかわからないけど、露伴の父親としての愛情がよくわかる。タイトルにも父親のしつけは、娘に贈る一生もの。と書かれている。全体に流れているのは、日本の心、日本の文化、って感じかな。

   

 「動かぬが勝ち」佐江衆一著。新潮社。1575円。

これも何かの書評で絶賛されていた。著者はすでに75歳であるが、まだ活躍しているようだ。数々の賞をとってきている。私はあまり知らなかった。この本は、江戸時代の短編集って感じ。心残る話が多く、7つの短編。読みやすいし、一読を勧めたい。

   

 「ドル亡き後の世界」副島隆彦著。祥伝社。1680円。

うちのお客が読んでくれと、寄越したので読んだ。私は碁石のあだ名のある親友チャーリーしか、白黒をはっきりさせる男はいないと思っていたが、他にもそんな日本人がまだいたんだ、というのが驚き。煽りまくるものは好まないのであるが、このくらい煽らないと印象に残らないのも事実だから仕方あるまい。彼の語っていることは本筋ではあっていると思う。いつ、そうなる、ということはちょっと受け入れにくい。時間軸は神の領域だと思う。なるほど、ここまではっきり書くなら、ファンも増えるはずだね。読み応えがあるし、面白いと思うから、一読を勧める。

   

 「親鸞」五木寛之著。講談社。1575円。

上下巻。実は五木氏の本を読むのは初めて。ラジオ深夜便でよく聴いていたし、青春の門のドラマはよく見たから親近感はあった。なかなかすごい人であるが、この親鸞、評判がえらく高いので気になって読んだのである。日本は宗教が弱いから自殺者が多いと思っているのだが、宗教観のない人も入りやすいから読むといい。流刑までで終わっているのだが、続きを読みたいと言う人がたくさん出てきたら書いてみたいと著者は語っていた。なんかわかるような気がする。望まれると筆は進むからね。

   

 「必中の急降下」海軍爆撃機戦譜。渡辺洋二著。文春文庫。600円。

面白いから是非お読みくださいと寄越された。参るなあ、なんて頭をかきながら、内心ニコニコしている自分がいる。

作者は私とあまり歳に違いがない。中国戦線に投入した九四艦爆から九六艦爆、そのあとは太平洋に投入された九九艦爆、彗星とくる。真珠湾の後、インド洋に向かってコロンボ近辺で英海軍と戦うのだが、このときの索敵、偵察の甘さがすでに出ていて、その後のミッドウェーの予兆があらわれていたのには驚いた。爆撃機の戦死率は高い。いろいろ勉強になるから一読を勧めたい。

   

 「チャイナアズナンバーワン」関志雄著。東洋経済。1890円。
どうも出版社と言うのは、目だ立たせようとしてあまり意味のないタイトルにしたがるものだ。私の友人の友人の著で読んでもらいたいと言われて贈呈された。

タイトルとは違って、私は久しぶりに勉強をした気分となった。今の中国の変貌は激しいが、グラフや資料を駆使してよく説明されている。最近の中国の金融経済状況を知るにはもってこいの著だろう。最後に日本に向けての提言がされているが、これがなかなか良かった。今や中国に負けないくらいの社会主義国と言われている日本であるが、彼の書いているような事が実現できないようでは将来は暗いままであろう。一読を勧めたい。

   

 「きよのさんと歩く江戸六百里」金森敦子著。バジリコ。1900円。

江戸時代の鶴岡の豪商の奥さんが書いた旅日記。女性の書いた旅日記というのは非常に珍しいのだそうだ。しかも、勝手気ままに書いているのも珍しいとのこと。

鶴岡ー日光ー江戸ー三島ー名古屋ー伊勢ー奈良ー大阪ー京都ー福井ー金沢ー富山ー新潟を巡る旅。108日に及ぶリッチな女性の旅。驚いたのが、1845年にすでに年刊ガイドブック旅鏡なんてものまで発売されていたことだ。関所、女郎、食べ物、いろいろ盛りだくさんで当時の状況が非常にわかりやすく解説されている。自分の地元が当時どんな状態だったのかわかって面白い。この方面に興味のある人には一読を勧めたい。時代劇はいつも侍中心だが、民衆も元気だったのだ。

   

 「日本のこころの教育」境野勝悟著。致知出版。1260円。

8年前に出版されて、現在13版。この人が宮沢賢治の故郷の花巻の高校で講演したものを題材としている。日教組必読の本。

日本→日の元の国。太陽を敬う国。国旗の日の丸の誕生の歴史なんて知らなかったのだけど、今回初めて知った。私が知らなかったのだから若い連中が知っているわけもないね。外国文化を学ぶのは良いが、日本人はもっと日本文化、日本のことを学ばなければならない。もっと、日本人としてのアイデンティティーを自覚しなさい、というような話。まことに日本人として当然ながらわきまえなければならないことであるが、若い人たちにも必読の本と言えよう。著者は親こそ先に読んでほしいと書いているけどね。私は背筋を伸ばしたのである。

   

 「この写真がすごい」大竹昭子編著。1985円。朝日出版。
何かの書評でほめてあったので気になって買っておいた。100枚の写真。撮影した人の名前は終わりに全て出ている。彼女の評ほどの感じを受けないと、うーむ、俺は写真を見る才能がないのかなあ、なんて落ち込んだりする。ただ、彼女は写真は見る人それぞれの見方があるから彼女のコメントはあくまで彼女が受けた印象だと述べている。変わった写真が多いから、感受性が強い人は読むと良いだろう。
   

 「先生、どうやってヤセたんですか?」ワック。山田春木著。857円。
ラジオを聴いていたら、この先生が語っていたわけ。それで常識を忘れなさいとか、中高年と若い人と男女と皆それぞれ異なるダイエットをしなさい的な話だった。お、俺は中高年と思って、すぐに本屋で買った。違う観点から書かれたダイエット本、というか、おなかがへこむやり方的なことが書かれている。中高年は読むと良いだろう。そういえば、覚せい剤でそんなにやせられるなら、それを俺のお医者さんも少量処方してくれんかね。
   

 「のぼうの城」和田竜著。小学館。1575円。
本屋大賞第2位ということで以前から気にはしていた小説だ。石田三成軍2万に2千で立ち向かった話であるが、確かに面白い。気晴らしに読むには最適の本と言えよう。半分くらい史実に沿っているようだ。気分が面白くない時に読むことを勧める。満員電車の中で読んでいれば、時間を忘れさせてくれそうだよ。
   

 隠蔽捜査ー今野敏著ー新潮社1680円。 (1)(2)(3)
飛行機の中で読もうと思って本屋であさった。吉川英治文学新人賞をとった作品だ。よくまあ、警察内部の事を調べて書いている。これの続編の隠蔽捜査(2)も何か賞をとっていた。実は2のほうがもっと面白い。だが、1を読んだから2がすごく光るわけで、これを読まないといかんでしょ。久しぶりに時間を忘れて読めたよ。面白かった。
   

 「大激震」堺屋太一著。実業の日本。1680円。
タイトルは気に入らない。こういうタイトルで人の目を誘うのは好まない。内容は◎。もともと堺屋氏のことを私は大変に尊敬しており、彼の講義を日本の大学で受けてみたいと思っているくらいである。目からウロコ的な発想が多く、あの年齢になってもそれが衰えていないことに感服する。非常に読みやすいし、わかりやすいし、ためになるから一読を勧めたい。それにしても、彼の本がそんなに英訳されて海外に出ているとは知らなかった。今こそ、明治維新的な大改革を、このサブタイトルの方をタイトルにすればいいのに。
   

 「なぜグローバリゼーションで豊かになれないのか」北野一著。ダイヤモンド。1890円。
友人に贈られたので読んだ。最初の三分の一はえらくつまらない。公式だとか変なグラフみたいのを見せられると私は頭が痛くなってアクビしてしまうのだ。ところが、我慢して通読していたら、半ばあたりからやっと面白くなってきた。よくあるんだよ、いい本って最初はつまらない。後半は著者が何を言わんとしているのかやっとわかった次第。こっちの脳みその程度にもよるのであるが。なかなか優れた分析だと思う。問題はこの手の本に多いのだが、これは今回の危機の前に執筆されているようなので、現在の状況を聞いてみたくなるのだ。
   

 「江戸の下半身事情」永井義男著。祥伝社。
ちょっと、そこの兄さん、エロい事考えてるんだろ。この本、新聞の書評に載っていたんだよ。その辺、私はめざといから逃さなかったわけね。女性は変な顔するだろうが、男の脳みそはそうなっているので宜しく。この本、注文しようと見たら定価798円なのに1300円とか1600円になっているわけ。だから、古い本だと思った。そしたら、驚いたなあ、10月に出版されて今月第3版発行となっている。買い占められているのかなあ。私が購入したのは奄美大島の古物商だよ。永久保存版なんて書いてあった。そんな大げさなと思うけど。この本は、江戸時代のエロ考証から、当時の文化、歴史などを学ぶという感じの本。男性必見だね。江戸時代は、時代劇であの当時の懐古趣味があるけど、きれいごとばかり言ってるなよ、裏はこんなだよ、ってことが書かれているね。私は、当時の日本人のたくましさみたいのを感じたよ。
   

「清らかな厭世」阿久悠著。新潮社。1470円。
彼が亡くなって2ヵ月後に出版されたものだ。ラストメッセージと書かれているが、産経新聞の連載3年分を集約したものだ。連載分のうつしということで、どうも話題が飛び飛びというきらいがある。相当にブツブツ文句を言っている、という感じがしたが、3年分だからそういうわけでもないのだろう。彼の著書はほとんど読んできているので、このエッセイ集はいまいち私には感触が違って読みにくかった。
   

 アジア三国志−ビルエモット。日経。1890円。
彼の本は全て読んできている。どうも今回は、スムーズに読めなかった。タイトルもいまいち。翻訳がすっきりこなかった。とは言え、この翻訳者は表彰されるくらいの人なのだから、読んでいる私がおかしいのかも知れない。原文自体がいまいち?前評判が高すぎたと思う。後、どうしても過去の著作と比較してしまう。今回は私が知っている事も多かったという点もあるからだ。知っている事を読んでも面白くはない。そうはいっても、参考になることも多いので、読むべきであろう。
   

 「FX 市場を創った男たち」小口幸伸著。パンローリング。700円。
私も出ているので贈呈された。受け取って広げた感触はすごく悪かった。安物って感じ。全く、為替をやる奴らはどうしてこういうものに金をけちるのかなあ、と思ったのである。だが、中味は読み進むにつれ、なかなか宜しいと思った。

ここに出ているディーラーたちを全員知っているわけではないが、面白かった。私が覚えていなくて相手が私を知っていたりすることが多いので、誰誰は知らないとは口が裂けても言わない。相手に失礼だからね。覚えていないこっちが悪いのだし、こちとら歳も重ねてきているからね。

えー、とやかく言わない。個人投資家諸君、735円なんてランチ代程度なんだから買って読みなさい。昨日の私の食べたミソラーメン大盛りよりちょっと高いだけだ。君たちの取引しているネット画面の裏側がどうなっているのか、そして今皆が使っているネット画面までどうやってたどりついたのかよく理解できるであろう。また、どうして東京外為市場が急速に衰えていったのか良くわかるであろう。とにかくこの国の為替は話にならないんだよ。国際標準からちょっとずれているんだよね。小口さんはよくまとめたと思うよ。
   

 世紀の相場師ジェシーリバモア
世紀の相場師ジェシーリバモアって本があるんだけど、何でも絶版になっているんだそうだ。2001年の出版だから6年前だね。友人に聞いたら、中古本が6万円から10万円もしているんだって?びっくりこえてしまった。誰かに持っていかれないように慌てて押入れに隠した。うーん。記憶が薄いが、私の本は汚れていないし、あまり線も引いてないなあ。気に入るとボロボロになるまで読むのが私だからあまり感動しなかったのではないかなあ。欲望と幻想の市場は、私が取り上げてからずいぶん皆さん気に入ったようでどこでも推薦するようになったね。私は出版されてすぐに買った。この本はボロボロで線ばかり引かれているね。こっちのほうが断然良いと思うのだが、絶版というのは重みがあるのかねえ。
   

 10年後の日本
自分では勉強もし、知識人のつもりであったが冷水をかけられたような気分になった。と言うより、目からウロコ的な感覚かも知れない。
   

 「この国の終わり」 林 秀彦著。
これが何とも私が今まで遭遇したことのない類の本。いろいろ書かれているが、怒って書いているせいか、最初は支離滅裂のような感じがした。その後の日本文化への熱い思いを読むに従い、素直に読み通す事ができた。この著者は、きわめて日本文化と日本民族への造詣が深く、愛情に満ちているようだ。だが、今の日本人は今までの日本民族ではなくなりつつあると警鐘を鳴らしている。変なおっさんと思って彼の履歴を見てみた。柔道師範、ドイツとフランスの大学で学び、若者たち、50%視聴率の鳩子の海、七人の刑事たちの脚本をやった。現在72歳。大分の山奥に在住。私はこの本を推薦するわけではない。だが、こんな本があって、聞いたことのあるような話が満遍なく出てきたので触れてみたかったのだ。そして先日テレビを見ると、学校の運動会のリレー競争でバトンタッチができないでぶつかってしまう子供たち、玉転がしで自分が転がってしまう子供たちの話が出ていて、やっぱり何か変なのかなあ、とおもってしまう。皆さん、信じます?
   

 「さらば財務省」高橋洋一著。講談社。
参考になったね。官僚というか民間というか、想像以上に大きな溝があることがよくわかった。なるほど、こっちの論理が通じないはずだ。下手に頭がいいから弱ったものである。なんじゃら審議会が何をやっているのかもよくわかった。驚いたのが、日本は言われているような巨大な財政赤字国でないということだ。何が消費税だ、よく言うよ。増税する為の世論操作じゃないかと思ったね。まあ、官僚があそこまでぶちまけてくれたおかげで楽屋裏がよく理解できた。皆、読んだほうが良いだろう。今まで思い込まされてきていたことが真っ赤な嘘というのが多いし、今まで読んだ事のない類の本だ。それにしても呆れたのが社保庁の実態とマスコミの汚さかな。
   

 「評伝ー王増祥」久末亮一著。勉強出版。1800円。
副題は台湾、日本、香港を生きた、ある華人実業家の近現代史となっている。近現代史などと書かれていると腰の引けてしまう人も多いかも知れない。だが、そんなこともない。目次を見ると大体の概要が垣間見れる。序章:不思議な老人、その後から、台湾に生まれて、18歳の億万長者、香港、香港ダラー旋風、蹉跌ー王子製紙事件と片倉工業事件、迷走する人生、孤独の人、となっている。

現在81歳であるからにして、台湾生まれとは、日本の植民地時代の台湾である。韓国朝鮮と同じであるが、台湾統治は比較的穏健でうまくいっていたのでそれほどの差別はなかったと思う。結局、彼は日本人なのか、台湾人なのか、華僑なのか、という自分のアイデンティティーに悩み、また今でも悩んでいるようだ。日本人になりたかったがなれなかった、受け入れられたと思ったが実際はそうではなかったという話である。

私にとって興味深かったのは、日本の台湾統治の頃の話、戦後のドタバタの頃、まだ香港が急成長を遂げる前の香港の経済界の話、香港ダラーの総帥として兜町で仕手筋の一つとして捉えられた頃の話、大蔵省ー証券会社ー司法のつるんだ日本独特の金融鎖国の話、であった。香港筋と騒がれていた頃の話はよく覚えている。王子製紙のことはあまり覚えていなかったが片倉工業のことは覚えている。

しかし、大蔵省というのはとんでもないね。また司法もそうだけど、もう日本人のDNAかと思わせる。私が絶対に日本が金融立国にはなれないと書いてきたことをまさに実証するような話ばかりだ。あの当時のストーリーを読んでいると、ここ最近の村上やスティールパートナーズなどのゴタゴタとあまりに似ているので驚く。だから、日本は何も変わっていないのだ。そして、司法の投資に対するいろいろなコメントも納得ができるのだ。日本で投資で身を立てることはほとんど不可能だということだ。こういったことに興味のある人は読むと良いだろう。
   

 「仁義なき戦い」調査、取材録集成ー笠原和夫著。太田出版。3360円。
3年前の本だ。うちにはいろんな会員がいて、まあ、こういう本を探して送ってきてくれる人もいるわけである。手に入りにくかったらしくやっとゲットされたようである。副題は、戦後やくざ抗争事件史上最大の広島抗争はいかにしてダイナミズムあふれるドラマとなったのか?稀代の映画脚本家、笠原和夫の綿密かつ激烈な取材、調査録、と書かれている。
 
やくざの組織図が複雑でわかりにくかった。字が小さいので最近目がいまいちの私にはきつかった。本名、映画での名前は出ているのだが、該当する俳優名が出ていないので困った。これでは映画をもう一度見るしかないね。映画は、1973年に仁義なき戦い、同年、仁義なき戦い広島死闘編、同年、仁義なき戦い代理戦争、1974年に仁義なき戦い頂上作戦となっている。ここで出てくるヤクザでやけに脳裏に残ったのは、美能幸三、確か菅原文太がやったと思う。大西政寛、別名、悪魔のキューピット。この役は誰がやったかわからない。この二人はすごく印象が強かった。山村辰雄という親分は、金子信雄がやったが、この本の中でも嫌なやつって感じ。金子信雄の演技がすごく良かったということだろう。
 
広島、呉での抗争は昭和38年に終結。戦争前からの話が出ているが、戦後の復興期に朝鮮戦争で潤ったヤクザの世界が克明に描かれている。銃撃事件が多く、すさまじい話も多い。警察も検察も政治家も皆抱き込まれているんだから、呆れた。結局は市民運動がヤクザを駆逐したのではないかと思う。広島県の人には必読の本だね。読み終わって、もう一度、仁義なき戦いシリーズの映画を見たいと思う。あれは、やはり日本映画史上で輝く作品だと思う。あのまま実写って感じだったのではないかと思わせるくらいの傑作だったと思う。
   

 「私事」中村雀右衛門岩波書店。1680円。
3年前に出版されたものだ。歌舞伎の女形。人間国宝。恥ずかしながら、いまだに歌舞伎を見てないという日本人の私が読んだ初めての歌舞伎関係の本だ。女形なんて変なの?なんて考えていたのだから話にならぬ。女になりきるというよりも、観ている男たちが、命捨ててもこの女と一緒になりたい、と思わせるような存在らしい。なんだか、今の強い日本の女性たちに目指してもらいたいと思うのである。それにしても80歳にしていまだ完成せず、だもんね、参るよ。すごいね。黒白映画で佐々木小次郎をやった人だと知って、やっと誰だかわかった。この本の中で、彼が語っている言葉の中で、なかなか心に残るものも多く、最初は適当に読み始めたのであるが、最後は、背筋を伸ばして読んだのである。こういう世界がある、こういう人たちがいるということを知る事ができて良かったと思う。
   

 公認会計士VS特捜検察、細野祐二著、日経BP。
2000円近い本だけど確かに分厚い。以前も書いたけど、このような検察がどのくらい卑怯な手段をとってでも起訴するか、どうしようもない弁護士たちがいる、裁判官が世間から乖離している、そういうことが書かれている本が出る事自体、この国にはまだ言論の自由があるんだと思う。この著者もそうとうにクソ真面目な人だ。あまりに長いので疲れる。繰り返す箇所を減らして、もうちょっと簡略化したほうが良かったような気がする。

だが、冤罪とも言えるこの事件は読むに値する本だろう。一般の人には難易かもしれない。会計がからむし、金融関係がからむので単語自体がむずかしい。とは言え、我々はいつ彼と同じような状況に追い込まれるかも知れないのだから、読むべき人たちはやはり読むべきだろう。絶対に読むべき人たちは、当然ながら公認会計士とか税理士、法律事務所にいる弁護士たち、検事、裁判官だろうね。後、株式市場や財務にかかわる人たちだね。読み応えはあるよ。
   

 「覇者の謀略」実録プロ野球40年史。藤本定義著。
京都のお客さんから、読んでみてくれと頂戴した本だ。1983年発行。もう25年前の本だ。当然ながら藤本監督は今は亡くなっている。巨人と阪神の監督をやった人だ。それがさあ、参ったね、昭和10年ごろの野球から始まるんだよね。まさに日本のプロ野球の歴史でね。沢村やスタルヒンなんか出てくるんだけど。戦争時代とかもあって、特にすごいのが戦後のプロ野球の立ち上げ。セリーグ、パリーグはやっぱり喧嘩して分かれたんだね。挑戦状だとかすごいんだよ。四国の松山は本当に子規が書いていただけあって、野球のメッカみたいなところだね。

私の記憶は昭和35年くらいからだから、話が古すぎてついていけなかったのだが、読んでいくうちに面白くなった。日本のプロ野球興亡史を知りたい人には良い本だろう。これを読むと今の野球はやっぱりつまらないと思う。これはシリーズ物で、風雲の軌跡(三原)華麗なる波乱(水原)御堂筋の凱歌(鶴岡)猛牛一代の譜(千葉)48歳の青春(浜崎ーうん?忘れたなあ、この人)V9の闘魂(川上)というふうになっていて、野球殿堂シリーズだって。
   

 「極みのひとり旅」柏井壽著、光文社新書。780円
実は私は旅の達人なのだ。私はあまり人には言わない。大体今の昼間の温泉ブームだってそんなの流行する前から私はやっていたよ。いいもの教えると皆殺到するから言わないんだよ。意地悪なのだ。この柏井氏はその道のプロのようなのでほとんど隠さずに書いているね。ひとり旅の極意的なものは私はわかっているので読んでいてもほとんど知っていることなので何ということもなかった。でもあまり旅を知らない人には興味が出る話かも知れない。俄然面白くなったのは、ひとり旅実践編だね。書かれているのが、松山、松本、尾道、広島、仙台、湯河原、天橋立。これは良かった。私の知らない事がたくさん出ていた。感心したしね。天橋立以外は全て行ってるのだが、これを読んだら、私は旅の達人なんて言えなくなってしまったよ。と反省するのであった。780円だし、手軽に読めるから一読を勧めるよ。
   

 「社長、あなたの財務感覚はここが足りない」 実業の日本。長尾数馬著。1500円。
煽るようなタイトルの本はあまり好きではない。おそらく著者がつけたのではないのだろう。なんだか、題名を見て、私は、ギクッとしたのである。うん?これって俺のこと?って感じ。中味は75編に分かれている。全ての項目で2ページにまとめている。結論から行くと社長という肩書きをもっている人は読まなければならないだろう。理由は、この歳になっていまさらそんなこと聞けないとかいうようなものがわかりやすく書かれているからだ。また、知ったかぶりしていたこととか、絶対に知っておかなければならないこととか、そういうことがほとんど網羅されている。来月、税理士に会ったときに、偉そうに昔から知っていたような顔をしながら、説教たれてやろうなどと考えているのである。
   

 バイアウト:幸田真音著。1700円
マインというファーストネームらしい。花火でマインてあったような気がする。よく売れている金融小説のようだ。1700円、ちょっと小説にしては高いかな。ハードカバーだから最近はこのくらいが普通なのかも。この手の小説は、昭和30年代、40年代に結構出ていたような気がする。舞台は株式市場だが、昔の兜町的物語とは似ているようで異なっている。まず、女性がこの手のものを書くような事はなかった。と言うか、最近は証券市場も金融市場も女性が表に出てきているので私にとっては驚きである。昔は皆無だったからね。M&AやTOBが焦点になっており、気楽に読めるから、興味のある人は読むと良いだろう。こういう世界になっているのだと理解できると思う。
   

 『歴史街道』 闘将、山口多聞
私の好きな海軍提督である。歴史街道という雑誌に大きく掲載されていた。闘将、山口多聞。逃げない生き方。ミッドウェー海戦から65年、見敵必戦の闘志と責任感、この男をアメリカ海軍はもっとも恐れた、などと書かれている。あの大海戦で最後まで残った空母飛龍で戦った当時の書物を読むと、まるで絵に描いたように頭で描ける。空母飛龍の生涯とかいろいろ本が出ている。ほとんど読んだけど、戦記物が好きな人にはお勧めである。なお、山口提督は飛龍の沈没と運命をともにした。
   

 「マシアス・ギリの失脚」池澤夏樹著
文庫本だから字が小さく、読むのに苦労した。この小説は谷崎賞を受賞している。夏の暑い頃に読む本、南国が好きな人が読む本、海が好きな人が読む本。選んだ場所はパラオではないかと言われている。パラオも出てくるのであるが、ここがパラオの方がすっきりするらしい。島の地図もそんな感じだ。おとぎ話的に小説は進行する。文明への皮肉も込められている。全ての事象が経済的な論理や政治的論理だけで動いているわけではない事も語っている。ただ、そんな難易な事を書いているわけではない。作者の奥を探るとそんな感じがするのだ。この南国の島の大統領は日本とも関係が深く親日的なのだが、結局彼は失脚する。まあ、脳みその同じ部分しか使っていない人たちには、脳みそに違った風が吹きこむ、という感触で読むと良いだろう。なんとなく読後、心に残ってしまうという作品。
   

 小西甚一氏
訃報記事を読んでびっくりした。この人は日本文芸史古文研究法の第一人者で筑波大の名誉教授。なんでこの人を取り上げたかというと、高校時代、この人の参考書が面白くて、わかりやすくて、古文が大好きになったんだ。あれほど古文を親しみやすくした人はいないね。どの参考書も教科書もつまらなかったからね。しかも、古文の若先生が小西教授の教え子の大学院生だったんだ。なつかしい。説明に書かれているね。受験参考書「古文研究法」の著者としても親しまれた。あの参考書で成績はトップクラスになったと思う。
   

 世界秩序の崩壊:ソロス著。
自分さえ良ければ社会への警鐘という言葉とソロスということで買ってしまった。たいして厚くないのに2000円だ。読み終えるのに恐ろしく時間がかかってしまった。翻訳が難易すぎるのか、英文そのものが難易なのか不明だ。たとえば、標準としての再帰性という項目がある。再帰性は現実の人生でも起きる。しかし、金融市場の場合に比べて、分析も証明も難しい。その理屈は再帰性は偏在的だからである。それは標準からの逸脱でなく、それ自体が標準なのだ。このポイントを正しく認識するには、再帰性を暴騰ー暴落の過程と混同する過ちを回避しないといけない。云々。こんなもの読んで意味がわかる?私には100%理解ができない。本も半分過ぎてくると次第に彼の言いたい事もわかってくるのだが、だからと言って一般人にはたいして意味をなさないと思うのだ。安部晋三首相に読んで欲しいと書かれているが、そう、首相が読むべきであって、我々一般人は読む必要性を感じない。
   

 「天国への階段」幻冬舎。白川道著。巻。
セットで中古1360円のようだ。どうしてこの本を買ったのかあまり記憶がない。たぶん、何かの書評か、誰かのコメントでも読んだのだろう。気に 入るとすぐに買い込んでしまうからね。同名の韓国ドラマや昔のアメリカの映画なんてあったりして、つけやすいタイトルなのかも知れない。9年前の小説だ。 えらく長いミステリー小説だった。途中から、あれ?砂の器みたいだなあ、なんて思ったが、どんどん展開が切り替わっていくので驚いた。結末は最後まで予想 できなかった。終わってみれば、うーむ、あの結末しかないのだろうと納得したけど。読書の秋だ。面白いから読んだら?
   

 破滅の美学
シナリオライターの笠原和夫氏によると、普段自分が言わない言葉をやくざ映画では書けるので、それが楽しいらしい。島田昭吾だと、「おらあ六枚のカルタしかわからねえ男だ。面倒くせえ話あ、あの世に行ってからとっくり聞かせてくれい」という凄みを出し、高倉健だと、「お命、頂戴致します!」と礼儀正しくなり、菅原文太だと、「こん外道くそ、往生せえや!」とならないと感じが出ないのだそうだ。この人が一番好きな言葉は「国破れて極道あり!」敗戦後に焼け跡で叫んだ男の言葉なのだそうである。
   

 「翼に日の丸」 川又千秋著
真面目な戦記物だと思って、読んでいたら、どうも真珠湾攻撃で米空母が沈んだり、山本五十六が山木八十八だったりなのでやっと変だと思った。この著者は私と年齢が近いのであるが、やたら戦闘機に詳しい。パイロットか戦闘機作った人並みに詳しい。よほど勉強しないとあれだけの空戦の様子は描けない。文庫本で上中下なので結構読み応えがある。読み物としては大変に面白い。太平洋戦争当時の空戦や戦闘機やそういうものが好きな人にはお勧めの本だ。
   

 「奪われる日本」 関岡英之。講談社。700円
700円だから高くない。最初は読み出してもあまり面白くなかった。その内次第に面白くなってきた。終わってみたら、読後どう思おうと日本人ならばいちおう読んでおくべきだと思ったね。小泉ー竹中批判なのだが、日本がアメリカの属国になっていく様が描かれている。私の知らなかった事も多く、全ての論調に賛同しているわけでもないが、十分にありうることだと思うし、知識として知っておくべきだと思う。著者はアメリカに暗殺されるか、襲われるかもね、と思った。これがロシアについて書かれていたら、彼は今頃毒殺であろう。一番印象に残ったのは保険業界と法曹界だね。保険はアメリカの保険会社、つまりアリコを筆頭とする保険会社のロビー活動の凄さ、米政権への食い込みに驚いた。郵政民営化も郵便などどうでもよく、本丸は簡保潰し。アリコのCMなんて白々しくて見る気がなくなるね。法曹界は現在の日本の司法改革はアメリカの圧力で進んでいること。日本のような大国が弁護士不要という点をついてきた。アメリカのありあまる弁護士やローファームのビジネス拡大戦略にとって日本市場ほどおいしいところはないそうである。ってなわけだ。一読を勧める。
   

 マイブック。新潮社刊。
ラジオで取り上げられていたのですぐに買ってしまった。隠れたベストセラーらしく、毎年40万部売れているのだそうだ。表紙に2007年の記録と書いてある。手帳である。文庫本である。中には日付のみ書かれていて、後は全て空白。そこに自分で手帳なり日記なりにして好きに書いてくれというものだ。340円。外から見ると普通の文庫本だ。毎年11月になると発売される。高校時代、国語は学校で一番だった私もパソコンの発達に伴い、漢字執筆能力などに著しい退化現象が見られ、ペンでものを書くこともなくなってしまった。ペンでものを書くのがなつかしくなってしまうという時代が到来するとは予想だにしなかったね。
   

 「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
筑豊での少年時代から、上京、東京生活、母の闘病、そしてー。
「en-taxi」で創刊時より連載していた、「東京タワー」がついに単行本化。装丁、写真、イラストレーションなどすべて自身で行った、初の長編小説。読んだ誰もがひとりでも多くの人に読んでほしいと心から願う一冊です。

このように書かれている。本屋で積んであって、ベストセラーだというので買って読んだ。著者の名前は聞いたような聞かなかったようなってとこ。なかなか良かったよ。ベストセラーみたいのはいまいちのが多いのだが、良かったと思う。母との情愛を描いたものだが泣けてしまう人も多いらしい。まあ、良い本だから親不孝している人は読みなさい。
   

 アメリカのやり方(東洋出版)
以前お客さんから頂戴した本なんだけど、すーーごく面白いよ。アメリカの素顔って感じで漫画で表現している。アメリカの事を知っている人も知らない人も楽しめる内容だね。厚くないのに1200円だが、決して高いとは思えない。是非とも一読を勧める。やっぱりアメリカは9−11からすっかり変わってしまったと思う。私ですら、あまり行きたくないもの。
   

 千円札は拾うな:著者: 安田 佳生
一時売れた本だと思う。友人が読んでみてくれと言うので読んだ。なかなか良い。経営者も当然ながら若い奴も読むと良い。発想の転換が図れると思う。サンマーク出版というところが出している。
   

 国家の品格
ご存知のベストセラーだ。著者は新田次郎の息子だったので入りやすかった。新田次郎の小説は結構読んだからね。武士道ブームになってきているようだが、なかなか良いではないか。新渡戸稲造の武士道は確か若い頃読んだ記憶がある。葉隠れの本はあまり面白くなかったが武士道はそれなりだった。映画「ラストサムライ」のまんまでいいんじゃないの?読んでない人は読むといい。日本民族の誇りを持てるようになるだろう。そして、日本文化の継承の重要さも知るだろう。小中高の生徒に読ませたら?確かに著者の言うとおりだね。学校で株式投資なんか教える必要ないよ。ガキの時から金金金でどうすんの?
   

 この国のけじめ:文芸春秋
お馴染みの今はやりの藤原氏の第二弾だね。特筆はないが、それなりに読むべき書物と思われる。前著よりもくだけていて読みやすいと思う。我々が知っておくべき常識的な事がちりばめられており、1250円でそれを学べるなら安いと思う。
   

 紫電改のタカ
お客さんが「紫電改」のビデオを送ってくれたので見ていた。そう、戦争末期の19年12月に完成した日本最優秀と言われる海軍戦闘機。今の新明和工業が作ったものだ。やっとこの飛行機の設計で初めて米軍飛行機並みにパイロット席の防護を頑丈にしたものだ。米軍にとってもこの飛行機には驚いたらしいよ。ゼロ戦はもうやられていたからね。初戦は呉空襲の編隊に松山203空として飛び立ち、被害17機、撃墜57機という戦果をあげてグラマンが負けたと言う代物。だが、出現が遅すぎて生産はたったの400機。えりすぐりの最後の優秀パイロットを集めて編隊を組んだが、パイロットの命を粗末にしてきた咎めが出て、120人だけ。最後の出撃は昭和20年7月24日で九州。B29編隊500機に対して、最後の20機で突っ込んでいった。日本に現存するのは引き揚げられた愛媛の一機。後2機は米軍の博物館。私にとってこの戦闘機がなつかしいのは、昔のちばてつやの漫画、紫電改のタカ、を覚えているからだ。

紫電改のタカ(ちばてつや)
戦争末期、日本海軍が本土防衛に投入した局地戦闘機「紫電改」。かつて少年たちは、この戦記漫画によってその名を記憶したものだった。“逆タカ戦法”の滝城太郎を主人公とする少年飛行兵たちと、物量で圧倒する米軍との戦い。1963年7月から65年1月まで「週刊少年マガジン」に掲載された。

「源田サーカス」の異名を取り、真珠湾攻撃の作戦参謀だった源田実大佐(1904〜89)を司令とする部隊がモデル。しかし好敵手の米パイロットと心を通わせたり、サーカス顔負けの操縦で死地を脱したりと、夢のような物語でもあった。戦局が窮迫し、特攻隊員にされると知った滝は「おれたちは爆弾じゃないんだ。命を持った人間なんだ」と怒りをぶちまける。だが平和への希望を振り捨て、仲間たちと出撃していく

   

 戦争経済〈ウォー・エコノミー〉に突入する日本

 (見せかけの「景気回復」の陰で国が企んでいること)

今まで気にもしなかった副島隆彦氏の書いた本、見せ掛けの景気回復の陰で国が企んでいること、世界同時株安から統制経済へ、75年前の戦前と現在の驚くべき符合とは?などに興味をそそられる。ありうると今は思っている。
   

 山元五十六
尊敬する元帥の本は多数読んできているのだが、いつ読んでも新しい発見がある。対英米戦反対派は、ほとんど元幕府の諸藩の出。開戦派は、ほとんど官 軍の諸藩の出、なんて初めて知った。今の若い連中が元帥の事を知らないとか、知っていても凡将と思っているのも多いと書いてあってびっくりした。ミッド ウェーの海戦を読んだのだろうね。

いろいろ読んでいると、ガダルカナル戦でのヘンダーソン飛行場争奪戦が最後の勝負だったようだ。角田提督が強気で一気に全軍投入す べし、全戦艦と全空母出動を強く迫ったものの、軍令部の実は油が足りないんだ、の返答に意気消沈する局面は印象的だった。敵の強気提督ハルゼーは一気呵成 に全軍を投入した。投入できたんだよね。この個所の話は興味津々であった。その時、米軍が戦力的に苦しい立場になっていたことはあまり知らなかった。ハル ゼーが来るまで米軍は息もたえだえだったとは。

日本軍は勝てる戦さを石油不足で失った。強気のハルゼーを任命したのは、ニミッツ。このニミッツ提督の凄さをこの本で改めて教えられた。山本五十六とニミッツ、恐らく実力伯仲だったのだろうが、国力の差が大きなハンディとなったようだ。ニミッツに軍配が上がるかな。

   

 検証 戦争責任。 読売新聞戦争責任検証委員会
アキの戦争シリーズ
   

 チャーリー中山の投資哲学と堀内昭利の相場戦陣訓

長尾数馬が編集している。一番苦労してまとめたのは長尾かも知れんね。やっと6月17日販売だ。

チャーリーの話は面白い。言いたい放題って感じ。私のは、恐ろしく真面目。だからつまらんかもよ。でもいいんだ。これで言いたいことは全て書いた。もう説教もしないよ。つまらなかったら、1時間で10万円儲かる本でも読んだら?

ってなわけで、チャーリーが表に出てくることはもう二度とないし、私もそういう気持ちは失せている。この歳になって、相場があればいいのであって、目立ちたいなどとは全く思っていないからね。ま、そういうわけだ。シャンシャン。

   

 「大相撲の経済学」中島隆信著
会員の方に勧められて読んだ。相撲の好きな人には、ためになる本で、相撲に興味ない人には、つまらない本。9年前の執筆なので、最近の話が入ると面白いので、続編が出ると良い。私はガキの頃から相撲ファンで、相撲ばかりとっているので、おふくろは私が相撲取りになると思っていたようだ。そんなわけであるが、知らない知識も多く、この慶大の先生の話は参考になった。
   

 「新釈遠野物語」井上ひさし。新潮文庫。540円。
1976年作品。柳田国男の名著、遠野物語を井上ひさし風にちゃかした感じで書いた短編集というところ。秋の夜長に気楽に読む本。おとぎ話は空想ではない。おとぎ話に比べれば、他の一切のものの方が空想的である。チェスタントン。ということらしい。
   

 「ダイナー」平山夢明著。ポプラ社。1575円。
3年前の作品。表紙が大きなチーズバーガーの写真だものね。日本なのか海外のどっかの国かよくわからない。ただ、それは枝葉末節だという事が後からわかる。残酷。たけしも真っ青って感じの表現。うげぇと思って途中で読むのをやめようかと思ったのだが、書評は☆5と☆4ばかりなんだよね。だから我慢して読み続けた。途中から面白くなったけど。作者もその辺のことはわかっており、あとがきでいろいろ述べている。人の「狂気」「恐怖」を描いて当代随一の平山夢明が放つ、長編ノワール小説。となっている。大藪春彦賞を受賞している。まだ読後感が残っているから、ヘビーな本だったのだろう。
   

 「間抜けの構造」ビートたけし。新潮社。680円+悪税。
本屋に用事があって行った時に、ウロウロしていたら、目に入ったのでこれともう一冊を買った。たけしの本は、ほとんど読んできている。いつもののりで、一気に読める。ただ、今までの彼の本と比べると、鋭さが鈍ったような気がした。読みやすいから、気楽に読むといい。相変わらず役立つことが書かれているし。
   

「いねむり先生」伊集院静著。1680円悪税込。
伊集院氏は、私と同学年だから思考形態は理解しやすい。この先生と言うのは、麻雀放浪記の阿佐田哲也氏。彼との交流を通してのストーリー展開。井上陽水も出てくる。阿佐田哲也がどんな人物なのかこの本で理解した次第。不思議な人物だ。彼は麻雀をギャンブルからカルチャーに引き上げたとか言われているけど、本物のギャンブラーだね。ラスベガスにも数百万現金を持ち込んでバカラをやるというのだからね。あのペーパー王子みたいのはギャンブラーとは呼べない。彼は競輪をギャンブルの一番上に置いているね。印象的な言葉は、色川(阿佐田)はギャンブルから学んだ人生観を相撲の勝敗に例え、「9勝6敗を狙え。8勝7敗では寂しい。10勝を狙うと無理がでる」と述べたことがある。また、「幸運が続きすぎると危ない」という考えからギャンブルに大負けすると「ここで不運を消化しておけば安心だ」とよく語っていたという。いねむり先生のコメントはあちこちで散見されるので、私はあえて書かないが、私は阿佐田哲也の書いたものをもっと読みたくなった。直木賞も含めて多数の文学賞をとっているんだよね。彼は60歳で一ノ関でなくなったのだが、ジャズ喫茶ベイシーを知って、移住することにしたみたいなんだけど、ベイシーって、去年ひょんなことから知って行こうと企画した店なんだよね。
   

「遠い町から来た話」ショーン・タン。岸本佐知子訳。河出書房。1800円+悪税。
うーむ。絵本だとは思わなかったね。大きな本だ。この作者はえらく有名なんだね。幻想的世界に入るって感じかな。けっこう激賞されているね。代表的なものを選ぶと、福井新聞のがある。以下。

町はずれの空き地に住む巨大な水牛に相談ごとをすると、どっちの方角に行けばいいのかを黙って指し示してくれた/枯れ枝に土くれをのっけた棒人間たちは、子供がからかっても踏みつけて粉々にしても、いつも無抵抗に突っ立っている/地図の端っこみたいに町は突然ぷつんと切れているのか、僕と兄さんは探検旅行に出かけることにした――。

 15編の謎めいたショートストーリーと丹念に描かれたイラストで、読む者は日常に紛れ込んだ小さな異界に引き込まれることになる。そこは懐かしいようで、どこかよそよそしい。ぬくもりにくるまれて、でもひんやり寂しい。かわいらしいけれど不気味にも思える。あなたは不思議な読後感を味わうことになるだろう。

 イラストの多くに小さな鳥がいて俯瞰の構図を取る一方、切手やボタンなどちっぽけな物に視線が注がれる。鳥と虫の目を持つ著者は、オーストラリアのイラストレーター・作家。幻想文学、SF、児童文学の各分野で名だたる賞を受け、移民を題材に細密なモノクロ画だけで構成した前作『アライバル』は、世界中でヒットした。絵本をアニメ化した作品は、本年度のアカデミー賞短編アニメ賞を受賞している。

 手書き文字を記した紙切れを並べてつづった作品、国際郵便物を模した目次、細かいスケッチをぎっしり詰めた見返し……隅から隅まで意匠を凝らしたつくりの絵本だ。しわやシミまで印刷されている。本が好きな人に贈ったら、きっと喜ばれる。

   

 「辛酸なめ子の現代社会学」 幻冬舎。2011年。1260円。
え?彼女が漫画家だ?知らなかった。本を開いたら、ほとんど漫画だったので、びっくり。私は昔そうとうに漫画を読んだのであるが、今はほとんど読んでいない。昔の漫画はシリーズで保存してある。売らないもんね。彼女を知ったのは、ラジオ番組に時々出ていて、コメントが面白いこと、あのだらしないしゃべり方が非常に新鮮である事、などである。名前がいいよね。気楽に読める。私の知らない社会学だ。
   

 「離婚」 色川武大著。文春文庫。562円+酷税。
昭和53年初刊。直木賞受賞作品。名だたる作家たちがほめている。フィクションと実話を交えた作品。う〜〜ん、私にはよくわからない。
   

 永遠の仔(上巻下巻):天童荒太著:幻冬舎:
1999年の作品。130万部のベストセラーになったらしい。いろいろな賞をとっている。テレビドラマにもなっている。視聴率12%。12回シリーズ。こんな解釈となっている。児童虐待などの家庭的な問題から児童養護施設で育った3人の主人公が、弁護士、警察官、看護師となって再会し、それぞれが過去のトラウマに悩まされ、苦しみながら、徐々に助け合いながら生きていこうとする、現代の日本の親子関係の暗部をモチーフにした作品である。長い小説だった。あんなに長いストーリーをドラマ12回程度で完成できるのかなあ。結末はドンデン返しが多く、意外な結末をたどる。私の知らない世界の話だったので、それなりに新鮮ではあった。
   

 山本周五郎戦中日記:角川。2011年暮れ発行。
周五郎ファンには問題になった書。これはもともと発表されるはずではなかったもの。戦前の作品の程度もよろしくないとかファンたちもうるさい。そういった気持ちはわかるが、私も一ファンとして読んだ。確かに戦後の彼の多数の名作を考えれば、物足りなさも感じる。それでもすました周五郎という人物像を知って良かった。普通のおっさんだったのである。普通のおっさんが戦後、多数の名作を生み出しているわけで、それはそれでいい。
   

 「雪」 中谷宇吉郎著。岩波文庫。

世界で最初に人工雪を作った人の話。中谷氏は雪博士と言われる有名な学者らしい。私は恥ずかしながら知らなかった。自然科学の分類で三冊の名著があるのだそうだが、ファーブルの昆虫記、ファドラーのろうそくの科学、そしてこの雪がそうなんだそうだ。

なんとこの本が書かれたのは、1938年、つまり昭和13年なのである。とんでもないロングセラーである。石川県に中谷宇吉郎・雪の科学館が完成して、現代かなづかいにあらためられた。雪の結晶のことが書かれているのだが、研究実験が並行して書かれている。この人の有名な言葉があり、「雪は天から送られた手紙である」、その暗号を読み解く作業をしたとなっている。

著者が語るこの言葉が印象的である。「読者は、自然科学の研究と言うものが、大体どんなものであるか、ということを理解してくださればよいのである」文系の私には、半分は通読であったが、それでもこの学者がどのくらいすごい人なのかということがわかる。理系の人はもっと理解度が深いだろうから、是非とも読むべきだろう。こういった人たちの地道な研究が現代の科学をつくりだしたものだと改めて感じた次第である。

   

 「采配」 落合博満著。ダイヤモンド。2011年。

知り合いに彼の講演会に誘われたのだが、都合で行けなかったので、この本を読んだ。講演会の参加費は、料金が高かった記憶がある。

経営者たちを主体として講演することが多いようである。落合氏については、本よりも直接話を聴く方が良いと思った。書かれている内容は、いちおう私の想定内の話であった。良いことを語っているのだが、もったいない。大事だと思われる話の要点を各項目の終わりに1ページつかって、大文字で再度書いてある。学校の教科書じゃあるまいし、すんなりとこのデザインを受け入れられなかった。

これは出版サイドの問題だと思う。あれだけの選手、監督としての記録を作ってきた人の本なら、作り方に知恵を絞ってほしかった。座右の銘としてこの本を長く持っていたい人もいるのではないかと思ったから余計にそう思う。

   

 「ナポレオン狂」 阿刀田高著。講談社。

1982年作品。直木賞作品。この人の著書は初めて読んだ。ミステリー、ブラックジョークの短編集。ナポレオン狂以外の作品に面白いものがあった。13の短編があるのだが、全てが理解できたわけでもなかった。私の読みが甘い?気楽に読めるから、通勤途中に読むといいかも。

   

 「あかんべえ」宮部みゆき著。 )新潮社。

2003年作品。宮部作品は、浅田作品同様に読んで後悔はあまりない。本当は怖いグリム童話集って感じかなと途中まで思っていたが、ファンタジー&ミステリーという評価があっていると思う。時代劇怪奇小説。肩は凝らずに読める。

   

 「聞く力」 阿川佐和子著。文芸春秋。

好き嫌いが分かれている。低評価の人たちのコメントも頂けないなあ。タイトルが内容と違うとか、過去のインタビューを掘り起こしているだけじゃないかとか、枝葉末節。私は昔から阿川佐和子好きだし、父上の本も多数読んでいるし、遠藤周作も多数読んできているから、なんとなくすっきり頭には入る。これはこれで良い本ではないか。

   

 「図書館戦争」 有川浩著。メディアワークス。2006年作品。

図書館シリーズなのだそうだ。どうしてこの本を買って読んだのかあまり記憶がない。何かでほめてないと買わないから。もしくは、本屋で勘で買うのが私の流儀。私の世代が読む本ではなく、若い人たちが読む本だね。そもそもメディアワークスなんて知らないもの。言論の自由云々は、よく理解ができる。いつでも中国や戦前の日本に逆戻りする可能性があるわけだし、世論みたいなものは所詮は付和雷同。図書館をよく利用する人は、当然ながら、読んだ方がいいでしょ。

   

 蜩ノ記(ひぐらしの記):葉室麟著。祥伝社。直木賞受賞作。

最近よく出てくる著者だね。ラジオにも出演していたね。時代劇だが、藤沢周平的感じの小説。本人は否定すると思うけども。心ふるわす、感涙の傑作と表紙に出ているが、それはちょっと。さわやかな時代小説というイメージ。命を区切られた武士の生き様。

   

 明日もいっしょに起きようねー捨て猫でかおの話。穴澤賢著。草思社。

2012年作品。実話にもとづいた絵本。こころあたたまるが、5分で読めて、1200円はいただけない。一部寄付されるならいいけど。猫ファンは泣くかもね。私はどちらかというと、きたまやようこの「ゆうたはともだちーゆうたくんちのいばり犬」シリーズが好きだね。あのいばり犬、私に似ているらしい。

   

  きたまやようこの「ゆうたはともだちーゆうたくんちのいばり犬」シリーズ

あのいばり犬、私に似ているらしい。

   

  夫婦善哉

昔から有名な小説であるが、テレビドラマで初めて真面目に見ているのだが、なかなか良い。なんとも大阪情緒にあふれている感じがする。知らない人には、この説明が一番わかりやすいと思う。次回、大阪に行ったら、この善哉屋とカレーライスは食べてみたいと思う。https://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20130823/E1376979626659.html?_p=1

   

 柔らかな犀の角:山崎努著。文春。

2012年作品。山崎努の読書日記。何かの書評でほめていたので、読んだ。もともと、俳優山崎努が好きだったから、興味があった。多数が座布団5枚にしていた。彼の選んだ著書で私が読んだことがあるのは臨終図鑑だけだった。読書論は、俳優としての見方が多く、私にはピンとこないものが多かった。一般人と俳優は全く違うものだと感じた。これは私の考えなので、多数が良いと言ってるので読んだらどう?

   

 ロジカルゴルフ  尾林弘太郎著。日経。

ちょっと私も頭を使おうかと思ったわけ。スコアを伸ばすには、攻め方があるからね。ショットがいいからスコアが伸びるわけではないし、300ヤードも1センチも同じ一打だからね。ゴルフをやめないのは、年齢がいくつになっても誰でもできるスポーツだからだ。料金も安くなって、今度行くところなんて、5500円でランチつきだよ。それでまあ、この本を読み始めたわけだが、途中から、これは、70台を目指している人向けだとわかり、しらけつつ読んだ。でも終わってみると、含蓄のある良いゴルフ教科書だと思う。

   

 大本営発表のマイクー私の十五年戦争 (近藤富枝著) 河出書房。8月発売。

毎週末、株の雑誌を買う。同じ雑誌だが、もう15年くらいそうしている。たまに私が本屋に出向く。それで、昔のようにプラプラ歩きながら、本をあさる。経済、ビジネス、資格、市場関連のコーナーには足を絶対に運ばない。それで歴史、文芸、小説関連コーナーによく行く。本の表紙がきれいだったことと、パラパラめくって読んでみようと思ったので買った。この著者は、瀬戸内寂聴と同級生なのでそれ相当の歳ではある。しっかりした人だ。この人が主人公となった朝ドラが昔あったそうで、本日も晴天なりというタイトルだそうだ。ラジオアナウンサーなのだが、東京女子大の話とか、劇の話とか、そういう話が、あの暗い時代を背景に進んでいく。後半はNHKのアナウンサーになるのだが、文脈も文章も全て、淡々と書かれている。戦前戦中戦後の暗い時代であるが、こういう見方をした人がいて、こういう暮らし方、生き方をした人がいた、という事を学んだ。

   

 「蚊がいる」 穂村弘著。メディアファクトリー。

何でこの本を買ったかと言うと、書店で、やけに本のデザインが気に入ったからなんだ。目に入って面白そうって思って購入してしまった。こういう買い方は初めてだ。この著者は聞いたことがある。短歌の人のようだ。彼のエッセイ集。短編が多いので、読めるスピードは速くて、いいピッチである。ただ、後半の対談集は、私にはさっぱりわからなかった。

   

 「満つる月の如し」 澤田瞳子著。徳間書店。

文学賞を受賞している。平等院の仏像あるでしょ、あれを作った仏師定朝という人のお話し。1000年も前の話。藤原道長の時代。読む人によって感想が違うだろうね。この手の話が好きな人とどうでもいいと思う人と真っ二つに分かれそうだ。

   

 「溶ける」井川意高の懺悔録。双葉社。

カジノで失った106億8000万円、大王製紙三代目転落の記。となっている。最初から、精神的病だと私は判断していたけど、やはり病気であろう。反省の記となっているが、その彼が経営哲学みたいのを書いているのは、ちょっとなあ。経営者として優れていても、人間としてのバランスを欠いているのだから、ピント外れの感がした。やはりボンボンだと思う。マスコミの攻撃に対して怒っているが、それはその通り。マスコミは、敵になったり味方になったりしてコロコロ転換だからね。私はそんなことわかっているから、この事件の記事の類はほとんど読まなかったよ。面白おかしく書かれるのは必然だし。ただ、嘘を書くのは良くない。ホリエモンが、失敗をしない人間はいない。人生は何度でもやり直せる。今はどんぞこ気分であるが、これから何を学び、出所後どんな活躍をされるのか僕は今から楽しみにしているというコメントを出しているが、これは正直しらける。こんな後付けコメントなどなくして、淡々と何があったのか書けば良かったのではないかと思う。時間のある人は読まれたらどうか。

   

 「黄金のバンタム」 百田尚樹著。PHP

読んでいて慌てた。週末にこのドラマをやるではないか。タイミング的に参ったね。途中から急ぎ読み終えた。若い人たちは知らないかな?ファイティング原田の物語だね。多くの試合で視聴率50−60%をとるくらい、当時のボクシングは人気があり、原田の人気が高かった。ドラマでは恐らく当時のフィルムが出てくると思う。1万人とか2万人とかいう観客数だからね。日本が昇り竜の時代の寵児。ファイティング原田のすごさは、あのマイクタイソンが尊敬していたこと、タイソンが原田のビデオを見ながら研究していた事、これでわかるでしょ。さあ、テレビが原作を抜くことはできるのかな?まあ、私がどうして最近のボクシング見ないのかは、理解してもらえると思うけど。

   

 「おしかくさま」 谷川直子著。河出書房。

文芸賞受賞作。お金信仰の痛快小説となっている。後半になって、やっと教訓的な事がわかった。気楽に読めるし、時間もかからないから、電車の中などで読むと良いかも。

   

 「ソロモンの偽証」宮部みゆき著。新潮社。(第T部第U部第V部

2002年から2006年まで月刊誌に掲載された長編小説。最初気が付かなかったのだが、3冊で1ストーリーのようだ。あまりに「事件」が分厚いので、これですべてだと思っていた。あのアメリカの19681122よりも長いのかなあ。これから、第二部第三部を読まないとならないから、評価はまだできない。ただ、宮部作品は時代小説のほうが面白いかも?と思った。

   

 「空の拳」角田光代著。日経。

夕刊の連続小説だったもの。ボクシング担当週刊誌記者の青春記という感じ。それなりに、私もこの若者と同じ歳の頃のことを思い出しながら、読んでいた。ボクシングの試合見たことないから、一度行ってみようと思う。

   

 「駅前旅館」井伏鱒二著。新潮社。

文学少年であった頃、最初に読んだものが井伏鱒二の山椒魚だった。さっぱりわからなかったけど。井伏鱒二がこういう小説を書くとは思わなかった。駅前旅館なんていっても若い人たちは知らないだろう。昔は上野界隈にたくさんあった。そこの番頭の語り。その一人語りが面白い。なつかしい感じであるが、落語を字で読んでいると思うと良いだろう。楽しい作品。

   

 「遠野物語拾遺」 柳田国男ー京極夏彦著。角川。

2014年作品。遠野物語を知らない人たちも多いので、まずそれを触れておこう。柳田國男が、1910年(明治43年)に発表した説話集。日本民俗学の黎明を告げた名著である。その内容は天狗、河童、座敷童子など妖怪に纏わるものから山人、マヨヒガ、神隠し、死者などに関する怪談、さらには祀られる神、そして行事など多岐に渡る。『遠野物語』本編は119話で、続いて発表された『遠野物語拾遺』には、299話が収録されている。民間伝承に焦点を当て、奇をてらうような改変はなく、聞いたままの話を編纂したこと、それでいながら文学的な独特の文体であることが高く評価されている。日本民俗学の発展に大きく貢献した。気楽に読めるから、読んだら良いと思う。

   

 「昭和育ちのおいしい記憶」阿古真理著。筑摩書房。2014年刊行。

いわゆる食の文化、食の思い出、食の風物詩という感じ。違和感が時々あったのは、私が男であること、彼女が関西育ちなので関西と関東を取り上げるのだが、私は関西の事はさっぱりわからず、神戸なんて行ってみたいなとは思うものの食文化はわからずという点。いろいろ考えさせられる事も触れられており、女性にはお勧めの書かも。

   

 「野坂昭如リターンズ4」1945年夏・神戸。その他。

火垂るの墓の原本みたいだと思ったが、結末は全く違っていた。ただ、この少年は野坂氏だろう。本はとても厚い。話は、淡々と進む。この淡々さが逆に戦争の怖さを知らしめる。野坂ファンとそうでない人とでは、受け取り方も異なると思われる。

   

 「眠れるラプンツェル」山本文緒著。幻冬舎。

彼女は直木賞作家。ファンも多いのだろうと思うが、私にはちょっと馴染まないのでコメントなし。

   

 「夢の船旅」中上紀著。河出書房。

中上健次の娘の著作。ラジオ深夜便で朗読を聞いていて、読んでみたいと思った本。新宮、熊野は、私も非常に縁がある地であり、ラジオで聴きながら、なつかしかった。娘が小説家中上健次を追慕する作品。彼女の今後の活躍に期待したい。

   

 「婉という女」  大原富枝著。講談社。

野中兼山の名前は知っていたけど、その土佐の家老の一族の話。ずいぶん残酷な話で、一族郎党血が絶えるまで幽閉というのだから、江戸時代もすごいものだ。要するに政治家が失脚するとこうなるってことで、その娘の話。この作者は膨大な著作を残している。あまり知らなかった。1995年作品。

   

 「国鉄スワローズ1950−1964」  堤哲著。交通新聞社。

副題は、400勝投手と愛すべき万年Bクラス球団となっている。明治、大正時代にまでさかのぼった野球の歴史も触れられている。今の60以上の人ならだれでも知っている国鉄だが、若い人は知らない。国鉄50万?だかが、バックした球団だったが、新幹線の開通の時に、ヤクルトに譲渡された。都市対抗野球の事がよく触れられているが、これは、大企業にでもいないと実感がわかない。

一番面白かったのが、金田の話。なつかしい長嶋との対決などが、くっきりと描かれている。この本の中核をなしていると思う。しかし、これだけ、国民に愛され続けた野球を戦時で強制的にやめさせて、ひどい話だ。私は、黒田が帰ってきたので、今年は広島ー巨人を久しぶりに見に行きたいと思っている。何年振りだろうか。

   

 「採薬使佐平次」平谷美樹著。角川。

以前、日経の書評欄で褒めていたので読んでみた。知らない世界。薬草をやる連中も将軍の隠密。当時の飢饉というのはすごいね。100万人死んだとかね。餓死も多いのだが、毒草を食べて死ぬ者も多かったようだ。チャンバラ劇も頭に浮かぶのだが、映画かテレビドラマでやったほうが受けるような気がした。

   

 「花晒し」はなざらし。 北重人著。文芸春秋。

作者は5年前に亡くなっている。いわゆる遺稿集。新聞で五つ星だったので、読んでみた。江戸の市井の人々をえがいた作品。気を楽にして読める。葉室麟は、生きていくせつなさに心ふるえる小説だ、としている。

   

 「よりぬきサザエさんNO.1」長谷川町子著。朝日新聞出版。全13巻。

なんとなく読んでしまった漫画。若い人には無理だろうなあ。私ですら、この第一巻の頃の話の笑には理解できない箇所も多いのだよ。庭でタライで行水なんてこともよくあったけど、洗濯板で洗濯とか、配給の米とか、空き巣、庭で鶏を飼っていて、卵を産ませるとか、ひよこを売る店とか、まあ、サザエさんの始まりは昭和21年というわけで、私も生まれていないんだよね。世相を表していると言われているけど。今のテレビのサザエさんって、長谷川町子の弟子たちが描いているの?

   

 「手ぶくろを買いに」新美南吉著、黒井健イラスト:日本童話名作選。

50人中、49人が座布団5枚をつける高評価。イラストを描いている人の評価がものすごく高く、ファンが多いようだ。暖かい話。と言っても私はショックである。評価を読むほどの感動がなかったということは、私のメンタリティに問題が出ているのではないのかと疑念を持つようになってしまった。私は感動しなくなってしまったのだろうか?評価を読めば、う〜む、なるほどそうか、と思ったのであるが。

   

 「ぼくは本屋のおやじさん」早川義夫著。晶文社。

これもラジオ深夜便で作者が出てきて、いろんなおしゃべりを聞いているうちに読んでみようかと思った。私自身も本屋なんてやってみたいな、などと昔から思っていたこともある。就職しないで生きるにはシリーズとなっている一番バッターの本。著者は、もともと音楽。ロックグループのリーダー。今は本屋をやめて音楽に戻っているようだ。彼はしきりに本屋ほど大変な商売はない、という事を力説しており、なんで大変なのかを書き連ねている。私が思ったのは、なるほど、アマゾンみたいのが出てきて成功を収めたのも当然だなあ、という事。出版社が悪いのか問屋が悪いのか本屋が悪いのか、流通そのものがダメなのか、よくわからないが、本を読む人たちが激減した事は単に誘因にすぎず、本屋さん事体が滅んでいく運命だったのだと思った。

   

 「拉致と決断」蓮池薫著。新潮社。

この本を称えるコメントが多い。24年間の拉致かあ。異常な長さだね。読んでいる途中、なんで朝鮮は拉致なんてしたのだろうという疑問ばかり湧いてきた。スパイに仕立てるつもりなのかと思いきや、そんなこともなさそうだし。やってはみたものの、取り扱いにその後困ってしまった?もっと言いたいことがあるのにチャックしている感じがした。あちらの国の人々は何を考えて生きているのかといつも思っていたので、その点ではすっきりした。

   

 「隣の女」向田邦子著。文春文庫。

この中に収録されている春が来た、というのがとても良いという誰かのコメントがあり、向田ファンであるからして、読まないとならないと思って読んだ。この収められている五つの話は、今まで私が読んできた向田作品とちょっと違った印象を持った。終わりに解説が出ているのだが、向田邦子ファンの多さには驚く。みんな彼女が好きだった、といったところか。

   

 「暢気眼鏡・虫のいろいろ。他13編」尾崎一雄著。岩波書店。芥川賞受賞作品。

読後コメントを読むと、高い評価を受けている。私小説。ラジオFMで誰かがお勧めの本としていたので買って読んでみた。私?う〜〜ん、文学的素養がないのかも知れぬ。

   

 「金融大地震とインフレの大津波」 本間裕著。社会評論社。

読んでほしいと言われて読んだ。それなりにファンがいそうな著者である。予測が当たったか外れたかにやけにこだわっているのだが、未来予測への挑戦となっているのだから、まあわからんではない。この本を読むには、読者サイドにもそれなりの識見が必要だと思う。鵜呑みにしてしまうのもダメだろう。60年周期までは理解できたが、400年、800年サイクルというような話になると、さすがについていけなくなった。これがなければ、ずいぶん印象が異なったと思う。いろいろ学べるような事も多く、知っておくべきことも書かれているので、金融界の人は読んだら良いだろう。今年の9月が宜しくないそうだ。

   

 「ふくろうくん」 アーノルド・ローベル作。三木卓訳。文化出版局。

1976年に初版が出てから、60版も重ねている。この作者はすでに20年前に亡くなっている。ふたりはいっしょ、どうぶつものがたりで賞を受けている。非常に高評価になっている。童心がなくなってしまった私にはいまいちだったのだが、読んで2−3日たっても心に残っているので、皆が言うように良い作品なのかも知れない。感動する子供が多いようなので、子供がどういう反応をするのか見てみたい気分だ。

   

 「1934年冬ー乱歩」 創元推理文庫。久世光彦著。

山本周五郎賞までとっている作品。江戸川乱歩は知っている。久世光彦も知っている。半分で断念した。さっぱりわからなかったのである。私の読書力がお粗末なのだと思う。理由は、レビューを見ると皆絶賛しているのである。そういうわけで、珍しく最後まで読めなかった自分を恥じているのである。

   

 「豹変」 今野敏著。角川書店。

本屋でウロウロしていて、買った本。著者は、隠蔽捜査の人なので、外れはないだろうと思った。読書は、知識を得るため、学ぶため、楽しむため、などなどいろいろ目的は読者にもよる。これは、楽しむためという部類だろうと思う。面白いから、暑い夜にドンドン読み終わってしまった。題材も面白い。気楽に楽しむためには良い本と言える。

   

 「峠道」 上田秀人著。徳間書店。

有名な米沢藩の名君上杉鷹山(ようざん)の伝記。ケネディや山本五十六が敬愛したと言う人物。要はリーダー論みたいなものだ。「なせば為る 成さねば為らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり」という有名な言葉も残している。一、国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして我私すべき物にはこれなく候 一、人民は国家に属したる人民にして我私すべき物にはこれなく候 一、国家人民のために立たる君にして君のために立たる国家人民にはこれなく候 という伝国の辞三か条も残している。政治家を目指す若い人には必須の本と言えよう。政治家になってしまうとこれらを忘れてしまう人たちも多いが。 ケネディのスピーチは確かに似ているところもあるね。ケネディについては異論もあったが、2年前に文書も公開されたそうである。

 

 蔦屋:谷津矢車著。学研マーケティング。

以下のように内容説明されている。江戸・吉原に生まれ、黄表紙や浮世絵の版元として次々ヒットを飛ばした蔦屋重三郎。喜多川歌麿、山東京伝らスター作家と共に、江戸の人々の心の枷を本でぶっ壊す! 今のTSUTAYAの創業者という話になっているが、真偽のほどは知らない。田沼意次、松平定信が老中だった時代の話。江戸時代の本屋の話など初めて聞く話でそれなりに。

 

 「野望の憑依者」伊東潤著。徳間書店。

足利尊氏を中心とした時代小説。後醍醐天皇とか楠正成とか、新田義貞とか出てくるわけ。新田義貞が北条軍を破った大きな戦いが、近所の分倍河原と関戸という多摩川のところ。だから、この辺りは、やたらに鎌倉街道というのが多い。尊氏を支える高師直という人物の話がメイン。太平記などにも扱われているのだけど、私はこの時代の動きに疎い。昔から尊氏は教育の現場では悪にされていたからね。でも本当はいいやつなのかもしれない。歴史は後世変えられてしまうらしいからね。人物名を覚えるのが大変。何しろ南北朝時代なんて教科書でも簡単に終わってしまう箇所だものね。読み終わって感じたのは、諸行無常。

   

 「飛龍伝」神林美智子の生涯。つかこうへい著。集英社文庫。2001年作品。

まさに団塊の世代以上の青春時代が背景。全共闘とか、安保だ、機動隊、そんな話が今の若い人にはどう取られるのか知りたい感じ。若者たちが、燃えた時代があったんだよ。途中、蒲田行進曲的なのりもあるのだが、結構真面目な本であることはわかる。しかし、表紙が若い女性の裸の後ろ姿なので、カバー外して読むしかなかったね。今は、なんでもセクハラと騒ぐ連中がいるのでね。この女性が東大生で、全共闘40万の委員長に選ばれる。評価を読むと評価は高いね。座布団の枚数よりも、若い人の読後感を知りたいなあ。

   

 「ユタと不思議な仲間たち」 三浦哲郎著。新潮文庫。1975年作品。

非常に評価の高い童話。NHKドラマやミュージカルでも取り上げられている。作者は6年前に亡くなっているが、青森八戸の人。代表作に芥川賞の忍ぶ川がある。岩手県北部の金田一温泉らしいのだが、この本が出た後、座敷わらしを探して人気スポットになったことがあると聞いている。小学生の男の子がいれば、読んであげるか、読ませると良い。

   

 「骸骨ビルの庭」 宮本輝著。文庫()。講談社。

2009年作品。司馬遼太郎賞受賞。人間の魂の絆を描いた感動の力作と書かれている。著者の泥の河、優駿、などは読んでいる。戦争から帰国した人物が孤児たちを育てる運命になったことが起点。いろいろな人たちが高評価をくだしている。

   

 「学問」 山田詠美著。新潮文庫。

2012年作品。著者は各種の賞を受賞してきている。人気作家。書評も好評が多い。面白い読み物。女性読者の方がわかるのかなあ。私は、最後はあまり理解ができなかった。評価が高いので私の理解度が低いのかも知れない。小説スタイルとしては珍しい型であった。

   

 「凍れる瞳」 西本正明著。文芸春秋。

初版1988年。このタイトルのものだけだと思っていたが、合計四編の作品がのっている。人生の挫折のようなものに焦点を当てているようだ。個人的には最後の端島の女が良かった。

   

 「欧亜純白ユーラシアホワイト」 大沢在昌著。集英社文庫。

ご存知大沢作品。ヘロイン、麻薬ルートのサスペンス。小説になっているが、大枠事実に即していると著者は語っている。清原事件もこういう背景を知っておくと見方も変わるのではないか?やくざ、チャイナマフィア、ロシアマフィア、シチリアマフィア、三角地帯、日本の麻薬取締官、CIA,DEAなど勢ぞろい。上下巻で分厚い。すごく読み終えるのに時間がかかってしまった。麻薬、覚せい剤、など知識を得るには最適の書。

   

 「風の盆恋歌」 高橋治著。新潮文庫。

非常に評価の高い作品。悲恋小説。作者は、相当な風の盆ファンらしい。幽玄の美と評価されている。八尾に一度行って二日ほど滞在すれば、何か感傷に浸れそうだ。

   

 「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」 春日太一著・PHP新書

彼出演の映画はいろいろ見てきているので、なつかしかった。これを読んでから、乱を見たのだけど、彼の演技力を見せつける作品だったね。白黒で切腹という名画があるのだけど、あの時に、仲代達矢と三船敏郎のチャンバラが真剣だったと知って驚いたね。危険極まりないよね。まあ、そんなこんなで昔の映画の事がいろいろインタビュー形式で語られている。

   

 「花のれん」 山崎豊子著。新潮文庫。

1958年の作品だから、相当に古い。吉本興業の創業者の女性の物語で映画やドラマで演じられてきている。直木賞作品。

   

 「父・藤沢周平との暮し」 遠藤展子著。

娘を愛した父親と父親を大好きだった娘との日々の追憶。テレビドラマで見たんだよね。東山紀之主演の(ふつうが一番 作家・藤沢周平 父の一言)を見てから読んだ。東山の好演が際立っていた。

   

 「90歳の遺言安藤昇」 向谷匡史著。徳間書店。

若い人は安藤昇知らないかね?やくざ安藤組の組長で解散してから映画俳優になって、一世を風靡した人。彼の人生訓みたいのが書かれている。ヤクザの中のヤクザと言われる人。軽く読めるから、読むといい。

   

 「昭和残影」 父のこと。目黒考二著。角川書店。

いろいろ学べる。勉強になる。

   

 「靖国への帰還」 内田康夫著。講談社。

帝都防衛の厚木航空隊の月光の飛行機乗りを主人公にした物語。突然の場面変更と最後の変更には驚いたけど。要するに、今の日本人たちに告ぐという感じの本。読み物としては軽く読める。若い人が読んだ方がいいかも。

   

 「代償」 伊岡瞬著。角川文庫。

本屋大賞で飾られていたので購入した。寝る間も惜しんで読んだくらいだから、面白いサスペンスと言える。小説を楽しみたいなら良いと思う。

   

 「90歳。何がめでたい」 佐藤愛子著。小学館。

有名な佐藤一族。遠藤周作や川上宗勲や北杜夫たちの話から彼女の事はよく知っていた。本屋に行ったら積んであったので買ってみた。彼女らしいエッセー集。犬の話は泣かせる。気楽に気晴らしに読むと良いだろう。

   

 「コンビニ人間」 村田沙耶著。文芸春秋。芥川賞受賞作。

待ち合わせの時に本屋に積んであったので購入。評価は比較的高いようだ。彼女はいろいろ賞をゲットしてきているね。私は興味津々で読んだけど、芥川賞の選考基準がよくわからないので、何とも言えない。まあ、評判だから読んでみたら?それなりに面白い。

   

 「告白」 町田康著。中公文庫。

3割くらい読んだところで、やめようと思ったのだが、あまりに評価が高いので、??これがわからないのは私がアホ?と思って再度読みだしてやっと終わった。文庫なのにえらく分厚い本。谷崎潤一郎賞を取っている。明治時代に実際にあった事件を題材としている。河内10人斬りという大量殺人事件。河内音頭にも名前が残る兄弟分の二人。河内弁で書かれている。だから、東京の私などには難解。関西の人なら、なじみやすい文体なのかも知れない。この事件は関西では有名なのかな?

   

 「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」 山田詠美著。幻冬舎。

30年前の直木賞受賞作品。当時話題を呼んだのは覚えている。彼女はいろいろな賞を受けてきている。今は文壇でも地位が確立されているようだ。漫画家+小説家。独特な文体とストーリー。私は面白かったが皆にも勧めるかどうかはわからないので座布団不明。ただ、評価は高い。

   

 ツバキ文具店 鎌倉代書屋物語

ドラマも今週が最終回だよね。あれはいいドラマだった。本を読んでみようかと思って小川糸という女性作家を調べたら、結構面白そうな作品が多いね。代書屋は昔看板でも見たことあるけど、まだやっているところがあるのかねえ。知らない世界だったので、いろいろ学ぶことが多かった。爽やかだよね。

   

 「女魔術師」 岡本綺堂著。角川。

短編七つが収められている。大正から昭和の初め頃の作品。鬼平犯科帳は池波正太郎、銭形平次といえば野村胡堂、半七捕物帳といえば、岡本綺堂。半七を気晴らしに読もうかと思ったけど、68冊もあるとわかって腰が引けてしまった。短編は気楽に読めて、気楽に楽しめて、時間もかからず、面白かった。あの時代、こういう本を読んで、人々は余暇を楽しんでいたのだね。

   

 「錦」 宮尾登美子著。中公文庫。

2008年の作品。宮尾文学はほとんど読んできている。これは男が主人公で、それは彼女の初めての試み。織物に全てを懸けた男の生涯を描く渾身の大作、宮尾文学の集大成と書かれている。2年くらいかけて書かれているようだ。実在の人物で、龍村平蔵という実在の人物を扱っている。京都に美術館もある。帯とか織物、装飾に私は疎いもので、ちょっと距離があった。その方面に興味がある人にとっては読みがいがあると思う。

   

 「容疑者Xの献身」 東野圭吾著。文芸春秋。

友人の記事を読んでいたら、中国ではこの作者の作品が圧倒的支持を受けていて、山積みにされているのだそうだ。それで、中国人たちに人気のこの人の本を読んでみようと思ったわけ。日本でも結構な人気なようだ。まあ、面白かった。いちおう時間忘れて読んだしね。中国では読書推奨なのだそうで、消費税?税?本は免除らしいね。日本も人づくり革命なんて言っているなら、本の税金は廃止すべきだろうなあ。

 

 千曲川のスケッチ:島崎藤村著。新潮文庫。

明治44年作品。小諸を中心として千曲川沿いの話。先日小諸に行ってたので思い出しながら読んでいた。写生文の結晶とされている。文章を書く人には格好の指針となっている。字が小さくて、読むのに苦労した。当時の時代背景がわかる。書評の評価はすごく高い。なぜ高いのかは理解できる。

 

 「夢遊病者たち:第一次世界大戦はいかにして始まったか」クリストファー・クラーク著。みすず書房。

多数の賞をとっている。世界中で翻訳されている。ま、いわゆる名著というものだが、なにかの書評で高評価だったので、値段が高いので躊躇していたが読んでみた。大学院の講習で学ぶような本である。難解な部分も多い。翻訳が悪いのかと思ったが、途中から本文自体が難解なのだろうと理解した。いろいろな事が学べる。新聞が政府たちからお金をもらって各国で世論操作みたいなことをしていたのも知ったし、あのボスニアヘルツェゴビナというややっこしいところが火種みたいになっていたし、日露戦争のロシアの敗北が、欧州の地図に大いなる影響を与えた事も知ったし、ま、そんなわけで知識満載なわけ。だからと言って、万人受けする書物ではないだろう。特に日本人には難解な部分が多い。ただし、この分野の研究や興味がある人にとっては必須の書物と言える。今にして思うと、なるほど、ユーロ圏やユーロが誕生したのも誠に理解ができることである。さて、この本、後編もあるのだ。読むべきか迷っている。書評はどれも高評価なのだが、添付の地図をチェックしながら読むのもきついので困った。しかし、高校で学んだ世界史の中の近代欧州なんて学習は、実にとるにたらないものであることがよくわかった。

 

 「東京シック・ブル―ス」芦原すなお著。集英社。

彼の小説は、直木賞をとった青春デンデケデケデケを読んでから好きになったね。私と同い年ってこともあり、読みやすい。多分自叙伝なのかも知れない。例の1970年ごろの青春物語だね。書評の評価はすごく高い。私は、他の世代がどう読むのかわからない。つまり受けるのかどうかわからないってこと。当時の喧騒とした大学時代の話になっている。なお、書かれたのは、20年前である。

 

 「大阪の宿」水上滝太郎著。岩波文庫。

作者は有名な人のようで、明治生命の創始者の子供のようで、明治ー大正―昭和10年に亡くなっている。小泉信三の同級生で三田文学に貢献。なにかで褒めていたので読んでみた。作者は東京の人なのだが、大阪に短期間住んでいて、その時の宿の話が中心。作者の話だと思う。大正末期の大阪の風俗がいきいきと描かれているとなっている。私にはなんだか心に残る小説であったが、今の人に万人受けするかというとわからない。なお、これは岩波のリクエスト復刊なのだそうだ。

 

 新しい道徳。北野武著。幻冬社。

私はタケシがツービートの時からのファンである。だから彼の本はほとんど読んできている。 だが最近あまり読んでない。理由はあまりにいろいろ出るので西村京太郎と同じくどれを読んでどれを読んでないのかわからなくなったからだ。だから久しぶり。以前ほどの痛快さはないのだけどやはり読む価値はある。彼ほどいろんな分野で成功を収めた人はあまりいないのだからそれなりに経験をバックにした考え方がにじみ出ている。今学校の道徳の本がどんなものなのか見てみたい。

 

 「没落の東京マーケット」太田康夫著。日経。

著者は私の10歳下だから、市場をそれなりにみつめてきた年月があるね。私は、以前から日本衰退としてきているので、著者の意見に反論はない。文中から彼のイライラが伝わってくるのだが、そういわれてもねって感じかなあ。この本は、投資家や一般人が必須として読むものでなく、首相、日銀総裁、財務大臣、金融庁長官、為替、証券、銀行などを担当している官僚が読むべき本だと思うね。当然ながら、東京を国際金融都市になんてことを言っている都知事もだね。まあ、もはや手遅れなので、どうもなあ。しかし、具体的にこれだけ数字で証明されると、唸るしかないよ。

 

 「孤愁の岸」杉本苑子著。講談社。

直木賞作品。作者は去年亡くなった。吉川英治の門下生で、歴史小説家。各種の賞をとってきている。幕府は薩摩藩の力をそぐために濃尾平野の治水事業をやらせる。莫大な借金、1000人の藩士という大きなもの。何人も亡くなる。宝暦大治水という事実から小説にしている。権力との戦い。なるほど、後年、幕末では薩摩の江戸幕府に対する恨みの蓄積も遠因にあったのかなと思わせる。

 

 「妄想銀行」 星新一著。新潮。

作品自体は古い。30年以上前。書評は結構高い。小作品が多数書かれている。テレビの奇妙な物語のファンなら面白いのではないか?この著者はこういうものが好きなようだ。

 

 「ナツコ・沖縄密貿易の女王」奥野修司著。文芸春秋。

大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞。タイトルと中味は異なる印象。裏に書かれているように、ナツコという女性を追って沖縄の戦後史を再構築した問題作となっている。1946年―1951年を中心とした話で、彼女は40歳前に亡くなっている。この本で、沖縄ー糸満ー石垣島ー与那国島ー台湾ー香港というような密貿易のルートを初めて知った。台湾がもともと日本植民地だったこともあり、あの辺は、国境があってないようなもの。アメリカの圧政下に置かれた沖縄の苦境もにじみ出ている。知らないことが多く、勉強になった。

 

 「卜伝飄々」風野真知雄著。文芸春秋。

無敗の剣聖と呼ばれた塚原卜伝の話。気楽に時代小説を読んでいる感じで、肩は凝らずに、楽しく読めた。剣豪の最後に至った境地とは。

 

 「トーキョー・プリズン」柳広司著。角川。

ミステリー。面白いからと渡されて読んだ。私はミステリー詳しくないので、これがどの程度なのかわからない。最後の結末はドテンドテンだから、おもしろいのかも。

 

 「時代屋の女房・泪橋」村松友視著。角川。

時代屋の女房は夏目雅子のイメージがあるので、思入れもあって、読んでいて楽しかった。泪橋はよくわからなかった。

 

  「雲ながれゆく」池波正太郎。文春文庫。

楽しく読める。

 

  徳川おてんば姫井出久美子著。東京キララ社。

徳川慶喜の孫が亡くなるまでに書いたもの。ああいう人たちの生活や考え方など知らないので興味津々で読んだ。この本には書かれていないが、後半生は、息子が詐欺?騙しにあって、大金を失って、公営住宅に移ったらしいが、それは書かれていない。ああいう人たちは騙されやすいようだ。育ちの良さとかそういうものを感じとりながら、彼女の書いている事には好感を持てた。昔の写真が多数掲載されている。

 

  戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗加藤陽子著。朝日出版。

彼女の前著が良かったので読んでみた。大学教授の彼女が中高生、一般人向けに教鞭をとっているという形をとっている。紀元前の戦争もとりあげて説明している。歴史を決めた交渉と日本の失敗となっている。

 

 時の石栗本薫著。角川。

書評の評価は高い。これもラジオで紹介されていたので読んだ。合計三篇の短編集。SFだね。だから、SF好きな人には面白いのだと思う。

 

 家族のあしあと椎名誠著。集英社。

あの椎名さんが書いた少年時代の話。あの歳でマッチョだから恐れ入るんだけどね。ある家族の在り方、生き方などを通して描く作品。あたたかく強いつながりである家族という集団が実はあっけない、もろい記憶だけを残していくチームという事を描きかったそうである。

 

 肥沼信次の精神と国際交流川西重忠著。アジア・ユーラシア総合研究所。

八王子の野口英世ドクターコエヌマを知っていますかという副題になっている。大多数の人が知らない。それは、この博士が東ドイツにいたからで、東西冷戦で日本には彼の偉業が長く伝わっていなかった。小さな町で彼は神と崇められ、墓までこの町が管理している。彼の紹介は、今まで東京新聞とふしぎ発見とアンビリバボーでしか取り上げられていない。この人は、立川高校を出てから、東京の医大、東大と進み、昭和12年にドイツにわたり、ベルリン大学の教授となった。彼の人生訓は、尊敬するアインシュタインの人は他人のために何かをなしてこそ生きる価値がある、であった。戦後のあのひどい時代に自分の命もかえりみず、多数の被災者たちの伝染病を治した。自分の薬も患者に与え、結局のそのチフスで37歳で命を落とす。ただ、この本は、いろいろな人たちの話が出ていて、重複する部分が多い。「リーツェンの桜」もしくは、「ドイツ人に敬愛された医師・肥沼信次」を読みたい。

 

 歴史の遺訓に学ぶ堺屋太一・渡部昇一対談。致知出版社。

知識を得るにはすごく良い本。28人がとりあげられている。評価も高い。

 

 コスモス光用千春著。イーストプレス。

新聞の書評を見て読んでみた。お父さん今日から2人暮らしですねという副題になっている。漫画だけど、絶賛する人も多く、評価が高い。この本で知ったことは、私の感性がすっかり鈍くなっているってこと。以前なら、もっといろいろ感じたと思う。ふーん、なるほど、って感じだった。おそらく多くの人は、いいね、とすると思う。

 

 オリンポスの果実田中英光著。新潮。

いだてんでやっていたロスアンゼルスオリンピックの時の話。著者はボートの選手。当時は、船でハワイ経由でロスに向かった。ラジオで林真理子がいいと言ってたので読んでみた。青春アニメでテレビでも放映されたようだ。昭和15年の作品。評価は高かった。全文、同じく参加した女子選手に対する恋文。何度も増版されているので、それなりに良い作品なのだろう。太宰治と師弟関係。今も昔も恋は同じだね。

 

 私の生活流儀本多静六著。

実業の日本。昔書かれたものの復刻版。著者は、この本の執筆後、間もなく亡くなっている。85歳かな。どうして亡くなったのかどこにも書かれていないので不思議。別に嫌味でなく、健康法が書かれていて、絶好調だとなっているので、あれ?どうしちゃったんだろうと思ったわけ。「私の財産目録」の副読本のイメージかな。学ぶこと多し。若い時に読んでおきたかった。

 

 漂流門幡唯介著。新潮社。

この人は冒険家らしく、その方面の著作で各種の賞を受賞している。長編ノンフィクション。37日間の漂流で助かった男が再び遭難してしまう。遠洋漁業のメッカである宮古島近辺の島が話の中心。驚いたことに、遠洋マグロとは言え、グアムを基地にポナペ辺りまで行っていたんだね。フィリピン近くに魔のトライアングルなるところがあり、多数の漁船が姿を消してしまう。しかもなんの手掛かりも残っていない。海で生きる人たちの話。

 

 悲しみの秘義 若松英輔著。ナナロク社。

日経新聞に連載された25編のエッセイ。この書の感想はその人の年齢、その時の心の状態などによると思う。

 

 破船 吉村昭著。新潮社。

江戸時代の海辺の小さな漁村。難破した船を分捕るのだが、読みながら思ったのは、当時の庶民の生活。なんだかんだと言っても今の我々は恵まれていることを痛感。

 

 一切なりゆき 樹木希林。文春。

昔から彼女のファン。ベストセラーになっていたので読んでみた。それなりに良かった。

 

 奸婦にあらず 諸田玲子著。日経。文春。

井伊大老と言えば花の生涯、舟橋聖一著が有名であるが、これは大河ドラマにもなったくらい有名であるが、奸婦のほうは、村山たかを中心に井伊直弼、長野主膳たちの生涯を描いたもの。新田次郎文学賞をとっている。男女の愛の機微を描きながら、幕末の歴史を追っている。しかし、日本って本当にテロ国家だなあ。アラブ顔負けのテロリスト集団の歴史だね。

 

 かみさまは中学1年生 サンマーク。

前回は小学5年生だった。インドの前世の記憶をもち続けている子供たちの話は以前から有名で知っている。前回の方が良かったかな。

 

 会津執権の栄誉  佐藤巖太郎著。文芸春秋。

芦名家、佐竹家、伊達家がからんだ争い。秀吉全盛の頃の話。

 

 性風俗シングルマザー  坂爪真吾著。集英社。

深い闇の世界。離婚再婚、DVDなんでもこざれ。彼女たちと子供たちの状況に胸が痛むが、読んでいてしんどい。知らない事も多いのだが、この著者の努力に敬意を表したい。

 

 交通誘導員ヨレヨレ日記  柏耕一著。フォレスト出版。

新聞広告で何度も見るので、それならばと思って読んだ。全く知らない世界で、近くでよく見かける人たち出し、知り合いでこの仕事をしている人がいるので興味を持って読んでみた。ま、それなりに面白くはあった。

 

 秘太刀馬の骨  藤沢周平著。

お家騒動と剣術の達人たちの話。最後のどんでん返しには驚いた。

 

 A/Identify―アイデンティファイ―  大隆哲裕著。幻冬舎。

AIのSF小説というところ。新日鉄住金ソリューションズのエンジニアたちが著したようだ。それなりに楽しめる。

 

 君たちはどう生きるか・漫画  吉野源三郎、羽賀翔一。マガジンハウス。

累計200万部。80年読み継がれてきた名作。子供、親、祖父母の三世代で読まれている本。という説明になっている。最近よく読まれていると言う話は知っていた。私のような年代の者でなく、もっと若い人が読むべきものだね。学校の道徳の時間にこの本が扱われないのも不思議である。読後、やけに書かれていた内容が心に残ってしまっている。付録にノートがついていた。

 

 おらおらでひとりいぐも  若竹千佐子著。河出書房新社。

芥川賞受賞作品。彼女がラジオで語っているのを聴いていて、おもろいおばんだなあと思って読んでみた。批評家たちの評価はすごく高い。映画化されるようだ。

 

 投機バブル 根拠なき熱狂  ロバート・シラー著。沢崎冬日訳。ダイヤモンド。

この本が出た後にナスダックが崩壊した。だから、ITバブル全盛期に書かれたものだ。評価が高いのは知っていた。途中までで読むのをやめてしまっている。行動心理学とかそういう側面にも目を向けている。中断したのは、字が小さすぎて読みにくい事もある。20年前は、まだ字体が大きくなっていなかったんだね。その後、リーマン、現在のコロナ相場、中銀のマネー相場となっているわけで、あの当時の事を勉強するのが正しいのか疑問が残ってしまったからだ。今は根拠ある熱狂だしね。

 

 花競べ 向嶋なずな屋繁盛記。  朝井まかて著。講談社。

彼女のデビュー作。大阪の女性なのに、文中の江戸弁が、なかなか良い。花師のおはなし。知らない事ばかりでいろいろ新知識ゲット。江戸時代に、オランダのチューリップ投機みたいな事があったなんて知らなかった。

 

 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー  ブレディみかこ著。新潮社。

弟が面白いから読んだら?というので読んでみた。評価はすごく高くて、一生ものの課題図書、本屋大賞2019.ノンフィクション本大賞とか表紙に書かれている。いろんな人たちが、コメントしている。最近、イギリスに興味があって読んでいたのだが、まあ、これはイギリスだけの問題ではなくて、また、子どもたちだけの問題でなくて、欧州でもアメリカでも日本でも当てはまるものなのだろうと思う。著者の文体のタッチはのりがいいので、読みやすい。

 

 愚か者死すべし  原寮著。早川書房。

昔物のハードボイルド探偵もの。沢崎探偵ほど頭脳が働かず、展開に追いつくのが大変だった。どんでん返しの応酬。早川書房の出す定番という印象。これは2004年の作品だが、著者の書いた私が殺した少女、1989年、はとても良かった記憶がある。

 

 いやいやえん  中川李枝子著。福音館。

読み始めたら、絵本なんだよね。あれ?なんでこんな本買ったのかなあと考えていた。おそらくこの著者がラジオに出演したのかも知れない。話を聞きながら買ったかも。なんと、1962年作品、え?私が中学1年生ではないか。幼稚園児向きかな。これが彼女の最初の作品で、有名な童話作家らしい。厚生大臣賞・サンケイ児童出版文化賞・野間児童文芸推奨作品賞・NHK児童文学奨励賞などを受賞している。作品の良さはわからなかった。先日聞いた「大人になると感性が衰える」っていうのが私にあてはまるのだろう。この本の良さは、幼稚園児に読ませてみるしかないか。アマゾンの評価では座布団4.5枚だらけであった。

 

 ゾウの時間 ネズミの時間  本川達雄著。中公新書。

著者は、たまにラジオに出てくるので名前は知っていた。生物学、動物学の権威となっている。この本は、ずいぶん増版されている。30年くらい前の本だ。科学的頭脳や興味がないと続かないかもしれない。私は途中まで真剣に読んでいたが、なにしろ、グラフとか公式とか表などは苦手なのでついていけなくなってしまった。評価は高い。褒めているものが多い。こういったことに興味があるなら、とても面白いと思う。なお、ラジオでの彼の話はとてもわかりやすく、ためになる。

 

 検事の信義  柚月裕子著。角川。

短編5つのストーリーをまとめた佐方検事のお話。信義を守るは、良かった。

 

 愛の領分  藤田宜水著。文春。

複雑な男女関係を描いた作品。アマゾンでは高評価になっていた。ちょっと暗い小説。

 

 ふしぎなえ  安野光雅著。

何も文字が書かれていない絵本。自分で考えなさいって事のようだ。大人から見ると子供は何も考えていないように見えるが、そんなことはないとのこと。自分で想像を膨らませて、自分で考える事の大事さ。こどもと一緒に見る良いようである。座布団では、測れない絵本と思える。

 

 あさになったのでまどをあけますよ  荒井良二著。偕成社。

震災後に書かれたものだが、3歳以上となっている。ずいぶんと評価が高い。ロングセラーだね。気にいった評価だが、朝目覚めて、窓を開ける。窓の外には、見慣れた景色。絵本の中の子ども達だけでなく、絵本を読むこちらの私達にとっても、ごく当たり前の日常の中にある行為です。しかし、窓を開けた子にとっての「普通」の景色は、私達には見慣れない景色。荒井良二さんの筆によって、内側から明るく輝くように描かれた景色の美しさに、まず私達は、旅人の視点をもって気付きます。日常のくり返しや、見慣れた風景のもつ力、普段の景色のかけがえのなさ。そんなことに気づかせてくれる一冊です。

 

 真乗- 心に仏を刻む  中央公論。

すでに亡くなった人だが、高名な宗教家だったようだ。読んで感想を聞かせて欲しいと言われて読んだ。多くの仏像を彫っている。釈迦涅槃像とか、不動明王像とかいろいろ。この人の伝記そのものは良かったのだが、その後の仏教の解説が、私には非常に難解だった。仏教に帰依している人なら簡単に理解できるのだろうけど。今東光との付き合いが長い。私の世代では、今東光の人気は絶大だったからね。この坊さんの青年向けの人生相談は有名だった。

 

 覘き小平次  京極夏彦著。角川。

よくわからないまま、ダラダラ読んでいて、終わりの方でやっと理解ができた。ただ、私の理解度が悪いのかもしれない。この本は、山本周五郎賞をとっているし、70%の人が座布団4.5枚なんだよね。説明を読むと、押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。ある時、旅巡業の声がかかるが、それは凝り続けた愛と憎しみが解き放たれる修羅の幕開けであった。女房・お塚を始め、小平次の周りに蠢く生者らの欲望、悲嘆、執着が十重二十重に渦巻き絡み合い炸裂し―やがて一つの異形の愛が浮かび上がる。人間という哀しい華が圧倒的に咲き乱れる、これぞ文芸の極み。古典怪談に材を取った『嗤う伊右衛門』に続くシリーズ第二弾。そんなわけだが、私も好きな作家、読みやすい本、などが確立してしまっているので仕方ないかな。この本は、日経で確か取り上げられていた。

 

 タヌキ  竹田津実著。アリス館。

キタキツネ物語で有名な竹田津氏。写真家であり、獣医師である。絵本スタイルの写真集。一番かわいかったのは、森の雪景色の中、お互いに見つめ合っているタヌキとキツネ。住みわけができているらしく、キツネは昼間、タヌキは夜行性。タヌキは、日本全国と中国東部とロシア南部に生息している。家の庭に一時12匹もいたタヌキも今は4匹程度に減ってしまった。あいつらの事を思い出して、この写真集を購入した。

 

 冥界からの電話  佐藤愛子著。新潮。

タイトル通りの本。この手の話が好きな人には面白いかもしれないが、興味のない人は、5ページ読んだらやめるだろう。私は、佐藤愛子女史の本だから読んだだけ。話自体は中途半端の印象。

 

 百鬼園随筆  内田百闥。新潮。

百閭tァンには、彼のものは全て良いとなるので座布団5枚になる。百閧ノ興味のない人には、座布団1枚だろうと思う。私は、映画、まああだだよ、をいつも思い浮かべる。松村達雄や所ジョージが好演したものだ。だから、私の内田百閧フイメージはあの映画の多くの学生たちに慕われた先生のもの。夏目漱石の弟子であり、宮城道雄の弟子であり、鉄ちゃんであり、ドイツ語の教授。

 

 声なき蝉-空也十番勝負 青春篇(上)  佐伯泰英著。双葉社。

居眠り磐音の息子の物語。舞台は薩摩。鹿児島の事知らない人が多いのだから、地図を載せてくれればいいのにと思った。以前行った鹿児島、熊本、宮崎、霧島を思い浮かべて読むしかなかった。ネットで地図を調べてもよくわからなかった。著者の年齢もあり、磐音ほどの長編シリーズにはならない様子。居眠り磐音が面白くて、読書が止まらなかったのだが、今回の第一回は低調なスタートの印象。続きも読まないと良いか良くないかの判断はできないね。今のところ、磐音の面白さの半分程度か。

 

 ねこは るすばん  町田尚子著。ほるぷ出版。

去年の絵本屋さん大賞の第4位。おっさん的ネコが登場。1度目よりもしばらくしてからまた読むと面白いかも。ほんのりする。著者はネコがらみの絵本が得意なようだ。

 

 声なき蝉-空也十番勝負 青春篇(下)  佐伯泰英著。双葉文庫。

上巻より面白くなった。相変わらず薩摩のいいかげん地図を頭に描きながら、読んだ。まだ、座布団判定できず。ところで、居眠り磐音は2000万部売れたって?51巻もあるし、中毒的に面白かったから、そうかもしれない。空也は3冊目を読んでから判断だね。

 

 盤上の向日葵(下)  柚月裕子著。中公文庫。

砂の器より衝撃的だったというコメントがあったけど、それほどでもないと思うけど。将棋を詳しく知らないとちょっと難儀かもしれない。というよりも知っていれば、もっと面白いのかも。最後に羽生九段がコメントしているけど、今は真剣師というのはいないらしいね。そう、賭け将棋。

 

 てらこや青義堂 師匠、走る  今村祥吾著。小学館。

忍者をやめて寺子屋の先生になった主人公が忍者に戻らないとならない状況に陥って、忍者たちとの戦いにあけくれる。この先生と子供たちの成長の物語という感じ。さわやかな青春小説のイメージ。忍者同士の戦いで、いろんな技が出てくる。この類の小説は好む人と興味を示さない人にわかれそうだ。書評は好意的なものが多い。

 

 黄昏  南伸坊・糸井重里。糸井重里事務所。

仲のいい二人が、あちこちに旅しながら、どうでもいいような、くだらない話を語り合う旅で写真が多数挿入されている。くだらない話がそれなりに面白い。ウェブのほぼ日刊イトイ新聞から抜粋したもののようだ。二人の会話は、弥次喜多道中を彷彿させる。

 

 黄深川澪通り木戸番小屋  北原亜以子著。講談社。

1989年から6巻。泉鏡花賞をとっている。ドラマや漫画になっているそうだ。この手の類の江戸物は読んだことあるなあ、と思っていたら、な〜んだ、慶次郎縁側日記を書いた人なんだね。それなりに楽しめる。

 

 野川  古井由吉著。講談社。

全然わからなかった。半分でやめた。いずれ、残りを読もうとは思う。現代日本文学の最高峰を示す傑作長篇小説。誰でもそれぞれの死後を今に生きている。戦後半世紀余の時間を往還し死者と生者の混交する世界と日常の中の永却を描く芥川賞・谷崎賞・読売賞受賞作家の到達点。このように書かれているのだから、私の眼力がないのだろう。評価も悪くない。

 

 遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと  飯田絵美著。文春。

4番野村、キャッチャー、南海ホークス。よく覚えている。子供の頃、銭湯に行って下足番で1番と3番をとる競争をよくやったが、19番は記憶にないなあ。著者の愛情が満載された本である。彼女こそ、本当のファンなのだろう。知らない話も多く、興味深く読んだ。アマゾンでの評価も高いようだ。

 

 いねむり先生  伊集院静著。集英社。

夏目雅子が亡くなってから、著者があんなに苦しんで生活もすさんでいたとは知らなかった。その頃、麻雀放浪記で有名な阿佐田哲也と出会い著者は大いなる影響を受けて再生した。阿佐田哲也の命名の仕方が笑ってしまった。麻雀が終わって、朝だ、徹夜だ、から来たんだと。

 

 たぬき  いせひでこ著。平凡社。

たぬきの家族を扱った絵本。竹下景子が賞賛していたので読んでみた。被災地の福島でのお話。絵本の評価はむずかしい。これほど人によって違うものはないかも知れない。読む年齢層もそうだね。大人の方が感じ入ってしまうものもあるし。

 

 毎日読みたい365日の広告コピー  ライツ社。

たまに話題になっているね。とても良いのだが、日を置いて、また読むのが良いのだろう。この本の問題は、キャッチコピーは大きいので、良いのだが、下段にどこの会社、コピーライターの名前が出ているのだが、その下の小文字が薄字で小さすぎるので、読むのが大変。ほとんどパスした。JR,郵便局、塾、大学などが多かった。

 

 介錯人  辻堂魁著。光文社。

別所龍玄という切腹の介錯をする若い侍の話。凄腕の武士。静かに流れるストーリーがなかなか良い。

 

 高瀬庄左衛門御留書  砂原浩太郎著。講談社。

小さな藩の冴えない武士の話。この小説は好き好みが分かれるだろうなあ。時代小説が好きな人は、楽しめるだろうが、そうでない人はすぐにやめてしまうかも。静かな流れの小説という印象だ。

 

 心淋し川  西條奈加著。集英社。

根津、千駄木辺りの町人たちの小話7編が収められている。懸命に生きる人々のささやかな喜びと深い哀しみが胸に沁みる感動連作と書かれている。うらさびしがわと読むようだ。それなりに楽しめる。

 

 閻魔の世直し: 善人長屋  西條奈加著。集英社。

正義とは何か。裏の世界が裏の世界で始末をするという感じ。まあ、それなりに楽しめる。

 

 経済学者たちの日米開戦  牧野邦昭著。新潮。

読売ー吉野作造賞。例の秋丸機関の話が中心。学術的価値が高いと書かれていて、著者も大学教授。寄せられているコメントも大学教授ばかり。非常に難読の本である。大学の講義でも聴いているような感じ。この分野に興味ある人しか読めないだろう。一般の人には難解だと思う。それなりに新しい視点で見れるようになった。書評での評価は高い。

 

 キッチン  吉本ばなな著。新潮。

1987年、彼女はこの作品でデビューした。私は、彼女の作品を読むのは初めてである。ずいぶんと翻訳されているので、海外にもファンが多いのだろう。死を取り上げているものが多く、超能力みたいなものを強く信じていると書かれていた。今まで接してきた小説とは一線を画している感じがした。山本周五郎賞をとったTUGUMIを次に読む予定。

 

 なぜ日本は変われないのか  山本七平著。さくら舎。

初版は1975年ごろ。改定を重ねた本。何冊もベストセラーを出した著者を古い世代は皆知っている。非常にむずかしい本。単語が難解。私は通読しながら、気になった箇所を深く読むと言う方法を取った。新聞の社説の開戦時、敗戦時、敗戦の年末時の比較が興味深かった。明治期に西洋化を目指した日本自体に無理があったというのも興味深かった。書評は高評価になっている。私も含めて、皆が皆、100%理解できるとも思えないのだけども。あの高評価では名著なのだろう。

 

 いろいろ  上白石萌音著。NHK出版。

どうしてこの本を選んだのか記憶がない。何かでお勧めになっていたのだろう。例の朝ドラの安子だね。NHK出版かあ。NHKお気に入りの俳優なのかな。彼女が初めてエッセイ集を出したわけだが、すんなりと読める。まだ、20代前半だから、私から見れば、かわいい女の子のイメージ。彼女のエッセイから流れてくるのは、彼女のやさしさオーラかな。

 

 何者  朝井リョウ著。新潮社。

日本の学生って、勉強全然しない、大学では就活なるものを盛んにやっているという勝手なイメージが私にはあり、途中から読むのをやめようかと思った。だけど、評価が高いし、直木賞だし、最後はどんでん返しなんて書いてあるから、いちおう、最後まで読んでみた。やっぱり、よくわからなかった。若い人たちなら、もっと素直な反応をするのかもしれない。私の読書力の力不足なのかもしれない。著者が語っているのを聞いて、面白い男だなと思ったけどね。

 

 お菓子放浪記  西村滋著。理論社。

三部作の第一部。TBSのドラマでやったらしい。焼け跡の放浪と遍歴。たくましく生き抜いた青春群像と書かれている。著者の自伝なのだと思う。少年院にぶちこまれてから戦争が終わるまでの話が第一部。それなりに楽しく読んだが、読後感は読者によって違うのかもしれないね。

 

 ミカエルの鼓動  柚月裕子著。文春。

ミカエルとは、手術用ロボット。医療界、医者のあり方などを説いた本。著者の本は、だいたい読むのが楽しいが、この本もそれなりに楽しめる。そのうち、ドラマにでもなるのかもしれない。

 

 老年の読書  前田速夫著。新潮。

読まずに死ねない本がある、賢者たちは老いをどう考えていたかこれを読めばもう死は怖くない、とか表紙に書かれている。何かのお勧めだったので、購入した。途中であきらめた。東大文学部卒の著者だから、当然ながら、私とは読む本の種類が違う。評価は高いので、私の理解力が足りないのだろう。というか、途中から、苦だ、生だ、死だ、の文字に辟易した。アマゾンの説明では、以下の通り。一度きりの人生、読まずに死ねない本がある。キケロ、モンテーニュから古井由吉、山田風太郎まで、文芸誌の元編集長が50冊を超える古今東西の名著から箴言を厳選、懇切にガイドする究極の読者案内!「死ぬ術は生涯をかけて学び取らねばならないものなのである」(セネカ)、「不知(しらず)、生れ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る」(鴨長明)、「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」(井伏鱒二)――老いに向き合い、老いの悩みに答える知恵と思索が数多くの書物の形で遺されてきた。本書の中から、より善く老いるための一冊を見つけてください。

 

 長い長い殺人  宮部みゆき著。光文社。

12年前の発刊。彼女の本は大体好きなのだが、途中でやめてしまった。読破するのが常なのに私としては珍しい。財布を擬人化している。これが、どうもすっきりしない。犬猫を擬人化するなら、なんてことも感じなかったのだけど。私がやめたときは、一人の財布だったのだが、あとがきを読むと、合計10の財布が語る事件の裏に、やがて底知れぬ悪意の影が、なんて書かれている。え?刑事の財布だけでもぴんと来なかったのに、10人かあ。彼女の作品が面白くないはずはないのだけど。

 

 大名倒産 上  浅田次郎著。文春。

著者の本はほとんど読んでいるが、この本はちょっと今までと異なり、軽いタッチが目立つ。まだ、上巻しか読んでいないので、終わるまでわからないが、今のところは期待外れかな。但し、気楽に読み進められる。

 

 大名倒産 下  浅田次郎著。文春。

適当に通読した。なかなか、爽やかな作品という印象。読んだ甲斐はあった。気楽に読むには適している。 評価は高いようだ。

 

 お鳥見女房  諸田玲子著。新潮。

こころがじんわり熱くなる──幕府密偵お鳥見役一家、珠世の笑顔で事件も解決!なんて宣伝されている。あとがきでは、向田邦子が書いている。シリーズものなのだが、この後、読むか決めてない。時代小説は、読みすぎて、先読みしてしまうんだよね。人気らしいから、二冊目読んでみるかなあ。

 

 昔話の扉をひらこう  小澤俊夫著。暮しの手帖社。

著者は、あの小澤征爾氏のお兄さん。91歳とは思えない書きっぷり。使命感みたいなものがあるのだと思う。紹介文では、わたしたちの祖先が何世代も語りついできた昔話には、人生観、自然観、子育てのヒントが染み込んでいます。あたたかいまなざしで人生の本質を語り、「大丈夫だよ」と励ましてくれるのです。昔話に秘められる大切なことを紐解く一冊です、となっている。子供たちにあなたの声でお話を聴かせてやってください、とタイトルに書かれている。声の大事さを説いている。幼少のこどもが耳で聴いたことの大事さが書かれている。良書と言えよう。

 

 いつか王子駅で  堀江敏幸著。新潮。

作者は、岐阜出身で、数々の賞をゲットしてきている。私は、この人の著書を読むのは初めて。独特の文体で、慣れるのに時間がかかった。コメント欄は、ぼろくそに書く連中がいたが、まあ、彼らの言うことはわからないでもない。ただ、ぼろくそに書く連中は嫌いだ。著者への礼儀を考えれば当然で、作品への侮辱は宜しくない。読み終わって感じたことは、この本は文学作品だって事。だから、文学作品が好きかどうかで意見は分かれるような気がする。まあ、それなりに楽しめた。座布団は、文学が好きかどうかだろうなあ。

 

 住友銀行秘史  国重淳史。講談社。

読み終わって疲れてしまった。レビューに自慢話だろ、というのがあったが、そんなこともないし、そんなこと言ったら、本筋を見逃してしまう。昔から、邦銀は嫌いだった。大企業そのものが好きでない。しかし、驚いたなあ。住友銀行の重役たちの数。多数の大物ОBたち、会長、頭取、副頭取2人、専務5人、常務8人、とんでもない組織で、住友藩という感じだ。イトマン事件を扱ったものだが、著者は先日亡くなった。当時のバブルに浮かれていた日本の全貌がわかる。もう、あのバブルは昔なんだね。日本人は忘れるのが得意な民族だから、しょうがない。思い出すと、あの事件の報道はいろいろあったが、非常にわかりづらく、金額の桁も違うし、薄い記憶しかない。友人がイトマンのゴルフ会員権買って、大損したことは覚えている。多数の関係者たちはすでに亡くなっている。ああいう組織での抗争の挙句に皆最後は死んでいるのだから、なんともなあ。相手側の許永中や伊藤寿永光などは存命。後年、西川氏が頭取になり、ラストバンカーと呼ばれたが、引退後、認知症?らしく、これもちょっとなあ。なんとも、そう、空しくなるのだよ。イトマンから闇の世界に流れたマネーは3000億円らしいね。政治家は絡んでいるし、ヤクザは絡んでいるし、なんともバブル崩壊は天罰だったんだなと思わせる。銀行の事に詳しくない人が読むと、結構きついと思う。銀行マンは、読むべきだろう。それぞれ、感想は異なるとは思うけど。日本の組織自体は、今でも変わらないのだろう。なお、著者は、後年、女性問題で失脚だったようだ。

 

 八日目の蝉  角田光代著。中央公論。

表紙には怖い顔の井上真央が出ている。映画は売れたようだね。この本持参で映画200円引き。となっているが、この小説は2011年なんだなあ。映画やテレビを見てから、原作を読んだ人が多いようだ。女性目線と男性目線で捉え方は異なるのではないかなと感じた。これ、おそらく、本当にあったか、似たような事件があったのを小説化したような感じだが違うのかね?中央公論文芸賞受賞。座布団、わからない。誘拐犯の希和子が心に残る。

 

 テムズとともに  徳人親王。紀伊国屋。

今の天皇が皇太子のころに留学したイギリスの思い出が語られている。オックスフォードが話の中心。昭和天皇も平成天皇もイギリス時代を楽しんだようで、日本の皇室にとっては過ごしやすい国なのかも知れない。我々には、彼らが何やっているのか、何考えているのか、とかはわかりにくい。だが、この本で、それを垣間見せてくれた感じがする。

 

 蛍の行方―お鳥見女房  諸田玲子著。新潮。

続き物。鷹匠とかお鳥見役とか、あまり馴染みのない人たち。主人公の珠世の事は好感が持てるが、私は、池波正太郎や佐伯泰英のようなチャンバラ時代劇が好きなので、あまり肌に合わない。但し、ファンは多いようで、確かに楽しめる気が楽な読み物だ。

 

 世界は五反田から始まった  星野博美著。ゲンロン。

大佛次郎賞受賞作。各新聞、週刊誌が絶賛とか、表紙に書かれている。大崎や上池台に住んでいたことがあり、五反田近辺は懐かしい場所。そう、ソニーのあったところ。地図が2ページ出ているのだが、どうせ掲載するなら、もう少し詳細な地図があったらと思った。五反田や戸越などを知らない人には、地理感覚が出ないと思うけどね。要するに反戦を語っている。ダラダラと長いのだが、後半は非常に良かった。座布団わからなかったのだが、読後、数日経過しても読んだことがいろいろ思い出されるのだから、良い著作なのだと思う。良い本は記憶にしばらく残るもの。彼女はノンフィクションでいくつかの賞を取っている。

 

 本屋で待つ  佐藤友則、島田潤一郎著。夏葉社。

まず、挿絵がすごく良い。ひうち棚という人が描いている。全体としてやさしさが漂う本。広島県の地方の小さな町の本屋さんが舞台。学校にいけない、いけなかった若い人たちのほうが正しくて、なんでも同調圧力に従って、居心地の良い方にいようとするほうがおかしいのかもという考え方は初めて聞いて、唸った。いい感じの本で心温まる。

 

 息が詰まるようなこの場所で  外山薫著。角川。

高所恐怖症で、いまだにスカイツリーに行ったことがない。だから、タワマンにはあまり興味がなかった。タワマン文学というジャンル?のようである。本屋で平積みにされていたし、ネットでも人気のようだ。タワマンに住む3家族を中心に描かれている。なんか、ページがあまり進まないので困った。あまりにも人間臭い登場人物たちの話に暗い気分になってという感じ。現代の日本社会の断面というところだろうか。皆、生きていくのが大変そうだ。座布団、わからない。5枚の時は、是非読んでほしいという意味。

 

 嫌いなら呼ぶなよ  綿矢りさ著。河出書房新社。

うーん。なんで選んだのかなあ。ラジオで紹介されたのかも。著者は、高名な女性で芥川賞作家。本は、派手に売れたようだ。早稲田は女性執筆家を多く輩出している印象。私にはあまり理解ができなかった。4作でなっている。最後の最後に笑ってしまった。どうも評判と私の感慨が違うので、書評を見ていたら、やっと理解できた。「どの作品もおもしろいといえば、おもしろいのだけど、中高年には、向かないだろうな。特に「眼帯のミニーマウス」と「神田夕」は、高齢者には、書いてある内容も言葉も、ほとんど理解できないのでは? 外国語で書かれた本を読んでいると思う人もいるかもしれない。そういう意味では、読者をかなり選ぶ本だと思う。」私は、著者から、「嫌なら読むなよ」と言われた気がした。

 

 おばさんの金棒  室井滋著。毎日新聞出版。

私は、たけしの母親役をやったときからのファン。先日、徹子の部屋で彼女がいろいろエッセイをだしていると聞いて、読んでみた。7年くらい前の本。読者層は圧倒的に女性ではないかと思う。まあ、気楽に読むには、楽しい本である。やはり、女性向けの本だと思う。

 

 身分帳  佐木隆三著。講談社。

もとは、1993年。新装版が2020年。著者は、復讐するは我にあり、で有名だ。2015年に亡くなっている。この作品は、映画にもなっていて、役所広司が演じている。暴力団の男が、人を殺してしまい、刑務所に入れられるのだが、刑務所で大暴れすること数度、そして、懲罰を課せられるのだが、それを訴えたり、いろいろ。出所後の話もあり、複雑な人間模様、人生模様。読後感はなんだかボヤっとしていたのだが、最後に映画を作った西川美和監督の話を読んで、ストンと腑に落ちた。読むと良いかもしれない。

 

 御宿かわせみ (4) 山茶花は見た  平岩弓枝著。文春。

ここまで読んできて、私には居眠り磐音のほうが面白いと思う。かわせみの方は、毎回事件が短編になっていて、続く楽しさに欠けるかな、と言う感じ。それなりに楽しんで読んでいるから構わないのだけど。肩がこらなくて、力を抜いて読めるのが一番いいところかな。そういえば、かわせみの東吾も相当な侍なのだが、チャンバラの面白さが磐音の方が詳細で迫力がある。あと、登場人物の人数が圧倒的に磐音の方が多い。テレビドラマのかわせみは、映画の磐音より断然良い。磐音は全編の5%くらいの話だから無理。かわせみは、いろんな俳優が演じている。

 

 御宿かわせみ (5) 幽霊殺し  平岩弓枝著。文春。

定番で、時代劇好きには座布団5枚が当たり前で、チャンバラ、捕物に興味ない人には、座布団なしという極端な評価になるのは仕方あるまい。醍醐味という点では、私は池波正太郎のほうが好きかも。男の作家と女流作家は、それぞれの良さはあるが、やはり異なると思う。

 

 御宿かわせみ (6) 狐の嫁入り  平岩弓枝著。文春。

こういう時代劇のいいところは、40年前の作品を今読んでも何も問題がないというところだろうか。気楽に簡単に読めるので、それなりに楽しいシリーズだ。

 

 焦眉  今野敏著。幻冬舎。

ご存知、内藤剛志のやる刑事物。今回タイミング良く、東京地検特捜部、国会議員、投資ファンド社長殺害事件と揃い踏み。検察の冤罪成立の背景とか、いろいろ面白かった。あれだけ長い事やっているテレビ番組だから、読みながら、内藤や佐野史郎などが浮かんできて、テレビ見ている感覚だった。まあ、気安く読めて、楽な気分になれる小説。

 

 御宿かわせみ (7) 酸漿は殺しの口笛  平岩弓枝著。文春。

34巻あるから、全部新品で買うと1万8千円。居眠り磐音だと51冊だから、4万円。うーむ、単品で買っていると気が付かないものだね。さて、第7巻に入ってくると、さすがにストーリーが厳しくなってきた。つまり、犯人を取りのがしたりするようになった。その凶悪犯が、また、いずれ登場してくるのだろうね。いつも気楽に読む。気晴らしに最適。

 

 ニッポンが壊れる  ビートたけし著。小学館。

私はツービートの時からのたけしファン。絶対に売れっこになると思ったけど、まさか、ここまでとはね。相変わらず毒舌好調。たけしが総理大臣になったらというところは面白かったね。座布団5枚は当然ながら、この薄い本で1000円というのは、出版社はちょっと。

 

 サラバ! (上)  西加奈子著。小学館。

上巻。2014年の作品の文庫版。累計100万部突破などと書かれている。こういうのをよく目にするけど、正しいのかねえ?それで出版不況なの?分厚い本のようで、中巻、下巻と続く。変わった小説で、今後の展開を楽しみにしたい。

 

 サラバ! (中)  西加奈子著。小学館。

中巻。複雑な家庭環境の主人公のこどもが小学校から大学、社会人になるまでがこの巻。次第に面白くなってきたが、まだ、何が主眼かわからない。人気小説なので、下巻の展開を楽しみにしたい。

 

 サラバ! (下)  西加奈子著。小学館。

3冊目の最後。10年前の作品。直木賞。著者は去年癌になったんだね。それで新作品も発表している。カナダに住んでいる?この本は、理解できないと言うのと、絶賛する人と真っ二つって感じ。ただ、下巻は称賛する人が多い。座布団は読者に任せるということで。

 

 旅のつばくろ  沢木耕太郎著。新潮社。

私が一番好きな作家は、吉村昭で横綱、次は向田邦子で関脇(長生きしてもっと作品を出してもらいたかった)、そして沢木耕太郎が小結、って感じ。今回は北日本旅紀行。雑誌に連載したものから、40篇を選んだもの。いいタッチで書かれており、読みやすい。

 

 師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常  杉本 昌隆著。文春。

週刊文春で書いていたものをまとめた本。将棋の好きな人は楽しめるかも。私のようにへぼ将棋で負けてばかりいたような奴には不向きな本。いろいろ将棋の世界を知れる。私は羽生や加藤一二三が好きだったのだけど。藤井が最強と言うのは知っているし、いろいろ話題のある青年だけど、いまいち、今の将棋界がわからない。でも、彼のおかげで将棋人気は不動のものになったようだね。

 

 社会とことば  井上ひさし著。岩波書店。

未収録だった著者のエッセイをまとめたもの。吉里吉里人以来、著者のファンなので、楽しく読ませてもらった。今の人に受けるかどうかはわからないが、当時の発想や考え方を知ることによって知識の幅が広がると思う。

 

 キネマの玉手箱  大林宜彦著。ユニコ舎。

世の中には大林ファンが多数いるのは知っている。大林監督と言えば、尾道と来るのだが、私が尾道に行ったときは、小津監督の事ばかり考えていた。余命があまりなくなってからの大林監督の映画製作現場のドキュメンタリーは見たことがある。この本には、彼の反戦への思いが強く込められている感じがした。しかし、大林監督と談志が近い世代だとは知らなかった。

 

 冬の狩人  大沢在昌著。幻冬舎。

新宿鮫の鮫島とは別なんだね。これは、新宿署の佐江刑事の話で、累計200万部という。前回から6年ぶりだったようだ。2020年作品。まあ、いつもながら大沢作品のハードボイルドは面白い。けっこう、楽しめるね。ラストの真犯人には驚いた。あまりにも意外な結末だった。H警察は、群馬かなあ。

 

 和菓子のアン  坂木司著。光文社文庫。

デパ地下の和菓子売り場の若い女性が主人公。普段、気にもされない和菓子だが、日本古来からのそれぞれの和菓子の歴史的背景などが説明されている。日本の食文化?それなりに楽しかったけど。シリーズものになっている。一定層のファンがいるようだ。分野はミステリーで、日常の謎ということらしい。

 

 山の上のパン屋に人が集まるわけ  平田はる香。サイボウズ。

いろいろ苦労しながら、現在の会社を設立して、パン屋以上のものを作り出した女性起業家の話というところ。なかなか示唆の富む話も多く、勉強になる。若い人が読むべき本だと思う。信州の彼女のお店に行くとクッキーをくれる券なども入っていて、出版社もいろいろ考えた様子がうかがえる。好感が持てる。

 

 汝、星のごとく  凪良ゆう著。講談社。

青春恋愛小説というところだろうか。絶大なる支持を受けているようで、いろいろな賞をとっている。評価もすごく高いので驚いた。久しぶりの恋愛小説だが、後半はグイグイと引っ張っていく感じで、著者の力量がよくわかる。

 

 最後に「ありがとう」と言えたなら  大森あきこ著。新潮。

著者は納棺師。最近は、お通夜とお葬式の前に納棺式というのがあるそうだ。選ばなくてもよいそうだが、今まで、勝手に病院などで行われて、遺族が接する機会がなかったのだから、良いことかもしれない。著者の経験したいろいろな人の死について書かれているが、我々の知らないことも多く、これは、座布団5枚というよりも皆が読んだ方が良いと思う。

 

 真珠とダイヤモンド 上  桐野夏生著。毎日新聞出版。

最初の数ページが全てを物語っている。あのバブル時代の株式沸騰人気の頃の話。読み進んでいくと、当時の日本と日本人がどのくらい増上慢になっていたのかよくわかる。狂っていたと思う。知らない世代が読めば、信じられない話の羅列だろう。この後、下巻を読むことにする。

 

 たまらん坂  黒井千次著。講談社。

副題は、武蔵野短編集。著者の名前は知っていたが、初めて著作を読んだ。彼のファンはそれなりに相当数いるようだ。これは、文学そのものだね。短編集は苦手なのだが、なんとなく、最後まで読んでしまった。読後感はある。文学作品を好む人には座布団5枚だろうが、そうでない人は、読んでもあまり理解できないかもしれない。アマゾンでの評価は、すごく高かった。なんか納得できる。

 

 証言天安門事件を目撃した日本人たち  六四回顧録委員会。ミネルヴァ書房。

1989年かあ、知らない人が多いかもね。1989年いろいろな事のあった年。昭和天皇が亡くなり、消費税が始まり、自民党が大敗し、美空ひばりが亡くなり、ベルリンの壁が崩壊し、株価が戦後の最高値を記録した年。調べたら、こんなにあった。ほとんど覚えているけど。天安門の事は、よく流れていた。ここに書いている人たちは、当時、北京にいた一般人の方々。皆、国外脱出をはかるんだけど、こんなような事も若い人たちは知らないのだろうね。その後の中国を考えると、分岐点になったことがわかる。読むべき本なのだと思う。

 

 ぼっち死の館  斎藤なずな著。小学館。

著者は最近有名なようで、テレビやラジオにも出るようだ。いろいろな賞を受賞している。ここから、5キロくらい先の団地に住んでいて、その団地は現在寂れた街となっている。老いについて、漫画で描かれている。好感度の高い作品。皆が良いと言うので、良いのだろうが、私には、ちょっと。なお、彼女のラジオでの話は面白かった。

 

 お寺のハナちゃん  梶井照陰著。リトルモア。

佐渡島のお寺の住職、プロのカメラマンでもあるようだ。メスの柴犬ハナちゃん。小冊子であるが、心に残る写真が多い。あとがきに住職の言葉がある。評価は、非常に高い。

 

 最後の読書  津野海太郎著。新潮。

著者は有名な人。著者の本を読むの初めて。なんとなく読み続けてしまい、結局、最後まで読むことになった。読売文学賞受賞作品。説明文では、「目はよわり、記憶はおとろえ、蔵書は家を圧迫する。でも実は、老人読書はわるいことばかりではないよ――。鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子……。長い歳月をたずさえて読む本は、豊かで新鮮なよろこびに満ちている。親しい仲間や敬愛する先達との別れを経験しながら、それでも本と出会い続けよう。本を読み、つくり、書いてきた読書人が、その楽しみを軽やかに綴る現状報告。」このように書かれている。

 

 スクイズ・プレー  ポールベンジャミン著。田口俊樹訳。

アメリカの探偵小説。昔から海外のミステリーはあまり読む習慣がなかったので、久しぶり。なんでこの本?と思ったが、多分新聞の書評からだったと思う。解説でもこの著者の事をいろいろほめている。この手の小説は、好き好みがはっきりでるのではないか?好きになるとその著者のものを読み漁るのだろう。なお、この本の評価は高い。

 

 りえさん手帖 ホントにやせた編  西原理恵子著。毎日新聞。

なぜ、この漫画を買ったのか覚えてない。何かで紹介されていたのだろう。これが最近の漫画なのかね?えらく評価が高いのだが、私にはあまり理解ができなかった。毎日新聞に掲載されていたのかな。累計250万部というシリーズらしい。

 

 椿宿の辺りに  梨木香歩著。朝日文庫。

説明文は、三十肩と鬱に悩まされている皮膚科学研究員の山幸彦は、ふたごの鍼灸師のすすめで祖先の地、椿宿に向かう。山幸彦は、そこで屋敷と土地の歴史、自らの名前の由来を知り……。入りくんだ痛みとは何かを問う傑作長編。このように書かれている。私は宗教的なものに興味があるので、それで、なんだか知らないうちに引き込まれていったとばかり思っていたが、読後、書評の評価をみたら、すごく高いので驚いた。 私には面白かったけど、万人向けではない気がする。

 

 東京都三多摩原人  久住昌之著。集英社。

三多摩という地名は皆知っているものと思っていたが、東京の近隣以外では知られていないと書いてあり、意外であった。誰でも知っていると思っていた。彼は、三多摩全部が元神奈川県と書いているが、私の記憶では町田だけだと思っていたので、その辺どうなんだろうか。と言っても明治の数年の間の事なのでどうでもいいか。明治26年に、水を求める東京に渡したことになっているようだ。三多摩と都内の意識の差は、すごく大きい。都内は、お坊ちゃん、お嬢ちゃんという感じで、三多摩はガキというのが適当。都内の連中は、け、三多摩なんてと卑下していると多摩人は思い込んでいる。このあたりは、東京以外の人には馴染みが薄いかもしれない。まあ、それで、著者は、孤独のグルメの人であるが、彼は、三多摩のあちこちを散策するのである。私がよく書いている旅日記、散歩日記と同じ感じ。私は気分で徒然草的に書いているが、久住氏はそれなりに名の通った人なので、私より格段に文章が冴えている様子。私には座布団5枚であるが、東京以外の人が興味を持つのかわからない。私の住んでいる百草園も登場するし、近隣の町々が出てくるので楽しかった。

 

 逃亡者は北へ向かう  柚月裕子著。新潮。

彼女の作品は、たぶん大多数読んでいる。外れのない作品が多い。今回は、過去の著書ほどの感動はなかった。毎日新聞が取り上げていたけどね。震災関連なので。ただ、彼女の作品を読んだことない人には、面白いかもしれない。

 

 亀に無視され続けています  カメユ著。産業編集センター。

亀を飼っている人なら誰でもわかる漫画本。彼女が飼っているのは、ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)なのだが、私はこの種類が好きではない。首が赤い奴だが、人相の悪い、凶暴な感じをもってしまう。この種類は、私の子供の頃は見かけなかったものなので、調べたら、私の高校時代から、大量に出回ったもので、今や迷惑種となっていて、規制が強化されている。繁殖力が強く、日本の亀の世界を一変させた。私の子供の頃は、亀と言えば、石亀。日本伝来のやつ。江戸時代より前からペットだったようだ。こいつはかわいい。おとなしいイメージでいつも眠っている感じ。つまり、ボケ〜〜としている亀がこいつ。子どもの頃、これを外で飼っている時、逃げ出してしまった。調べたら、外で飼うと逃亡に注意などと記載されていた。亀に興味ない人には、どうでもいい漫画。亀好きなら誰でも楽しめる。

 

 生きるとか死ぬとか父親とか  ジェーンスー著。新潮社。

著者は、単純に日本人。50代の女性。多くの女性たちから圧倒的に支持されている。TBSラジオで毎日午前中に出演している。私も時々聞く。本については、まあまあ、と言った感じ。座布団5枚には届かず、4枚程度だろうか。

 

 流れゆくままに  渡哲也自伝。青志社。

再放送の坂の上の雲で、東郷元帥の役を演じていたのが渡哲也で、なんとなく、彼の本を買ってしまった。黄金の石原裕次郎。大スター裕ちゃんにあこがれて入った渡哲也、渡哲也にあこがれて入った舘ひろし。渡哲也と同じ道を歩んだ弟の渡瀬恒彦。そういった面々が出てくる。裕ちゃんと渡哲也は、驚くべきことに病気のデパートだったことがわかる。手術と入院ばかり。裕ちゃんは、52歳で亡くなったが、渡哲也は、大病の繰り返しだったが、それでも78歳まで生きたのだから、天寿全うと言える。渡瀬恒彦は、72歳と比較的早い。舘ひろしは、学年的には私と同じ。裕ちゃんの奥さんの石原まきこは、若い時の映画ではその美貌に皆があこがれたもの。裕ちゃんの時代は、私の小学校の頃、小林旭と両巨頭という感じで、映画のポスターはこの二人ばかりだった印象がある。高橋英樹のもあったね。当時、私は調布にいたので、日活撮影所が近く、みんなでスターがいるか見に行ったことを思い出す。まあ、そういった思い出も詰まった本である。

 

 全悪 警視庁追跡捜査係  堂場瞬一著。角川。

彼の著書は、何冊か読んできたと思う。今回は、ちょっとあまり面白くなかった。警察物は、だいたい面白いものなのだが、200冊も書いているそうだから、もうネタ切れなのかな、などと思わせる。ところで、神奈川県警、またやらかしてくれたね。ダメなんだよ、神奈川県警って。昔から不祥事は多いし、変なところで警視庁に敵愾心をもっていたりしてね。

 

 京王沿線怪談  川奈まり子、吉田悠軌著。竹書房。

タイトルに騙されて買ってしまった。どうも怪談が好きな人たちが結構いるようで、皆、稲川淳二の弟子みたいな感じだ。 嘘か真かという話が盛り込まれている。くだらないものあるし、面白いものもある。驚いたのが、シリーズものになっているらしく、中央線怪談、京浜東北線怪談、阪急沿線怪談なども出ている。千葉怪談、甲州怪談などもある。世の中には、いろんな人がいるなあと驚いた。

 

AKIのオススメ・映画編

書籍コーナー        映画コーナー

アーティスト アルゴ 硫黄島の手紙 意志の勝利
麗しのサブリナ 永遠のゼロ 英国王のスピーチ 駅馬車
隠し剣ー鬼の爪 グレンミラー物語 県庁の星 決戦の大空へ
サウンドオブミュージック 七人の侍 シルミド 少年H
スポットライト 西部開拓史 セブン・イヤーズ・イン・チベット ゼログラビティ
それでも僕はやってない 小さなおうち 独裁者 バルトの楽園
ハワイ・ミッドウェー大海空戦ー太平洋の嵐 フレンチコネクション ポチの告白 ポールニューマン主演映画
硫黄島 - - -

 

 「アーティスト」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ご存知アカデミー賞5部門受賞作品。すごく良かった。日本では平均☆3.5になっていたが、いろんな人がいるものだ。私は☆5.0.フランス映画なんだね。主演の男優は若いが、老け役も見事なものだ。美しくでなく、きれいな恋愛映画という印象をもった。

 セブン・イヤーズ・イン・チベット   (映画版) (書籍版)

 AKI評価:☆☆☆☆☆

本もあるし、映画もある。私は映画の方を鑑賞した。実話に基づいた話である。ブラッドピットとデイヴィッド・シューリスと監督が無期限中国入国を禁止された。オーストリーの登山家と幼少の頃のダライラマとの交流を描いた作品。音楽はジョンウィリアムズだから当然いい。ダライラマ役の少年もすごくいい。

チベットが毛沢東共産党に征服される。8000人対9万人の戦争で11日で陥落。その後もチベット民衆が100万人殺されたと最後に追記が出てくる。インドに接するチベットが欲しかったのか詳しいことは勉強不足で知らないのだが、要するに我々が思い浮かべるのに適しているのは、例のブータンが中国共産党に占領されるという感じだろうか。日本も満州を占領したし、ソ連はチェコを60万の軍隊で制圧したりしているから、私は、その面では中国の事をとやかく言ってるわけではない。だが、何しろ、この映画に出てくる共産党軍の将軍たちがあまりに無礼、傲慢だったために、強烈な印象を残している。ってことを考えると日本が満州を占領したことを文句言うのもおかしな話ではある。

中国で上映禁止になった作品であるが、映像美と音楽がいい。チベット仏教の聖地の感じもすごくいい。あの仏教国と中国共産党は全く相いれないなあ。ブラッドピットがすごくいい。ぜひ、映画を鑑賞して欲しい。

 

 ポールニューマン スティング』 『明日に向かって撃て

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ポールニューマンが引退したけど、彼はいいよね。彼の作品の多くを観て来ている。典型的なアメリカ人だと思うな。以下が彼の出演作。

やはり私が大好きなのは『スティング』と『明日に向かって撃て』 だなあ。明日に向かって撃てなんてあまりにも感動したから、アメリカ横断している時、わざわざワイオミングに立ち寄ったものね。

 サウンドオブミュージック

 AKI評価:☆☆☆☆☆

世界でこの映画を観なかった人はいないのではないかと言われる名作であるが、先日NHKのドキュメンタリーを見た。次女のメアリー?が語る話なんだけど、すごく良かったね。あの番組は反響も大きかったようだ。しかし、彼女はいいよね。常にニコニコ明るく語っていて。アメリカに渡って以降の話なんて全然知らなかったから興味深かった。ザルツブルグは行こう行こうと思っていて、とうとう行かなかった。やはり行ける時にどこにでも行っておかないと一生チャンスがなくなるね。
 

 「フレンチコネクション」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

25年ぶりに再度、鑑賞した。4度目かな。1971年の作品でアカデミー賞5部門を制覇した刑事アクション映画。全然色あせてない。その後のカーチェースなどのアクションはこの映画がスタートかと思う。ジーンハックマンが素晴らしい。このポパイはその後もいろいろな映画に出演して、賞を総なめにしてきている。相棒役が、ジョーズで有名な故ロイシャイダー。今の若い人たちが鑑賞しても十分に楽しめる大作だと思う。

 

 「麗しのサブリナ」:1954年作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ビデオ整理していたら出てきたので、25年たって再度鑑賞した。オードリーヘップバーンの美しさ、かわいさ、世界中の男のアイドルである彼女の全てが出ている感じ。オーラ1万倍って感じ。常々思っているのだけど、彼女の英語の美しさ。フランス語も美しいのであるが。彼女が歌う場面もいい。最近、古い名作を見るようになった。別に今の映画が悪いと言うわけでもないが、アメリカが強かったころのハリウッドの映画はやはりいい。サンセット大通りのウィリアムホールデンやカサブランカのハンフリーボガードもいいが、オードリーが出てなければ、二流映画ではないかと思う。

 

 グレンミラー物語

 AKI評価:☆☆☆☆☆

いわゆるアメリカの良き時代の映画。主演のジェームズ・スチュワートは、アメリカの良心とまで言われた俳優。女優のジューン・アリソンも光る。英語はきれいな英語だから、学ぶにはいいだろう。ムーンライトセレナーデなど、なつかしい曲が全て流れている。今のグレンミラー楽団は、ずっと継承してきている楽団だ。気分がさわやか、暖かになる映画だ。ペンシルベニア6−5000、インザムード、アメリカンパトロール、セントルイスブルース、茶色の小瓶など、すっきりした気分になることは保証するね。

 「七人の侍」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ビデオからDVDに移行したので、見てみた。そう、ご存知、世界の名だたる映画監督たちに影響を与えた映画である。今回見たのは、30年ぶりかも知れない。今回、その優秀さを改めて知ったというところ。恐ろしく長い映画で、3時間27分である。途中で5分休憩など入っている。昔の映画は、日米とも休憩が入ったものだ。若い人たちは見ていないと思うが、一見の価値がある。白黒映画の良さもある。

今度、クリントイーストウッドの名作、アカデミー賞の「許されざる者」の日本版を作るらしいので、それも楽しみに待っている。時代劇はいい。

 

 バルトの楽園

 AKI評価:☆☆☆☆☆

2年前の作品だ。すごく良かった。なるほど文部省選定となるはずで、若い人たちには見せたい映画である。松平健と国村隼が好演している。ドイツ人将校のブルーノガンツはヒットラーの12日で有名な俳優だ。松江豊寿所長が会津であることも大きい。まさにこのような人物が昔の、つまり第一次大戦頃までの日本軍人だったのだと思う。当時、世界でも一目おかれていた日本軍人である。私は、真面目に第九を聴いたことがなかったのだが、今回聴いて、あらためて良い音楽だと感銘した。なるほど、多数の日本人が筆頭に上げるものだとわかった次第だ。今度、きちんとオーケストラの生を聴いてみたい。
 

 「独裁者」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

私はヒトラーのスピーチを聞きながら、チャプリンの「独裁者」を思い出していた。スピーチの内容は、チャップリンの方が100倍も味のあるものであった。若い人たちには、是非ともこの2本を見てもらいたい。そして、比較してもらいたい。いろいろ考えることが増えるだろう。そして、心の栄養になるだろう。2本とも必見である。「独裁者」のほうは、買い置きが一番良いのだが、中古でも高価だから、レンタルでもいいと思う。
 

 「意志の勝利」監督レ二・フェンシュタール。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

全てのドキュメンタリーフィルムの原点となった傑作となっている。そう、ナチ、ヒットラーね。1934年と言うから、昭和9年のニュルンベルクで開かれたナチス党大会の記録映画。整然とした映像美は高く評価されていたが、戦後、芸術かナチズムなのかで問題化された。映像美は確かにすばらしい。整然とした行進、規律のある集団、今の北朝鮮を100倍美しくしたものに見える。ヒットラーのスピーチは、内容的にたいしたことはしゃべっていない。完璧なる扇動と洗脳である。これはどの国、どの国民にもありうる。この後、ナチはドイツ全国を席巻し、あのような結末を迎えることになる。    
 

 「それでも僕はやってない」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

観ようと思っていて観れなかった作品だが、ご存知周防監督の作品。先日テレビで放映されたので観られた方も多いだろう。久しぶりに良い作品を観た。すごく良かった。この監督はただものじゅないね。彼の作品全て好きだよ。ブログ辺りでも相当な人気となっているようだ。司法は実に恐ろしい。いつ自分が犯人にされたり、検挙されたりするかわかったもんじゃない。悪い女がいればそれだけでおしまいだ。それにしても世間の常識の通じない世界である。
 

 県庁の星

 AKI評価:☆☆☆☆☆

たくさんの人が見たと思うけど、あれいい映画だったねえ。日本人、つまり、役人たちであるが、あのようになったら、日本もずいぶん良い国になるのではないかと思わせてくれたね。伊丹監督のノリの映画だった感じがする。久しぶりに、いい日本映画を見せてもらった気がする。役人諸君には、大いなるプライドと本来の目的意識をもって頑張って頂きたい。
 

 「英国王のスピーチ」

 AKI評価:☆☆☆☆☆

ご存知アカデミー賞受賞作品。長いことみたかったのだが、やっと見れた。今のエリザベス女王の父上のジョージ6世の話。鑑賞後、イギリス王室の勉強をしてしまったよ。映画の良さ?座布団5枚。非常に良い作品だね。素直にお勧めです。
 

 西部開拓史

 AKI評価:☆☆☆☆☆

なかなか良かった。1962年制作。1800年代の50年間の親子3代の物語。要するに西部劇だね。グレゴリーペック、ジェームズスチュアート、ジョンウェイン、ヘンリーフォンダなど有名俳優陣が出ている。映画音楽として有名なグリーンスリーブズが流れる。若い国、アメリカの大きさがわかる映画だ。今の人種のるつぼのアメリカとは全く違う。
 

 ゼログラビティ

 AKI評価:☆☆☆☆☆

年末に観た。批評で☆5個だったので気になっていた。もう、ぶったまげ。さすがにアメリカ映画。これぞ、映画!って感じ。3Dで1時間半程度の作品で、3人?程度の出演者しかいない。全く席を立てなかった。自宅で、テレビで見てもあの映画の醍醐味はわからないだろう。映画館の大画面でみたほうがいいし、テレビで途中でトイレ、お茶、なんてやっていたら、感動の度合いが違うと思う。終わってから、腰が痛くなってしまった、途中で息苦しくなったし、力んでばかりいたから疲労困憊。終わってから、ただ、一言、すごい!である。さすがに評論家支持率98%というのも納得できるし、私も当然ながら、座布団5枚持っていけ〜〜て感じ。久しぶりに、え〜〜〜い〜〜〜が、を鑑賞した。
 

 アルゴ:2012年のアカデミー賞受賞作品。

 AKI評価:☆☆☆☆☆

見よう見ようと思っていて、やっと見れた作品。若い人は知らないけど、イランで革命が起きたわけ。ホメイニという坊さんがカムバックしたのだけど、アメリカ大使館を民衆が襲って、人質50人以上が1年半近く、人質にとられた1979年の事件を題材にしている。当時、市場ではホメイニという名前が常に出てきていて、原油、金、為替、株と大きく動いたような記憶がある。それで6人の外交官の救出作戦をCIAが中心となって実施。当時はカーター大統領で、この救出劇は国家機密だった。それで、1997年?クリントンが機密解除したので、全てが明らかになった。映画は、よく当時1980年ごろの雰囲気を出している。ハラハラドキドキ。あんなの見たら、中東に旅するなんて考えられないね。つまらないコメントがあって、事実と異なる点が3−4か所あるとか言って、わざわざ触れているのがある。映画なんだから、興ざめでつまらんコメントを書くやつがいるものだ。座布団5枚。
 

 「決戦の大空へ」

ビデオが500本くらいあって、それをDVDに移し替えているのだけど、その過程で再度鑑賞することが多いのである。これは、私のお客さんから頂戴したものだ。1943年作品。つまり、昭和18年。山本提督が亡くなってから作成されている。海軍の少年航空兵などの物語だが、海軍省後援となっていて、つまり、軍のプロパガンダ映画ね。土浦の飛行場が出ている。あそこは、30年くらい昔に行ったことがある。当時のままの様子だった。兵学校だね。

この映画と以前取り上げたヒットラーの「意志の勝利」を比べると、やはりドイツのプロパガンダ映画の方が断然に優れいている。ただ、「決戦の大空」は情に訴えるというところがいかにも日本的である。私はこの映画を見ながらいろいろ考えていた。ご存知のように戦争物に私は詳しいわけであるが、見たり読んだりするたびに思う心が変わってくる。プロパガンダも理解する。軍事教育も理解する。開戦も理解する。だが、どうしても許せないのは、敗戦の決定のあまりの遅さ、つまり当時の日本の中枢部の人たちの事だね。最後の半年でいったい何万人死んだと思う?東京大空襲で終わりだよ。

そして、もっと腹立たしいのは、特攻だ。この映画を見てて、こういう若い連中の多くが無残な死に方をしたのだと思うと辛かったね。戦争だから、航空戦などで戦死するのは仕方がないことだと思う。だが、まともに飛べないような飛行機に乗せて、しかもパイロットとしての未熟な連中を、突っ込ませたなどふざけるなと言いたい。まともに米軍の艦隊に近寄れずに撃ち落されたらしいではないか。当時の特攻の決定した軍の上層部は許せない。以前こんな感情は持たなかったのだが、知識が増えれば増えるほど、怒りがつのってくる。あんなことをさせた日本海軍を私は今や卑下している。

 

 「ポチの告白」

友人が送ってくれたDVDをこれから見ないとならないのだが、この映画は知る人ぞ知るって感じでマスコミは皆避けているんだそうだ。だから皆知らない。説明が載っているけど、この監督、根性あるなあ。これは、襟を正して観賞せんとならないようだ。

DVDの紹介HP

 

 「シルミド」
「シルミド」という韓国映画を以前見たが、なかなか見ごたえのある映画だったね。朴大統領が金日成暗殺を目的とした特殊部隊だけど、朴大統領ならやるかもね、っていう感じがした。部隊は31人だが、刑務所にいる連中を徹底的に仕込んでいたね。訓練が3年4ヶ月というのだから半端じゃない。あまりの過酷な扱いに、ソウルに抗議に行ったが、全員射殺か死刑というすさまじいものだった。スパルタ式訓練のすごさに目を見張ったが、1968年当時の話だ。全てが明るみに出て映画が製作されたということだが、映画としても一級品だったと思うよ。
 

 隠し剣ー鬼の爪
うーむ。なかなか良かったね。たそがれより良かったと思う。主演の永瀬正敏というのがいい俳優だね。庄内弁もいい。あの方言は大好きだ。この年は「半落ち」が日本アカデミー賞を取ってしまったので仕方ないが、優秀作品だと思う。それにしても必殺仕掛け人的に家老を殺したが、あの剣の技もすごいね。
 

 硫黄島の手紙
うーーーーん。10代、20代、30代が見るべき映画。高齢層が多かったが、逆だね。若い奴ほど見るべきであって、高齢層は隣の007を見なきゃいかんとね。
 

硫黄島

硫黄島  
クリントイーストウッドですっかり有名になってしまったね。どこにあるのか聞かれて教える事が多い。たいした島ではないのだが戦略的拠点だからね。サイパンが絶対国防圏だったのもわかる。あの映画ふたつの間を縫って、テレビドラマの硫黄島、戦場の郵便配達が放映されたので見た。批評欄でセットと戦闘場面があまりにお粗末なのがもったいないと書いてあったが本当だった。ウルトラマンの頃の映像的だったね。それ以外はいい出来だったと思う。

日本の若者は、いまや学校で世界史や日本史を教えてもらえないそうだから、こんな機会に当時の事を知るのは良いと思う。別におじさん世代も歴史の教科書は明治ごろまでは一生懸命学ばされるが、昭和時代は、最後の授業の一回で終わりだったから、皆あまり知らないよ。私は思うのだよ。硫黄島にしても、サイパンにしても沖縄の戦いにしても、あんな状況で戦争を中止できなかった政府と軍部の中枢の能力をね。個人個人の上層部はそれなりの人たちだったのかも知れないけど、組織となるとどうして英断できなかったのかと思うね。沖縄や硫黄島などでの犠牲の多さに米政府は相当にショックを受けたようで本土進攻に慎重になり、原爆使用に踏み切ったという説もあるくらいだ。飛行機もパイロットも空母もないのに戦争継続するのは、もう日本全体、政府全体、軍部全体が麻痺か狂っていたんだろうね。そういうわけだから、政府なんてものは私は信用しないんだよ。
 

 駅馬車:西部劇の定番。ジョンフォードージョンウェイン。

 AKIの評価:布団4枚

西部劇のバイブルと言われるもの。古い映画で1939年作品である。昭和14年というのだから相当なものだ。古いが今でも楽しめる。インディアン差別がらみで上映がむずかしいとか、風と共に去りぬも黒人がらみで上映ができないと書かれていたが、時代の変化。と言ってもそういう背景は事実なのだから、バカみたいな杓子定規だ。今、昔の映画を見ると差別的な表現があるから云々ということわりがよく入っているが、あれもいただけない。そういう時代背景もあってそれなりの映画や小説が生まれているわけで、何も現代の定規に合わせる必要などないのだ。誰だろうね、そういう石頭連中は。
 

 「少年H]
映画をみた。原作は素晴らしい作品だったが、映像も悪くない。映像なりの良さがあったね。若い人たちに見てもらいたい作品だ。

 小さなおうち
小さなおうちを見た。山田監督が取り上げたかった気持ちはわかる。原作を越えることは、ほとんど無理だと思っていた。やはり、原作にはかなわなかった。原作は、そこまで恋に焦点を当ててなかったと思う。さりげなく、ちりばめられていた印象。あの本は、売れる前に読んで5枚進呈した作品だけど、原作を読んだ方が心に残る。映像の限界かな。

 永遠のゼロ
永遠のゼロは、良かったのだが、三回に分けたのが良くなかったと思う。せいぜい二回だね。テレビも映画も良かったが、これまた原作にはかなわない。本を読まない人が増えているらしいが、まあ、私から言わせれば、もったいないなと感じる。敢えて読めとは言わないけど、筆の力はやはり強い。

 「ハワイ・ミッドウェー大海空戦ー太平洋の嵐」
先日、「いずも」が出航したのを見て、昔見た映画をもう一度見たいと思って見た。今は亡き名優たちが多数出演している。艦船がお粗末に見えるのは、1960年の制作なので仕方ないだろう。1970年のトラトラトラはこの映画を参考にしているのがわかる。あの忌まわしいミッドウェー海戦は、まさに天罰とも言える大敗戦であるが、今でも人々に大いなる教訓を与え続けている戦いだが、多くの書物が刊行されている。57年前の映画にしては、よくできていると思う。
 

 「スポットライト」
2015年のアカデミー賞作品賞。見たいと思っていてツタヤにあったのでレンタルした。ボストングローブ紙とカソリック教会との戦い。多数の神父たちが悪さしているわけよ。子供への性的虐待。彼らは妻帯禁止なんだって?新聞記者魂を見せてくれた作品となった。事実に基づいて作られたもので、記者たちの勇気をたたえたい。非常に良い。座布団5枚。